ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第85話『5回戦、接戦です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第85話『5回戦、接戦です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS-2を中心とした強力な砲を持つプラウダ戦車部隊に追われる、大洗機甲部隊のフラッグ車であるアヒルさんチームの八九式。

 

護衛のウサギさんチームのM3リーとカモさんチームのルノーB1bisも倒され、絶体絶命となる………

 

だが、その時………

 

夜空を切り裂く様な爆音………

 

『ジェリコのラッパ』と共に、急降下爆撃機………

 

『ユンカース Ju87 シュトゥーカ』、日本では『スツーカ』と呼ばれる機体の編隊が出現!!

 

プラウダ戦車部隊に対し、次々と1トン爆弾を投下し、撃破して行った。

 

更に37ミリ機関砲ポッドを翼の下に装着したG-1型、『大砲鳥(カノーネンフォーゲル)』も現れ、プラウダ戦車部隊はまたも大混乱に陥る。

 

一方、フラッグ車を撃破に向かった主力部隊は………

 

あんこうチームとカバさんチームがフラッグ車の追撃を続ける中………

 

大河が苦戦しながらもニキータ………

 

熾龍が難なくピョートルを撃破。

 

決着の時が近づいていた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第5回戦・試合会場………

 

北緯50度を超えた、雪の降り頻る雪原地帯の中に在る廃村………

 

「クッ! 追い付けない………」

 

逃げ回るプラウダ&ツァーリ機甲部隊のフラッグ車との距離を詰められず、麻子が苦々しげな顔をする。

 

「くう………」

 

みほの表情も渋くなる。

 

『こちら大空! 応答願います!!』

 

とその時、通信回線に楓の声が響く。

 

「! 西住です!」

 

『西住総隊長! 敵は廃村内を周回しています! 廃村の外には出ようとしていません!』

 

みほが応答すると、楓からそう報告が挙がる。

 

「ぐるぐる回ってるだけ?………だったら! カバさんチーム! 追撃を中止して下さい!!」

 

それを聞いたみほが、カバさんチームのⅢ突へそう指示を飛ばす。

 

『何っ!?』

 

『総隊長、如何する積りだ?』

 

それを聞いたカバさんチームのカエサルが驚きの声を挙げ、エルヴィンがそう質問する。

 

「Ⅲ突を雪中に隠して下さい。私達がフラッグ車を誘導してⅢ突の前へと追い込みます」

 

『成程、挟み撃ちか。了解した!』

 

みほからの説明を聞いた瞬間に、Ⅲ突が反転して停止。

 

おりょう以外のメンバーが車外へと飛び出すと、其々スコップを手に、Ⅲ突に雪を掛けて隠し始める。

 

「麻子さん! フラッグ車を誘導する様に、付かず離れずの距離を保って下さい! 華さん! 適度に威嚇射撃を!」

 

「了解………」

 

「分かりました!」

 

そして、あんこうチームのⅣ号が単独で、プラウダ&ツァーリ機甲部隊のフラッグ車を追撃するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

廃村地帯の別の一角では………

 

「撃てっ!」

 

「は、発射ぁっ!!」

 

聖子とねこにゃーの掛け声で、クロムウェルと三式の主砲が火を噴く。

 

しかし、どちらの砲弾も、IS-1の装甲に当たると、火花を散らして明後日の方向に弾かれる。

 

「駄目! 全部弾かれちゃう!!」

 

「IS-1の正面装甲は砲塔、車体共に100ミリ以上………この距離じゃ、コッチの主砲は通用しないよ」

 

聖子がそう叫ぶと、ねこにゃーがそう呟く様に言う。

 

直後にIS-1が発砲!

 

幸いにも砲弾は外れたが、クロムウェルと三式の至近距離に着弾し、まるで地震の様な振動が車内に走る!

 

「キャアッ!?」

 

「けど、向こうの主砲はコッチの装甲を易々と貫通出来ると来たもんだ!!」

 

ぴよたんが悲鳴を挙げ、唯が愚痴る様に言いながらクロムウェルを移動させる。

 

「やっぱりもっと近づかないと!」

 

「でも、僕達の練度じゃ………」

 

三式を移動させながらももがーがそう言うが、ねこにゃーがそう呟く。

 

まだ練度不足な自分達では、接近する前にやられてしまうのではと言う不安があるのだ。

 

そこで再度IS-1が発砲。

 

回避行動を取っていたクロムウェルの至近距離に砲弾が着弾する。

 

「チキショウッ! エンジンの調子さえ良ければ回り込んでやれるのに!!」

 

再び至近弾の衝撃を感じながらも、唯がそう叫ぶ。

 

そう………

 

試合開始直後に不調を来していたクロムウェルのエンジンだが、実は未だに不調のままなのである。

 

その為、クロムウェル自慢の快速を完全発揮出来ずに居た。

 

「こんな事なら、1度エンジンをちゃんと見て修理しておくんだった………」

 

「聖子ちゃん、今更言ってもしょうがないよぉ」

 

エンジンをキチンとチェックすべきだったと悔やむ聖子に、伊代がそう言う。

 

「…………」

 

と、その会話は通信機を通じて三式の方にも聞こえており、ねこにゃーが何かを考え込む様な様子を見せる。

 

「………郷さん、エンジンは修理可能なんですか?」

 

やがて、聖子へとそう通信を送る。

 

「えっ? い、いや、直接見てないと何とも言えないけど、多分行けるかなと………」

 

「………分かったよ」

 

聖子がそう返すと、ねこにゃーがそう言い、三式が回避行動を止めてIS-1の方を向く。

 

「!? ねこにゃーさん!?」

 

「今の内に離れて下さい! その間にエンジンの修理を! 時間稼ぎくらいはして見せます!」

 

驚く聖子にねこにゃーがそう返したかと思うと、三式が発砲する。

 

だが、やはり砲弾はIS-1に当たると明後日の方向へと弾かれてしまう。

 

反撃にとばかりISが三度発砲!

 

三式の至近距離に着弾し、三式の車体が一瞬浮き上がった!

 

「! クウウッ! まだまだ! ぴよたんさん!!」

 

「ハイッ!!」

 

ぴよたんが次弾を装填すると同時に発砲。

 

しかし、今度は命中もせず、IS-1の上を飛び越えて、後方に着弾してしまう。

 

「ねこにゃーさん!」

 

「急いで! 僕達に出来るのは………これぐらいだから」

 

「!!………」

 

ねこにゃーがそう言うのを聞いて、聖子は葛藤する様な様子を見せる。

 

「聖子ちゃん」

 

「先輩」

 

「聖子」

 

「聖子さん」

 

伊代、明菜、唯、郁恵もそんな聖子を見やる。

 

「………唯ちゃん、IS-1から離れて。安全な場所に隠れたら、エンジンを修理するよ」

 

やがて、ゆっくりと顔を上げ、決断したかの様な表情を見せると、唯に向かってそう言った。

 

「………OK」

 

その指示に従い、唯はクロムウェルを後退させる。

 

「ねこにゃーさん! ぴよたんさん! ももがーさん! 必ず戻ります! それまで待ってて下さいっ!!」

 

去り際に、アリクイさんチームへそう通信を送る聖子。

 

「了解!」

 

「任せるだっちゃ!」

 

「任せるなり!」

 

ねこにゃー、ぴよたん、ももがーはそう返すと、改めてIS-1に向き直る。

 

「ぴよたんさん、榴弾を。装甲を貫けなくても、何かしらのダメージを与えられるから」

 

「了解だっちゃ」

 

砲弾を徹甲弾から榴弾へと切り替えるぴよたん。

 

「ももがーさんは兎に角回避に専念して下さい。難しいですけど………」

 

「任せるなり! 今こそゲームで培った経験が役立つ時なり!」

 

ももがーもそう言い、三式を再び移動させ始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、後退したサンショウウオさんチームは………

 

「! 11時の方向! あの崩れた建物の中に!」

 

「おうっ!!」

 

聖子の指示通りに、崩れた建物の中へとクロムウェルを入り込ませる唯。

 

建物の中へと入り込むと、クロムウェルの姿は壁に空いている穴以外からは見えなくなる。

 

すると、操縦手の唯を除いたメンバーが、工具を手に車外へと出る。

 

「郁恵ちゃんは見張りをお願い!」

 

「OK!」

 

「急いで直さないと!」

 

「ねこにゃーさん達も何時までも持ち堪えられないですよ!」

 

郁恵が念の為に見張りに立つと、残りの聖子、伊代、明菜がエンジンの修理に取り掛かる。

 

(アリクイさんチーム………頑張って)

 

必死に時間稼ぎをしてくれているアリクイさんチームに、心の中で声援を送る聖子だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、そのアリクイさんチームは………

 

「撃てっ!!」

 

「えいっ!!」

 

ねこにゃーの掛け声で、ぴよたんが発砲。

 

三式の主砲から放たれた榴弾が、IS-1の砲塔側面に命中する。

 

しかし、白い塗装が剥げて装甲が少し黒く煤けただけであり、IS-1は何事もなかったか様に反撃を見舞う。

 

IS-1に砲弾は三式の至近距離に着弾し、またも三式の車体が一瞬浮き上がる。

 

「うわぁっ!?」

 

「マズイなり! 足回りにダメージが蓄積して来たなり!」

 

ねこにゃーが悲鳴を挙げると、ももがーからそう報告が挙がる。

 

如何やら、先程からの至近弾で車体が浮かぶ度に、足回りへと負荷が掛かっていた様だ。

 

駆動部分や履帯と転輪の噛み合わせ部分から嫌な音が出ている。

 

「ももがーさん、何とか持たせて! サンショウウオさんチームが帰って来るまでは!」

 

と、ねこにゃーがそう叫んだ瞬間!

 

一際大きな振動が、三式を襲った!!

 

「!? うわあっ!?」

 

「ね、ねこにゃーさん! 砲身が!!」

 

「えっ!?」

 

ぴよたんからそう言う叫びが挙がったのを聞いて、ねこにゃーはハッチを開けて車外へ出ると、砲身を確かめる!

 

「!?」

 

そこに在ったのは、中頃から砕けて、ポッキリと折れてしまっている主砲の姿だった。

 

如何やら、運悪くIS-1の徹甲弾が砲身に命中してしまった様だ。

 

「コレじゃ主砲が使えない!」

 

ねこにゃーがそう声を挙げる中、IS-1は射撃不能となった三式に、悠々と近づいて来る。

 

「くうっ!………」

 

そんなIS-1の姿を見て、悔しそうな表情を浮かべるねこにゃー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃………

 

クロムウェルのエンジンの修理を急ぐサンショウウオさんチームは………

 

「唯ちゃん! 如何!?」

 

「駄目だ! まだ出力が上がらねえ!」

 

伊代がそう尋ねると、操縦席の唯からはそう返事が返って来る。

 

「おかしいです………もう完全に修理は終わってる筈なのに………」

 

明菜が不安げにそんな言葉を漏らす。

 

「! 三式の砲撃音が聞こえなくなりました!」

 

とそこで、見張りをしていた郁恵がそう声を挙げた。

 

「!? まさか!?」

 

「いや、まだ撃破報告はねえ。やられてはいない筈だ」

 

「けど、何かあったのは確かだよ」

 

「ちょっと! しっかりしてよ!! 仲間が危ないんだよ!!」

 

明菜、唯、伊代がそう言い合っていると、聖子は不意に、エンジンに向かってまるで語り掛ける様にそう言い放つ。

 

「いつも通りに動いて! 早く!!」

 

焦っているのか、口調が段々と荒くなる。

 

しかし、クロムウェルのエンジンの音は、相変わらず不調そうなままである。

 

「!!………しっかりしろーっ!!」

 

すると何と!!

 

聖子はエンジンに向かって、思いっきり頭突きを噛ました!!

 

「!? ちょっ!?」

 

「聖子ちゃん!?」

 

「何やってるの!?」

 

「何だ!? 如何したんだ!?」

 

聖子の思わぬ行動に、明菜、伊代、郁恵が唖然とし、車内に居たので何があった分からない唯が軽く混乱する。

 

「イッタッーイッ!!」

 

当然ながら、聖子は頭突きした頭を押さえてそう叫びを挙げる。

 

と、その瞬間!!

 

クロムウェルのエンジン音が大きくなり、正常に稼働し始めた!!

 

「!?」

 

「おっ! 来た来た! エンジンの調子が戻ったぜ!!」

 

聖子が目を見開くと、唯が歓喜の声を挙げる。

 

「ええ~~っ!?」

 

「嘘………」

 

「アンビリーバブル………」

 

一方、明菜、伊代、郁恵の3人は信じられないと言う様な顔をしていた。

 

まあ、調子の悪いテレビを叩いて直す並みに乱暴かつ理に適っていない事態なので、無理も無い話である。

 

「よし! 行くよ、皆!!」

 

「「「!!」」」

 

しかし、聖子が頭を押さえながらもそう言って車内へと戻るのを見て、伊代達もすぐに車内へと戻る。

 

「よっしゃあっ! 完全復活だ!! 飛ばしてくぜぇーっ!!」

 

そして、唯のそう言う叫びが木霊すると、クロムウェルは急発進!

 

殆ど飛び出す様に、廃屋の中から抜け出して行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び、IS-1と対峙している三式は………

 

攻撃能力の無くなった三式に、IS-1はゆっくりと近づいて行く。

 

「ねこにゃーさん! 如何するだっちゃ!?」

 

「対抗手段が無いなり!」

 

「…………」

 

ぴよたんとももがーの声が挙がる中、考え込む様な様子を見せるねこにゃー。

 

「………体当たりだ」

 

やがて、覚悟を決めた表情となってそう言い放つ。

 

「えっ!?」

 

「ええっ!?」

 

「IS-1に体当たりする!!」

 

驚くぴよたんとももがーに、ねこにゃーは重ねてそう言う。

 

「で、でも………」

 

「僕達だって大洗機甲部隊の一員だ! 折角リアルでも友達になれたのに………廃校で離れ離れなんてゴメンだよ!!」

 

「「!!」」

 

それを聞いて、ぴよたんとももがーもハッとする。

 

「………分かったっちゃ」

 

「こうなったら腹を括るなり!」

 

やがて、2人も覚悟を決めた表情でそう言い放つ。

 

「ありがとう、ぴよたんさん、ももがーさん………突撃ぃっ!!」

 

2人へ感謝を伝えると、ねこにゃーはそう叫んで車内へと引っ込む。

 

直後に、三式の履帯が雪を大きく跳ね上げながら回転し、IS-1へと突っ込んで行く!!

 

突如突っ込んで来た三式に面食らったかの様に、IS-1は主砲を発射!

 

しかし、咄嗟で狙いが甘かった為、砲弾は三式の砲塔天板を火花を散らして掠め、外れる。

 

「「「バンザーイッ!!」」」

 

ねこにゃー、ぴよたん、ももがーから万歳の叫びが挙がり、三式がIS-1に接近する。

 

IS-1は三式の突撃をかわそうと、左へとレバーを切る。

 

それは結果的に、三式に対し側面を晒してしまう事になった!

 

「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」

 

ねこにゃーの叫びと共に、三式はIS-1の右側面へとブチ当たる!!

 

凄まじい音が鳴り響き、三式とIS-1の装甲の破片が火花を散らして飛び散る!!

 

やがて、一瞬の間の後………

 

三式の砲塔上部から、撃破された事を示す白旗が上がった。

 

如何やら渾身の体当たりも、IS-1の装甲の前には通用しなかった様である………

 

「やら………れた?………」

 

白旗が上がった事を確認したねこにゃーが、ガックリと車長席へ凭れ掛かる。

 

「「…………」」

 

ぴよたんとももがーも苦い顔で沈黙していた。

 

一方、勝者となったIS-1は、撃破された三式を押し退ける様にして動き出す。

 

と、その直後!!

 

IS-1に榴弾と思われる砲弾が直撃!!

 

白い塗装が剥げて、焼け焦げた装甲面が増える。

 

「「「!?」」」

 

その砲撃に、ねこにゃー達が驚いていると………

 

「アリクイさんチーム………ありがとう」

 

聖子のそう言う言葉が通信回線に響き、クロムウェルが姿を現した!

 

「サンショウウオさんチーム………」

 

「ゴメンね、遅くなって………後は私達に任せて!」

 

そう聖子が言い放った瞬間!

 

クロムウェルはIS-1目掛けて突っ込んで行く!

 

IS-1は即座に、クロムウェルに向かって主砲を発射する!

 

「あらよっ!!」

 

だが、唯の掛け声が聞こえたかと思うと、クロムウェルはバッと右へと進路を変更!

 

IS-1の砲弾は、クロムウェルの横を擦り抜けて、廃村の廃屋へ命中。

 

砲弾が命中した廃屋が、音を立てて崩れる。

 

IS-1は一瞬驚いた様な様子を見せたが、すぐに主砲を旋回させてクロムウェルを追う。

 

「敵主砲、旋回中!」

 

「任せとけって!」

 

しかし、聖子がそう報告すると、唯はクロムウェルをスラローム移動させる!

 

IS-1はそんなクロムウェルを捉える事が出来ず、主砲を右往左往させる。

 

「今だよ! 後ろに回り込んで!!」

 

「おうっ!!」

 

そして、タイミングを見計らった聖子が、唯にそう指示を飛ばす。

 

クロムウェルは一気にIS-1の後方へと回り込もうとする。

 

IS-1はそうはさせないと言う様に、信地旋回を始める。

 

が、その瞬間!!

 

IS-1の右側の転輪が弾け飛び、履帯が千切れ飛んだ!!

 

如何やら、先程の三式の体当たりが効いていた様である。

 

「! チャンスだ!!」

 

「装填っ!!」

 

聖子がそう叫ぶ中、郁恵が主砲に徹甲弾を装填する!

 

IS-1の砲塔がクロムウェルを追う様に旋回する。

 

間に合うのか!?

 

「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!」

 

「お願い!」

 

唯も咆哮し、伊代が祈る様に両手を合わせる。

 

そして遂に………

 

クロムウェルはIS-1の後ろを取る!

 

「撃てぇっ!!」

 

「ハイッ!!」

 

号令一下、明菜が主砲の引き金を引いた!

 

ほぼ零距離から放たれたクロムウェルの徹甲弾は、IS-1のエンジン部に命中!

 

薄いエンジン排熱部の装甲を貫通し、エンジンを破壊する!

 

破壊されたエンジンが爆発し、IS-1から一際大きな爆炎と黒煙が上がる。

 

そして一瞬の間の後………

 

IS-1の砲塔上部から、撃破された事を示す白旗が上がるのだった。

 

「やったーっ!!」

 

歓声を挙げる聖子と顔を見合わせて笑みを浮かべる他のメンバー。

 

「ご、郷さん………」

 

とそこで、アリクイさんチームのねこにゃーから通信が送られてくる。

 

「あ、ねこにゃーさん」

 

「良かった………エンジン直ったんですね………僕達、役に立たなかったけど、郷さん達が敵を倒してくれたから………」

 

「それは違うよ、ねこにゃーさん」

 

ねこにゃーのその言葉を、聖子は即座に否定する。

 

「えっ?」

 

「ねこにゃーさん達が頑張ってくれたから、私達は如何にかする事が出来たんだよ。役に立たなかったなんて事、ないよ」

 

「郷さん………」

 

「なり~………」

 

「だっちゃ………」

 

聖子の心からの言葉に、ねこにゃー達は感動を覚える。

 

と、その時!!

 

廃村の中の方から、爆発音が聞こえて来た!!

 

「「「「「「「「!?」」」」」」」」

 

思わず、アリクイさんチームとサンショウウオさんチームのメンバーは、其々の座席のハッチを開けて、廃村の方を見やる。

 

そこには、戦車が撃破されたと思われる煙が上がっていた。

 

「! 誰かの戦車がやられたんだ!」

 

「フラッグ車を撃破出来たの!? それともまさか、西住総隊長達が!?」

 

「「「「「「…………」」」」」」

 

独特の緊張感が会場を包み込み、アリクイさんチームとサンショウウオさんチームのメンバーは、沈黙するのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廃村の中心部で爆発音が聞こえて来る少し前………

 

木々が生い茂る森林地帯では………

 

「そうらぁっ!!」

 

「クウッ!!」

 

ロケットで空を飛ぶデミトリの火炎放射から必死に逃げ回っている飛彗。

 

しかし、重傷判定を受けている為、戦闘服が拘束具となり、思う様に動けない。

 

「大したものだな。その状態でココまで逃げ切るとは」

 

そこで、空中に浮遊するデミトリが、飛彗を見下ろしながらそう言い放つ。

 

既に辺り一面は、デミトリが放った火炎で焼け野原状態であり、雪もすっかり溶けて無くなってしまっている。

 

「だが、コレで終わりだ………」

 

しかしそこで、デミトリは数本の燃料が入ったガラス瓶を取り出す。

 

「!?」

 

「焼け死ぬが良いっ!!」

 

飛彗が驚きを示した瞬間、デミトリはそのガラス瓶を全て投擲!

 

そして素早く、火炎放射を行った!

 

火炎はまだ空中に在ったガラス瓶へと浴びせられたかと思うと、中の燃料が爆発!

 

まるでナパーム弾の様に広範囲に広がる!

 

「!!………」

 

逃げる間も無く、飛彗の姿はその炎の中へと消える………

 

やがて地上に到達した炎は、辺り一面に広がり、その場を完全に火の海としてしまった。

 

「むう………やり過ぎたか? マズイな………」

 

戦闘服を着ているので死ぬ事は先ず無いが、流石に心配になるデミトリ。

 

と、その瞬間!!

 

火の海となっていた地上から、爆音と共に『何か』が炎を纏ったまま飛び出して来る!!

 

「!? 何っ!?」

 

デミトリが驚いていると、『何か』に纏わりついていた炎が掻き消え………

 

「今だ、飛彗!!」

 

「!!」

 

後部に7.62mm ZielGew256(r)を構えた飛彗を乗せた、白狼のツェンダップK800Wが現れる。

 

「! ベオウルフ! だが、空中ではコチラの方が有利だぞ!」

 

デミトリは一瞬驚きながらも、すぐに火炎放射器を構え、上昇しようとする。

 

だが、その時!!

 

パアンッ!と乾いた音が鳴り響き、デミトリが飛行用に背負っていたロケット弾の推進装置が、撃ち抜かれる!

 

「!? むおおっ!?」

 

バランスを崩し、失速するデミトリ。

 

「そこです!」

 

そんなデミトリの頭に向かって、7.62mm ZielGew256(r)を発砲する飛彗。

 

「!?」

 

放たれた弾丸は、狙いを過たず、デミトリの額に命中する!

 

「そら、オマケだ!!」

 

更にトドメだと言わんばかりに、白狼もカンプピストルからグレネードを見舞った!

 

「!? おわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

ヘッドショットに加えてグレネードの直撃を受けたデミトリは当然戦死判定を受け、そのまま地面へと墜落したのだった。

 

「よ、っと!」

 

それを尻目に、白狼はバイクを着地させる。

 

「ありがとう、白狼。お蔭で助かったよ」

 

「気にすんな」

 

「でも、まさかバイクごと炎の中に突っ込んで来るなんて思わなかったよ」

 

かなりの無茶をした白狼に、飛彗が意外そうにそう言う。

 

「今回はちょいと頑張らねえといけねえ理由があったからな………」

 

「そうだね………」

 

大洗女子学園廃校の件かと思う飛彗だったが、白狼が考えているのは別の事だった………

 

その瞬間に、廃村の中心の方から、爆発音が聞こえて来る。

 

「! ケリが着いたのか!?」

 

「や、やったのかな?」

 

どうなったのかと緊張した面持ちでアナウンスが流れるのを待つ白狼と飛彗だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

サンショウウオさんチームとアリクイさんチーム対IS-1。
飛彗+白狼VSデミトリの様子をお伝えしました。
次回はいよいよ弘樹とラスプーチンの決着。
そして、試合にもケリが着きます。
そして、あの人物達の子孫も正式に登場します。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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