カミテン~遊戯王TFへ転生してハーレム目指す――でも~   作:ニョニュム

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デュエル万能論を信じて、間違った方へ全力疾走する主人公の話。


―異分子・小波赤人―
始まりの99連敗


 突然ではあるが小波赤人(コナミセキヒト)は転生者である。それもただの転生者ではない。俺の夢は酒池肉林のハーレムを作ることだと言って憚らない女好き。勿論、前世は彼女居ない暦=年齢の男。女性の扱いは慣れていない。そんなコナミが自力でハーレムを築くには無理がある。そこでコナミが思い付いたハーレムを築く為に頼ったのが、“デュエル万能論”。

 

 犯罪者はデュエルで拘束して、聞きたいことはデュエルで聞き出す。そんな理論がまかり通る世界。それが遊戯王という世界だ。強い決闘者は無条件にモテる。遊戯王の常識だ。ガチデッキを持ち込めば、それだけでハーレムウハウハだ。

 

 間違って殺したから特典付きで転生させてあげる→遊戯王世界で全部のカードくれ→OK、それじゃあ転生で。

 

 とりあえず、こんな経緯で神転したコナミはただ一つだけ見落としていたことがある。

 

 ガチデッキだろうが、ネタデッキだろうが、この世界で勝者となるのは強き決闘者(デュエリスト)のみ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 赤く燃えている沈みかけの夕日に照らされて、赤色に染まる灯台の下、デュエルディスクをセットした青い制服を着た少年と赤い制服を着た少年が向かい合っていた。

 

「また、コナミか。確かに俺は挑まれれば何度でも受けて立つと言ったが、これで何度目だ?」

「今はオレの98連敗中だ。だからこそ、このデュエルで記念すべき1勝を捥ぎ取らせて貰う。その為に、カイザー亮。アンタに勝つ為のデッキを作り上げてきた」

「俺に勝つ為……か。いいだろう。コナミ、貴様のリスペクトを俺に見せてみろ!」

「サイバー流後継者、丸藤亮。お前の不敗神話は今日、このデュエルで終わる! そしてお前に勝利して、オレはデュエルアカデミア最強のデュエリストになってやる!」

 

 呆れたような表情を浮かべた亮とそんな亮へ憎悪の念を向けるコナミの視線がぶつかり、激しく火花を散らす。

 

「「デュエル!」」

 

 決闘の宣言と共に二人のデュエルディスクが起動して、自動的に先攻後攻を決める。先攻はコナミだ。

 

「オレのターン、ドロー!」

 

 デッキからカードをドローしたコナミは6枚になった手札を見て、薄っすらと笑う。初手から自分の望むカードが手札に舞い降りた。勝負のツキはこちらにある。

 

「オレは手札からモンスターを裏側守備表示でセット。1枚のカードを伏せてターンエンド」

 

 しかし、焦りは禁物。先攻1ターン目は攻撃表示でモンスターを召喚しても攻撃出来ない。それならば、次のターンを凌ぐ為に準備しておくべきだ。

 

「俺のターン、ドロー! 俺は手札からサイバー・ドラゴンを特殊召喚」

 

 

 サイバー・ドラゴン☆5光 ATK/2100DEF/1600

効果・相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

 

 

 亮のフィールドに機械仕掛けの竜が出現した。亮へ寄り添うように出現した竜は敵対者であるコナミへ咆哮する。その咆哮を受けて、コナミは忌々しそうにサイバー・ドラゴンを睨む。

 

「サイバー・ドラゴンは特殊召喚。まだ、俺には通常召喚をする事が出来る。俺は手札からサイバー・ドラゴン・ツヴァイを通常召喚!」

 

 亮のフィールドに二体の竜が並ぶ。二体の竜の咆哮を受け、亮は頷く。

 

 

 サイバー・ドラゴン・ツヴァイ☆4光 ATK/1500DEF/1000

 効果・このカードが相手モンスターに攻撃するダメージステップの間、このカードの攻撃力は300ポイントアップする。

 1ターンに1度、手札の魔法カード1枚を相手に見せる事で、このカードのカード名はエンドフェイズ時まで「サイバー・ドラゴン」として扱う。

 また、このカードが墓地に存在する場合、このカードのカード名は「サイバー・ドラゴン」として扱う。

 

 

「このカードの効果発動! 俺は手札から魔法カード“融合”を見せる事で、サイバー・ドラゴン・ツヴァイをサイバー・ドラゴンとして扱う。そしてそのまま融合発動。フィールドにいる二体のモンスターで融合召喚! 現れろ! サイバー・ツイン・ドラゴン!」

 

 亮のフィールドに並んだ二体の竜が融合し、新たな竜として出現する。二つの頭を持つ機械仕掛けの竜はその巨体と共に圧倒的な威圧感を与える。コナミに怯えた様子はなく、ただ忌々しそうにモンスターを見つめている。

 

 

 サイバー・ツイン・ドラゴン☆8光 ATK/2800DEF/2100

 効果・このカードは一度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。

 

 

「そしてそのままコナミの裏側守備表示モンスターを攻撃! 第1打、エヴォリューション・ツイン・バースト!」

「馬鹿め! この瞬間、破壊された電磁蚊のリバース効果発動!」

 

 

 電磁蚊(モスキートマグネ)☆3光 ATK/300DEF/1000

 効果・リバース:フィールド上に表側表示で存在する機械族モンスターを全て破壊する。

 

 

「この効果により、サイバー・ツイン・ドラゴンは破壊される」

 

 サイバー・ツイン・ドラゴンが破壊したカードから小さな機械仕掛けの蚊が発生し、サイバー・ツイン・ドラゴンの体内へ入り込むとそのまま心臓部まで到達、人間の血を吸う要領で心臓部からエネルギーを吸い取り始めた電磁蚊は自身に内包しきれない圧倒的なエネルギー量を吸収すると火花を散らして爆発。その小さな爆発に巻き込まれ、被害を受けた心臓部が暴走を始め、サイバー・ツイン・ドラゴンが自壊する。

 

「ハッハッハ、良い気味だな。巨大な竜がただの蚊にやられるなんて!」

「…………、俺はカードを3枚伏せてターンエンド」

 

 心底嬉しそうに嘲弄するコナミの対応に何も言わず、亮が自分のターンを終える。

 

「オレのターン、ドロー! オレは手札から神獣王バルバロスを妥協召喚!」

 

 

 神獣王バルバロス☆8地 ATK/3000→1900DEF/1200

 効果・このカードはリリースなしで通常召喚できる。

 この方法で通常召喚したこのカードの元々の攻撃力は1900になる。

 このカードはモンスター3体をリリースして召喚できる。

 この方法で召喚に成功した時、相手フィールド上のカードを全て破壊する。

 

 

 ライオンの顔を持ち、屈強な戦士の如く筋肉質な人間の上半身と力強い脚力を持つ獣の下半身、右手に持った螺旋の槍と左手に持った丸い盾がサイバー・ツイン・ドラゴンにも劣らない存在感を示す。しかし、従属神の一体として召喚されたバルバロスは何処か窮屈そうにコナミのフィールドへ立っている。それもその筈、コナミによって無理矢理召喚された今のバルバロスは本来の力が発揮出来ない状態にある。

 

「そしてオレは速攻魔法“禁じられた聖杯”を発動。このカードの効果により、エンドフェイズ時まで選択したモンスターの攻撃力を400ポイントアップし、効果を無効にする。当然、対象はバルバロス」

「攻撃力2300? いや、そうじゃない!」

「お前の思っている通りだよ、カイザー! バルバロス、その力を解放しろ!」

 

 亮の戦慄と共にコナミが宣言する。

 

 降り注いだ聖杯の中身を飲み干したバルバロスはその効力によって本来の力以上の物を発揮する。

 

「攻撃力3400! 妥協召喚によるデメリットを無効にして、メリットだけが残る。これほどのプレイを見せる君が何故――」

「ゴチャゴチャ五月蝿い! やれ、バルバロス! ダイレクトアタック、トルネード・シェイパー!」

 

 真の覚醒を果たしたバルバロスの攻撃が亮へ迫る。

 

「くっ、この瞬間、トラップ発動“和睦の使者”。このターン相手モンスターから受けた全ての戦闘ダメージは0となる」

「お前の不敗神話は今日で終わると言っただろうが! カウンタートラップ発動“魔宮の賄賂”。相手の魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する。その後、相手はカードを1枚ドローする」

 

 亮を守ろうと出現した女性の使者に対して、無理矢理賄賂を手渡す男。賄賂を受け取ってしまった女性の使者は亮へ申し訳ない表情を浮かべ、賄賂を渡した男はにんまりと笑う。男性から受け取った賄賂を亮へ手渡す女性の使者、亮は無言でカードを1枚ドローする。次の瞬間、にんまり笑う男と女性の使者を巻き込んで、バルバロスの攻撃が亮へ襲い掛かる。

 

「ぐっ!」

 

 丸藤亮LP4000→600

 

 バルバロスの大槍に貫かれた亮が大きく後退する。その表情は苦悶に満ちている。

 

「良い気味だな、カイザー。これでオレのターンが終了すれば、オレのフィールドには攻撃力3000のバルバロスが残る。この絶体絶命の中、お前ならどうする? もしかしたら、希望を抱くかも知れないな。だからこそ、ここでその希望を潰す。オレはバトルフェイズを終了し、手札から魔法カード“システムダウン”を発動。このカードはLPを1000払うことで相手フィールド上と墓地の機械族を全てゲームから除外する。これで墓地から復活させることも出来ない。何も出来ず、そのまま敗北しろ! これでターンエンド」

 

 小波赤人LP4000→3000

 

 サイバー・ドラゴン達が嘆きの咆哮と共にゲームから除外されていく。

 

「俺のターン、ドロー」

 

 フィールドには攻撃力3000のバルバロス。墓地にいる筈のドラゴンはゲームから除外されている。自分の絶対的勝利を確信し切っているコナミを見ながら、亮は静かにカードをドローする。

 ……少なくとも最初に戦った頃のコナミはこんなプレイをする決闘者では無かった。自分とデュエルを重ねていくに連れて少しずつ、相手の、自分のデッキを否定するようなデッキを作り上げてきた。

 

 コナミは完全にリスペクトを履き違えている。レベルタクティクスを必要とする白黒のモンスターを使ってきた時は驚いたが、決闘者の意地でコナミを蹴散らした。

 その結果が、相手を否定する為だけに組まれたコナミのデッキ。亮には漠然とコナミのデッキが泣いていると理解出来た。自身と共に戦っていくデッキの筈が他人を否定する為だけに作られたデッキ。カード達がコナミの暴走を嘆いて、泣いていた。

 

 自身のデッキを泣かせる決闘者など、決闘者にあらず。

 

 元々、才能のある決闘者だ。間違った方向へ突き進むコナミを目覚めさせるには圧倒的な敗北を与えるしかない。

 

 引いたカードを見て、亮はふっと笑う。カード達も亮の意見に賛成のようだ。

 

「コナミ、君は何故、伏せカードをしなかった。昔の君ならブラフとしてでもカードを伏せた筈だ」

「どうした? 今更、負けた時の言い訳でも考えているのか?」

「……いや、その慢心が君の敗因だ」

「どういう――」

「二体目のサイバー・ドラゴンを特殊召喚。そしてトラップ発動“異次元からの生還”。ライフを半分支払う事でゲームから除外されているモンスターを可能な限り特殊召喚する」

 

 丸藤亮LP600→300

 

 亮のフィールドに三体の機械仕掛けの竜が並ぶ。

 

「は? 流石にそれは嘘だろ? なんでそんなカードがお前のデッキに……」

「俺のデッキを、カード達を否定する君なら、俺の仲間達をゲームから除外すると睨んでいた。ただそれだけの話だ」

 

 それが亮のリスペクト。目の前の光景を否定するように首を振るコナミ。しかし、亮は止まらない。

 

「これが俺から君に伝えられる言葉だ。手札からパワーボンドを見せ、サイバー・ドラゴン・ツヴァイをサイバー・ドラゴンに。そして三体のサイバー・ドラゴンをパワーボンドで融合。現れろ、サイバ・エンド・ドラゴン!」

 

 

 サイバー・エンド・ドラゴン☆10光 ATK/4000→8000DEF/2800

 効果・このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 

 

 鋭い眼光でコナミへ視線を注ぐ亮。そんな亮が最も信頼するモンスターがフィールドへ現れる。

 

 三つの頭を持つ機械仕掛けの竜。荒々しい咆哮は大気を揺るがし、その姿は正にカイザー亮が使役するに相応しい威風堂々。

 

「こ、攻撃力8000だと! このインチキ野郎め!」

「まだまだ! 俺は速攻魔法“リミッター解除”を発動。自分フィールド上に表側表示で存在する全ての機械族モンスターの攻撃力を倍にする」

 

 ATK/8000→16000

 

「攻撃力16000! ふざ、ふざけるなーっ! オレは捨てたぞ、鬼にならねば見えぬ地平がある。この言葉を信じて、お前に勝つ為だけにデッキを組んだ!」

 

 圧倒的な力の差にコナミは亮を罵倒して、喚き散らす。

 

「鬼にならねば見えぬ地平がある。確かにそうかもしれん。だが、俺は言い返すぞ。鬼にならねば見えぬ地平がある? ならば、鬼には見えぬ地平もまた存在する! この一撃で目を覚ませ! エターナル・エヴォリューション・バースト!」

「くそ、くそーぉぉぉ!」

 

 亮の言葉がコナミの胸を射抜く。鬼にならねば見えぬ地平、だが、伝説の決闘者である武藤遊戯は鬼とは全く正反対の性質を持つ決闘者だ。鬼には見えぬ地平もまた確かにある筈。

 

 圧倒的な力の光線とバルバロスの大槍がぶつかりあう。激しい激突の末、バルバロスの大槍が砕かれ、光線がバルバロスもろともコナミのLPを削り取る。

 

 小波赤人LP3000→-13000

 

 終わってみればたった4ターンの攻防。コナミの99連敗が決定した瞬間だった。

 

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