まだ見ぬ美少女を求めて   作:マリア

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第五話 凪達との別れ

「──少女のために、えいやこーら」

 

『えいやこーら!』

 

「幼女のために、えいやこーら」

 

『えいやこーら!』

 

「我等の性癖(想い)を込めて、えいやこーら!」

 

『えいやこーらっ!』

 

 手に持つ鍬を地面に突き刺し、背筋を反らして伸びをする。

 遍く照らす太陽の元、私は自作の麦わら帽子を深く被り直した後、首にかけている手拭いで汗を拭き取っていく。

 

「ん〜、今日もいい天気だなぁ。お前達、まだまだいけるか!」

 

『おうっ!』

 

「よし、いい返事だ!」

 

 振り向いてそう叫べば、私と同じように農具を持つ男達が頷く。

 汗水垂らして働くその姿は、どこか爽やかな雰囲気を与えている。

 笑顔で頷き返した私は、再び鍬を取って地面に振り下ろすのだった。

 

 

 

 ♦♦♦

 

 あの騒動から、一ヶ月が経った。

 それから村長と協議した結果、私達は村の使われていない一角を借りる事ができたのだ。

 幸いな事に辺りには森があったので、私が狩りをしたり薬草などを採取したりして、なんとか彼等の飢えを凌がせられた。

 他にも真桜と協力して農具を創ったり、関羽と遠出して辺りに蔓延る賊を討伐して武器を奪ったり。

 とりあえず、自転車操業だけど食いつなげているのが現状だ。

 

 あ、そうそう。もしかしたらこのまま関羽と別れてしまうかと思っていたが、私の予想に反して彼女も手伝ってくれている。

 なんでも、私を一人にすると何をするかわからないから心配だとか。頬を赤らめて言っていたから、よほど信用ならないんだろうなぁと思ったものだ。

 ああ、照れているという可能性もあるんだろうけど、まだ会ってそれほど経っていないし、悲しいけど関羽とそこまで信用を結べていないと思うんだよね。

 いつかは心から信頼し合える関係になりたい。ついでに、あの立派なお胸も……おほん。また考えが脱線してしまった。

 

 ともかく、前世の知識に母さんと共に改革した経験を使い、拙いながら私は農業をできている。一時期は農業チートだと考えたものだが、正直そこまで華麗に解決なんてできない。ひたすら泥臭く、己の身体を使って地道に開拓。チートではなく、努力と似たようなものだろう。

 これまでの経緯を振り返りつつ、私は最後の部分を掘り終わった。

 

「おーし、休憩!」

 

『おっす!』

 

 私の号令を皮切りに、男達は各々が姿勢を楽にしていく。

 私も手近な岩に腰掛け、腕を伸ばしてリラックスをする。

 いやぁ、農業って予想以上に身体に負担がかかるんだよね。旅立つ前にも土いじりしていたから知っていたけど、改めて肩に疲れがのしかかってくるよ。ま、この疲労感が心地よいんだけども。

 農業は効率の良い鍛錬とは、前世の知識だったか。そんな話をどこかで聞いた事がある。それほどに、土地の開拓は骨が折れる作業なのだ。実際、男達も短期間で筋肉がついてきたような気がするし。

 

「よっと……ふぅ」

 

 身体に取りつけていた重りを外して地面に放り投げると、重低音を鳴らして土に沈み込む。

 前世の熱血漫画を参考に、いつも重りをつけて過ごしているのだが、やっぱりたまには身体を解放したい。

 羽のように軽くなった己の身体に笑みを浮かべながら、私は髪を持って付着した土を払っていく。

 あぁ……少し傷んでるよ。結んでポニーテールにしていたけど、ずっと土に当たっていたからパサパサしている。

 旅立ちの前に持ってきていた自作のリンスもなくなりそうだし、どうにかして材料を調達しなきゃなぁ。

 思わずため息を零していると、私の方に眼鏡をかけた少女が駆け寄ってくる。

 

「陽ちゃーん!」

 

「おはよう、沙和」

 

「おはようなの!」

 

 ニコニコと邪気のない笑顔で挨拶したのは、あの時人質に取られていた少女──沙和だ。

 彼女は真桜達の友達のようで、改めて彼女達に感謝されたのは記憶に新しい。

 その際、皆と真名を交わし合ったのだが、それは余談だろう。

 なお、いまだに関羽とは真名を交換できていない。楽進──凪とはしているのに……そんなに、私は信用できないのか!

 けっ。これだからお硬いツンデレ委員長さんはよぉ……っ!

 

「どうしたの?」

 

「い、いや。何故か寒気が」

 

「風邪を引いちゃった!?」

 

「ううん、そんな感じじゃなかったから大丈夫」

 

「ならいいんだけど……」

 

 心配げに眉を下げる沙和に微笑みながら、私は関羽の勘の鋭さに呆れていた。

 その内、どこからともなく現れてツッコミをしそうで怖いわ。関羽のツッコミ力は次元を超えるみたいな感じで。

 まあ、いいや。それより、私は沙和が手に持つ包みから漂う匂いに惹かれるんだけども!

 

「もしかして、それは?」

 

「あ、うん。陽ちゃん達が頑張ってるから、沙和もなにかできる事がないかって考えて。それで、自分なりに料理を作ってみたの! もちろん、皆の分もあるよ!」

 

「おお……!」

 

 それはありがたい!

 岩から飛び降りた私は、寛いでる男達に向けて号令かける。

 

「お前達、集合!」

 

『はっ!』

 

「我等の愛すべき少女様がお恵みをくださるぞ! 感謝しろ!」

 

『ありがとうございますっ!』

 

「う、うん。どういたしましてなの」

 

 一糸乱れず頭を下げる男を見て、沙和は大分引き気味な様子だ。

 まあ、わからないでもない。和解したとはいえ、沙和は彼等の人質にさせられていたのだから。正直、彼等の分までご飯を作った事だけで、沙和の懐の広さは窺えるだろう。

 それから、私達は沙和の料理を堪能していく。

 

「うめぇ……うめぇよ!」

 

「美少女の手料理最高!」

 

「うぉぉぉぉ!」

 

「喜んでくれて良かったー」

 

 ホッと安堵の息をつく沙和の指には、包帯が巻かれていた。

 もしかして、これは……。

 私の視線に気が付いたのか、沙和は慌てた様子で指を後ろに隠す。

 

「こ、これはなんでもないの!」

 

 ぐふっ。なんていじらしい顔をするんだ。

 恥ずかしそうに目を逸らして早口で告げる沙和の姿を見て、私と男達は自然と優しい顔つきに変わる。

 

「俺達は于禁ちゃんを守るぞ!」

 

「当たり前よ! それがせめての償いだからな!」

 

「于禁ちゃんは永遠さ!」

 

「も、もー! そうやって沙和をからかわないで欲しいのー!」

 

 頬を膨らませてプンスカ怒る沙和に、男達は益々表情を滾らせていた。

 両者の間には少し前までのぎこちない雰囲気はなく、ほのぼのとした柔らかい空気が漂っている。

 うんうん。今のように皆が笑顔の方が人生は楽しいよね。この時勢では難しいという事はわかっているけれど、せめて私の周りだけは笑顔が溢れるような場所になって欲しいな。

 なんでもない事が、どれだけ尊いのだと知っているから。笑顔でいられるのが、どれだけ素晴らしいという事を理解しているから。

 そんな風に考えていると、不意に沙和が一冊の本を取り出す。

 

「陽ちゃん。これ、私を助けてくれたお礼だよー!」

 

「え、いいよ。そんな悪いし」

 

「ううん。これを受け取って欲しいの。お願い、ね?」

 

「うーん、わかった。それじゃあ、お言葉に甘えて──」

 

 沙和から渡された本の表紙を見て、私は驚愕で目を見開いた。

 

「こ、これは阿蘇阿蘇の限定号!?」

 

「陽ちゃんも知ってるの?」

 

「当たり前だよ!」

 

 今流行りのコーディネート等が記載されている、この時代では異質な雑誌。

 ほとんどの女性の愛読書と言っても過言ではないだろう。かく言う私も、阿蘇阿蘇には様々な側面で助けられた。

 この雑誌をヒントに、私も幼馴染みと共に本の書き方を学んだしね。

 しかも、これは発行部数が少なかった限定号。写本にしている人も少なく、巷では幻の雑誌と言われているのだ。

 私もこの目で見るのは諦めていたけど、まさか沙和が持っているとは!

 

「これは運良く手に入ったんだー。本当は誰にも見せないつもりだったけど、陽ちゃんは助けてくれたから特別に見せてあげる!」

 

「いいの!?」

 

「むしろ、ここまで喜んでくれて沙和も嬉しいの」

 

「うぉぉぉっしゃぁ!」

 

 雑誌を掲げてクルクル回り、全身で喜びを表現する。

 この号外には、編集長の秘密の美容方法が記載されていたと風の噂で聞いていたのだ。

 普段から肌ツヤを気にしている私からすれば、これは千金にも勝る情報なのである!

 ……ふと、前世の男としての性質が湧き上がり、今生との変わりようになんとも言えない気分になってしまう。

 後悔はしていないんだけど、なんとなく変わってしまったというのが本音だなぁ。久しぶりに会った友達がオネエになっていたのに似た感覚を抱く。

 前世の知り合いが今の私を見たら、きっと大爆笑してからかってくるんだろうな。

 ま、いいや。前世は前世。今の私は女の子。そう、女の子に恋する立派な乙女なんだし!

 自己完結を済ませた後、私はニコニコしている沙和に声を掛ける。

 

「ちょうど今日の分の作業も終わったし、今から一緒にこの雑誌について話さない?」

 

「私も陽ちゃんとはいっぱい話してみたかったのー」

 

「じゃあ、早速行こうか! おい、お前達も飯を食べ終わったら解散な!」

 

『お疲れ様でした、姉御!』

 

 声を揃えて返事をした男達に、私は顔をしかめて叫び返す。

 

「だから、姉御はやめろって言ってんでしょ!」

 

「くぅ! 姉御の照れ顔最高!」

 

「やめろと言われてやめるわけないっす!」

 

「姉御は俺達の永遠の姉御ですっ!」

 

 こ、こいつら……好き放題言いやがって。

 何がどう血迷ってこうなったのか、あの騒動の後から私は姉御と呼ばれるようになったのだ。

 何度も直すように言い聞かせても、彼等は頑なに首を縦に振らない。

 どうしてどうでもいい所で頑固なんだよ!

 むしろ、姉御だったら関羽や凪の方がしょうに合っているでしょーが!

 

「うがーっ!」

 

 地団駄を踏む私を見て、表情をニヤケさせる男達。

 男達に見られても全く嬉しくない! 

 どうせ見られるなら、関羽や凪達美少女に見られたいのに。

 いつも通りのやり取りをする中、沙和は若干呆れた様子で笑う。

 

「陽ちゃんは愛されてるの〜」

 

「どこが! こいつらは私をからかって遊んでいるだけだって!」

 

「流石于禁ちゃんわかってるー!」

 

「そうそう。俺達は姉御を愛しているんだよ!」

 

「俺達の愛を受け取ってくれぇ!」

 

「黙らっしゃいッ!」

 

 沙和に雑誌を返した私は、額に青筋を浮かべながら拳を鳴らす。

 そんな私の姿を見て、男達は明らかにやっちまったと顔を青ざめていく。

 

「や、やべぇよ。姉御の目が笑ってない」

 

「流石にふざけすぎた」

 

「姉御ぉぉぉぉ! 結婚してくれぇぇぇぇ!」

 

「──よーし、わかったわかった。お前達は、私の特別訓練を受けたいんだな。なら望み通り、今から特訓をつけてやるよ!」

 

 身体中に気を循環させていくと、私の全身から僅かにオーラが漏れる。脚元から亀裂が走り、近くに転がる小石が粉々に砕け散る。

 最近の凪との訓練で、私の気の操作性能は瞬く間に上昇していた。

 放出関連は凪に及ばないが、こと身体能力を上げる場合に限っては、私の右に出る者はいないと自負しているのだ。

 

「お前達が自分の大切な者を守れるように、私がしっかり強くしてやるからな!」

 

「に、逃げろぉ!」

 

「あっはっはっ! 逃がすかよぉ!」

 

 蜘蛛の子を散らすように駆け出す男達を、私は笑い声を上げながら追いかけていくのだった。

 

 

 

 

 

「えーっと、どうすれば?」

 

 沙和は少し待っててちょうだい!

 

 

 

 ♦♦♦

 

「──本当に、お世話になりました」

 

 私が深く頭を下げると、村長は穏やかな面立ちで首を振る。

 

「いえいえ。むしろ、私達の方がお礼を仰りたいほどです」

 

「ああ。陽達のお蔭で、ここ暫くは随分と平和だったからな」

 

「うんうん。だから、気にしないでいいんだよー」

 

 村長の言葉に同意した凪と沙和。

 この場にいる他の村人達も、その笑顔がそれぞれの心境を物語っていた。

 対して、何やらゴソゴソしていた真桜は、ある物を取り出して口を開く。

 

「ほい、これはウチからの餞別や!」

 

「えっと、これは水鉄砲?」

 

「せや。初期のよりも水を大量に入れられて、更に片手でも使えるようにしたんやで」

 

 確かによく見てみれば、不格好ながらどことなく前世の銃に似ていなくもない。

 ……え、凄くない? この短期間で、小型化に持続性も改善したって事?

 驚いて目を点にする私を見て、真桜はしてやったりと改心の笑みを落とす。

 

「ふっふっふ。その様子だとびっくりしたようやね」

 

「うん。正直、めちゃくちゃびっくりしたよ。それで、これを私に?」

 

「そうや。陽の事だから、これからも女の子のお尻を追いかけるんやろ? だったら、これを使って濡れ濡れにしちゃうんや!」

 

「お、おお……!」

 

 ま、真桜様は私の事をよくわかっていらっしゃる!

 これを使えば、美女美少女達の服を透けさせて下着を拝む事が……はっ。間違えました。

 これを使えば、敵と対峙している時の奇襲武器になるよね。なんて機能性に優れた武器なんだろうか。

 素直にそう言ったのに、隣にいる関羽の眼差しは芳しくない。

 

「ここまで来ると、いっそ清々しいな」

 

「まあまあ。この残念さも含めて、陽らしさだと思うで?」

 

「私からすれば、劉和の未来が心配になるんだが」

 

「好き放題言わないでくれますか?」

 

「なら、私達にそう言われないような振る舞いを見せてくれ」

 

 関羽に即答されたので、無言でさり気なく目を逸らす。

 だって、仕方ないじゃん。これが私の性格なんだからさ。もっと言うと、生きがいでもあるし。そりゃあ、私の行いが客観的に見て酷いのはわかるけど。せっかくの第二の人生なんだし、好きに生きて何が悪いと言うのさ!

 よし、理論武装終わり。

 満足して頷くのだが、何故か関羽の視線の温度が下がっていた。

 

「こういう所がなければ、私も……」

 

「ん? 何か言った?」

 

「な、なんでもない! ほら、早く行くぞ!」

 

「あ、待ってよ関羽!」

 

 村長達に頭を下げた後、関羽は早足で歩き始めてしまった。

 慌てて真桜から水鉄砲を受け取り、追いかけようとする私に、苦笑いをした凪が声を掛ける。

 

「陽。あれでも、愛紗はお前の事を認めている」

 

「え、関羽が?」

 

「ああ。お前が沙和を助けた時には、途中まで見直していたと言っていたぞ」

 

「へ、へー。そうなんだ」

 

 や、やばい。今の私、かなり顔がにやけている。

 まさか、あのツンデレ委員長さんが私の事をそんな風に思っていたなんて。正直、めちゃくちゃ嬉しい。

 思わず頬を抑え、熱くなっているそれを隠す。

 

「ふふ、陽ちゃんが照れてるのー」

 

「陽は攻撃されるのに弱いからなぁ」

 

「う、うぅ……もう! 私も行くから、また会えたら会おうねみんな!」

 

 誤魔化すために素早く振り向き、下半身に力を入れて走り出していく。

 

「またねー!」

 

「気の練習を忘れるなよー!」

 

「次会うまでに例の物は完成させとくからなー!」

 

「于禁ちゃんの事は任せてください、姉御!」

 

「李典ちゃんの胸も守ってみせます!」

 

「楽進ちゃん付き合ってくれぇ!」

 

「どさくさに紛れて何を言ってるんだぁ!?」

 

 駆け足で関羽を追う私の耳に、ガヤガヤとした声が入ってきた。

 私や関羽達で可能な限り彼等を鍛えたから、そこらの賊に遅れはとる事はないんだけど……ないんだけど。

 彼等に任せるのは、なんだか不安だ。本当に大丈夫だろうか。

 ともかく、こうして私達は村を後にする。

 

「待ってよ関羽ー!」

 

「む、すまない。少し速すぎた」

 

「ふぅ……全く、いきなり何事かと思ったよ」

 

 頬を掻いてすまなそうに眉を下げる関羽を見て、私は嘆息して隣に並ぶ。

 暫く歩いていると、関羽がポツリと呟きを漏らす。

 

「楽しかったな……」

 

「そうだね」

 

「一つの場所に長く滞在した事がなかったから、どこか新鮮だった」

 

「うん。私も」

 

 相槌を打つ私へと、関羽は照れ臭そうに微笑む。

 

「劉和が言っていた、旅。その良さが少しわかった気がする」

 

「私も口ではああ言ったけど、改めて旅に出て良かったと思うよ」

 

 瞼を閉じれば、あの村での思い出が直ぐに蘇る。

 凪との訓練。真桜とのロマンの語らい。沙和との美容についてのお話。姉御と慕ってくる野郎共との戯れ。

 一つ一つが胸の中で煌めき、今後もこの輝きが色褪せる事はないだろう。

 関羽も同じように思っているのか、目を細めて虚空を眺めていた。

 

「彼等の村のように、全ての場所があんな風に笑えたらいいんだけどな」

 

「……そのためには、この世界をどうにか変える必要があるよ」

 

「ああ、そうだな。……世界を変える、か」

 

 意味深に私をチラリと一瞥した後、関羽はそういえばといった顔で尋ねる。

 

「ついこの間、手紙を貰っていたが。あの手紙は村と関係があるのか?」

 

「ん、そうだけど。よくわかったね」

 

「村長と話しているのを見たからな。差し支えなければ、詳しく聞いても?」

 

「別に構わないよ」

 

 と言っても、特に大した内容ではない。

 母さんの護衛を頼んでいる私直属の部下に、この辺りの役人について調べさせたのだ。

 短期間で人数が増えたため、次の税の徴収の時にややこしい事態になると思い、あらかじめ手を回して彼等について見逃して貰った。

 久しぶりに会ったけど、相変わらず可愛かったなぁ。思わず撫で回すと猫なで声で反応してくれて、本当にもうなんと言ったらいいか……!

 そんな旨を軽く話せば、関羽は感心した素振りで眉尻を上げる。

 

「なるほど。劉和は劉和なりに考えていたという事か」

 

「そうそう。こういうのは根回しが大事だからねー」

 

「なら、あの村が欲望に晒される事もないというわけだな?」

 

「よほどの事がない限り、ね。まあ、凪達もいるし安心していいでしょ。それより、私は次の街の事で胸がいっぱいです!」

 

「どうせ、街の女について考えているんだろう?」

 

「おうともさ! それが旅の楽しみだからね!」

 

「はぁ……」

 

「ちょっとー、いつもため息をつくのはやめていって言ってるでしょ?」

 

 抗議の声を上げたのだが、関羽は無言で足を早めていく。

 あ、また逃げようとして。こうなったら、関羽に女性の素晴らしさを教えてあげなきゃ!

 慌てて追いかけつつ、私はいかに自分の考えが間違っていない事を説明していくのだった。

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