放課後になった。
スリーとスースラムは急いで川に降りていった。
すでに大勢のクリスタル区の生徒たちが集まって、ニンフルとナオミも見学に来ている。
ナオミは初めて見る事ばかりで、とても興奮している。
クリスタル区のリーダーは最上級生のナーニアだ。
女性のリーダーで、彼女の得意技はジャンプスマッシュ。
敵ゴール直前でジャンプして、強烈なスマッシュを浴びせる。
イルカのマッシューはジャンプが得意で、ジャンピと同じくらいの高さまでジャンプができる。
クリスタル区の選手の服装は、真紅が基調で白青緑でまとめられていた。
カッコいいね。ユニフォームはこれくらいのレベルでないとね。
「もうすぐ始めるよ。
最初にゴールキーパーを決めるので、希望する人はゴールまで行って」
スースラムも入れて、3人がゴール前に集まった。
スースラムは少し緊張した面持ちをしている。
それを見たニンフルとナオミが、スースラムに応援をの声援を大きな声でしている。
「スースラム頑張れ〜」
「スースラム、がんばってー」
スースラムは少し照れながら、手を振って応えている。
緊張が少し溶けたようだ。
女の子2人の応援はさすがに効くね。
「それでは始めるよ。
それぞれ10回行なって、最も守りの硬い人を今回のゴールキーパーにするから。
それで、二番目は補欠としてベンチに入ってもらう。
それでは始め」
最初は最上級生のダンダダだ。
去年のゴールキーパーである彼が本命と噂されていた。
彼は背が高く手足が長いので、守備範囲が広い。
今回もほとんどのボールを受け止めるか、はじき返していた。
2回ミスをした。
2人目は、今年14歳になるルールルだ。
唯一の女性だったけれど、4回ミスをした。
最後はスースラムだ。
7回目までミスがなかったので、もしかしてと誰もが思い始めていた。
あと1回ミスがなければダンダダと並ぶ。
緊張がスースラムから感じられた。
頑張れよスースラム。ナオミが応援しているよ。
あ、ニンフルもね。
今度はケラースンがボールを持っている。一直線でゴールキーパーに突き進んだと思うといきなり潜った。
次の瞬間右側に浮かび上がり、ゴールの右側ギリギリにボールを投げた。
スースラムは左側と読んでいたらしく、手も足も出なかった。
8回目はあっさりと入れられてしまった。
ん〜〜、疲れかな?
次はムーンムーンだ。
彼は最初から潜ってゴール向かっている。
ゴール直前で浮かび上がり左に向きを変え、左のコーナーにボールを投げると誰もが思ったら、イルカの尻尾にボールを落とし、イルカが右側の方にボールを叩いた。
スースラムは左に来ると思っていたので、なすすべもなくあっさりとボールはゴールの中に入っていった。
これは限界に近いかな?
最後はリーダーのナーニアだ。
彼女はゴールキーパーにモースピードで突き進み、直前に高くジャンプして、右側のゴール手前にボールを投げた。ボールは水面を跳ねて見事に右上のコーナーに決まった。ボールの動きが複雑だったので、スースラムは翻弄されていた。
これで3回のミスをした事になる。
でも、スースラムはついに補欠となって、夢にまで見た真紅のユニホームを着ることができた。
お、それでもベンチ入りを果たしたじゃないか。おめでとうスースラム。
「やったー。補欠でもあのユニホームが着れるんだ」
遠くから見ていたニンフルとナオミは、スースラムが補欠になったのでジャンプしながら喜んでいる。
やっぱり、ナオミの応援が効いたのかな?
さて、今度はスリーだ。
「向こうに見える旗を一回りしてここまで帰ってくる。
途中にある障害物をうまく避けるように。
速い方がいいけれど、他の要素も見てから決める。そのつもりで。
用意、スタート」
今回は多くの生徒たちががいる。50人は下らないので競争する方は大変だ。
それでも、速いエルフはスピードを上げて行って先頭集団を形成していた。
突然障害物が現れた。
前方の川の下から、何やら棒の様な物が出てきた。
縫うようにして、イルカが泳ぐしかない。
「きゃー。スリー危ないー!」
ナオミが思わず口にした。
スリーはぶつかりそうになりながらも、巧みに棒の林をすり抜けて行った。
すでにスリーは5番手につけている。
もうすぐ旗をUターンする。
ほとんどの選手がスピードを落としているのに対して、スリーだけは依然としてモースピードで旗に近づいて行った。
そのままでは行き過ぎるか、あるいはイルカから振り落とされるかのどちらかだった。
誰もそう思って瞬間に、スリーはイルカと共に潜った。
潜ったと思ったら、すでにUターンを完了していて、こちらに向かっている。
見ている人達から歓声が沸き起こった。
「見たあれ。すごい技ね」
「誰、あの子?」
「グランの息子よ」
「へー、血は争えないね」
ニンフルもスリーを応援している。
日頃は口喧嘩をしていても、やはり双子の兄妹だ。
「スリー頑張れ〜」
「スリー、行け〜」
ナオミもスースラムも応援をしている。
体の小さなスースラムが、大きな選手を圧倒している。
スリーが一番手だ。
最後の障害が現れた。
今度は横長になっている。
潜るか、ジャンプするしかない。
スリーは、猛スピードで障害物に突っ込んで行った。
ぶつかる直前に、ジャンピの背中に腹ばいになって潜ったと思ったら、高くジャンプをして、軽く障害物を超えて行った。
さすがスリー。
ところが、スリーの姿が無く、ジャンピだけだった。
スリーはジャンピから振り落とされて、川にプカプカと浮いていた。
障害物に、スリーが当たったんだとばかり見ていた人達は思った。
え、え、どうしちゃったの?
「スリー惜しかったね。もう少しでゴールだったのに」
ニンフルが本当に悔しそうに言った。
スリーは、キツネにつままれた顔をしている。
「僕、なんで落ちたのか分からないんだ。
突然、手の力が無くなったと思ったら、振り落とされていた。
今までこんなことなかったのに」
「緊張していたからだよ。
でも頑張ったよね。最後は1番だったもの」
「これでは選手にはなれないよ。
ゴールできなかったもの」
「来年もあるからさ、頑張って」
「そうよ。私も応援をする」
ナオミも言ってくれたけれど、スリーの気持ちは晴れなかった。
「みんな聞いて。
結果を発表するよ。
今回も正規が6名で補欠を2名を選んだ。
まずは正規からね。
ケラースン、ムーンムーン、エスラ、コリーン、アーメイド、そして私の6名。
補欠。
バークラム、スリー。以上。
聞いている人達からはどよめきが起きた。
ゴールできなかったスリーが補欠として選ばれたからだ。
スリーはまたしても、キツネにつままれた顔をした。
ゴールできると思ったらできなかったり、選ばれないと思ったら選ばれたり。
こりゃ、不思議な出来事で!
「何かよくわかんないけど。
や〜っほー!」
スリーはジャンプしながら大喜びしている。
ニンフルとナオミ、そしてスースラムも共に喜んでくれた。
それを遠くで見ていたエルフがいた。
彼が喜んでいる姿を、舌打ちしながらジッと睨み続けていた。
誰だよこのエルフ。なんか怪しくね???