カミテン~遊戯王TFへ転生してハーレム目指す――でも~   作:ニョニュム

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主人公は吐き気を催す邪悪になっています。キリッ


禁断のカード達

 セキヒトが初めての闇のゲームを行なってから既に数日が過ぎた。“とある作戦”の為、好感度上昇の表示されるハートマークが4つ溜まった状態である天上院明日香の兄、天上院吹雪のカードからまだ吹雪の魂を解放していない。

 

 そして明日香の親友でもある枕田ジュンコと浜口ももえ。二人のカードに表示されているハートマークも相当溜まって来ている。目算で放っておいても後は一日かそこらで4つのハートマークが赤く染まる。

 

 最初は一週間程度で溜まると思っていたハートマークにセキヒトにとって都合の良い意味で誤算が発生した。それは闇のゲームでなくともセキヒトが決闘で勝利すれば勝利した分だけハートマークの上昇速度が加速したのだ。

 

 現在、デュエルアカデミアで暗躍しているセブンスターズと違い、アカデミアの生徒として生活を送り、授業や私生活で決闘を行なっているセキヒトにとって、決闘に勝てばその分好感度上昇速度が加速するという情報はやる気の源となっていた。アカデミアの生徒として生活している限り、決闘相手に困る事は無いからだ。

 

 そしてセキヒトが通うデュエルアカデミアではいつまでも目を覚まさない天上院吹雪を引き金とした妙な噂が流れ始めていた。その内容は名前が伏せられているものの、目を覚まさない被害者が三人に増えた事。島の何処かにある湖畔に吸血鬼が住み着いた為、被害者を襲った事。デュエルアカデミアの実技担当最高責任者であるクロノス・デ・メディチ先生が行方不明になっているというモノだ。

 

 仕方ない事ではあるが噂は所詮噂でしかない。アカデミアに流れている噂は一連のモノとして見られているが事実は違う。異なる二つの影が同時に暗躍を始めた為、何も知らない生徒達が二つの出来事を一つにまとめてしまった。

 

 その事実を知っている者はセキヒトを除けば“七星門の鍵”を任せられた十代達しかいない。だが、十代達も追い詰められているのが現状である。

 

 アカデミアの教師においてトップクラスの実力を持つクロノスを降したセブンスターズの吸血鬼にして実力者――――カミューラの出現。そして未だにその影すら見せず暗躍して無関係である三人の決闘者を巻き込んだ謎の人物。

 

 その正体が学生のセキヒトだと思っていない十代達は現状、セキヒトが尻尾を出す事を待っている状態なのだが、セキヒトはジュンコ達に特定されたのを教訓にして証拠という証拠を全て抹消したので十代達に特定される心配は無い。

 

 なによりセキヒトは既に自分の方針を決めている。カミューラのように大きな事件を起こして十代達を呼び寄せるのではなく、一人ずつ確実に潰していく予定だ。そうしなければアカデミアの人間であるセキヒトは行動を大きく阻害されてしまう。

 

 

「さてはて、俺の思惑通りに行くかどうか……」

 

 

 セキヒトが呟いた言葉は少し肌寒い潮風に流されて消えていく。カイザー亮と天上院明日香がよく待ち合わせに使用していた灯台に背中を預けたセキヒトは地平線の向こう側へ消えていく太陽を見つめながら待ち人を待つ。

 

 待ち人の名前は天上院明日香。昼間、十代達がカミューラへ再戦を仕掛ける相談をしている所を盗み聞きしたセキヒトは誰にもバレないように明日香へ一通の手紙を出しておいた。

 

 手紙内容は簡潔で魂を封印した三人の名前と時間と場所の指定、他の人間は連れてこないように、と書いてあるだけだ。ただのイタズラと切り捨てられる可能性もあるが、明日香は大人しく一人で灯台を訪れると睨んでいる。何故なら既に噂となっている天上院吹雪と違い、枕田ジュンコと浜口ももえが被害者である事は伏せられている。二人が被害者である事は関係者以外で知っているのは二人を巻き込んだ本人――――つまりセキヒト以外は知らないからだ。

 

 それからそれなりの時間が過ぎ去り、夕日が完全に地平線へ消えて柔らかい月明かりがセキヒトを照らし出した頃、カツカツと埠頭を歩く音が聞こえてきたので顔を上げる。そこには険しい表情を見せて既にデュエルディスクへデッキをセットして、決闘を行なえる準備を済ませている天上院明日香がいた。周りには誰もいない。十代達がカミューラへ再戦する移動中、上手く一人で抜けてきたのだろう。

 

 明らかに愛すべき兄と大切な親友を奪われて闘争心を丸出しにしている明日香の姿にセキヒトは小さく苦笑する。そして灯台へ背中を預けて笑っているセキヒトを見て、戸惑いの表情を見せる明日香。

 

 

「何故、コナミが此処に……」

 

「何故? それは本気で言っているのか? 相手が誰であろうと決闘で倒す。明日香の装備を見れば明日香がどういう想いで此処に来たのか見て取るように判るが?」

 

「えぇ、そうよ。けど、貴方は一体何者なの? コナミは私の事を名前で呼ばない。変装していないで正体を現しなさい!」

 

 

 喉を鳴らして失笑するセキヒトの姿に明日香は警戒を強めて叫ぶ。明日香の叫びを聞いたセキヒトは目を丸くした後であぁ、と納得した様子でポンッと両手を合わせる。

 

 

「…………そういえば自己紹介がまだだったな。今の名前はダークネス赤人。正真正銘、明日香の知っている小波赤人本人だよ。少し考え方が変わったけどな」

 

「ッ! どうして貴方のような優秀な人間がッ!」

 

「おいおい、俺がこうなった原因を作ったのは明日香の兄である天上院吹雪のせいなんだぜ。だから俺は悪くない」

 

 

 両手で腹を押さえて可笑しそうに笑うセキヒト。そのセキヒトが告げた言葉に明日香が表情を曇らせる。

 

 

「…………それはどういう意味なの?」

 

「良いだろう、教えてやる。大前提として俺は被害者だ。何故なら元々、天上院吹雪はセブンスターズとしてこの島を訪れたからな」

 

「そんなッ! そんな話は嘘よ!」

 

「おいおい、最後まで大人しく聞いてくれよ。こっちはわざわざ説明してやっているんだぜ」

 

 

 セキヒトの言葉を否定するように首を横へ振る明日香の姿を見たセキヒトはやれやれと肩を竦める。

 

 

「セブンスターズである天上院吹雪は無関係である俺へ決闘を無理強いして、決闘の最中、オレは今の俺へ覚醒して天上院吹雪を倒した。行なわれた決闘は闇のゲームだった。俺は自分の身を守る為に勝利した。結果としてこのように天上院吹雪の魂はカードに封じられた。ほら、俺は自分の身を守っただけだ。正当防衛だよ」

 

 

 そう言ってデッキホルダーから取り出した一枚のカードを掲げて明日香へ見せる。そのカードに描かれたイラストを目撃した明日香は目を見開き、息を呑む。そのカードには最愛の兄の名前が書かれていた。

 

 

「枕田ジュンコと浜口ももえについても同じだよ。折角、俺が大人しく暮らしていたのにその二人がお前の為に天上院吹雪を倒した犯人探しをして俺に辿り着いた。大人しく生活したい俺は本当に仕方なく二人の魂をカードへ封印する事にしたんだ。ほら、俺は被害者だろ? 俺は大人しく生活したいのに二人が犯人を突き止めてしまったからな」

 

 

 二人のカードも取り出して明日香へ見せる。白々しく被害者だと名乗るセキヒトに鋭い眼光をぶつける明日香。セキヒトの話が事実だったとしてもジュンコとももえを巻き込む必要は無かった。むしろ、兄である吹雪を倒した時点で言ってくれれば明日香もセキヒトを責める事は出来なかった。

 

 

「………………もういいわ。これ以上貴方と話しても無駄なようね。構えなさい、決闘で決着をつけてあげる」

 

「おいおい、俺を笑い殺す気か? なんで俺が明日香と決闘する必要があるんだよ。今現在、どちらの立場が上か判ってんのか?」

 

「止めて! それじゃあ一体、何が目的なの!」

 

 

 デュエルディスクを構えた明日香を見て、ゲラゲラと笑うセキヒトは吹雪の魂が封印されたカードを両手に持って破ろうとする。その姿に明日香は構えたデュエルディスクを下げて叫ぶ。

 

 

「俺からの要求は二つ。一つは“七星門の鍵”を俺に渡す事。もう一つは無抵抗でカードに魂を封印される事。そうすれば二人分の魂は解放してやる。等価交換だ」

 

「くッ、卑怯者! それじゃあ一人足りないわ!」

 

「おいおい、こっちは譲歩してやっているんだぜ? それとも愛するべき兄と大切な親友の命は自分の命と“七星門の鍵”の二つと一緒とでも言うのか? 呆れるほど傲慢だな」

 

「それは違うわ! 三人と私がつり合う筈が無い!」

 

 

 聞き分けの無い子供へ言い聞かせるようなセキヒト。反射的にセキヒトの言葉を否定した明日香は苦悶の表情を浮かべる。

 

 

「…………どうすれば、私と決闘してくれるの?」

 

「ん~、そうだな。まずは地面に這い蹲って土下座しろ。その上で俺に媚びれ。そうしたら考えてやる。土下座して『セキヒト様、私と決闘してください』だ。ほら、簡単だろ」

 

「くっ、判ったわ」

 

「判りました……だろ?」

 

「……判りました」

 

 

 明日香の屈辱に染まる顔をニヤニヤと観察するセキヒト。その表情をみれば素直に決闘へ応じるつもりが無い事は明らかだ。しかし、明日香に残された選択肢は一つしかない。

 

 

「…………セキヒト様、私と決闘してください」

 

「くっくっく、どうしようかな~」

 

 

 屈辱に身体を震わして、セキヒトへ土下座する明日香。そんな明日香に爆笑しているセキヒト。

 

 

「決闘を受けてもいいが、その前に条件がある。今回の闇のゲームに俺が掛けるのは三人の魂と俺の魂。そちらは明日香の魂と“七星門の鍵”。面白い物を見せてもらった礼として俺の魂は数に入れないとしても一人分、決闘者の魂が足りない。魂はつまり命だ。そして決闘者の命とはライフポイントの事。そしてデュエルモンスターズには1000のライフは一枚のカードと同等、それ以上という言葉がある。4000分のライフは手札四枚に等しい。俺が手札を九枚の状態で始めるか、明日香が手札一枚の状態で始めるか。どちらがいい?」

 

「そんなのめちゃくちゃだわ!」

 

 

 セキヒトの言葉に顔を上げて叫ぶ明日香。その選択だと答えはもう決まっている。決闘者にとって手札とは可能性だ。セキヒト――コナミと明日香の実力はほぼ同等。そんな状態で手札という可能性が一枚で始まる決闘など結末は見えている。

 

 

「残念だが、俺がルールだ。俺はどちらがいいか聞いている。それ以外の返答はいらん」

 

「くっ!」

 

「あぁ、それとも考えるフリをして時間稼ぎするつもりならそれでも良いぞ。このカードに書かれたハートマークが全て赤色に染まった時、その魂の持ち主は魂が解放された瞬間から俺の言いなり人形になる。すぐに答えないなら暇つぶしにハートマークが溜まっている吹雪の魂を解放して言いなり人形にするし、二人のハートマークも後数時間で完全に溜まる。二人の魂が俺の言いなりになる前にカミューラとの決着をつけて十代達が異変に気付いてこちらへ駆けつけるかどうか見物だな」

 

 

 明日香が絶対に断れない状況を作り、屈辱に歪むミスデュエルアカデミアの表情を楽しんでいるセキヒト。

 

 

「わか……りました。セキヒト様が手札九枚の状態からの決闘でいいので私と決闘してください」

 

「そこまで言うなら仕方ない。その決闘を受けてやろう」

 

 

 セキヒトの言葉を聞いて、明日香は立ち上がるとデュエルディスクを構える。屈辱と怒りの混じった表情にセキヒトは肩を竦めた。

 

 

「さぁ、始めようか」

 

「絶対に勝たせてもらうわよ!」

 

「「決闘!」」

 

 

 明日香が圧倒的に不利な状況で決闘が開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 明日香が圧倒的不利な状況で始まった決闘。間の悪い事にデュエルディスクが選んだ先攻もセキヒトだった。

 

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 

 カードを手札へ加えて十枚となった手札を見て、喉を鳴らして笑うセキヒト。

 

 

「これからお前に絶望を見せてやろう。俺は手札からおろかな埋葬を発動。このカードは自分のデッキからモンスター1体を選択して墓地へ送る事が出来る! 俺はデッキから処刑人-マキュラを墓地へ送る! そしてマキュラの効果発動!」

 

 

 処刑人-マキュラ☆4闇 ATK/1600DEF/1200

 効果・このカードが墓地へ送られたターン、このカードの持ち主は手札から罠カードを発動する事ができる。

 

 

「そして俺は手札から無の煉獄を発動する! このカードは自分の手札が3枚以上の場合に発動できる。自分のデッキからカードを1枚ドローし、このターンのエンドフェイズ時に自分の手札を全て捨てる。そしてこの瞬間、俺は手札からトラップ発動、精霊の鏡! このカードはプレイヤー1人を対象とする魔法の効果を別のプレイヤーに移し替える。無の煉獄の効果は明日香へ移る!」

 

「くっ、まさか貴方は最初から!」

 

 

 精霊の鏡によって対象が明日香へ移った無の煉獄。一見、明日香へドローさせただけに見えるが勿論、それには裏がある。

 

 

「ああ、そうだ! 元々、お前に可能性は存在しない! 俺はモンスターを裏側守備表示でセット。カードを2枚伏せてターンエンド! さあ、無の煉獄の代償だ! 手札を全て捨てろ!」

 

 

 無の煉獄のデメリット。それはエンドフェイズに発動する手札を墓地へ送る効果。セキヒトは精霊の鏡によって、無理矢理明日香へそのデメリットを押し付けたのだ。

 

 

「く、私は6枚の手札を墓地へ送る」

 

 

 セキヒトの策略により手札という可能性を全て失った明日香。明日香が危惧していた通り、セキヒトは明日香に選択されているが本当はどちらでも構わないのだ。

 

 

「…………私のターン」

 

 

 ここで状況を打破するカードを引けなければそのまま押し切られる。明日香の本能がそう告げていた。

 

 

(ジュンコやももえ、なにより兄さんの為にも私は負けられない!)

 

 

「――――ドロー!」

 

 

 震えた手でデッキから引いたカードを確認する明日香。そして、小さく微笑む。希望はまだ繋がっている。

 

 

「私は手札から強欲な壺を発動! そしてカードを2枚ドロー!」

 

 

 再びドローする明日香。引き当てたカードを見ればデッキが全力で明日香を後押ししているのが判る。

 

 

「私は手札から天使の施しを発動! カードを3枚ドローして2枚捨てる。そして貪欲な壺を発動、墓地に眠る5体のモンスターをデッキへ戻し、2枚ドロー!」

 

 

 まるで十代を思わせるドロー強さ。手札が0枚の状況から一気に3枚まで増やした。これがデッキと本物の信頼関係を築いた決闘者の強さ。だからこそ、セキヒトは喜びに身体を震わせる。この本物を闇へ引き擦り込む。その愉悦はどれほどのモノだろうか。

 

 

「そして私は手札から融合を発動! 手札のエトワール・サイバーとブレード・スケーターを融合してサイバー・ブレイダーを召喚! 現れなさい、サイバー・ブレイダー!」

 

 

 明日香のフィールドへ現れるサイバー・ブレイダー。それは皮肉な事にセキヒトへ敗北を刻んだモンスターであり、明日香が信頼を置くエースモンスターだ。

 

 

「この瞬間、俺はトラップ発動、威嚇する咆哮! このターン相手は攻撃宣言をする事ができない」

 

 

 次の瞬間、自身へ敗北を刻んだモンスターを警戒したセキヒトはトラップを発動してサイバー・ブレイダーの攻撃を封じる。

 

 

「……私はこれでターンエンド」

 

 

 セキヒトはまだ何かを企んでいる。それが理解出来るからこそ、伏せモンスターを破壊したかった明日香だったが、攻撃を封じられた為にターンをセキヒトへ譲る。

 

 

「俺のターン、ドロー。さて、これで退屈な決闘は終わりだ。天上院明日香」

 

 

 カードを手札へ加えて、宣言するセキヒト。邪悪に笑うその笑みが明日香の警戒を極限に高める。

 

 

「俺は裏側守備表示のモンスターを攻撃表示へ変更。現れろ、ブレイン・ジャッカー!」

 

 

 ブレイン・ジャッカー☆2闇 ATK/200DEF/900

 効果・リバース:このカードは装備カード扱いとなり、相手フィールド上モンスターに装備する。このカードを装備したモンスターのコントロールを得る。相手のスタンバイフェイズ毎に相手は500ライフポイント回復する。

 

 

 セキヒトのフィールドへ出現する一つ目の悪魔。脳味噌を思わせる身体から生える翼と爪。その異端さが際立っている。そしてセキヒトは笑った。

 

 

「ブレイン・ジャッカーのリバース効果を発動! その効果によりお前のエースカードは俺のモノとなる!」

 

 

 一つ目の悪魔はその羽で飛び上がると本来なら触れてはならないフィギアスケーターへ飛び移る。そして鋭い爪をサイバー・ブレイダーの頭へ突き刺すとその脳味噌を侵食して自分の意のままに操る傀儡へ貶める。

 

 

「サイバー・ブレイダー!」

 

 

 悲鳴を上げ、サイバー・ブレイダーの意志を蹂躙してセキヒトのフィールドへ移動するブレイン・ジャッカー。エースモンスターであり、最後の砦を奪われた明日香が悲痛な叫びを上げる。

 

 

「これで最後だ。俺は手札から八汰烏を召喚する!」

 

 

 八汰烏☆2風 ATK/200DEF/100

 効果・このカードは特殊召喚できない。召喚・リバースしたターンのエンドフェイズ時に持ち主の手札に戻る。このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた場合、次の相手ターンのドローフェイズをスキップする。

 

 

 セキヒトのフィールドへ現れた一匹の鳥。しかし、その見た目は欺瞞であり、その正体は正真正銘の悪魔だ。

 

 

「そして八汰烏でダイレクトアタック!」

 

「ッ~!」

 

 

 天上院明日香LP4000→3800

 

 

 空へ羽ばたき、急降下した八汰烏が明日香の身体を傷つける。けして高い攻撃力では無いものの、闇のゲームにおける確かな痛みが明日香を襲う。

 

 

「そして俺はトラップ発動、神の恵み。このカードは自分がカードをドローする度に、自分は500ライフポイント回復する。そしてエンドフェイズ時、その効果によって八汰烏は手札へ戻る。これで俺のターンは終了だ」

 

「? サイバー・ブレイダーで追撃してこないとはどういうつもり?」

 

「くっくっく、今に判るさ」

 

 

 圧倒的有利な状況で追撃してこないセキヒトへ警戒を見せる明日香。そんな明日香に対して、セキヒトはただ笑っているだけだ。

 

 

「そう……。舐めているならそれでもいいわ。私のターン、ド――――」

 

「この瞬間、八汰烏の効果発動! 八汰烏の攻撃を受けた相手はドローフェイズをスキップする! つまり、ドローも出来ず、壁となるモンスターも伏せカードも存在しない今、お前は俺の攻撃を永遠に受け続ける事しか出来ない! そしてブレイン・ジャッカーの効果でお前はLPを500回復!」

 

 

 天上院明日香LP3800→4300

 

 

「貴方、もしかして――――」

 

「その通り! この瞬間、お前の心を折る無限ループが完成した! ブレイン・ジャッカーによるLP回復と八汰烏によるドロースキップ。この二つによって闇のゲームによる苦痛が永遠にお前を襲う! お前の敗北は決した。俺はお前を倒したりしない。闇のゲームによって齎される痛みを回避するには自分の意志でサレンダーするしかない!」

 

「ふざけないで! 私は決闘者よ! 自分の意志でサレンダーなんて絶対にしないわ!」

 

「ああ、そうかい。それなら無限の痛みに苛まれていろ!」

 

 

 確かに勝敗は決した。それでも最後まで決闘者としての誇りを胸に抱く明日香。そんな明日香の態度にセキヒトは笑いながら言う。

 

 ――――そして引き起こされる圧倒的な惨劇。八汰烏による苦痛と明日香のエースモンスターでもあるサイバー・ブレイダーの攻撃。終わりの無い暴力が明日香を襲い続ける。

 

 

「俺はサイバー・ブレイダーで攻撃、グリッサード・スラッシュ!」

 

「きゃあああぁぁ!」

 

 

 天上院明日香LP2300→200

 

 

 もう何度目になるか判らないダイレクトアタック。闇のゲームによる痛みが明日香の身体を駆け巡り、心が折れかけている明日香はらしくない悲鳴を上げる。そして限界が訪れたのか、膝を折り地面へ倒れ伏す。本来、決闘者がこんな状態に陥れば決闘はセキヒトの勝利で中止される。しかし、これはセキヒトがルールの闇のゲーム。決闘が終了するまで永遠に終わらない。

 

 

「おっと、そろそろデッキの枚数が減ってきた頃だな」

 

「…………、そう。それなら次のターンにでも私を倒しなさい。私は絶対にサレンダーしたりしない」

 

 

 ターンエンドを宣言しようとしたセキヒトは自分のデッキがかなり減っている事に気付く。後、数ターンもすればセキヒトのデッキは尽きてしまう。そうなった場合、セキヒトの負け。明日香の決闘者としての心を折る為にサレンダーを要求したセキヒトだったが、負けてしまってはどうしようもないので倒すしかない。

 

 明日香は闇のゲームの苦痛に耐え、決闘者としてサレンダーだけはしなかった。

 

 

「あ~あ、残念。俺が永遠の苦痛を与えると言ったんだ。デッキ切れで終わると思っているのか? 俺はトラップ発動、現世と冥界の逆転。このカードは自分の墓地にカードが15枚以上ある時、1000ライフを払い発動。お互いに自分の墓地と自分のデッキのカードを全て入れ替える。その際、墓地のカードはシャッフルしてデッキゾーンにセットする。これでデッキの補充は出来た。そしてこの瞬間、手札から鳳凰神の羽根を発動。手札を1枚捨てる。自分の墓地からカードを1枚選択し、デッキの一番上に戻す。俺が選択するカードは勿論、現世と冥界の逆転。因みに戻ったデッキの中にもう1枚鳳凰神の羽根が入っている。これで本当の無限ループが完成した」

 

 

 ダークネス赤人LP16500→15500

 

 

 神の恵みによるLP回復でたった1000ポイントなど痛くも痒くもないセキヒト。決闘者としての誇りを守るたった一つの術さえも失われた今、明日香の表情に絶望が浮かぶ。

 

 

「あ、そういえば忘れているようだが、この決闘には制限時間がある事を忘れていないよな? ほら、後数分もしない内にお前の親友二人は俺の言いなり人形だ」

 

 

 白々しく身体の前で両手を叩き、ジュンコとももえの魂が封印されたカードを掲げる。セキヒトはそのカードを地面に倒れて動けない明日香へ見せ付けるように投げる。カードは導かれるように明日香の前へ飛んで行く。ぼやけていく視界の中、二人のハートマークは完全に赤色へ染まる寸前だった。

 

 

「さあ、どうする? 永遠の苦痛か、それとも自分で選ぶ敗北か。時間はもう無いぞ?」

 

 

 薄れていく意識の中、明日香の心は決まった。既に自分で戦う力は残されていない。ならばせめて、二人の親友だけでも。決闘者としての誇りと比べれば比べるまでもなく、二人の親友が大切だ。

 

 明日香はもう満足に動かせない身体で力を振り絞り、デュエルディスクのデッキへ手を添える。

 

 

「わ、私はこのゲームを……サレンダーするわ」

 

 

 その宣言と共に明日香の頬を一筋の涙が流れる。屈辱や悔しさ、様々な感情が混ざった涙が地面に落ちた瞬間、決闘終了のアラームが鳴り響く。

 

 

「巻き込んでしまってごめんなさい、ジュンコ、ももえ……。貴女達だけでも……」

 

 

 高笑いするセキヒトの耳障りな声を聞きながら明日香は薄れていく意識の中で呟く。そして闇のゲームに負けた明日香の魂はカードへ封印される。

 

 そしてセキヒトは手に入れた明日香のカードを追加して“三枚”揃ったカードを見て満足そうに頷くとデッキホルダーへ戻す。

 

 

「全く、最近の若者は話を聞いてないな。俺は最初から“無抵抗”で降伏した場合と言ったのに。決闘という抵抗をした時点であの交渉は無効だってーの。勝手に勘違いしたようだけどな」

 

 

 明日香の勘違いに気付いても訂正せずに心の中で爆笑していたセキヒトはやれやれと肩を竦めて灯台から立ち去る。

 

 セキヒトによって光の一角が闇へ飲み込まれた瞬間だった。

 




主人公は外道からクサレ外道へランクアップです。
そしてただ明日香を堕とす為だけに今まで封印してきた禁断を解放。キリッ
禁止のオンパレードでしたがそれは遊戯王世界だから(開き直りです)
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