カミテン~遊戯王TFへ転生してハーレム目指す――でも~   作:ニョニュム

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蠱毒

 強制ハンデを負わせて一方的に蹂躙した挙句、サレンダーした相手の思いさえ踏み躙り、決着をつけた決闘の翌日。

 

“七星門の鍵”を任せられるほどの決闘者であり、自身と対等以上の決闘をする天上院明日香の心を折って、その魂をカードへ封印したセキヒトはデュエルアカデミアの校舎から少し離れた森の中を歩いていた。

 

 

「~っ! 思っていたよりも遠いな。もう少しきちんと用意してこれば良かった……」

 

 

 周囲に生息する木々によって太陽の光が遮られ、じめじめとした空気が流れる森の中で右手に手紙ようなモノを持って進んでいたセキヒトは立ち止まって背負っていたリュックサックからスポーツ飲料を取り出して、水分を補給する。

 

 喉の渇きを潤したセキヒトは手紙を確認して周囲を見渡すと困った様子で頭を掻く。

 

 

「やっぱりこの辺りで合っている筈なんだけどな」

 

 

 ぼやきながら視線を手紙へ落とす。そこにはデュエルアカデミアにある湖畔までの地図と簡潔に“七星門の鍵”について、と書かれている。丁寧な事に嗜好を凝らしたのか、手紙の一部には赤い斑点模様がある。そしてなによりこの手紙を届けてくれたのは夜行性である筈のコウモリだった。

 

 “七星門の鍵”と湖畔、それに手紙を持ってきたコウモリ。これだけの材料に手紙を彩った血の斑点模様とくれば、誰が自分を呼び出したのか容易に想像出来るセキヒト。当然、セキヒトへ手紙を出して呼び出した人物はセブンスターズとして十代達と激闘を繰り広げるカミューラである。

 

 何故、セキヒトの正体がカミューラにバレているのか。正直な所、判明していないが情報収集の為に明日香をつけていたコウモリを通して、明日香と闇のゲームを行なう姿を見られたのだと思っている。

 

 どちらにせよ、カミューラの目的が“七星門の鍵”である今、身の危険は無いと判断してカミューラの招待状に従って、湖畔を探している。同時にセブンスターズとセキヒトの目的は似ているようでまるで違う。セキヒトはカイザー亮を苦しめ、自らへ敗北を刻んだ決闘者へ復讐する為に決闘して、その結果として“七星門の鍵”と相手を闇へ引き摺り込む。極論、“七星門の鍵”はどうでもいいのだ。

 

 セブンスターズとセキヒトは交渉次第で共存可能だ。同時に交渉が決裂した場合に備えてデュエルディスクは常に身に着けている。

 

 カミューラの招待状で指定された場所の付近まで辿り着いたセキヒトは警戒を怠らずに周囲を捜索して数分後、カミューラが根城にしている湖畔を発見することが出来た。まだ、太陽が空高く昇っている昼間にも関わらず、湖畔の周りには不可解な霧が立ち込めている。

 

 少し視線を広げてみれば湖畔の上に鮮血を思わせる鮮やかな赤色をしたレッドカーペットが岸から湖畔の中央へ伸びていき、湖畔の中央には厳格な佇まいの城が控えている。

 

 

「さてと、鬼が出るか蛇が出るか。それとも出るのは吸血鬼かな?」

 

 

 自分の呟きに対して小さく口元を歪め、レッドカーペットの上を進む。どういう原理か判らないが周囲が水に囲まれている為に気分は水の上を歩いているようだ。時折、セキヒトの歩みを止めようと飛んでくるコウモリ達にはカミューラの招待状を掲げて見せると納得した様子で何処かへ飛んで行ってしまう。

 

 数分もしない内に城門の前まで辿り着くセキヒト。セキヒトの到着と同時に城門が開門されてセキヒトを城の中へ導く。中で控えていた一匹のコウモリが付いて来いと言わんばかりにセキヒトと絶妙な距離で飛んで行くのに付いて行く。コウモリに案内されると貴重な体験をしたセキヒトが案内されたのは大広間だった。

 

 そして、視線の先には一人の女性がセキヒトを待ち構えていた。

 

 腰まで届く美しい翠色の髪に男を惑わせる妖艶な肢体、レッドワイン色の鮮やかなドレスで着飾ったカミューラ。吸血鬼であることすら忘れてしまいそうになる美女である。

 

 

「ごめんなさい、まさかこんな時間に尋ねてくるとは思っていなかったから大したおもてなしも出来なくて」

 

「いや、気にしなくていいさ。生憎、俺は夜行性じゃあないんでね。相手の用事を考えず、こんな時間に押し掛けた俺が悪い」

 

 

 頭を下げるカミューラの言葉に対して、肩を竦めて答えるセキヒト。何気無い会話に見える一方でお互いにお互いを牽制する二人。動じた様子を見せないセキヒトにカミューラは舌を巻く。カミューラとセキヒトはこれが初対面だ。カミューラが一方的にコウモリを通してセキヒトを知っているだけの筈。しかし、実際は違った。

 

 普通の人間なら首を傾げるであろうカミューラの言葉に対して、セキヒトはカミューラの正体を知っているような反応をした。何処から情報を仕入れたのか判らない。だが、セキヒトが食えない人間である事は判った。

 

 

(なるほど……ね。見た目は正直、後一歩ほど足りないけど、中身の方は昨日の決闘で見た通りだわ。人間にしては底が知れないわ)

 

 

 明日香との決闘において、ただの勝利では満足出来ず誇り高い対戦相手の心を折る為に仕組まれた無限ループ。敵に回れば、その戦略の組み立ては充分に脅威だ。なによりその中身に相当面白い物を内包している。

 

 

「いいわ、貴方と腹の探りあいをした所で私に得は無い。さっさと本題に入りましょう。私の要求は手紙にあった通り貴方が昨日、回収した“七星門の鍵”を渡して欲しい。勿論、それだけでは貴方にメリットが無い。だから、私に出来る事ならある程度の要求に応えてあげるわ」

 

「出来る事……ね。例えばどんな?」

 

「そうね。私が集めた情報だと貴方は女好きらしいからこの島に住む女性の血を吸って、貴方の指示に従う下僕に変えてあげてもいいわ」

 

「なるほどね。確かに俺の情報をよく調べている訳だ。それなら俺も楽が出来る」

 

 

 カミューラの提案にセキヒトは感心した様子で頷く。確かに一人一人、闇のゲームへ引きずり込んで決闘で倒すよりも吸血鬼の下僕にして、セキヒトの命令に従うように“命令”すれば圧倒的に時間が早い。“効率”だけを見ればとても魅力的な話である。

 

 

「……だが、断る。お前は何も判っていないよ、カミューラ。大前提にそれだとお前が皆の主になってしまう。確かに俺は傷物やお古であっても許容する。しかし、それは俺が主人だからだ。なにより、光り輝く存在が少しずつ闇へ染まっていく工程こそが至極だろうが」

 

 

 にんまりと口元を歪めて舌なめずりして笑うセキヒト。“結果”だけを手に入れても何も面白くない。光である者達が闇へ、自分へ堕ちていく工程を眺める事が究極の愉悦なのだ。躊躇い無く言い切るセキヒトにカミューラは強烈な嫌悪感を抱き、眉を顰める。

 

 元々、“人間”が嫌いなカミューラにとって、セキヒトのような人間は一番嫌いでおぞましさすら覚える。カミューラは長い年月を生きた吸血鬼だ。普通の人間では考えられない数々の経験をしている。その中には“人間”が嫌いになる前、吸血鬼なんて関係無い、と言って自分を愛してくれた人間もいた。

 

 だが、そういう人間はカミューラが心を開く頃には他の人間によって異端と罵られて処刑された。そういうことを何度も繰り返してきた。

 

 吸血鬼一族を殺した人間達の中には女性やまだ幼い子供をしゃぶり尽くした後で殺したおぞましい人間もいた。セキヒトへ抱いた嫌悪感はそんな人間達と同様の物。

 

 こちらの利益となり、敵対する理由が無いからこそ、こうして交渉の場を構えているが本来ならカミューラが一番嫌うタイプの人間がセキヒトだ。出来ることならさっさと交渉を済ませたい。

 

 

「そうだな。俺の要求は一つ。お前が持っているその人形、カイザー亮の魂を解放しろ」

 

「冗談、コレは私のモノよ。解放する理由が無いわ」

 

 

 セキヒトの視線はカミューラが持っているカイザー亮の魂が封印されている人形を見ている。

 

 

「……理由ならある。ソイツは俺が倒すべき獲物だ。それを横から奪われた」

 

「ふふ、それは貴方が愚鈍だからよ。自分のマヌケを人のせいにしないで頂戴。見苦しい」

 

「…………判った、もういい。これ以上は話しても無駄なようだ」

 

「ええ、交渉は決裂ね。決闘で白黒つけましょう」

 

「大嫌いな人間の俺に傅かしてやるよ」

 

 

 交渉は決裂し、二人はデュエルディスクを構える。

 

 

「「決闘!」」

 

 

 ――――闇と闇の潰し合いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「先攻は私のようね。私のターン、ドロー!」

 

 

 闇と闇の潰し合い。その始まりに選ばれたのはセキヒトが今いる城の主でもあるカミューラだ。カードを手札へ加えて、手札を確認するカミューラ。全ての手札を確認したカミューラは優雅な動作のまま動き出す。

 

 

「私は手札から不死のワーウルフを召喚するわ」

 

 

 不死のワーウルフ☆4闇 ATK/1200DEF/600

 効果・このカードが戦闘で破壊された時、デッキから“不死のワーウルフ”1体を自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。この効果で特殊召喚に成功した時、そのカードの攻撃力は500ポイントアップする。

 

 

 カミューラのフィールドへ現れた一匹のオオカミ。吸血鬼のカミューラに従う人狼の両腕にはその怪力を示すように千切れて鎖の手錠がある。しかし、先攻であるこのターン、その怪力を見せる事は出来ない。

 

 

「私はこれでターンエンド。貴方にも不死の恐怖を味合わせてあげるわ!」

 

「ああ、そうかい。俺のターン、ドロー」

 

 

 カミューラがターンを終了して、セキヒトへターンが移る。自分のターンとなったセキヒトは闇のゲームも三回目という事もあり、少し慣れた様子で落ち着いた態度でデッキからカードを手札へ加える。そして手札へ視線を落とすセキヒト。

 

 カミューラと決闘になるかも知れない、と元々予想していたセキヒトはきちんとカミューラ対策のデッキを持ってきている。カミューラとの対戦で最も気を付けなければならないカードは“幻魔の扉”。その破格な効果と何度でも蘇る不死の軍団はかなり面倒だ。

 

 

「俺は手札から仮面竜を召喚する」

 

 

 仮面竜(マスクド・ドラゴン)☆3火 ATK/1400DEF/1100

 効果・このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分のデッキから攻撃力1500以下のドラゴン族モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。

 

 

 セキヒトの召喚に従い、フィールドへ出現する一匹の竜。白い鱗で顔面を覆うその竜は名前の通り、仮面を被っているように見える。仮面竜の咆哮が周囲へ鳴り響き、自分が喰らうべき獲物としてカミューラのフィールドで控えているワーウルフへ視線を注ぐ。

 

 

「俺は仮面竜で不死のワーウルフを攻撃!」

 

 

 セキヒトの号令に従い、仮面竜は咆哮を轟かせながら不死のワーウルフへ襲い掛かる。不死といえど、真の覚醒を果たしていないワーウルフは生まれながらにして強靭な躯体を持つドラゴンに蹂躙されて破壊される。

 

 

「ふふ、この瞬間、私は不死のワーウルフの効果を発動するわ。デッキから不死のワーウルフを特殊召喚! そして蘇ったワーウルフの攻撃力がアップする。残念だったわね。私達は不死の一族、そう簡単に死なないわよ」

 

 

 カミューラLP4000→3800

 

 

 不死のワーウルフ ATK/1200→1700

 

 

 闇のゲームによる痛みがカミューラを襲う中、カミューラは妖艶な笑みを浮かべている。そして、その余裕の正体は力を増して再びフィールドへ現れた不死のワーウルフにある。仮面竜に破壊された筈のワーウルフはその獰猛さを増し、攻撃力が仮面竜を凌駕した。

 

 

「…………だったら、死ぬまで殺し尽くす。それで済む話だ。俺はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

「そう、それなら無意味な行為を繰り返しなさい。私のターン、ドロー!」

 

 

 セキヒトの反応に対して嘲笑うカミューラは自分のターンが回ってきた事を確認してカードを手札へ加える。

 

 

「そして私は手札からピラミッド・タートルを召喚するわ」

 

 

 ピラミッド・タートル☆4土 ATK/1200DEF/1400

 効果・このカードが戦闘によって墓地に送られたとき、デッキから守備力2000以下のアンデット族モンスター1体をフィールド上に特殊召喚してもよい。

 

 

「ッ!」

 

 

 カミューラのフィールドへ現れた一匹の亀。頭に王冠のようなものを乗せ、甲羅の部分にピラミッドを持つ亀はゆっくりとセキヒトの前に立ち塞がる。仮面竜に攻撃力が劣るピラミッド・タートルの登場にセキヒトは動揺を見せる。その様子を見たカミューラは嬉しそうに笑う。

 

 

「そう、このモンスターに警戒するのね。いいわよ、貴方。顔は好みじゃあないけど、遊ぶ相手としては充分だわ! 私はピラミッド・タートルで仮面竜を攻撃!」

 

 

 亀と竜。長い年月を生きる生物同士の戦いは種としての力が強い竜が勝利した。

 

 

 カミューラ3800→3600

 

 

 破壊の爆風がカミューラを襲い、頬へ一筋の切傷を負う。しかし、怪我を負った本人であるカミューラは頬から流れてきた血を手で拭うと自身の血をフィールドへ飛ばす。

 

 

「この瞬間、ピラミッド・タートルの効果を発動。カードの効果により私はデッキからヴァンパイア・ロードを特殊召喚する! 私の血をあげる、たから現れなさい、ヴァンパイア・ロード!」

 

 

 ヴァンパイア・ロード☆5闇 ATK/2000DEF/1500

 効果・このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、カードの種類(モンスター・魔法・罠)を宣言する。相手は宣言された種類のカード1枚をデッキから墓地へ送る。また、このカードが相手のカードの効果によって破壊され墓地へ送られた場合、次の自分のスタンバイフェイズ時にこのカードを墓地から特殊召喚する。

 

 

 カミューラの血で濡れたフィールドへ降臨する吸血鬼の王。全てを深淵へと引きずり込んでしまいそうな漆黒のマントを纏い、その身に秘めたカリスマを感じさせる。

 

 

「そして私は不死のワーウルフで仮面竜を破壊する」

 

 

 一度、死んだ事により獰猛さを増したワーウルフの攻撃に晒され、仮面竜は断末魔の咆哮をあげる。

 

 

 ダークネス赤人LP4000→3700

 

 

「~! この瞬間、俺も仮面竜の効果を発動! デッキからもう一体の仮面竜を守備表示で特殊召喚する! 残念だったな、カミューラ。不死じゃあ無くともフィールドのモンスターを維持する方法はいくらでもある。自分の代わりに仲間を呼ぶのだって充分、生きている証拠だ。自慢の不死も結局、お前の大嫌いな人間によって成されて行く運命だ!」

 

 

 自らに襲う衝撃に顔を顰めつつ、セキヒトは不敵に笑う。不死であろうと無かろうと命を繋ぐ方法はいくらでもある。そしてそれは不死を誇りにするカミューラにとって、ただの侮辱でしかない。

 

 

「貴様ぁぁぁぁぁ! 私はヴァンパイア・ロードで仮面竜を破壊!」

 

 

 カミューラの怒りに触発されたヴァンパイア・ロードが華麗に空を舞い、仮面竜の首筋へ食らいつく。仮面竜の生血を啜るヴァンパイア・ロードは吸血に満足したのか、首筋から口元を離す。鮮血に染まる口元を拭ったヴァンパイア・ロードは血を抜かれた事で疲弊した仮面竜の首を容赦無く切り落とした。

 

 

「この瞬間、俺は再び仮面竜の効果を発動。デッキから3体目の仮面竜を守備表示で召喚する。どうだ、吸血鬼。殺しても殺しても立ち上がる。オハコが奪われた気分は? 結局、吸血鬼は人間には敵わないんだよ」

 

 

 衝撃的なスプラッタ映像にも関わらず、セキヒトは特に動じた様子もなく新たな仮面竜を召喚する。闇のゲームという異常な状況にも慣れてきたセキヒトはカミューラを挑発する。

 

 

「…………判ったわ。吸血鬼の王でさえ、満足出来ないなら貴方には最強の吸血鬼を味あわせてあげる。私はヴァンパイア・ロードをゲームから除外してヴァンパイアジェネシスを特殊召喚!」

 

 

 ヴァンパイアジェネシス☆8闇 ATK/3000DEF/2100

 効果・このカードは通常召喚できない。自分フィールド上に存在する“ヴァンパイア・ロード”1体をゲームから除外した場合のみ特殊召喚する事ができる。1ターンに1度、手札からアンデット族モンスター1体を墓地に捨てる事で、捨てたアンデット族モンスターよりレベルの低いアンデット族モンスター1体を自分の墓地から選択して特殊召喚する。

 

 

 カミューラのフィールドへ現れる始まりの吸血鬼。その姿は勇ましく、圧倒的な存在感を周囲へ振りまいていく。

 

 

「そして手札からジェネシス・クライシスを発動。このカードは1ターンに1度、自分のデッキからアンデット族モンスター1体を手札に加える事ができる。自分フィールド上に“ヴァンパイアジェネシス”が存在しない場合、このカードと自分フィールドのアンデット族モンスターを全て破壊する。私はカードの効果でデッキから龍骨鬼(りゅうこつき)を手札に加える。そして私は異次元からの埋葬を発動する。このカードはゲームから除外されているモンスターカードを3枚まで選択し、そのカードを墓地に戻す。除外されているモンスターはヴァンパイア・ロードただ一人。私はヴァンパイア・ロードを墓地へ戻すわ」

 

 

 ゲームから除外されるという死の概念すら存在しない世界へ送られたヴァンパイア・ロードはカミューラの手によって再び墓地へ帰還する。

 

 

「そして私はヴァンパイアジェネシスの効果を発動。龍骨鬼を墓地に捨て、ヴァンパイア・ロードを復活させる! 見なさい、これが吸血鬼の力よ! ちまちまと生き残る貴方達人間とは違うのよ!」

 

 

 カミューラのフィールドへ並ぶ吸血鬼の始祖と吸血鬼の王。そして、そんな吸血鬼を守るようにワーウルフが立ち塞がっている。

 

 

「私はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

 

 自分のターンである事を確認してセキヒトはデッキへ手を添える。どんどんデッキへ集まっていく漆黒の闇。現状がピンチである事はセキヒトも理解している。それでもなお、身体の奥から湧き出てくるこの力さえあれば、負ける気はしない。

 

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 

 漆黒の闇に染まったカードを引き抜き、確認する。着々と馴染んできている闇の力にセキヒトは微笑した。

 

 

「俺は手札から二重召喚(デュアル・サモン)を発動。このターン、自分は通常召喚を2回まで行う事ができる。そして俺は手札からヴァンパイア・キラーを召喚だ」

 

 

 ヴァンパイア・キラー☆4闇 ATK/1600DEF/1600

 効果・このカードが闇属性モンスターと戦闘を行う場合、ダメージ計算を行わずそのモンスターを破壊する。

 

 

 セキヒトのフィールドへ現れる一人の青年。屈強な肉体と知的な顔立ち、吸血鬼狩りを生業としている青年はカミューラのフィールドに並ぶ吸血鬼の王と吸血鬼の始祖を目撃して、獲物を見つけた笑みを浮かべる。

 

 

「人間風情がぁぁぁぁ!」

 

「その人間に刈られるのが、吸血鬼の宿命だろ。ヴァンパイア・キラーでヴァンパイアジェネシスを攻撃。この瞬間、ヴァンパイア・キラーの効果でヴァンパイアジェネシスを破壊する」

 

「させないわ、トラップ発動! 妖の紅月! 手札のアンデット族モンスターを1枚捨てて発動する。相手フィールド上のモンスター1体の攻撃を無効にし、そのモンスターの攻撃力の数値分、自分のライフを回復する。その後、バトルフェイズを終了する! この効果で私は手札のヴァンパイア・バッツを捨て――――」

 

「残念、俺は王宮のお触れを発動していた! このカードがフィールド上に存在する限り、このカード以外のフィールド上の全ての罠カードの効果は無効化される。つまり、妖の紅月の効果は無効!」

 

 

 セキヒトの指示に従い、手に持ったムチを自由自在に操り、カミューラの怒りに触発されて激昂しているヴァンパイアジェネシスを巧みな罠に嵌めるヴァンパイア・キラー。王宮の依頼により数多の吸血鬼を殺害してきた青年にとって、吸血鬼の始祖は最大の敵であり、最高の目標だ。そして一切の油断を見せることなく、青年は吸血鬼の始祖を破壊した。

 

 

「そしてこの瞬間、ジェネシス・クライシスの効果が発動する。始祖の消滅により自慢の不死軍団は墓地へ行く」

 

「そ、そんな馬鹿な!」

 

 

 悲痛な叫びをあげるカミューラを余所に始祖の敗北によってカミューラが築き上げた不死の軍団は消滅する。

 

 

「俺は仮面竜でカミューラへダイレクトアタック」

 

 

 カミューラLP3600→2200

 

 

 築き上げた栄華が一瞬にして消滅し、呆然と立ち尽くすカミューラへ仮面竜の追い討ちが牙を剥く。仮面竜の攻撃によって吹き飛ばされたカミューラは力無く立ち上がる。

 

 

「まだ、俺のターンは終わっていない。俺は二重召喚の効果によって、もう一体モンスターを召喚できる。俺は仮面竜を生贄にホルスの黒炎竜LV6を召喚する! これで終わりだ。手札からレベルアップ! を発動する。フィールド上に表側表示で存在する“LV”を持つモンスター1体を墓地へ送り発動する。そのカードに記されているモンスターを、召喚条件を無視して手札またはデッキから特殊召喚する。ホルスの黒炎竜LV6を対象として、デッキからホルスの黒炎竜LV8を特殊召喚!」

 

 

 ホルスの黒炎竜LV6☆6炎 ATK/2300DEF/1600

 効果・このカードは自分フィールド上に表側表示で存在する限り、魔法の効果を受けない。このカードがモンスターを戦闘によって破壊したターンのエンドフェイズ時、このカードを墓地に送る事で“ホルスの黒炎竜LV8”1体を手札またはデッキから特殊召喚する。

 

 

 吸血鬼との激戦を潜り抜けた仮面竜が後退して、後を任せるように降臨する一匹のドラゴン。そしてセキヒトの援護を受けたドラゴンは自分の限界を越えて、新たな覚醒をする。

 

 

 ホルスの黒炎竜LV8☆8炎 ATK/3000DEF/1800

 効果・このカードは通常召喚できない。“ホルスの黒炎竜LV6”の効果でのみ特殊召喚する事ができる。このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、魔法カードの発動を無効にし破壊する事ができる。

 

 

 漆黒の炎を撒き散らし、セキヒトのフィールドへ降臨するホルスの黒炎竜。その圧倒的存在感は大広間を揺るがす。

 

 

「俺はこれでターンエンド」

 

「……私のターン、ドロー!」

 

 

 セキヒトのフィールドには吸血鬼殺しと圧倒的な存在感を示す一匹のドラゴン。カミューラがこの状況を引っくり返すには“あのカード”しかない。カミューラにも負けられない理由がある。そして引き当てた手札を見て、カミューラは笑った。

 

 

「この勝負は私の勝ちよ。貴方にも見せてあげるわ、幻魔の力を! 私は幻魔の扉を発動! 相手フィールド上に存在する全てのモンスターを破壊する。その後、このターン召喚、特殊召喚されたモンスターを自分及び相手の手札、デッキ、墓地から選択し召喚条件、蘇生制限を無視して自分フィールド上に特殊召喚する! これで貴方も終わ――――」

 

 

カミューラの背後で開かれた幻魔の下へ続く扉。大広間へ溢れる邪悪な気配の中、不敵に笑っているセキヒトに気付いた。

 

 

「それはどうかな? この瞬間、ホルスの黒炎竜LV8の効果を発動する。魔法カードの発動を無効にし、破壊する! つまり、幻魔の扉は発動しない。諦めろ、カミューラ。お前はもう俺に囚われた籠の鳥だ。魔法を封じ、罠も封じた。そして吸血鬼殺しがフィールドにいる。これでお前の負けだ、カミューラ!」

 

「殺す、必ず殺す! 絶対に貴様だけは殺す!」

 

「そうかい、それなら頑張って俺に従うお人形から抜け出すんだな。やれ、ホルス! ブラック・メガフレイム!」

 

 

 カミューラLP2200→-800

 

 幻魔の扉を焼き尽くしたホルスの黒炎がそのままカミューラを包み込む。セキヒトへおぞましいほどの殺気を飛ばすカミューラ。しかし、そんなカミューラの断末魔すら鼻で笑うセキヒト。黒炎に身を焼かれ、倒れ伏すカミューラ。その魂はセキヒトの持つカードに封印された。

 

 

「ちっ、面倒の掛かる奴だ」

 

 

 主の失踪により崩壊が始まる城。魂が無くなり、倒れ伏すカミューラと人形から解放され、気絶しているカイザー亮を見付けたセキヒトは舌打ちした。

 

 

「ふん、覚えておけ。お前を倒すのはこの俺だ。勝手に負けるな」

 

 

 二人を抱え、崩壊するカミューラの城から抜け出したセキヒトは気絶しているカイザー亮を放り投げるとそう吐き捨てて姿を森の中へ消した。

 




べ、別にカイザーの為に倒した訳じゃないんだからね!
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