ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第96話『スクールカーニバル・ウォーです!(男子校サイド・パート1)』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第96話『スクールカーニバル・ウォーです!(男子校サイド・パート1)』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少々のトラブルがありながらも………

 

無事に初日の大洗女子学園側の学園祭が終了した。

 

そして迎えた最終日………

 

大洗国際男子校側の学園祭………

 

いよいよ………

 

大洗機甲部隊による演劇の披露の時が近づいていた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗学園艦・大洗国際男子校敷地内………

 

『本日は大洗国際男子校の学園祭に御出で頂き、誠にありがとうございます。我々生徒一同は、来訪者の皆さんを心から歓迎いたします。是非、心行くまで楽しんで行って下さい』

 

女子学園側の時と同じ様に、昼花火の音が鳴り響く中、校内放送用のスピーカーから迫信の声が聞こえ、上空では航空ショーが行われている。

 

「うわあ~、やっぱり男子校の学園祭だけあって、何だか活気が違うねえ」

 

そんな来訪客で賑わう大洗国際男子校の敷地内に居た沙織が、人の波や男子生徒が出している出店や屋台を見ながらそう呟く。

 

「沙織さん、急いで。本番までにまだ打ち合わせしておかなきゃいけない事があるんだから」

 

と、そんな沙織に、みほがそう声を掛ける。

 

「ああ、ゴメンゴメン、みぽりん。今行くね」

 

沙織はそう謝りながら、みほ達と共に、劇を披露する場所である、大洗男子校の多目的ホールへと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗男子校の校舎内・多目的ホールの舞台にて………

 

「そっちを押さえてくれ!」

 

「おうよ!」

 

「コレは何処に置けば良いんだ?」

 

「コッチだ。それが終わったらコッチを手伝ってくれ」

 

舞台上では、整備部と工兵の面々が、セットの最終的な組み立てを行っている。

 

「え~と………では、私からは美しさを送ります」

 

「私は歌声を………」

 

舞台袖の方では、出演者達が台詞を確認している。

 

「遅れてすみません!」

 

とそこで、みほ達あんこうチームの面々が姿を見せる。

 

「総隊長殿、待ちかねたぞ」

 

「メインヒロインが遅れちゃ駄目でしょ」

 

みほの姿を見たエルヴィンとみどり子がそう言う。

 

「すみません」

 

「な~に、まだ時間は有るから大丈夫だって」

 

「舩坂くんの方はもうスタンバイしてくれてるから」

 

みほがそう謝ると、杏が気にするなと言う様にそう言い、柚子がそう言い、既に衣装を身に着け、パイプ椅子に座って台本を見やっている弘樹の方を見る。

 

「…………」

 

弘樹は真剣な顔で、台本の最終的な読み込みを行っている。

 

「…………」

 

そんな弘樹の顔に、みほは見惚れる。

 

「み~ぽりん。顔、真っ赤だよ」

 

「!? ふえっ!?」

 

そこで沙織にそう指摘され、みほは動揺を見せる。

 

「お熱いですね、うふふふふ」

 

「は、華さん! そういうのじゃないから!!」

 

続いて華がそう言って笑うと、みほは慌てて誤魔化す様に言う。

 

「ハイハ~イ、ラブコメはその辺にして、準備しちゃってね~」

 

「だから、違うんです~!」

 

杏の言葉にそう返しながらも、劇の準備に入るみほ達だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後………

 

直前のリハーサル・最終確認を終え、遂に劇は本番を迎える。

 

会場となっている多目的ホールの客席は、童話がモチーフとあってか、子連れの親子を中心に埋め尽くされている。

 

女子学園・男子校の生徒の姿も多数見受けられる。

 

皆、幕が開くのを今か今かと待ち兼ねている。

 

『本日は、大洗国際男子校の学園祭に御出で頂き、誠にありがとうございます』

 

と、遂に時間が訪れ、スピーカーを通して、ナレーション役の沙織から集まった観客に挨拶が送られる。

 

『大変長らくお持たせ致しました。コレより、大洗機甲部隊による『眠れる森の美女』をアレンジした演劇を開幕させて頂きます』

 

沙織がそう言うと、観客席から拍手が起こる。

 

『心行くまで楽しんで行って下さい。それでは………始まり、始まり』

 

そう沙織がナレーションすると、観客席の照明が落とされた。

 

『時は激動の大正………大洗の町に、とある華族の夫婦が居ました。夫婦は子宝に恵まれず、長い間、赤ちゃんの誕生を待ち望んでいました』

 

舞台上の幕が開き、スポットライトでその場面を現す絵画が照らされる。

 

『しかし、毎日大洗磯前神社に祈りを捧げた結果、とうとう御利益を賜り、1人の女の子が生まれました』

 

絵画が変わり、華族の夫妻が赤ん坊を抱き上げている絵画となる。

 

『夫妻は漸く恵まれた子宝に大変喜び、その日、親族一同と大洗の街の人々を屋敷に招き、盛大なお祝いを開催されました』

 

と、そう沙織がナレーションしたかと思うと、スポットライトが消え、多目的ホール内が完全に暗闇となる。

 

その暗闇の中で、黒子に扮した整備部の面々が一瞬にして、そのお祝い会を開いている華族夫妻の屋敷のセットを組み上げる。

 

そして、舞台の照明が点灯。

 

それと同時に、華族の親族や大洗の町の住人に扮した大洗機甲部隊の面々が舞台上に現れる。

 

「やあやあ、皆の衆」

 

「良く集まってくれた。礼を言う」

 

とそこで、華族夫妻………妻役の侯爵夫人役の杏と、旦那の侯爵役である迫信が姿を現す。

 

傍らには、生まれた赤ん坊の居る乳母車が在る。

 

「今宵の宴は我が子の誕生を祝うめでたい宴………」

 

「歌って、踊って、大いに祝い、陽気にやってくれ!」

 

「おめでとうございます! 侯爵様!」

 

「「「「「「「「「「「おめでとうございます!」」」」」」」」」」

 

迫信と杏がそう呼び掛けると、親族一同と大洗の住民達は一斉にお祝いの言葉を口にし、盛大な拍手を送った。

 

そしてそのまま、祝いの宴が開催される。

 

杏の言葉通り、集まった親族一同と大洗の住民達は、流れる陽気な音楽に合わせて、歌い舞い踊り、侯爵家の子供の誕生を祝う。

 

その様子を、迫信と杏は満足そうな表情で見ている。

 

「………侯爵様、奥方様」

 

「巫女の方々がご到着されました」

 

とそこで、迫信と杏の傍らに控えていた執事役の逞巳とメイド役の柚子がそう告げる。

 

「おー、来たかー」

 

「待ちわびたよ………」

 

杏と迫信がそう言ったかと思うと、舞台上に巫女の恰好をした12人の戦車チームの面々(カバさんチーム+紗希を除くウサギさんチーム+優花里+麻子+華)が現れる。

 

「侯爵様。侯爵夫人様。御機嫌よう」

 

「お子様の誕生と聞いて、参上致しました」

 

「お子様の誕生、おめでとうございます」

 

「おお、巫女の諸君。良く来てくれたね」

 

カエサル、エルヴィン、左衛門佐がそう言うと、迫信がそう返す。

 

「さあ、どうぞ。私達の娘だよ」

 

杏がそう言い、巫女達を乳母車の方へと促す。

 

「まあ!」

 

「何と可愛らしい!」

 

「お嬢様なのかしら!」

 

「まるで天使の様です!」

 

乳母車の中を覗き込ん梓、優希、あゆみ、優花里がそう声を挙げる。

 

「お嬢様に私達12人から1つずつ、幸運を祈って贈り物を差し上げます」

 

そしてあやがそう言うと、巫女達は赤ん坊に祝福の美徳の贈り物を送って行く。

 

「さあ、コレで私の贈り物は済んだぜよ。残りは、君の贈り物ぜよ」

 

やがて11人目であるおりょうの贈り物が終わり、いよいよ最後の12人目である華の番となる。

 

「ハイ。お嬢様、私からの贈り物は………」

 

と、華がそう言いかけた瞬間!

 

突如舞台上が暗くなり、雷のエフェクトと落雷の音が鳴り響き出す。

 

「アーッハッハッハッハッハッハッ!!」

 

そこでまるで特撮ものに出て来そうな悪の大幹部の様な高笑いと共に、呪術師の恰好をした桃が、スモークと共に舞台上に登場した。

 

「貴方は!? 悪の呪術師!?」

 

「おやおや? 随分と賑やかな事で………」

 

桂利奈がそう声を挙げると、桃は丁寧な口調でそう言う。

 

しかし、その様からは、慇懃無礼な雰囲気が伝わって来る。

 

「今宵の宴はとても華やかな様子………しかし………何故私には招待状が届かなかったのかしら?」

 

「誰が悪の呪術師を招待するか………」

 

桃の言葉に、麻子がそう言い返す。

 

「ほう? 成程………つまり私は………招かれざる客………と言う事か」

 

「申し訳ありません………貴方は賑やかな席は嫌いだとお伺いしていたものですから」

 

桃が不機嫌になった様な様子を見せると、杏がおっかなびっくりと言った様子で取り繕う様にそう言う。

 

(会長の演技力、何気に高いね………)

 

(割と何でも熟せるからね………)

 

と、そんな杏の様子を見ていた、大洗の町の住人に扮していたナカジマとホシノがそう言い合う。

 

「そんな事はございませんわ。その証拠に………私からも、お嬢様に心からの贈り物をお送りしましょう」

 

そこで桃が、不気味な笑みを浮かべてそう言い放つ。

 

(けど、それ以上にノリノリなのが………)

 

(河嶋さんだね………)

 

そして、そんな杏以上に色んな意味で高い演技力を見せている桃を見て、屋敷の警備兵に扮している正義と竜真がそう言い合う。

 

「良く聞くが良い、皆の者! お嬢様はその美しさと気高さと優しさで人々から愛され、幸せな毎日を送る事でしょう………しかぁしっ!!」

 

クワァッ!と目を見開く桃。

 

その様子に、観客席の一部の子供が泣き始めた。

 

明らかにやり過ぎであるが、ノリにノッて居る桃は気づかない。

 

「17歳の誕生日までに、糸車の針で指を刺して………死ぬっ!!」

 

桃がそう言い放った瞬間!

 

乳母車に呪いが掛かった様なエフェクトが掛かり、赤ん坊の泣き声が響く。

 

「ああっ!? 何て事!?」

 

「その者を捕らえよっ!!」

 

杏が泣きながら乳母車に擦り寄り、迫信がそう命じると、警備兵役の男子が桃を取り囲む。

 

「アーッハッハッハッハッ!! 貴様ら如きに私を捕らえる事など出来んわ! アーッハッハッハッハッ!!」

 

しかし、桃がそう言い放つと、その身体は緑色の不気味な炎に包まれる様なエフェクトが掛かり、高笑いだけを残して煙の様に消えてしまう。

 

「う、ううう………」

 

「誰か………誰か娘を助けてくれる者はいないのか?」

 

乳母車に擦り寄ったまま泣く杏と、集まっている一同にそう呼び掛ける迫信。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

だが、集まっている者達には何も出来ず、只々沈黙するばかりである。

 

「侯爵様。まだ私の贈り物が残っております」

 

するとそこで、まだ贈り物をしていなかった華が、迫信にそう言った。

 

「おおっ! あの呪術師の呪いを解いてくれるのか!?」

 

「いえ………残念ながら、この呪いの力は強過ぎて、私では解く事は出来ません………」

 

期待する様な声でそう言う迫信だったが、華は申し訳無さそうにそう返す。

 

「そんな………」

 

「ですが、内容を修正する事は出来ます」

 

杏が絶望の表情を見せるが、華はそう言葉を続けた。

 

「如何言う事かね?」

 

「………小さなお嬢様。私からの贈り物は、もし悪い呪術師の言う通り、糸車の針で指を刺しても、一筋の希望が残る贈り物を………」

 

迫信がそう尋ねる中、華は贈り物を捧げ始める。

 

「もし糸車の針で指を刺しても、死ぬのではなく、ちょっとの間、深い深~い眠りにつくだけ………やがてお嬢様の事を心から愛する人が現れ、その人の口付けで目を覚ますのです」

 

華がそう言い放つと、乳母車に光り輝くエフェクトが掛かった。

 

そしてそこで、一旦舞台の幕が閉じられる………

 

『呪術師の呪いを恐れた侯爵は、陛下にお願いし、そして町の住人達の協力を取り付け、町中の糸車を燃やしてしまいます』

 

沙織のナレーションが響き、幕が再び開いたかと思うと、山の様に積まれた糸車に火が掛けられ、燃え上がる絵画がスポットライトで照らされる。

 

『しかし、まだ安心は出来ません。何故なら、呪いを掛けたのはあの恐ろしい呪術師なのですから。そこで12人の巫女達は、呪術師の目を欺く為に、お嬢様を自分達の大洗磯前神社へと匿います』

 

暗転すると、今度は大洗磯前神社の絵画が映し出される。

 

『そしてそのまま17年の月日が流れ………いよいよお嬢様の17歳の誕生日の日………そして呪いが効力を失う日が来ました』

 

またも舞台の幕が下りたかと思うと………

 

スピーカーから『陸軍分列行進曲』が流れ始めた。

 

そして幕が上がり、森の奥深くの様なセットが組まれている舞台上に、陸軍軍人に扮した一団が、行進と共に現れる。

 

「ぜんたーい、止まれ!」

 

と、先頭に居た陸軍少尉に扮した隊長役の弘樹がそう号令を掛けると、陸軍軍人に扮した一同はピタリと止まる。

 

「気を付けっ!」

 

弘樹が更にそう号令を掛けると、一同は姿勢を正す。

 

「では本日の訓練を開始する! 先ずは野営陣地の設置だ! 総員、作業開始っ!!」

 

「「「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」」」

 

そしてその号令で、陸軍軍人一同達は、野営陣地設営の演技を始める。

 

「………フウ」

 

そんな陸軍軍人達から少し離れると、溜息を吐く弘樹。

 

「隊長殿、如何致しました?」

 

とそこで、副隊長役の勇武がそう声を掛ける。

 

「いや………最近同じ夢ばかりを見ていてな。それが如何にも頭から離れんのだ」

 

「夢?」

 

「ああ………とても美しい………まるで天女の様な女性の夢だ」

 

遠くを見る様な様子を見せながら、弘樹は勇武にそう言う。

 

その演技にはまだ拙い部分も多いが、逆にそれが無骨な職業軍人と言うキャラクターを演出していた。

 

「へえ、少尉殿がその様な夢を見るとは………意外ですね」

 

「………何がだ?」

 

と、勇武が茶化すかの様にそう言うと、弘樹は不機嫌そうな表情を見せる。

 

「!? あ、いえ、その………! ああ! 定時連絡の時間だ! 失礼します!!」

 

途端に勇武は大慌てで、逃げる様に弘樹の前から離れて行った。

 

「全く………ん?」

 

弘樹が呆れる様な様子を見せた瞬間、その耳に女性の歌声らしきモノが聞こえて来る。

 

「歌?………」

 

周りを見回す弘樹だが、その歌を歌っている主らしき人物は確認出来ない。

 

他の者達も、聞こえていないのか作業に没頭している。

 

「…………」

 

だが弘樹は、その歌声が如何にも気に掛かり、そのまま誘われる様に歌声が聞こえて来る森の奥へと足を踏み入れて行った………

 

そこで舞台が暗転。

 

暗闇の中で弘樹だけがスポットライトで照らされ、勇武達が組み替えられたセットと共に姿を消す。

 

そしてセットの組み換えが終わると共に明かりが再び点くと、場面は森の奥深くの花畑の中のセットとなっていた。

 

「~~~♪~~~♪」

 

その花畑の中心では、1人の女性が歌を歌っている。

 

「! 彼女は!?………」

 

『木陰からその女性を見ていた少尉は、驚きを露わにしました。何故なら、その女性こそが………少尉が夢に見ていた女性だったからです』

 

沙織のそう言うナレーションが響く中、女性………

 

巫女達によって匿われ、美しく成長した侯爵の娘・みほは、美しい歌声を披露し続けていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

遂に大洗機甲部隊による、アレンジの入った『眠れる森の美女』の演劇が開始です。
いや~、『舞台を演じている風景』という感じで小説を書くのは初めての試みだったので、中々大変です。
もし、気になる点・おかしな点がございましたら、ご指摘の方をお願い致します。

さて、次回はいよいよ盛り上がるシーン。
『あの人』が再び登場したりして、大ドタバタ劇になります。
お楽しみに。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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