北極と南極は氷に覆われており、大陸は七大陸に分かれ、海は陸地の5倍の面積があった。
探査機機から送られてくるデーターは全て予想通りの数値を示しており、人間が住める事を意味していた。
一つだけ予想とは違うデーターが送られて来て、みんなが驚いた。
知的生命体の存在を示しているデーターで、既に高度な文明が築かれていた。
画像を分析してみると、人間によく似ており、強いて言えば耳の形が少し長いくらいだった。
新天地を探しに来た乗組員達は、意気消沈を隠せなかった。
地球連合の規則で、知的生命体のいる惑星には大規模な移住が許されてないからで、この惑星がそれに当たっていたからだ。
衛星軌道上から数日かけてこの知的生命体を調べると、更に驚くべき事実が発見された。
第1に、魔法を使っており、それによって文明が成り立っている事。
第2に、ドラゴンを移動手段として、空を自由に飛んでいる事。
第3に、種族戦争をしており、多くの生命が失われている事。
これからの予定を決めるために連日会議が開かれていて、地球にすぐに帰るか、あるいはここにいて、この知的生命体を調べるか意見が分かれていた。
最終的に乗組員達は地表に降りて、この知的生命体にコンタクトを取ることに決め、害が無いようだったら数年間、この惑星を調べることにした。
特に、ドラゴンと魔法のメカニズムを知りたがった。
数年後、母船は地球への帰途についたが、数名この惑星に残る決意を人達がいた。
この惑星で結婚して子供が生まれた夫婦と、高齢者の女性の3人だった。
再び母船がこの惑星に来ることは保証されていないので、彼らはこの地で骨を埋める覚悟を決めていた。
それから十数年後の話。
エルフの惑星で生まれたナオミ
惑星カーンに残った3人の地球人は、森の近くの海岸に基地を作った。
衛星軌道には既に母船が去った後だったけれど、高感度の惑星監視衛星は残されていた。
生まれた子供はナオミと名付けられた。ナオミは魔法が使える事が分かっていたので、地球に帰る訳には行かなかった。何故なら、研究の対象にされ、自由を奪われるからだ。
見世物にされるからね。
すくすくと順調に育ったナオミが13歳になったので、前から決めていたサーシャリー魔法学園に明日から入学する事になった。
ナオミは、幼少の頃から英才教育を受け、あらゆる知識を両親から叩き込まれた。母親が軍隊出身者なので、格闘技も同じく教えられている。
どんな格闘技なんだろうか?
もちろん、エルフの世界に住むのでエルフ語を始め、この惑星で生き抜く為の教育も教えられた。
「お母さん、大丈夫だって。
マリネラ教授と会って、とても優しい人だと分かったから」
「母さんもそう思う。
親だからね、心配するのが親の仕事。
ただね、養子に出さなくてはならないので、母さんは寂しいだけ」
「また、その話しているよ母さん。
この場合、子供には何も心配しなくてもいいからね、って言うんだよ」
「そうだね。逆だよね。
ナオミがお母さんの心配をしているね」
「学期の終わりになったら母さんとお父さん、それにジェシカおばあちゃんに会いに来るからね。
ところで、お父さんは工房で何をしているの?」
「うふふ、それはお父さんから聞いてよ。
あ、出来たみたいだよ」
工房からお父さんが、何か手に持って2人の所に来た。
「出来たよ。出来た。
これはブレスレット型のコンピュータだ。
見かけは木のブレスレットだけれども、軽量の合金で出来ていてとても丈夫だ。
さらにだよ、太陽光パネル付きで、防水、耐ショックにもOKだ。
これをナオミにプレゼントするよ」
「お父さんありがとう。
それで、このコンピュータには何が組み込まれているの?」
「それは、ガイダンスを作ってあるからお楽しみだね」
そう言うとお父さんは、ブレスレット型のコンピュータをナオミに渡した。
「あ、お父さんのイジワル。
教えてくれてもいいと思うんだけれど?」
「あーあ、後で見る楽しみがなくなっちゃうよ。
いいのかい?
じゃ、一つだけ。
物質探査機能。半径3メートル内のあらゆる物質を表示する事が出来る。
凄いだろう」
お父さんは威張った顔をしている。
逆に、ナオミは目が、点になっていた。
「お父さん、それって、森の中で宝石を探せって事?」
「それは使い方次第だね。
エルフとダークエルフが戦争をしているので予断は許されない。
もしも毒などの危険物質があると、あらかじめ分かると言う事」
「お父さん、ありがとう。
でも、私を毒殺って、ありえないと思うんだけれど?」
ナオミはまだ、半信半疑だ。
「何が起こるのか誰にも分からないだろ。
エルフの歴史を調べたら、毒殺されたエルフは二桁はいる。
ま、念には念を、と言う事だね」
「お父さん、心配性!
大丈夫だって。森の中でも安全な所に行くんだから。
お母さんとお父さん、心配しないで。
私ちゃんとやっていきます。
それに、来年になったら念願のドラゴンに乗ってここに来るわ。
今から楽しみ」
「それは母さんも楽しみ。
どんなドラゴンと感応するかしらね」
「ドラゴンとはテレパシーで会話が出来るので、それも楽しみにしている。
でも、ドラゴンが戦争に使われるのが可哀想。
自由になれないのかしら?」
ナオミはドラゴンが幼少の頃より気に入っていて、将来はドラゴンに乗りたい夢を抱いていた。
お父さんが、真面目な目でナオミに言った。
「エルフの長い歴史で、戦争が繰り返し行われてきたのは残念な事で、戦争が完全に終わらない限りは、ドラゴンは自由になれないと思うよ。
残念だけれども、現実的には無理に近いな。
ドラゴンを制している方が有利になっているからね」
「うん、それは分かっている。
それに、もしかしたら私も戦争に参加する可能性があるもんね」
「それは否定できない。
この惑星で生きるには、どうしてもどちらかの側に付かないと、孤独になってしまう。
いずれは地球人はナオミ1人になってしまうからね」
「お父さん、全部分かっている。それは何度も話した事でしょう。
だから、養子になってエルフの世界の住人になるのよ 」
夜中まで家族の会話が続いた。
明日はいよいよナオミがエルフの一員となる日だからで、なおさらナオミの両親は心配で仕方なかった。