気の向くまま、風の向くままに   作:かりびとさま

5 / 5
賢者と賢者

はじめの印象が大事。そうはいうものの、どうすればいいんだろうか?あと少しで妖怪の賢者が来る。うーむ。まあ、大丈夫だろう。なんとかなるさ。おっと、そうこうしているうちにもうすぐだね。

 

 

「それで、橙。私に来ているお客様はだれかしら?」

 

 

「えっと、風見幽香さんと…あっ、ここで待ってもらっています」

 

 

「あら、幽香。何の用かし、ら…」

 

 

硬直。それに続いて藍も入ってきた。どうやら橙は何か用事があるようで、自分の部屋に戻ると言っていた。

 

 

「紫様、幽香がどうかしたのです、か…」

 

 

またもや硬直。目の前の二人が不思議がっている。そして数瞬後、二人で同じことを聞いた。

 

 

「幽香、さん?隣にいるのは?」

 

 

すると幽香が頬をほんのりと朱く染めながら質問に答えた。

 

 

「二人共何をそんなに驚いているのかしら?そんなもの決まっているじゃない。私の最愛の夫よ」

 

 

「ははは、最愛だなんて嬉しいよ、幽香。僕はやっぱり幸せ者だよ」

 

 

「うふふ、こっちも幸せよ。あなたという人に逢えたのは、きっと運命だったのね」

 

 

「ああ、そうだとも。きっと如何なる運命でも、きっと僕たちは逢っているだろう」

 

 

二人共驚愕した。聞きたい事が山ほどあるが、一番最初に聞きたいものはやはり譲れなかった。

 

 

「幽香」

 

 

 

「なにかしら?」

 

 

 

「あなた、結婚していたの?」

 

 

 

「ええ。ざっと1600年程前かしら?」

 

 

更に驚愕。1600年前からというと、まだ私達は生まれてすらいないではないか。そしてここまできてから気付く。

 

ーーー自己紹介をしていない。初対面の人に。しかもあろうことか礼儀とか関係なく声を荒げてしまった。これはさすがに失礼だな、と思い返してみるが…

 

 

「それにしても、僕達が出会ってから随分経つんだね」

 

 

「そうね…でもあなたとだったらいつまでも過ごしていける気がするわ」

 

 

「ああ、僕もだよ」

 

 

当の本人達は気にしてすらいないようであった。しかし年齢の割には、というと変な気がするが、二人共まだまだお熱いようである。恋している、というよりはやはり少し落ち着いた感じの愛し合っている、というのが似合っている。

 

 

しかしこのままだといつまでたっても話が進まない気がしたので、紫と藍は自分達から話を進めることにした。

 

 

「えっと…あらためまして、はじめまして。この幻想郷の管理をしている、八雲紫です」

 

 

「その式神の、八雲藍だ」

 

 

「ああ、すまない。まだ自己紹介をしていなかったね。僕の名前はマーリン。しがない魔法使いさ」

 

 

すると紫が笑顔のまま硬直した。瞬間、幽香の下に時空の狭間ができた。そして紫も自分でそれを作り、中に消えていった。残されたのは、二人。

 

 

「ん?いなくなったみたいだね」

 

 

 

「あー、その、なんだ。うちの主人が申し訳ない…」

 

 

 

「なに、大丈夫さ。見たところ、君は九尾の狐かな?」

 

 

 

「ああ、そうだ。それがどうかしたのか?」

 

 

 

「いや、僕の知っている九尾の狐とはちがうなぁ、と思ってね」

 

 

 

「おお、私以外にも見たことがあるのか!一度も私と同じような者を見たことがなかったのでな、少し気になっていたんだ」

 

 

 

「いや、本当に同じ種族なのか疑わしくなるほど似ていないんだけどね」

 

 

 

「そんなに変わっているのか?」

 

 

 

「うん、なにせ傘を武器にしたりするしね。何よりテンションが違う」

 

 

 

「そ、そうか…そんなに変わっているのか…」

 

 

 

「名前は有名だけどね。多分一度は聞いたことがあると思うよ。彼女の名前は、玉藻の前。恐らく妖怪の中でもトップクラスで有名なんじゃないかな?」

 

 

「!?」

 

 

正直言って、お茶を吹き出しそうになった。玉藻の前といえば、多分妖狐の中で一番有名だろう。私でも見たことがないのに知りあいということは、この男、わりとすごい人なんじゃないなかろうか。いや、幽香と結婚している時点でそれはそうなのだが。

 

 

「大丈夫かい?」

 

 

「あ、ああ。すまない。見苦しい所を見せた」

 

 

「いや、大丈夫さ。それにしても、おそいねぇ…」

 

 

「そうだな…」

 

 

と言った直後に、何やら興奮した様子の紫が戻ってきた。幽香もしれっとマーリンの横に座っていた。

 

 

「お帰り。打ち合わせは終わったのかい?」

 

 

「は、はい!えっと、それで、どうでしょうか、この幻想郷は!」

 

 

藍は驚いた。自分の主がここまで興奮しているのは見たことがない。

 

 

「うん、とてもいい世界だと思うよ。文句無しでね」

 

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 

 

二人が会話し、幽香がそれを見ながらお茶を飲んでいるなか、藍だけが取り残されていた。

 

 

(なぜ紫様がここまで興奮しているのだ?いや、そもそも目の前にいるマーリンとやらは何をしにきたのだ?うーむ、分からない事か多すぎる…)

 

 

こうした中、時間は過ぎていった。

 

 

それにしても、ここまで喜んでくれるとは思わなかったね。普通に挨拶もできたしね。それにしても、何か忘れているような…

 

 

本題は引っ越しの件だけれど、まあ、大丈夫でしょう。マーリンがとても嬉しそうにしているしね。それにしても、やっぱり今日もマーリンは魅力的ね。ずっと眺めていられるわ…

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告