まだ見ぬ美少女を求めて   作:マリア

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第四話 劉和の持論

 あの後、李典と夜通し男のロマンについて語り合った。

 絡繰人形にドリルを装備したらどうかとか、むしろ単発で撃つ螺旋槍とかどうよとか、自動で気弾を放って迎撃するビット兵器とかありじゃね、とか。

 ほとんどのアイデアは実用できそうになかったけど、個人的には凄く満足できる話し合いだったよ。

 また、前世の記憶からカメラや家電製品などとにかく便利なものを教えてみれば、幾つかは実用できそうだとありがたい返事を貰えた。

 フフフ……カメラが手に入った暁には、関羽を始めとした様々な美少女達を写真に──

 

「集中力が乱れているぞ、劉和!」

 

「す、すみません、師匠!」

 

 厳しい叱咤で我に返り、改めて私は両掌の間に意識を集中していく。

 現在、私は師匠監修の気の講座を受けているところだ。

 と言っても、師匠も感覚で気を使っているようなので、主に師匠がしていた修行をなぞっているだけだけど。

 身体を巡る気を手繰り寄せ、左右の掌から出るように動かす。

 一度、師匠の力で体外に気を放出して貰ったからか、今までとは雲泥の差でやりやすさを感じる。感じるんだけども。こ、これは思った以上にきつい……!

 額に脂汗を滲ませながら、私はただひたすらに湯気のように溢れる気を固めていく。

 

「よし、いいぞ。才能があるな、劉和は」

 

 感心した師匠の呟きを尻目に、歯を食いしばって気を凝縮していく私。

 いいぞ、いいぞ……もう少し、もう少しで創れる……よし、小さいけどできた!

 米粒ほどに小さな気弾。成果は驚くほどしょぼいが、零から一になったと思えば、それだけで私としては満足のできだ。

 つい満面の笑みを浮かべて気が緩んでしまい、気弾の制御が疎かになる。

 

「あっ!」

 

「油断したな」

 

「面目ないです……」

 

「まあ、初めてにしては上出来だろう」

 

 ふっと微笑を零した師匠を見て、私は嬉しさと師匠のカッコイイ笑顔に頬を緩ませた。

 あーもう。師匠カッコよすぎ。腕を組んで凛々しい顔で口角を上げるとか、どんだけ私の心を擽るんですか!

 ……まあ、今のような態度にしてくれって望んだのは私なんだけど。師弟関係と言ったら、カッコイイ師匠はお約束でしょ!

 幸いな事に、師匠の性格も寡黙気味と見事に需要とマッチしていたので、私の願いは滞りなく叶ったというわけだ。

 お姉様系師匠も捨て難かったんだけどね。妖しい笑みで手取り足取り私を指導するという感じで。試しに師匠に頼んでみたら、顔を赤面させて勢いよく断られたしなぁ。残念だけど、これはまたの機会にしよう。

 と、話が逸れた。

 

「じゃあ、次は私が教えます」

 

「わかった。……コホン。では、よろしくお願いします、師匠(・・)

 

「任せなさい、楽進(・・)!」

 

 居住まいを正した師匠──楽進へと、私は頷く。

 今までは、楽進が私に教えていた。つまり、楽進が師匠で、私が弟子という関係だった。

 しかし、今はその関係が逆になる。という事で、今度は私が楽進に敬われるというわけだ。

 ……うん。正直、誰かに師匠と言われたかっただけです。楽進に教えるからちょうどいいと思い、私を師匠呼びするように頼み込んだのだ。呆気なく了承してくれたけど、ごめん楽進。ただ、私は不純な動機で師匠呼びを強請っただけなんです。真剣な目で頷いてくれた楽進の純粋さが辛かったなぁ。

 と、いけないいけない。無駄に考えが脱線するのは私の悪い癖だ。まあ、直せるとは思えないし、直そうとも思わないけど。

 

 それから暫く、楽進と私は交互に気の講座を開いていった。

 私の方はゴルフボールほどの気弾を創れるようになり、対する楽進の方はと言うと──

 

「ふっ! はっ! せいっ!」

 

 飛び跳ねた楽進は、空中(・・)で更に跳ねる。不規則な軌道を描いて空を駆けていき、やがて縦に回転しながら軽やかに着地。

 先ほどまで楽進がいた蒼天には、煌びやかな気の残滓が舞っていた。

 ……そう。前世の記憶持ちという私に習ったせいなのか、あるいは元々そのような素質があったのか。

 私が前世の漫画の修行を教えるだけで、楽進は空中に気の足場を創る事に成功したのだ。

 今は数回しか創れず、また失敗する可能性も高いようだけど、それも慣れれば思う存分に気を固められるとか。

 うん。楽進強くなりすぎ! いやまぁ、いつかはこうなって欲しいなぁ、と漠然とした思いは抱えていたけども。まさか初日からこんなぶっ飛んだ挙動を描けるとは思わないよ。それに、私が物申したいのは楽進だけじゃないんだよね……

 

「はあっ!」

 

 ある方法に視線を転じた先で、青龍刀に気を纏わせた関羽が気合い一閃。

 地面に斬撃の跡が走り、それは青龍刀の大きさより長い亀裂だ。

 関羽も私から気を習った結果、なんと武器の射程距離を伸ばしてしまったのだ。

 残心を終えた後、関羽は私の方を振り向いて満足げに微笑む。

 

「どうだ、劉和。中々様になってきただろ?」

 

「……ああ、うん。ソウダネー」

 

 相変わらず、この世界の武闘派女性達の才能は末恐ろしい。

 私が何年もかけて編み出した技を、一日で真似されちゃうんだもん。はぁ……これで内面も外面も良いとか、本当に完璧超人だよなぁ、関羽達って。

 内心でボヤいていると、遠くから一人の少女が駆け寄ってくるのを見つける。

 

「盟友ー!」

 

「おお、盟友じゃないか!」

 

 私の元にたどり着いた少女とハイタッチを交わし、握手をして微笑み合う。

 そんな私達のやり取りを見て、楽進は酷く驚いた様子で目を瞬かせ。

 

「ず、随分と仲良くなったんだな」

 

「もちろんや! ウチと陽は永遠の友情を交わし合ったんやで!」

 

「そうそう。私と真桜は親友になったのだ!」

 

 イエーイ、ともう一度少女──真桜とハイタッチする。

 昨日、真桜とロマンを語り合った時。自然と私達の間には絆が育まれ、真名を交換するのはもはや自然の摂理と言うべきになった。

 いやぁ、本当に真桜には頭が上がらないよ。真桜の独創的な発想力のお蔭で、私も前世知識を交えて更に理解が深まったし。正直、真桜との出会いが今生で一番の幸運と言っても過言ではない。

 まあ、その代償に今は凄く眠いんだけど。

 

「せや! ウチは陽に見て欲しい物があるんや」

 

「お、どれどれ?」

 

「ふふん。見て驚くんやないで? ジャジャーン、これや!」

 

 ドヤ顔で真桜が取り出したのは、一見して普通の木の筒だ。

 片方の面にはレバーのような物が着いており……待って。これってもしかして!?

 目を見開いた私に気が付いたのだろう。誇らしげに笑った真桜が気の筒を楽進に向ける。

 

「いくで!」

 

「何をするつもり──きゃっ!」

 

 真桜がレバーを押した瞬間、筒から勢いよく水が飛び出し、訝しげに眉を寄せていた楽進の顔面に着弾。

 可愛らしい悲鳴を上げた楽進にほっこりしつつ、私は予想通りの考えに感嘆の息を漏らす。

 やっぱり、あれは昨日私が軽く教えたやつだ。筒の中に弾を込めて、トリガーを引いて打ち出す前世の兵器──銃。

 もちろん、そこまで深く教えたつもりはない。筒から物を打ち出せば、色々と面白くない? と、私は気弾を使ったビット兵器の参考になると思って言ったんだけど。まさか、昨日の今日で銃のような物を創るとは思っていなかった。

 そう。真桜が創ったのは、水鉄砲(・・)。まがりにも、銃の名前がつけられている玩具だ。

 改めて、真桜の発明家としての能力は高いなぁ。この調子なら、私が欲しいカメラも実現できるかも!

 ……火縄銃とかが創られる可能性は、考えない事にした。ま、まあ。そうポンポンと恐ろしい現代兵器ができるわけないよね! ここって古代中国に似たナニカだし!

 胸中の葛藤はおくびにも出さずに、私は手を叩いて真桜の事を賞賛する。

 

「凄いよ、真桜! まさか、たった一日でこれを創るとは思ってなかった」

 

「まあ、その分ウチは寝不足なんやけどな」

 

 確かに、よく見ると真桜の目の下にはクマができていた。

 若干眠たそうに目が閉じているし、頻繁に欠伸を零している。

 釣られて私も欠伸を噛み殺していると、心配そうに眉尻を下げた楽進が口を開く。

 

「どうやら、二人とも眠いようだし。気の講座はこの辺りにしておくか」

 

「えぇー!? 私はまだまだいけるって!」

 

 講義の声を上げた私の額を、楽進は指で小突いた。

 あっさりと触られた事に驚いていると、彼女はため息をついて突いた指を立てる。

 

「見ろ。普通の人なら反応できたはずだが、劉和は反応できなかった」

 

「うぅ……」

 

「身体を休めるのも、ちゃんとした鍛錬だからな」

 

「……はーい」

 

 そこまで言われたら反論できるわけがなく、私は渋々と納得した。

 仕方ないかぁ。本当は、このまま一日中気弾の練習をしたかったんだけど。

 まあ、夜更かしは美容の大敵というぐらいだし、世の女性の巨乳に勝てない私は、肌の艶で勝負するしかない。って、女性としての意識が訴えかけてくるんだよね。だから、このままお昼寝と洒落こもうっと。

 それに、気を沢山使ったからか、いつもよりなんだか眠たい。勝手に身体はゆらゆらと揺れるし、頭で船を漕いでしまう。

 

「ウチも寝るわぁ」

 

「一緒に寝る?」

 

 私の提案を聞いて、真桜はキョトンした後、快活に笑う。

 

「あっはっは。冗談は顔だけにしてや」

 

 ……あ゙?

 

「お、落ち着け劉和! 女がしてはいけない顔をしているぞ!」

 

「離せ楽進! こ、こいつは言うにこいて私の顔を! 私の顔が見るのもおぞましい化け物と言ったんだぞッ!」

 

「そこまで言ってへんわ!」

 

 羽交い締めにしてくる楽進の腕の中で、私はジタバタと暴れる。

 

「えぇい! 離さんか、はーなーせ! 私は目の前の生意気な胸に説教を垂れる使命があるのよぉぉぉぉ!」

 

「だから落ち着け!」

 

「楽進の美乳が背中に当たってさいこおぉぉぉぉっ!」

 

「ば、馬鹿!」

 

「キャンっ!?」

 

 寝不足で思った事を言ってしまった私は、不意に後頭部に訪れた痛みに意識が遠のいていく。

 な、なんでこうなったの……。

 顔を赤らめた楽進が掲げていた拳を視界の端に入れたのを最後に、私の意識はブラックアウトするのだった。

 

 

 

 ♦♦♦

 

「──!」

 

 遠くから、何かが聴こえる。

 

「──、──!?」

 

 何度も響くそれは、酷く焦ったような色を濃く感じた。

 

「ぅぅん……」

 

 徐々に意識が覚醒していき、遅緩な動きで起き上がっていく。

 目ぼけ眼を擦りながら、私はぼんやりと辺りを見回す。

 どうやら、ここは私達が宿泊している施設のようで、見覚えのある内装だった。

 

「なぁに……?」

 

 身体を伸ばして解し、コキコキと首を鳴らす。

 さっと身だしなみを整えた後、髪を指で梳きつつ扉を開く。

 歓迎するように照らす陽光に、目を細めて手を翳した私は、起きる時に聴こえた音の発生源だと思わしき場所を探し始める。

 

「こっちはまだ寝足りないって言うのに……ん?」

 

 太陽の位置から、まだ二時間ほどしか眠れていないと理解しているので、思わず声に苛立ちが乗るのを抑えられない。

 いやまぁ、徹夜をした私が悪いのはわかっているんだけど。理性と感情は別という話だよね。

 ともかく、少し離れた場所で人集りを見つけ、そこまで近寄っていく。

 

「くっ! まさか、あいつらがあんな事をするとは!」

 

「あのー、何かあったんですか?」

 

 悔しそうに歯ぎしりしている人に尋ねると、彼は私を一瞥してからある方向を指差した。

 

「隣村にいたやつらが、俺達の食糧を奪いにきたんだよ」

 

「それはまた……」

 

 随分と、厄介な事になったな。

 今のご時世、男が告げたような事は文字通り掃いて捨てるほど有り触れている。

 賊等に襲われた村が窮困に見舞われ、自然と彼等も賊へと身を落とす。

 同情できる部分があるだけに、あっさりと切り捨てる事ができない。

 ……ま、私からすれば、そんなのはあまり関係ないんだけどね。

 いつも通り、関羽達と一緒に賊を懲らしめ、度が行き過ぎているならば、それこそ獣と同じように駆除(・・)をする。……正直、慣れたくない感覚だった。

 零れそうになるため息を抑えつつ、私は腰の武器を確認してから人集りの中心へと近づく。

 

「は、早く飯を寄越せ!」

 

「くそっ! この外道が!」

 

「関羽っ!」

 

 青龍刀を構えている関羽を呼べば、彼女は素早く振り向いて僅かに安堵した様子を見せる。

 

「劉和か! 状況は理解しているか?」

 

「大体ね。彼等も被害者、という事だよね?」

 

「……ああ」

 

 小さく頷いた関羽は、青龍刀の柄をギュッと握り締めた。

 この悪意が跋扈する世の中にやるせなさを感じているように、自分ではこの世界を変える事ができないのかと悔やむように。

 表情は抜き身の刃の如く厳しく鋭いが、私は今の関羽が泣いているように思えた。

 咄嗟に、彼女の手の上に自分の掌を添え、驚いた様子で目を見開いた関羽に微笑む。

 

「関羽はよくやってるよ。貴女のお蔭で救われた人もいるんだから、そんなに自分を責めないで」

 

「劉和……」

 

「私達は私達にできる事をしよう、ね?」

 

 私の言葉を聞いて、関羽はふっと表情を緩めて頷く。

 

「そうだな。私は自分がやるべき事をやるだけだ。我が武にかけて、これ以上新たな犠牲者が出ないように励む。それだけだ」

 

「うん。関羽はそれでいいんだよ。……で、問題なんだ……け……ど……?」

 

 改めて、騒動の中心に目を向けた私だったが、ある光景が目に入って固まってしまう。

 怯えた様子で座り込んでいる涙目の少女に、複数の男が武器を突きつけている。辺りには痩せ細った老若男女がおり、村の総出でここまで来たとわかる。

 ……そう。あろう事か、こいつらはいたいけな少女を脅していたのだ!

 この瞬間、私の中で意識が切り替わった。

 

「りゅ、劉和?」

 

「ちょっと、あいつらとお話してくるよ」

 

「ま、待て! 彼等を刺激するような事は──」

 

 引き留めてくる関羽を無視して、私は睨み合いをしている両者の間へと躍り出た。

 当然、私に注目が集まるが、気にせず目の前の天敵を睨みつける。

 私の眼光に後ずさった彼等の内、一際大柄な男が一歩前に出て怒号を放つ。

 

「な、なんだテメエ! やんのか、コラ!」

 

「劉和! 何をしているんだ!?」

 

「せや! いきなり前に出てどういう事や!?」

 

 背後から聴こえる楽進達の慌て声。

 大丈夫、安心してくれ。私は彼等に大事な事を思い出させてあげるだけだから。

 すぅっと息を吸っていき、肺にめいっぱい空気を取り込む。

 そして、右脚で地面を踏み抜きながら、私は力の限りに声を浴びせる。

 

「バカやろぉッ!」

 

「っ!?」

 

「お前らはバカだ! 大バカだ! 信じられないほどの愚か者だ!」

 

「い、いきなり何言ってんだよ!」

 

 威嚇するように牙を剥く大男に、私は全身から殺気を迸らせて睥睨。

 ビクリと全身を震わせるやつへと、拳を打ち鳴らしながら告げる。

 

「いいか? お前らはもっとも忌むべき事をしてんだよ! それがまだ理解できねぇのかっ!」

 

「し、仕方ねぇだろ! 食糧を奪わなきゃ俺達も飢え死にしちゃうんだからよ!」

 

「違うわぁ! 私が言ってんのは、そんなちゃちな事じゃねえ!」

 

「なんでやねん!」

 

 真桜がズッコケる音が聴こえたが、無視だ無視。

 大男もポカンと口を半開きにしており、よほど私の言葉が予想外だったらしい。

 ちっ……まだ理解できないようだな。これだから、野蛮なやつは嫌いなんだよ。

 唾を吐き捨てた私は、怖がっている少女に目を向けて言い放つ。

 

「よりにもよって、女性を人質にするとはな。お前らは、一番やってはいけない事をした」

 

「はっ?」

 

「一度しか言わねーから、耳をかっぽじって聞けよ?」

 

 目をカッと見開き、全身から内なる力を解き放ちながら、私は拳を振り上げて高らかに声を響かせる。

 

「──女性は宝だ!」

 

 ……何故か、時が凍った気がした。

 誰もが二の句を告げない中、私はツカツカと大男に近寄って指を突きつける。

 

「おい! お前の好きな女性はどんなのだ!」

 

「あ、ああ。脚が綺麗な人が好みだな」

 

「お前は!」

 

「お、俺は腰のくびれ」

 

「そっちのあんたは!」

 

「う、うなじ」

 

 言われるまま答える男達に、私は満足げに頷いて腕を組む。

 

「そうだ! お前らにだって、それぞれ好きな性癖があるだろ。では、改めて目の前の少女を見てみろ!」

 

 私がそう告げると、彼等は一斉にポカンとしている少女に目を向ける。

 

「ひっ!」

 

 身体を抱き締めて震える彼女を見て、彼等は何かに気が付いたように目を見開く。

 

「な、なんて色っぽい脚だ!」

 

「将来が期待できる腰じゃねーか!」

 

「眼鏡も良いな……」

 

 各々が感想を零していていき、やがて彼等は自然と少女から離れて膝をつく。

 後悔するように地面を叩いたり、涙を滲ませて歯を噛み締めたり、少女へと深く頭を下げたり。

 ようやく、自分達が酷い過ちを犯したと気が付いたようだな。

 もっとも悔やみの色が強い大男の前に立った私は、慈愛の笑みを浮かべて口を開く。

 

「私達は、愛すべき女性達を危険に陥れてはいけない。可愛らしい幼女の健やかな成長を見守り、小生意気な少女の我が儘を叶え、妙齢の女性の美の追求を力の限り手伝う。そして、我等の愛すべき彼女達を己の全てを使って守り通す! ……後は、わかるね?」

 

「ああ、俺達は間違っていた……。本来なら、女を守るのが俺達男の役目だってのによぉ!」

 

 悔し涙を流す大男の肩を叩き、私は優しい声色で言葉を重ねる。

 

「大丈夫。自らの過ちに気づいたなら、次からはそうしないようにすればいいだけだ」

 

「お、おお……!」

 

 大仰に両手を広げた私は、目を輝かせた男達にこの世の真理を教える。

 

「立ち上がれ、愛の戦士達よ! 己の想いを糧に、愛する女性を護るべく武器を持つのだ!」

 

『うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!』

 

 得物を振り上げて雄叫びを上げる彼等を尻目に、私は呆然とへたり込む少女に手を伸ばす。

 

「立てるか?」

 

「あ、うん。ありがとうなの」

 

「さ、君は心配している人達の元に行きなさい」

 

 私の言葉にコクリと頷き、少女は楽進達の方へと駆け出していく。

 対して、私は腕を振って彼等の掛け声を止めさせる。

 

「静まれ! ……いいか? 我々は紳士だ。女性を守護する愛の紳士だ。紳士である諸君ならもうわかっていると思うが、まず成すべき事はなんだ?」

 

「迷惑をかけた人達に謝る事です!」

 

「そうだ。彼等に謝って、自分のしでかした罪を償うのだ!」

 

『はっ!』

 

「よろしい!」

 

 今のこいつらなら問題ないだろう。

 先ほどまでの濁った瞳ではなく、メラメラと燃えた純粋な目をしている。

 私の思いが上手く伝わってくれて良かった。取り返しのつかない所まで言っていたら、悲しいけど彼等を始末しなければいけなかった。

 もちろん、彼等を生かした責任は私が取る。

 正直、この時勢なら殺した方が今後のリスクが少ないのだ。嫌な考えだけどね。

 関羽には申し訳ないけど、彼等が飢えないようになるまで、私は暫くこの村に滞在する。

 

「よし。じゃあ、行くぞ!」

 

 表情を引き締めている彼等と、微妙な顔をしている女性達を引き連れ、私は関羽達の元へ戻っていく。

 すると、なんとも言えない眼差しを送る村人達と、白い目を向ける関羽に迎えられたのだ。

 

「というわけで、彼等の面倒は私が見る」

 

「は、はあ。私達には実害がまだなかったので、構いませんが……」

 

「ああ。食糧に関してはご心配なく。私がなんとかしますから」

 

「さようですか」

 

 村長と話していると、真桜達の会話が耳に入ってくる。

 

「大丈夫だったか、沙和」

 

「うん。あの人が助けてくれたのー」

 

「あはははは! 陽はおもろいなぁ!」

 

「……後で、劉和と話さなければな」

 

 ひぇ……いつの間にか、関羽さんにロックオンされてしまいました。

 まあ、確かに理性の紐が緩んだ自覚はあるけどさ。キレると乱暴な口調になっちゃうんだよなぁ。その事について怒られるのかな。女性なのにはしたないぞ、って。

 ともかく、こうして騒動は幕を閉じたのだった。

 

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