カミテン~遊戯王TFへ転生してハーレム目指す――でも~   作:ニョニュム

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決闘者・小波赤人

 その場に立っていられないほど激しい揺れが翔のと決闘を終えたセキヒトを襲う。ざわざわと周囲に生える木々から葉の擦れる音が聞こえてくる。地震によって地面が揺れている最中、地面へ膝を突いて安全を確保したセキヒト。

 

 

「…………このタイミングでただの地震とは思わなかったけど――」

 

 

 揺れが少しずつ治まり、冷静に周囲を観察出来るようになったセキヒトは目前に広がる光景を前にして口を噤む。セキヒトと翔が決闘を行った場所を中心として円に広がり、取り囲むように周辺から地面に根付いた木々を薙ぎ倒し、姿を現す石柱。セキヒト達を取り囲む全ての石柱が姿を現すと同時に地面から土煙を起こして一つの台座がセキヒトの前に現れる。

 

 

「もしかして、これが……」

 

 

 七つの鍵穴を持つ台座。パッと見るだけで厳重に封印されていると判るソレの正体をセキヒトは知っている。

 

 “三幻魔”

 

 それは神に等しき力を持つ究極のカード。封印を解除し、世界へ解き放てばそれだけで世界へ大きな影響を与えてしまう力を持つ。それが三幻魔の正体であり、故に三幻魔は厳重な封印が施されて眠っている。

 

 

「だけど、どうして封印が……」

 

 

 目前に現れた台座の姿に戸惑いが隠せないセキヒト。台座を見て、不思議そうに首を傾げている。三幻魔を復活させる為には幾つかの工程をこなさなければならない。その中の一つであり、最重要な工程として上げられるのがデュエルアカデミアの存在するこの島へデュエリストの闘志――――デュエルエナジーに似たエネルギーを島全体に満たす事だ。デュエリストの闘志はある程度高い実力を持つ決闘者同士の決闘でなければ発生しない。

 

 “七星門の鍵”を鮫島校長から託された十代達とデュエルアカデミアを襲撃したセブンスターズは島にデュエリストの闘志を満たす為、選ばれた決闘者達だ。“七星門の鍵”を守護する十代達と各々が自身の望みを叶える為に三幻魔復活を目論むセブンスターズの決闘は激闘に次ぐ激闘。島にはデュエリストの闘志が満ちている。だが、それだけでは足りない筈なのだ。その原因はセキヒトにある。

 

 セキヒトが闇のゲームによって勝利して魂を封印した相手、天上院吹雪、天上院明日香、ヴァンパイアカミューラ。高い実力を持つ三人の決闘者はセキヒトによって三幻魔を巡る戦いから排除された。つまり、セキヒトに魂を封印された事により、正史において本来行われる筈だった決闘がいくつか消滅した。本来なら高位の決闘者同士の決闘でなければ発生しないデュエリストの闘志が三幻魔復活を可能とするまで島を満たす事は不可能だった筈。

 

 ――――鍵の守護者とセブンスターズ。選ばれた決闘者同士の決闘でなければデュエリストの闘志が発生しないモノだとセキヒトは勘違いしている。事実は異なり、微弱な量であれば一般生徒が行う決闘でもデュエリストの闘志は発生する。それならば決闘者の端くれでもあるセキヒトの決闘でもデュエリストの闘志が発生するのだ。

 

 それに鍵を守護する十代達に敗北を重ねたセキヒトは自分の事を過少評価している。セキヒトの心の在り処はともかく、決闘の実力については十分にデュエリストの闘志を発生させる実力を満たしている。実際に天上院兄妹やカミューラといった選ばれた決闘者を打倒している事からその実力は証明済み。決闘において発生するエネルギーの量は彼らに匹敵する。

 

 そして最後の引き金となった翔との決闘。

 

 十代達とセブンスターズの間に行われてきた激闘。激しくぶつかり合う両者の決闘を見守り、応援してきた翔は自分も気づかない内に成長していた。セキヒトと翔の間で繰り広げられた決闘は三幻魔復活の為に必要なエネルギーを満たしたのだ。その結果として三幻魔が復活しようとしている。

 

 十代達を混乱させる為に倒した明日香から回収しておいた“七星門の鍵”が淡い光を放つ。セキヒトが驚き、懐から取り出すと手に持っていた“七星門の鍵”は勝手に空中へ浮かぶと導かれるように飛んでいく。“七星門の鍵”が飛んでいく方向には地面から迫り上がってきた台座が鎮座している。そして“七星門の鍵”は光の粒子となって消え、台座の鍵穴を埋める。

 

 セキヒトが見守る中、数分もしない内に森を抜けて次々に“七星門の鍵”が台座の下へ集まってくる。光の粒子となって台座の鍵穴が次々に埋まっていく。そして最後の鍵が飛来して台座の七つあった台座の鍵穴が全て埋まり、台座の封印が解かれた。セキヒトの目前には3枚のカードが鎮座していた。

 

 

「……これが三幻魔のカード」

 

 

 封印されていた三幻魔のカードを前にして、セキヒトは無意識の内に導かれるように三幻魔のカードを手に取る。カードを手にした瞬間、思考回路の冷静な部分が早くカードを手放せ、と激しく警報を鳴らす。

 

 

「ッ!」

 

 

 その時、セキヒトは息を呑む。ドクン、とカードを持った手を伝わり三幻魔のカードが鼓動した。無意識の内に手にしたカードの力を理解した。この感覚の正体をセキヒトは少し前にも味わった事がある。セキヒトが闇の力を使う切っ掛けとなったダークネス吹雪との決闘。闇の力の象徴として召喚した三幻神に対抗する為に作られた三邪神。デッキに入っていない筈だった邪神ドレッド・ルートを手にした時と同じ鼓動。

 

 

「あれ? なんでこんな所にコナミがいるんだ?」

 

 

 セキヒトの魂が三幻魔の力で闇の深淵へ引きずり込まれそうになっていたその時、声が聞こえた。草木を掻き分け、音を立てながら現れた人物へ視線を向ける。

 

 

「――――遊戯十代ッ!」

 

「おう、どうした、コナミ? そんな驚くなよ、それに顔色も悪いぞ?」

 

「いや、大丈夫だ。なんでもない」

 

 

 引き込まそうになっていた魂が一気に現実へ引き戻される。急な眩暈と頭痛に襲われ、片手で頭を押さえるセキヒトの姿に十代が心配そうな表情を見せる。

 

 少しすると眩暈と頭痛が治まり、三幻魔のカードが持つ力がセキヒトの身体と魂へ馴染む。少しだけ余裕の出来てきたセキヒトは十代がここを訪れた理由を思いつき、手に持った三幻魔のカードと地面へ寝ている翔へ意識を向ける。

 

 

「おいおい、翔。姿が見えないと思ったらこんな所で熟睡かよ」

 

 

 闇のゲームに敗北して魂が封印された翔。事情を知らない十代は地面へ寝転がって寝ている翔に呆れながら近付いていく。何度も翔の肩を揺らして、翔を起こそうとする十代。しかし、魂がカードへ封印されている翔が十代の呼びかけに答える事は無い。

 

 

「――――なあ、コナミ。翔がここで寝ている理由、知ってるか?」

 

「……いや、知らないな」

 

「それじゃあ、少し前に光る鍵がこっちへ飛んでこなかったか?」

 

「ああ、それなら見たよ。そこの台座にあった鍵穴を埋めて消えていった」

 

 起きる気配を見せない翔の身体を抱えて、安全な場所まで移動させる十代。十代の行動を何も言わずに見守るセキヒト。翔を運ぶ十代の瞳は既に燃える闘志が宿っていた。良い意味で人を疑う事を知らない十代でも流石にこの状況と白々しいセキヒトの態度で翔をこんな状態へ追いやった人物が誰なのか安易に予想出来た。

 

 

「おい、十代! 何がどうなっている!」

 

 

 全ての決着は決闘でつける。一々語らずともデュエルアカデミアで暮らす学生ならば当然の常識。セキヒトと十代、二人の決闘者がデュエルディスクを構えたその時、新たな乱入者が現れる。

 

 黒いコートを身に纏い、背後にカードの精霊を連れて現れた万丈目。万丈目を引き金に台座へ飛んできた“七星門の鍵”を追いかけてきた鍵の守護者達が次々に集まってきた。既に臨戦態勢になっているセキヒトと十代の姿に混乱と戸惑いを隠せない面々。状況が呑み込まず、混乱している面々の中で一人だけ冷静にセキヒトへ視線を送っている人物がいた。

 

 勿論と言うべきか、やはりと言うべきか、その人物はセキヒトが好敵手(ライバル)と認め、勝ちたいと望む相手でもあるカイザー亮。魂を封印した丸藤翔の兄である丸藤亮だ。

 

 

「――――やはりお前が最後のセブンスターズだったのか、コナミ」

 

「カイザー、何を言っている。アカデミアの生徒であるコナミがセブンスターズな訳――――」

 

『ひ~、アニキアニキ! あの黒帽子からヤバイ気配がするよ~』

 

 

 亮の言葉に万丈目が驚きの声を上げ、セキヒトの纏う気配に敏感なおジャマトリオは怯えながら我先にと万丈目の背中へ移動してセキヒトから隠れる。そんなおジャマトリオに呆れつつ、セキヒトを警戒する光と闇の竜(ライトアンドダークネス・ドラゴン)の咆哮を聞いて、万丈目も亮の言葉が事実なのだと理解する。

 

 

「そうだな。一応、訂正しておくと俺がセブンスターズかどうかと問われたら、俺はセブンスターズじゃない。俺は三幻魔へ望む事なんてない。だけど、お前達がセブンスターズの仕業だと思っている最近噂になっていた目を覚まさない生徒達の事件の犯人が誰か、と問われたら、確かに俺が犯人だ。だけど、カイザー。お前は最初から俺が犯人だと疑っていた口ぶりだな?」

 

「そうだな、俺は吹雪が倒された状態で見つかった時から心の何処かでお前の事を疑っていた。俺の知る限り、吹雪を打倒しうる決闘者は限られてくる。その中でも一番怪しかったのはお前だった」

 

 

 セキヒトの問いかけに亮が肯定する。亮の推理は当たっていた。純粋な意味で最初の被害者であるももえとジュンコの推理と同様だ。ももえ達は総当たりで犯人探しを行った結果、セキヒトに敗北してカードに魂を封印されてしまった。

 

 

「しかし、それだけだと俺が犯人と決め付けるには早いんじゃないか?」

 

「ああ、その通りだ。だが、コナミ。お前はある事を見落としていた。決闘が行われた後に起こる事だ」

 

「決闘の後?」

 

 

 亮の言葉を聞いて眉を顰めるセキヒト。亮の話はどうにも要領を得ない。決闘現場に手掛かりとなるような証拠を置いた記憶は無い。意味が判らず、亮へ尋ねようとしたセキヒトが口を開いたその時、今まで状況を見守っていた三沢が気付いた様子で口を開く。

 

 

「そうか、決闘の後に行われる事。それはつまりDPの譲渡だな。デュエルアカデミアに登録されていない吹雪さんやカミューラのデュエルディスクは別にして、明日香君のような学生の被害者であるなら決闘の結果でDP譲渡の情報がデュエルアカデミアの管理コンピューターに記録される筈だ」

 

「…………なるほど、流石にそこまで気が回らなかった。盲点だったよ。それにしてもよくそこまで調べたな。デュエルアカデミアで行われる一日の決闘が何回あると思っている」

 

 

 セキヒトが感嘆の声を漏らす。デュエルアカデミアで一日に行われる決闘の数は優に数百を超える。DPの譲渡や消費に範囲を広げれば、それこそ正確な解析は困難。膨大な情報の中からセキヒトだけの情報を洗い出して解析するのは相当な労力となった筈だ。

 

 

「実際にデータの解析を進めてくれたのは師匠――いや、鮫島校長だが、どうやらオーナーも解析に協力してくれたようだ。なんでもオーナーの知人から『デュエルアカデミアで何か起きているかもしれないよ』と情報が入ったらしい。そういえばカードの精霊がどうこうとも言っていたな」

 

「ッ!」

 

 

 亮の言葉を聞き、セキヒトはハッとなって自身の腰に提げたデッキホルダーへ視線を落とす。デッキホルダーの中にはかの決闘王と共に戦った仲間であるブラック・マジシャン・ガールの魂が封印されているカードも存在する。水面下では上手く情報を消していたセキヒトだが、着実にボロを出していた。

 

 

「そうか、ありがとう。これで疑問が解決した」

 

「へへ、もういいのか? それなら俺と――――」

 

「断る。十代以外に誰もいない状況なら決闘も致し方ないがアイツがいるなら話は別だ。デュエルディスクを構えた以上、十代との決着もいずれつけるが今、俺が戦いたい相手は別にいる。そうだろ、カイザー?」

 

 

 セキヒトが納得して、闘志に燃える十代が決闘を始めようとする。しかし、セキヒトは十代の言葉を一蹴すると視線と戦う意思を亮へぶつける。四面楚歌の状況で全員の相手を出来るほどセキヒトは力を持っていない。連戦を重ねればいつか誰かに敗北する。それだけはセキヒトにも判る。

 

セキヒトは十代達の実力を認めている。だからこそ、一人ずつ確実に潰していくつもりだった。しかし、この状況では不可能だ。ならば、セキヒトが倒したいと望む相手を全力で倒すのみ。

 

 

「…………いいだろう。それならば構えろ」

 

「ッ!」

 

 

 デュエルディスクを構えた亮の視線が向かい合うセキヒトではなく、安全な場所で眠っている翔の方へ向く。その光景を目撃したセキヒトに衝撃が奔る。決闘者として向かい合い、デュエルディスクを構えた筈なのにカイザーの心がここに無い事を悟る。カイザーはセキヒトの事を見ていないのだ。

 

 その原因に気付いたセキヒトは小さく溜息を吐き出す。カイザーの意識を惑わす原因はデッキホルダーに眠る封印された魂のカード達。最初はカイザーに対する人質として封印した魂のカード。しかし、実際にカイザーとの決闘になると人質を使う気にもならなければ、本気のカイザーと戦いたいセキヒトにとってカイザーを縛る足枷にしかなっていない。

 

 ――――今までの決闘が全て無駄になる。それでもセキヒトは本気のカイザー亮と戦いたい。

 

 デッキホルダーから無数のカードを取り出すと十代へ投げつける。

 

 

「これは!」

 

「十代、お前が持っているその鏡にカード達を映し出せ。それだけでそいつ等は解放される筈だ」

 

 

 寸分違わず十代の下へ飛んだカードの束を受け取った十代は不審に思いつつ、カードの内容を確認して息を呑む。十代の手にあるカードはセキヒトが闇のゲームで魂を封印してきた人間のカードだった

 

 

「これでいいのか?」

 

 

 十代は言われた通りに首へぶら下げていた鏡を手に持つとカードを映す。闇の力を跳ね返す力を持つ鏡はその力を発揮して映し出されたカードからそれぞれの魂を解放する。解放された魂は淡い光の球体となって身体の眠る方々へ飛んでいく。その中の一つは寝ていた翔の下へ向かった。

 

 

「…………、あれ、アニキ? それにお兄さん。皆も?」

 

「一体、どういうつもりだ?」

 

 

 まだ完全に意識が覚醒していない翔は寝ぼけた様子で周囲を見渡すと小さく首を傾げる。その光景に亮はセキヒトへ問いかける。

 

 

「俺だって判るかよ。俺は人質を取って決闘をした事のあるどうしようもない悪人だ。最初はお前との決闘でも使うつもりだったんだ。――――だけど、お前との決闘だけは全力で戦いたい。その為ならお前が危惧する要因を排除しただけだ」

 

 

 自分でも何故、全力のカイザー亮に拘るのか判らない。それでもこの時、この瞬間はこの判断が正しいのだと思ったのだ。

 

 何故なら亮が寝ている翔へ視線を向けた時に考えた事はただ一つ。カミューラ戦のように翔が、セキヒトに魂を封じられた人々を人質として亮を脅す事。その事を察したセキヒトは本気のカイザー亮と戦いたい。その一心で今まで積み重ねてきた魂のカードを解放した。

 

 

「――――そうか、それならば少しだけ待っていろ」

 

 

 亮はセキヒトへ背中を見せると安全な場所で上半身を起こしている翔の下へ向かう。

 

 

「お兄さん?」

 

「……パワー・ボンドは持っているか?」

 

「うん、このカードはお兄さんに使ってほしい」

 

「そうさせてもらおう」

 

 

 亮の問いかけに翔は全てを理解した。まだ本調子ではない身体を動かして、デッキを取り出す。その中から1枚のカードをデッキから抜き出すと亮へ託す。翔からパワー・ボンドを受け取り、デッキへ加える亮。兄弟の絆が亮へ託された。

 

 

「待たせたようだな、コナミ」

 

「……いや、いいさ。俺は今のお前と戦いたかった」

 

 

 再び向き合うセキヒトと亮。亮の瞳に宿る闘志を見れば戦慄すら生温い。背筋が凍る程の危機感を覚える。無意識の内にセキヒトは笑みを浮かべていた。セキヒトにとって最強の決闘者が今、目の前にいる。その事実だけでセキヒトの心臓が高鳴っていた。

 

 

「俺は俺が持つ闇の力の全てを使い、お前に勝つ。覚悟はいいか、カイザー?」

 

「…………お前は一体、何を言っている。そんな当たり前の事を言ってどうする。闇の力? 自身が持つ力の全てを使って決闘に挑むのは当たり前の事だろう。今、俺とお前の間にあるのは勝つか負けるか、二つに一つ。それが決闘者だ」

 

「…………そうだったな、今の失言は忘れてくれ」

 

 

 亮の言葉にセキヒトは小さく笑う。闇の力だろうがなんだろうが二人の決闘者の間ではただの付属に過ぎない。二人の間にあるものは勝敗だけ。ならば、自らの勝利の為に持てる全ての力を使う。それは確認するまでもなく、当たり前の事。闇の力という強大な力を手に入れたセキヒトはそんな当たり前の事を忘れていた。

 

 セキヒトはデッキへ視線を向けるとデッキが鼓動した。セキヒトが認める最強の決闘者を前にして、デッキも亮へ勝つ事を望む。――――初めてデッキとセキヒトの意志が重なった時、デッキとセキヒトの身体から漆黒の闇が放出される。全ての光を闇へ覆うほどの力はセキヒトとそのデッキへ集約された。

 

 被っていた黒帽子を外し、放り投げると懐から取り出した赤帽子を目が隠れるぐらい深く被るセキヒト――――いや、コナミ。

 

 

「なら俺は――、オレは三幻魔と俺の全てを掛けてお前へ挑むぞ! カイザー――――いや、丸藤亮!」

 

「ならば俺は――――、俺の信じるサイバー流とお前にしてきた全てのリスペクトを持ってお前へ挑む! 小波赤人!」

 

 

 決闘者(デュエリスト)はお互いがお互いに挑む挑戦者(チャレンジャー)でもある。

 

 最後の決闘が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「先攻はオレだ! ドロー!」

 

 

 決闘の始まりを告げる最初のドロー。どちらの決闘者が引き抜くのか、デュエルディスクによるランダンな先攻後攻が決められている間、先攻後攻が決まっていないにも関わらず、当然のように先攻と言い切ってデッキからカードを手札へ加えるコナミ。

 

 本来であるならルールや決闘作法に重きを置く亮も今回ばかりは自身の後攻が必然と言わんばかりに構えて、コナミのドローを見守っている。そしてデュエルディスクの決めた先攻後攻は当たり前のようにコナミから始まる。

 

 

「オレは手札からトーチ・ゴーレムを亮のフィールドへ特殊召喚! そして、トーチ・ゴーレムの効果でオレのフィールドにトーチトークンを2体、攻撃表示で特殊召喚する!」

 

 

 トーチ・ゴーレム☆8闇 ATK/3000DEF/300

 効果・このカードは通常召喚できない。このカードを手札から出す場合、自分フィールド上に“トーチトークン”(悪魔族・闇・星1・攻/守0)を2体攻撃表示で特殊召喚し、相手フィールド上にこのカードを特殊召喚しなければならない。このカードを特殊召喚する場合、このターン通常召喚はできない。

 

 トーチトークン☆1闇 ATK/0DEF/0

 

 

 亮のフィールドへ突如現れる巨大な1体のゴーレム。鋼のボディを持ち、いたるところに鎖を身に着け、カーターを高速回転させながら圧倒的な威圧感を放つ。その攻撃力は3000であり、最上級モンスターとしてトップクラスの破壊力を持つ。そんな力強い亮のフィールドと違い、コナミのフィールドにはトーチ・ゴーレムと同じ姿形をした力を持たない小さなトークンが2体居るだけ。

 

 

「えっ、なんでコナミの奴、カイザーのフィールドに最上級モンスターなんて召喚しているんだ?」

 

「意図は判らないがコナミなりの理由がある筈だ。なによりあのモンスターが召喚された事でカイザーの思い描いていた戦術が狂ったのは間違いない」

 

 

 自ら不利な状況を作り出したコナミの奇行に十代が疑問の声を出し、三沢が自分なりに分析する。強力なモンスターだったとしても自分の描いていた戦術に存在しない異物がいきなり戦力として現れたのだ。いくら亮でも戦術の修正が必要なのは当然。状況だけ見ればコナミの不利であるが、相手の出鼻を挫くという意味では大きな働きをした。

 

 

「オレはカードを1枚伏せてターンエンド」

 

 

 不安や躊躇いの表情を見せず、カードを伏せるコナミ。伏せられたカードを無言で眺める亮。コナミの伏せたカードがコナミの不利を巻き返すカードである事は明白。しかし、それでも亮に止まるつもりは無い。お互いの戦術をぶつけ合う。それが決闘だ。

 

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 

 デッキからカードを引き抜き、手札へ加える亮。手札とフィールドのトーチ・ゴーレムを見比べた亮は高らかに宣言する。

 

 

「俺はトーチ・ゴーレムでトーチトークンを攻撃!」

 

「この瞬間、トラップ発動、洗脳解除! このカードがフィールド上に存在する限り、自分と相手のフィールド上に存在する全てのモンスターのコントロールは、元々の持ち主に戻る! トーチ・ゴーレムのコントロールはオレへ変更だ!」

 

 

 巨体を揺るがし、ボディに組み込まれたカーターを高速回転させて攻撃態勢に移行していたトーチ・ゴーレムはコナミの宣言に身体の動きを止める。コナミと亮を交互に見比べた後、本来の持ち主であるコナミのフィールドへ移動する。

 

 

「やはり早々、ダメージが通る訳がないか。しかし、これで、俺のフィールドにはモンスターがいない」

 

「ああ、そうだ。本気で来い。オレだってソイツを倒さなければ前へ進めない」

 

 

 戦いの嵐は一瞬にして終わり、お互いのフィールドに並ぶモンスターが優劣を逆転させる。しかし、この追い詰められた状況こそ、カイザー亮が本領発揮する為の舞台として相応しい。

 

 

「この瞬間、俺は手札からサイバー・ドラゴンを特殊召喚!」

 

 

 サイバー・ドラゴン☆5光 ATK/2100DEF/1600

 効果・相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

 

 

 出鼻を挫かれた亮が本来召喚する筈だった機械仕掛けのドラゴンが亮のフィールドへ現れる。太陽の光を反射する銀の装甲を持つ1匹のドラゴン。亮のデッキにおけるエースモンスターであり、亮が後継者となっているサイバー流を象徴するモンスター。亮の闘志に触発されたサイバー・ドラゴンの咆哮がコナミへ向けられる。その咆哮に身体を震わせながらコナミは嬉しそうに笑う。

 

 

「俺はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

 

 カードを1枚伏せて堂々と佇む亮。状況だけで言えば押されている筈なのにその姿からは一切の焦りが見えてこない。コナミの戦術に乗った上で自身を守りきる。その自信に満ち溢れている。

 

 だからこそ、コナミも闘志を激しく燃やす。自分の全力を亮へぶつける。それが今、コナミが出来る最良の選択。

 

 

「オレのターン、ドロー!」

 

 

 デッキからカードを引き抜く。手札を見て、フィールドに並ぶ3体のモンスターへ目配せしたコナミは1枚のカードをデュエルディスクへ叩きつける。

 

 

「亮! いや、それだけじゃない! セブンスターズとの激闘を繰り広げたお前達全員に、このカードを見せよう! これが三幻魔の一角だ! オレのフィールドに存在する3体の悪魔族モンスターを生贄に幻魔皇(げんまおう)ラビエルを召喚!」

 

 

 幻魔皇(げんまおう)ラビエル☆10闇 ATK/4000DEF/4000

 効果・このカードは通常召喚できない。自分フィールド上に存在する悪魔族モンスター3体を生け贄に捧げた場合のみ特殊召喚する事ができる。相手がモンスターを召喚する度に自分フィールド上に“幻魔トークン”(悪魔族・闇・星1・攻/守1000)を1体特殊召喚する。このトークンは攻撃宣言を行う事ができない。1ターンに1度だけ、自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる事で、このターンのエンドフェイズ時までこのカードの攻撃力は生け贄に捧げたモンスターの元々の攻撃力分アップする。

 

 

 コナミの宣言と共に現れる1体の幻魔。晴れていた晴天の空は急激に雲へ覆われ、突風が吹き荒れ、穏やかだった海が荒れ、湾岸へ大きな波が押し寄せる。曇天の空を割り、見上げるほどの巨体を持つ幻魔。神と等しき力を持つ幻魔の登場でカードの精霊達にざわめきが起きる。

 

 

『クリクリ~!』

 

「おいおい、どうしたんだよ。ハネクリボー?」

 

『いやん、万丈目のアニキ! おいら達の力が吸われ――――――――ない?』

 

「お前は一体、なにがしたいんだ!」

 

 

 飛び付いてくるハネクリボーを受け止め、首を傾げる十代と混乱でてんやわんやになっているおジャマ達へ怒鳴る万丈目。精霊を持つ二人の対照的な行動に内心で苦笑しつつ、フィールドへ現れた幻魔の一角であるラビエルへ視線を向ける。巨大な力の鼓動がコナミの身体を満たす。下手をすれば飲み込まれてしまいそうになる程の力でありながら、不思議とコナミに危機感は無かった。

 

 目の前に君臨する最強の決闘者へ勝利する。何故ならコナミの意志と幻魔のプライドが同じ方向を向いていたから。カードの精霊の力を吸い上げずともコナミの闇が幻魔へ力を与え、幻魔の闇がコナミの闇をより強大にする。

 

 

「そして幻魔皇ラビエルがフィールドへ存在する事によって、このカードを発動する! フィールド魔法、失楽園! このカードはフィールド上に“神炎皇ウリア”“降雷皇ハモン”“幻魔皇ラビエル”のいずれかが存在する場合、そのカードのコントローラーは1ターンに1度、デッキからカードを1枚選択して手札に加える事ができる。オレは失楽園の効果発動! デッキからカードを2枚ドロー!」

 

 

 粘り気のあるドロリとした空気が十代達のいる場所を満たす。露骨に姿を変えずとも、先程までと違う空気の質になっている事を全員が理解する。

 

 

「食らえ、亮! これが幻魔の一撃だ! オレは幻魔皇ラビエルでサイバー・ドラゴンを攻撃! 天界蹂躙拳(てんかいじゅうりんけん)!」

 

 

 コナミの指示に従い、圧倒的力を秘めたラビエルの拳がサイバー・ドラゴンへ迫る。その瞬間、1枚のカードがラビエルに立ち塞がる。

 

 

「トラップ発動、アタック・リフレクター・ユニット! このカードは自分フィールド上の“サイバー・ドラゴン”1体を生け贄に捧げて発動する。自分の手札・デッキから“サイバー・バリア・ドラゴン”1体を特殊召喚する。俺はフィールドのサイバー・ドラゴンを生贄に、デッキからサイバー・バリア・ドラゴンを攻撃表示で特殊召喚!」

 

 

 サイバー・バリア・ドラゴン☆6光 ATK/800DEF/2800

 効果・このカードは通常召喚できない。このカードは“アタック・リフレクター・ユニット”の効果でのみ特殊召喚する事ができる。このカードが攻撃表示の場合、1ターンに1度だけ相手モンスター1体の攻撃を無効にする。

 

 

 亮のフィールドへ現れた機械仕掛けのドラゴン。サイバー・ドラゴンと入れ替わるように現れたサイバー・バリア・ドラゴンの尾にはバリア発生装置が取り付けられている。

 

 

「それでオレの攻撃が止まると思うなよ! 幻魔皇ラビエルでサイバー・バリア・ドラゴンを攻撃!」

 

「その攻撃は通さん! サイバー・バリア・ドラゴンの効果を発動! 幻魔皇ラビエルの攻撃を無効にする!」

 

 

 ラビエルの拳とサイバー・バリア・ドラゴンの尾から展開されたバリアが激突する。身体の奥が震える程の爆音が鳴り響き、土煙が大きく舞い上がる。振り下ろした拳を戻すラビエル。風によって飛ばされた土煙の中には無傷の状態でサイバー・バリア・ドラゴンが佇んでいた。

 

 

「幻魔の攻撃を受け止めたか。まあ、それぐらい出来なければ面白くないよな。オレはカードを2枚伏せてターンエンド」

 

 

 カードを伏せ、ターン終了を宣言するコナミ。幻魔の登場により、状況はさらにコナミへ傾いている。それでもまだ、状況は充分に立て直せる。

 

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 

 デッキからカードを手札へ加え、内容を確認する亮。コナミのフィールドを確認して、1匹のモンスターを召喚する。

 

 

「俺は手札からサイバー・ドラゴン・ツヴァイを攻撃表示召喚!」

 

「この瞬間、幻魔皇ラビエルの効果も発動! 幻魔トークンを表側守備表示で特殊召喚!」

 

 

 サイバー・ドラゴン・ツヴァイ☆4光 ATK/1500DEF/1000

 効果・このカードが相手モンスターに攻撃するダメージステップの間、このカードの攻撃力は300ポイントアップする。1ターンに1度、手札の魔法カード1枚を相手に見せる事で、このカードのカード名はエンドフェイズ時まで“サイバー・ドラゴン”として扱う。また、このカードが墓地に存在する場合、このカードのカード名は“サイバー・ドラゴン”として扱う。

 

 

 幻魔トークン☆1闇 ATK/1000DEF/1000

 

 

 亮のフィールドへ現れるサイバー・ドラゴンに似た風貌の機械竜。亮との決闘で何度も目撃しているコナミはサイバー・ドラゴン・ツヴァイの咆哮に対して、特に気にした様子もなく、構えている。同時に、コナミのフィールドに幻魔のしもべたる幻魔トークンが出現する。

 

 

「俺はサイバー・ドラゴン・ツヴァイで幻魔トークンを攻撃!」

 

 

 サイバー・ドラゴン・ツヴァイATK/1500→1800

 

 

 亮の指示に従い、サイバー・ドラゴン・ツヴァイは腕を十字に交差させて守りを固めている幻魔トークンへ襲い掛かる。戦いによって力を増すサイバー・ドラゴン・ツヴァイは守りを固めている幻魔トークンへ巻き付くとそのまま幻魔トークンを自身の身体で締め上げる。守りに徹した幻魔トークンはサイバー・ドラゴン・ツヴァイの攻撃に耐え切ることが出来ず、破壊されてしまう。

 

 破壊の余波によって発生した風がコナミの頬を撫でる。トークンとはいえ、モンスターを破壊された事に悔しさや戸惑いといった感情は見えない。それは勿論、犠牲を無しにカイザーへ勝利する事など不可能だと、最初から理解しているからだ。

 

 

 サイバー・ドラゴン・ツヴァイATK/1800→1500

 

 

 戦いが終わり、力を発揮したサイバー・ドラゴン・ツヴァイは元の力へ戻ると亮のフィールドへ帰還する。

 

 

「そして俺はカードを3枚伏せてターンエンド」

 

 

 3枚のカードを伏せ、ターンを終了する亮。幻魔皇ラビエルを相手するには注意してし過ぎる事は無い。

 

 

「オレのターン、ドロー。そして失楽園の効果で更に2枚ドロー」

 

 

 幻魔を前にして揺ぎ無い精神でこちらを見据える亮の姿にコナミは小さく笑う。亮との決闘に心が高ぶっている。コナミが認めた最強の決闘者だからこそ、この決闘において出し惜しみなんてありえない。3枚のカードを手札へ加えたコナミはデュエルディスクにセットされた二つのカードを発動させる。

 

 

「オレは2枚のトラップ発動! 死霊ゾーマ、メタル・リフレクト・スライム!」

 

 

 死霊ゾーマ☆4闇 ATK/1600DEF/500

 

 

 メタル・リフレクト・スライム☆10水 ATK/0DEF/3000

 

 

 竜の姿をしたモンスターとぶよぶよと捉え所の無い姿をしたモンスターがコナミのフィールドへ現れる。2体のモンスターはモンスターでありながら何処か普通のモンスターとは違う気配を漂わせている。

 

 

「ん? なんでコナミの奴、いきなり2体もモンスターが出てきたんだ? コナミが発動したのはトラップだよな?」

 

「アレはトラップモンスターと呼ばれるモンスターだな。モンスターでもあり、トラップでもある。その特性上、魔法・罠カードゾーンとモンスターカードゾーン、二つの場所を使用するがその代わりに強力なステータスや効果を持つカードが多い。確かあの二つは――――」

 

「死霊ゾーマが戦闘によって破壊された時、このカードを破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。そしてメタル・リフレクト・スライムが高い守備力を誇るモンスター……だったな」

 

「なるほど、流石に何度も決闘で見ているからな。カードの効果も覚える訳だ」

 

 

 通常とは違うモンスターの気配に十代が首を傾げて疑問を口にして、十代達の中でも特に博識である三沢が説明する。フィールドに現れた2体のモンスターを見据えて、亮がトラップモンスターの力を解析してコナミが頷き、肯定する。

 

 

「トラップモンスターは強力な分、元々がトラップという事もあり、攻撃には向かない筈だが……」

 

「その通りだよ、三沢。だがな、トラップだって、攻撃の起点になりえる事ぐらい、お前も知っているだろ? 見せてやる、オレの全力を。オレはフィールドに存在する洗脳解除・死霊ゾーマ・メタル・リフレクト・スライム、3枚の罠カードを生贄に神炎皇(しんえんおう)ウリアを特殊召喚! これが幻魔皇ラビエルに続く2体目の幻魔の姿だ!」

 

 

 神炎皇ウリア☆10炎 ATK/0→3000DEF/0

 効果・このカードは通常召喚できない。自分フィールド上に表側表示で存在する罠カード3枚を墓地に送った場合のみ特殊召喚する事ができる。このカードの攻撃力は、自分の墓地の永続罠カード1枚につき1000ポイントアップする。1ターンに1度だけ、相手フィールド上にセットされている魔法・罠カード1枚を破壊する事ができる。この効果の発動に対して魔法・罠カードを発動する事はできない。

 

 

 コナミのフィールドへ降臨する2体目の幻魔。赤い体躯に長い身体、両翼を広げて咆哮するその姿は正に最強の竜に相応しい。コナミのフィールドへ並ぶ2体の幻魔。外から決闘を見守っている十代達にも伝わってくる威圧感を亮は正面から受け止めている。

 

 

「そしてオレは神炎皇ウリアの効果発動! 亮の魔法・罠カードゾーンに伏せられた一番右のカードを破壊。やれ、ウリア、トラップディストラクション!」

 

「させるか! 俺はトラップ――――」

 

「幻魔の力を嘗めるな! トラップディストラクションに対して魔法も罠も発動する事は出来ない!」

 

「くッ、和睦の使者が」

 

 

 ウリアの雄叫びが衝撃となって亮のフィールドを襲う。ウリアの雄叫びから発生した衝撃波に耐え切れず、伏せられていた和睦の使者が容赦無く破壊される。吹き飛んだ女性の使者と視線が合うコナミ。ただのソリッドヴィジョンである筈が、コナミだけ明らかに妙な反応を見せていた女性の使者。今度も何かあるのかと身構えたコナミの予想を裏切り、女性の使者はデッキと“共に”戦うコナミの姿を認めると自身が破壊されたにも関わらず、穏やかな表情で微笑むとフィールドから去っていく。

 

 何かの見間違いと目を擦りながら再確認している十代や万丈目を余所に、コナミは呆れたように溜息を吐く。1枚のカードでありながら、彼女もまた、数多の決闘において障害となった好敵手(ライバル)だった。

 

 

「さあ、行くぞ! オレは神炎皇ウリアでサイバー・バリア・ドラゴンを攻撃、ハイパーブレイズ!」

 

「サイバー・バリア・ドラゴンの効果発動!」

 

 

 コナミの指示の下、全てを焼き尽くし、鉄すら溶解させる灼熱の炎がウリアの口から吐き出される。標的となったサイバー・バリア・ドラゴンはラビエルの拳を止めたバリアを再び展開させて、ウリアの炎を防ぐ。自身に向けられた炎を振り払い、無傷でウリアの攻撃を防ぐサイバー・バリア・ドラゴン。しかし、バリア発生装置はウリアの攻撃で熱を帯びてしまい、これ以上攻撃を防ぐことは出来ない。

 

 

「次は潰す! 幻魔皇ラビエルでサイバー・バリア・ドラゴンを攻撃、天界蹂躙拳!」

 

「トラップ発動、ガード・ブロック! 戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、自分のデッキからカードを1枚ドローする! 俺はデッキからカードを1枚ドロー!」

 

 

 ラビエルの拳が容赦無くサイバー・バリア・ドラゴンへ振り下ろされる。圧倒的なラビエルの力に二度も幻魔の攻撃を防いだサイバー・バリア・ドラゴンは呆気無く押し潰されて破壊される。ラビエルの拳がサイバー・バリア・ドラゴンを地面と挟み撃ちにして、押し潰す。その威力を物語る発生した衝撃が亮を襲う直前、亮を守るように1枚のカードがデッキから舞い降り、衝撃から亮を守る。

 

 

「……防ぎきったか、流石だな。オレはこれでターンエンドだ」

 

 

 幻魔の猛攻を防ぐ亮の姿に感心したコナミはターンを終了する。

 

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 

 サイバー・バリア・ドラゴンという守りが無くなった今、亮に幻魔の猛攻を防ぐ力は残されていない。それならば後は攻勢に出ればいいだけの話。

 

 

 デッキからカードを手札へ加える亮。そのまま流れるような動作で1枚のカードを発動させる。

 

 

「トラップ発動、第六感! 自分は1から6までの数字の内2つを宣言する。相手がサイコロを1回振り、宣言した数字の内どちらか1つが出た場合、その枚数自分はカードをドローする。ハズレの場合、出た目の枚数デッキの上からカードを墓地へ送る。俺が指定する数字は5と6だ」

 

 

 ポンッという軽快な効果音と共にコナミの前に現れる六面の大きなサイコロ。とんでもないカードを持ってきた、と戦慄するコナミだったが、自身も三幻魔という規格外のカードで亮へ挑んでいるのでどっちもどっちだ。内心で苦虫を潰した顔をしながら、目の前に現れたサイコロを放り投げるコナミ。コロコロと地面を転がり、最終的に出たサイコロの目は6だ。

 

 

「この瞬間、俺はカードを6枚ドロー!」

 

 

 6枚ものカードを手札へ加える亮。決闘者にとって手札とは可能性だ。今、亮の手に幻魔を打倒するべき可能性が揃った。

 

 

「俺は手札からアーマード・サイバーンを召喚!」

 

「……この瞬間、幻魔皇ラビエルの効果で幻魔トークンを召喚」

 

 

 アーマード・サイバーン☆4風 ATK/0DEF/2000

 効果・1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に装備カード扱いとして自分の“サイバー・ドラゴン”及び“サイバー・ドラゴン”を融合素材とする融合モンスターに装備、または装備を解除して表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。この効果で装備カード扱いになっている場合のみ、1ターンに1度、装備モンスターの攻撃力を1000ポイントダウンし、フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を破壊できる。(1体のモンスターが装備できるユニオンは1枚まで。装備モンスターが破壊される場合は、代わりにこのカードを破壊する)

 

 

 亮のフィールドへ出現した新たなモンスター。アーマード・サイバーンの登場に小さく反応を見せるコナミ。亮との決闘でこのモンスターを見るのは初めての事。コナミが亮へ対策を施してデッキを変更するように当然、亮もデッキを変更する。

 

 

「そして俺はサイバー・ドラゴン・ツヴァイの効果。手札の機械複製術を見せる事でサイバー・ドラゴン・ツヴァイをサイバー・ドラゴンに変更。そして、アーマード・サイバーンをサイバー・ドラゴンへ装備する!」

 

 

 姿形がサイバー・ドラゴンへ変化したサイバー・ドラゴン・ツヴァイへアーマード・ドラゴンが装備される。そしてアーマード・サイバーンの持つ二つの砲身を幻魔トークンへ向ける。

 

 

「アーマード・サイバーンの効果発動! 攻撃力を下げて、幻魔トークンを破壊する!」

 

 

 サイバー・ドラゴン・ツヴァイATK/1500→500

 

 

 アーマード・サイバーンから放たれた砲弾が幻魔トークンを直撃する。砲弾の爆発に巻き込まれた幻魔トークンはその威力に後方へ吹き飛ばされて、破壊される。

 

 

「そしてこの瞬間、手札から機械複製術を発動する! このカードは自分フィールド上に表側表示で存在する攻撃力500以下の機械族モンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターと同名モンスターを2体まで自分のデッキから特殊召喚する。俺が選択するのは勿論、サイバー・ドラゴン!」

 

「――――とうとう来るか!」

 

 

 その効果によりデッキからフィールドへ現れる2体のサイバー・ドラゴン。ラビエルが幻魔トークンを生み出す傍ら、コナミは1体のサイバー・ドラゴンの名を冠するサイバー・ドラゴン・ツヴァイと2体のサイバー・ドラゴンが揃う光景を見て、息を呑む。

 

 

「そして俺は手札から融合を発動! 3体のサイバー・ドラゴンで融合! 現れろ、サイバー・エンド・ドラゴン!」

 

 

 サイバー・エンド・ドラゴン☆10光 ATK/4000DEF/2800

 効果・このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 

 

 曇天の空を切り裂き、光の柱が立つ。光の柱から姿を現し、亮のフィールドへ降臨する1匹のモンスター。亮が丸藤亮という決闘者である為に必要なカードであり、最も信頼するモンスター。三つのアギトを持つ三首の機械仕掛けの巨竜。コナミの前に立ち塞がる威圧感と存在感は三幻魔に勝るとも劣らない。

 

 

「俺はサイバー・エンド・ドラゴンで神炎皇ウリアを攻撃! 食らえ、エターナル・エヴォリューション・バースト!」

 

 

 サイバー・エンド・ドラゴンから放たれた螺旋を描く光線とウリアが放つ灼熱の炎が激突する。大爆発を起こし、土煙が勢いよく立ち込める。そんな中、螺旋を描く光線がウリアの身体を貫き、破壊した。

 

 

「~ッ!」

 

 

 小波赤人LP4000→3000

 

 

 爆発の衝撃波がコナミを襲い、LPを削る。吹き飛ばされそうになるのを足で踏ん張り、耐える。視線の先には威風堂々と君臨するサイバー・エンド・ドラゴンがいた。

 

 

「まずは一角を崩させてもらったぞ。俺はカードを伏せてターンエンド」

 

 

 三幻魔の一角を撃破した筈の亮に喜びの表情は見えない。決闘において油断と慢心は命取りになる。そのことをよく理解している亮だからこそ、コナミという決闘者相手に隙など見せられない。

 

 

「オレのターン、ドロー。そして失楽園の効果で2枚ドロー」

 

 

 デッキから手札を加え、フィールドへ視線を向けるコナミ。

 

 状況としては非常に均衡している。お互いのフィールドにいるモンスターは一撃で相手を打ち倒すほどの力を秘めている。しかし、コナミとしては早急にサイバー・エンド・ドラゴンを排除しなければならない。

 

 

「俺は手札から強欲な壺を発動。デッキからカードを2枚ドローして、手札から幻銃士を表側守備表示で召喚! 幻銃士の効果で銃士トークンを2体守備表示で特殊召喚!」

 

 

 幻銃士☆4闇 ATK/1100DEF/800

 効果・このカードが召喚・反転召喚に成功した時、自分フィールド上に存在するモンスターの数まで自分フィールド上に“銃士トークン”(悪魔族・闇・星4・攻/守500)を特殊召喚する事ができる。また、自分のスタンバイフェイズ毎に自分フィールド上に表側表示で存在する“銃士”と名のついたモンスター1体につき相手ライフに300ポイントダメージを与える事ができる。この効果を発動するターン、自分フィールド上に存在する“銃士”と名のついたモンスターは攻撃宣言をする事ができない。

 

 

 銃士トークン☆4闇 ATK/500DEF/500

 

 

 コナミのフィールドへ現れる1体の悪魔。両翼を羽ばたかせ、フィールドに現れた悪魔は分裂して2体の分身を作り出す。

 

 

「まだまだ行くぞ! オレは手札から天変地異を発動! このカードがフィールド上に存在する限り、お互いのプレイヤーはデッキを裏返しにしてデュエルを進行する!」

 

 

 覚悟を決め、動き出したコナミが発動したカードにより世界がぐるりと反転する。そんな錯覚をしながら裏返したデッキの一番上のカードを確認したコナミは新たなカードを発動させる。

 

 

「オレは手札からデーモンの宣告を発動! 1ターンに1度だけ、500ライフポイントを払いカード名を宣言する事ができる。その場合、自分のデッキの一番上のカードをめくり、宣言したカードだった場合手札に加える。違った場合はめくったカードを墓地へ送る。ライフを払ってオレは最後の幻魔、降雷皇ハモンを宣言する!」

 

 

 小波赤人LP3000→2500

 

 

 勿論、天変地異によってデッキから次に引くカードが判っているコナミの宣言は当たり、宣言した最後の幻魔がコナミの手札へ加える。

 

 

「ふん、なんだかんだで流石コナミと言った所か……」

 

「ん? なんでだよ、万丈目。次に引くカードが判ってるんじゃあ、当てて当然だろ? でも、先の判る決闘なんて面白いのか?」

 

「いや、十代。そこは問題じゃない。コナミはあのコンボを成立させた時点でデッキのカードをドローするか、墓地へ送るか、選択する事が出来るんだ。そうだな、カードの中には墓地でこそ効果を発揮するモノがある。そういったカードを直接墓地へ送る事が出来るようになったんだ。それに恐らく、それだけでは無い筈だ」

 

 

 コナミの戦術に感心した様子で頷く万丈目。そんな万丈目の様子に十代が首を傾げて、三沢が十代へ状況を説明する。

 

 

「オレは手札から平和の使者を発動! このカードはフィールド上に表側表示で存在する攻撃力1500以上のモンスターは攻撃宣言をする事ができない。このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に100ライフポイントを払う。または、100ライフポイント払わずにこのカードを破壊する。そしてオレは天変地異・デーモンの宣告・平和の使者、3枚の永続魔法を生贄に最後の三幻魔、降雷皇(こうらいおう)ハモンを特殊召喚!」

 

 

 曇天の空に雷鳴が轟いた。数多の雷光と共に雷がフィールドへ落ちる。一際大きな落雷がコナミのフィールドへ落ちた後、最後の幻魔が降臨した。

 

 

 降雷皇ハモン☆10光 ATK/4000DEF/4000

 効果・このカードは通常召喚できない。自分フィールド上に表側表示で存在する永続魔法カード3枚を墓地に送った場合のみ特殊召喚する事ができる。このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、相手ライフに1000ポイントダメージを与える。このカードが自分フィールド上に表側守備表示で存在する場合、相手は他のモンスターを攻撃対象に選択できない。

 

 

 大きな翼と雷を纏った体躯、圧倒的な威圧感は三幻魔の中で最も強い。

 

 

「オレはラビエルの効果発動、銃士トークンを生贄に捧げて、ラビエルを強化。ラビエルでサイバー・エンド・ドラゴンを攻撃、天界蹂躙拳!」

 

 

 幻魔皇ラビエルATK/4000→4500

 

 

 幻魔トークンによって力を増したラビエルの拳とサイバー・エンド・ドラゴンが放った光線が激しくぶつかり合う。均衡は一瞬、ラビエルの拳が光線を弾き飛ばし、サイバー・エンド・ドラゴンへ迫る。

 

 

「トラップ発動、攻撃の無敵化! バトルフェイズ時にのみ、以下の効果から1つを選択して発動できる。●フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターはこのバトルフェイズ中、戦闘及びカードの効果では破壊されない。●このバトルフェイズ中、自分への戦闘ダメージは0になる! 俺は戦闘ダメージ0を選択!」

 

「なんだとッ!」

 

 

 ラビエルの拳によって正面から破壊されるサイバー・エンド・ドラゴンの姿を目撃したコナミが驚愕に染まる。このターン、何かしらの策でサイバー・エンド・ドラゴンを守りきるだろうと思っていたコナミとしては最悪、ハモンとの同士討ちでサイバー・エンド・ドラゴンを排除するつもりだった。しかし、現実は違った。自分のLPを守る為に亮は相棒であり、エースモンスターであるサイバー・エンド・ドラゴンを見捨てたのだ。コナミの中で何かがキレた。

 

 

「カイザー! お前、やる気があるのか!」

 

 

 その叫びは無意識の内に出た心からの叫びだった。最強の決闘者と最強のモンスター、最高のコンビであるペアを倒して初めてコナミは亮へ勝利する事が出来る。最高のペアと認めていたからこそ、亮の暴挙を許す事が出来なかった。

 

 

「…………俺は俺のベストを尽くす。それだけだ」

 

「ああ、そうかよ! オレはカードを2枚伏せてターンエンド!」

 

 

 幻魔皇ラビエルATK/4500→4000

 

 

 乱暴にターンを終了させるコナミ。その態度は明らかに冷静さを欠いている。そんなコナミと対象的に冷静沈着な面持ちで亮はデッキへ手を添えると小さく瞳を閉じる。

 

 薄い暗闇の中、コナミの感情が伝わってくる。自分とサイバー・エンド・ドラゴンの事を心の底から尊敬し、好敵手(ライバル)として認めていたからこその怒り。決闘者にとって、自分と自分のモンスターの為に本気で怒ってくれる好敵手がいる事は名誉な事だ。

 

 

 ――――でも、だからこそ、自身の全力を好敵手(コナミ)へぶつける必要がある。

 

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 

 カードを引き抜き、確認する。カードを確認した亮が小さく笑った。

 

 

「俺は手札から大嵐を発動! フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する!」

 

「させるか! トラップ発動、魔宮の賄賂! 相手の魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する。相手はデッキからカードを1枚ドローする! お前の好きにはさせん!」

 

 

 フィールドへ吹き荒れそうになった風が消え、代わりに風に乗って1枚のカードが亮の手札へ飛んでくる。

 

 

「お前は少し冷静になった方がいい。本当に俺がサイバー・エンド・ドラゴンを“無駄死”させると思っているのか?」

 

「~ッ!」

 

 

 その気迫に息を呑むコナミ。闇の力を手にして、行使するコナミだからこそ、亮の纏う気配と意志に気付いた。

 

 

「良い決闘が出来ればそれで満足? ――――いや、それは違う。それは俺の傲慢で独りよがりな我侭だった。決闘者なら相手に勝利する為の努力を惜しまない。それを俺に教えてくれたのはコナミ、お前だ。だからこそ、俺はお前に勝ちたい。――お前だけには負けたくない! だから俺は勝利をリスペクトする! 俺の持つ闇すら認めて、俺はお前に勝つ!」

 

 

 亮の持つ1枚のカードから大量の闇が噴き出した。しかし、その闇の正体をコナミは正しく理解していた。邪悪な闇ではなく、正しい闇の力。敵を排除する力ではなく、勝ちたいと願うからこそ、敵を倒すと決めた黒い心。

 

 

「俺は手札からオーバーロード・フュージョンを発動! 自分フィールド上・墓地から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターをゲームから除外し、機械族・闇属性のその融合モンスター1体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。俺は墓地に眠るサイザー・ドラゴンとサイバー・エンド・ドラゴンを含む6体の機械族モンスターを除外して融合! 現れろ、キメラテック・オーバー・ドラゴン!」

 

 

 キメラテック・オーバー・ドラゴン☆9闇 ATK/?→5600DEF/?→5600

 効果・このカードが融合召喚に成功した時、このカード以外の自分フィールド上のカードを全て墓地へ送る。このカードの元々の攻撃力・守備力は、このカードの融合素材としたモンスターの数×800ポイントになる。このカードは融合素材としたモンスターの数だけ相手モンスターを攻撃できる。

 

 

 サイバー・エンド・ドラゴンすら超える6つの頭を持つ機械仕掛けの竜がコナミの目前へ現れ、獰猛に哮り立つ。サイバー・エンド・ドラゴンが光なら、キメラテック・オーバー・ドラゴンは闇。勝利を見据え、自分自身をリスペクトした亮だからこそ手に入れた光と闇のエース。

 

 

「キメラテック・オーバー・ドラゴンでコナミのフィールドにいるモンスター全てに攻撃、エヴォリューション・レザルト・バースト!」

 

「――――トラップ発動、ガード・ブロック!」

 

 

 破滅の極光が目前まで迫った時、コナミは慌てて守りを固める。しかし、圧倒的な力の前にコナミは吹き飛ばされる。吹き飛んだコナミは軋む身体に鞭を打ち、立ち上がる。軽減されたとはいえ、キツイ一撃を受けた。

 

 

 小波赤人LP2500→900

 

 

 コナミのフィールドは焦土と化していた。フィールドを埋め尽くしていた幻魔とトークンは見る影も無い。三幻魔は亮によって跡形も無く撃破された。コナミの身体が小さく痙攣している。こみ上げてくる感情をコナミは抑えきれなかった。

 

 

「――――す……よ、すげーよ、亮! こんなのを見せられて燃えない訳がないよなあ! 楽しすぎるぞ!」

 

「ふッ、俺はカードを3枚伏せてターンエンド」

 

 

 デュエルモンスターズへ触れたばかりの子供を思わせるような瞳の輝きを浮かべて楽しそうに笑うコナミ。そんなコナミの表情に亮は小さく笑ってターンを終了した。

 

 

 勝利を求め、何時の日か、良い決闘――――楽しい決闘を忘れていたコナミ。

 

 相手をリスペクトして、良い決闘――――楽しい決闘を求めて、決闘者にとって大切な勝利を求める意志が希薄になっていた亮。

 

 

 勝敗は歴然でありながら、お互いがお互いを好敵手(ライバル)として認めていた理由はお互いに足りない物を本質的に理解して、お互いに相手へ見出していたから。

 

 

「俺のターン」

 

 

 コナミがデッキへ手を添える。相手に勝つ。それは決闘者にとって楽しい事とイコールだ。負ければ悔しいし、悲しい。状況は圧倒的に不利。それでもコナミの心からワクワク以外の感情が見付からない。手札は無限の可能性。ドローする瞬間こそ、決闘において最も心が躍る瞬間。

 

 コナミの持つ闇の全てがデッキへ集結する。ワクワクが止まらない、ドキドキが止まらない、手札という無限の可能性をドローするこの瞬間が本当に楽しい。

 

 

「ああ、そうか、そういうことか……」

 

 

 コナミは納得して一人頷く。

 

 小波赤人――――赤人は何処までも過去を引き摺る異分子だった。心の何処かで達観して、所詮はカードゲームと見下していた。本気で決闘と向き合わず、勝敗を気にした事も無かった。

 

 ダークネス・セキヒトは貪欲に勝利を求める修羅だった。相手を否定し、叩き潰す事で勝利を得る。決闘を楽しむ心を忘れていた。

 

 そして今、貪欲に勝利を求め、決闘が楽しくて仕方ない。ここに至ってようやく全てが揃った。完成した。

 

 “決闘者(デュエリスト)・小波赤人”のピースが揃い、完成した。

 

 

「ドロォォォォー!」

 

 

 膨大な闇の力と共にカードを引き抜く。内容を確認したコナミはそのままカードを発動させる。

 

 

「オレは手札から愚かな埋葬を発動! 自分のデッキからモンスター1体を選択して墓地へ送る。オレが墓地へ送るモンスターはファントム・オブ・カオス! そして手札から死者蘇生を発動! 自分または相手の墓地のモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する! オレは墓地へ送ったファントム・オブ・カオスを蘇生! 最後に地獄の暴走召喚発動! 相手フィールド上に表側表示でモンスターが存在し、自分フィールド上に攻撃力1500以下のモンスター1体が特殊召喚に成功した時に発動する事ができる。その特殊召喚したモンスターと同名モンスターを自分の手札・デッキ・墓地から全て攻撃表示で特殊召喚する。相手は相手自身のフィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、そのモンスターと同名モンスターを相手自身の手札・デッキ・墓地から全て特殊召喚する!」

 

 

 ファントム・オブ・カオス☆4闇 ATK/0DEF/0

 効果・自分の墓地に存在する効果モンスター1体を選択し、ゲームから除外する事ができる。このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、このカードはエンドフェイズ時まで選択したモンスターと同名カードとして扱い、選択したモンスターと同じ攻撃力とモンスター効果を得る。この効果は1ターンに1度しか使用できない。このモンスターの戦闘によって発生する相手プレイヤーへの戦闘ダメージは0になる。

 

 

 怒涛のラッシュによりコナミのフィールドへ並ぶ3体のモンスター。一切、姿形を持たない闇がそのままモンスターになっている。ファントム・オブ・カオス自体に戦う力は無い。だが、それを補って余りある力を秘めている。

 

 

「オレはファントム・オブ・カオスの効果発動! 三幻魔をゲームから除外する!」

 

「一体、何が起きている! 倒したはずの三幻魔が何故、復活している!」

 

 

 万丈目が戸惑うようにコナミのフィールドには影で出来た三幻魔が復活していた。思い掛けない出来事に十代達は目を丸くしている。そんな中、亮だけが楽しそうに笑っていた。

 

 

「来い」

 

「言われなくても勝手に行くさ! 最後の最後に見せてやる、これが三幻魔の究極だ! オレは三幻魔をゲームから除外する事で混沌幻魔アーミタイルを特殊召喚!」

 

 

 混沌幻魔アーミタイル☆12闇 ATK/0→10000DEF/0

 効果・このカードは戦闘によっては破壊されない。このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、このカードの攻撃力は自分ターンのみ10000ポイントアップする。

 

 

 曇天の空が割れ、風が止む。大荒れだった海は静寂を取り戻し、世界の刻が止まる。

 

 

 ――――決闘者・小波赤人の指示に従い、最強の幻魔が降臨した。

 

 三幻魔が交わったその姿に十代達は驚きの声すら出ない。コナミという決闘者に出会わなければ、最強の邪悪として立ち塞がった可能性すらあるモンスター。そんなモンスターの登場にこの場にいる全員がワクワクしていた。

 

 

「オレは混沌幻魔アーミタイルでキメラテック・オーバー・ドラゴンを攻撃、全土滅殺転生波!」

 

「トラップ発動、ダメージ・ダイエット! このターン自分が受ける全てのダメージは半分になる。また、墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事で、そのターン自分が受ける効果ダメージは半分になる!」

 

 

 丸藤亮LP4000→1800

 

 

 圧倒的な力の放流がキメラテック・オーバー・ドラゴンを一瞬にして押し潰す。攻撃の余波は留まる事を知らず、亮へ襲い掛かる。トラップによって一命を取り留めた亮。たった1ターンで戦況が大きく引っくり返された。

 

 

 混沌幻魔アーミタイルATK/10000→0

 

 

「オレはカードを3枚伏せてターンエンド」

 

 

 全ての手札を伏せ、ターンを終了させるコナミ。可能性という未来を全て掛けた。

 

 そして、それは亮も同じ事。コナミは万全の守りを固めた筈。それを打ち破るにはこちらも全ての可能性を掛けなければ打ち破ることは出来ない。

 

 

「俺のターン、ドロォォォォー!」

 

 

 誰も聞いた事がない、亮の雄叫びが響き渡る。手にしたカードを確認した亮は迷うことなく、伏せていたカードを発動する。

 

 

「トラップ発動、異次元からの帰還! ライフポイントを半分払って発動できる。ゲームから除外されている自分のモンスターを可能な限り自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズ時にゲームから除外される!」

 

 

 丸藤亮LP1800→900

 

 

 自らの命を削り、ゲームから除外されたモンスターが次々に帰還する。フィールドに並ぶ3体のサイバー・ドラゴン。

 

 

「俺は手札からパワー・ボンドを発動! 3体のサイバー・ドラゴンを融――――」

 

「それが本気で通ると思っているのか! トラップ発動、魔宮の賄賂!」

 

「――――無理矢理にでも通させてもらう! トラップ発動、神の宣告! ライフポイントを半分払って発動する。魔法・罠カードの発動、モンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚のどれか1つを無効にし破壊する!」

 

 

 丸藤亮LP900→450

 

 

「オレの読み勝ちだ! トラップ発動、魔宮の賄賂!」

 

「3枚目だと!」

 

 

 悪徳商人の手によって神様へ賄賂が渡される。そして初めて亮の表情が驚愕に染まる。明らかにトラップを発動するタイミングが可笑しい。カウンター罠が二つも存在したなら、一つは異次元からの帰還に使用するべきだった。

 

 

 ――――腹の読みあい、戦術のぶつかり合いはコナミが制した。

 

 

 コナミのフィールドに伏せられた最後のカードは確実に攻撃を防ぐ為のモノ。次のターンを防ぐにはどうしてもモンスターを召喚しなければならない。

 

 

 そんな中、未だ完全復活せず、決闘を見守っていた翔が呟いた。

 

 

「お兄さんにはまだ、ドローが残っているよ」

 

「ッ!」

 

 

 翔の言葉に亮は目を見開く。翔の言う通り、亮にはまだ魔宮の賄賂によるドローが残っている。それも神様から齎されるドローだ。

 

 

 亮がデッキへ手を添える。光でもなく、闇でもない。全く別の力が亮の手に宿る。それは儚く、頼りない。だが、味方にすれば亮を誰よりも強くする最強の力。

 

 

「ドロォォォォォー!」

 

 

 ドローするカードを亮は確信していた。カードの内容すら確認せず、カードを発動させる。

 

 

「俺はパワー・ボンドを発動! 3体のサイバー・ドラゴンで融合! 現れろ、サイバー・エンド・ドラゴン!」

 

 

 サイバー・エンド・ドラゴンATK/4000→8000

 

 

 具現化する兄弟の絆。圧倒的なその姿にコナミはただ笑った。だが、それで負けを認めるほど、コナミは諦めが良くない。

 

 

「サイバー・エンド・ドラゴンで混沌幻魔アーミタイルを攻撃、エターナル・エヴォリューション・バースト!」

 

「トラップ発動、攻撃の無力化! 相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。相手モンスター1体の攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了する!」

 

 

 極大の閃光がアーミタイルへ迫る。その瞬間、光の渦がアーミタイルの前へ現れ、光の渦を呑み込む。

 

 その様子を認めた亮は手札から1枚のカードを取り出す。

 

 

「俺は手札からサイバー・ジラフを召喚、そして効果発動。このカードを生け贄に捧げる。このターンのエンドフェイズまで、このカードのコントローラーへの効果によるダメージは0になる。カードを1枚伏せてターンエンド」

 

 

 最後まで抜け目無くパワー・ボンドのデメリットを回避する亮。その姿を見届けたコナミは確信を持って言える最後のドローを行なう。

 

 

「オレのターン、ドロー!」

 

 

 混沌幻魔アーミタイルATK/0→10000

 

 

 最後のドローカードを確認したコナミは小さく溜息を吐く。最後のドローのはずなのに特に今は必要の無いカードだった。デッキが決着を付けろと言っていた。

 

 

「――――これで、オレの勝ちだ。オレは混沌幻魔アーミタイルでサイバー・エンド・ドラゴンを攻撃、全土滅殺転生波!」

 

「この瞬間、トラップ発動、決戦融合-ファイナル・フュージョン! 自分フィールド上に存在する融合モンスターと相手フィールド上に存在する融合モンスターが戦闘を行う場合、その攻撃宣言時に発動する事ができる。お互いのプレイヤーは戦闘を行うモンスターの攻撃力の合計分のダメージを受ける!」

 

「あ~、くそ! 最後の最後で引き分けかよ!」

 

 

 アーミタイルとサイバー・エンド・ドラゴンの攻撃が交じり合い、爆発する。悔しそうに頭を掻き毟るコナミの表情は引き分けなのに明るい。周りを見てみれば、十代達も笑っている。

 

 そんな中、亮が最後のカードを発動した。

 

 

「――――墓地からダメージ・ダイエットを発動、ゲームから除外する事で効果ダメージを半分にする」

 

「? ッ! 亮、お前まさか!」

 

「ふッ、同じ引き分けでもこちらの方が良い」

 

 

 亮の意図にコナミが気付いた時はもう遅く、巨大な爆発が二人を包み込む。

 

 

 小波赤人LP900→-17100

 

 丸藤亮LP450→-8775

 

 

 コナミと亮は2倍に近いダメージ量で引き分けとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数ヵ月後、大勢のアカデミア生が見守る中、向かい合う二人の姿があった。二人の決闘は既にデュエルアカデミアの名物となっている。しかし、それもこれで見納め。

 

 卒業決闘、それが二人の間で行なわれる決闘。

 

 

「この決闘、よく引き受けてくれた」

 

「当たり前だ。最初の99戦は連敗で100戦からは負けたり引き分けたりした。なら、この記念すべき200戦目でオレが勝つ! 最後の最後に敗北の悔しさを知っていけ! ソレがオレに出来る最後の手向けだ!」

 

「敗北の悔しさなど、昔から知っている。だからこそ、俺は勝利すらリスペクトする!」

 

 

 二人はデュエルディスクを構え、宣言する。

 

 

「「決闘(デュエル)!」」

 

 

 小波赤人――――彼は遊戯王TFへ転生したハーレムを目指した…………でも、彼は結局、一人の決闘者(デュエリスト)だった。

 




本編完結でございます。
決闘者、それは最強のフラグブレイカー(笑)
Q影丸は? Aえ、何だって?
Qカイザーエンド? Aえ、何だって?
グダグダですが、これでストーリー性のある話は終わりです。
後は自分が好きなキャラの短編をいくつか更新したら、エタる前に完結させていただきます。
自分勝手なお願いかもしれませんが、それまでは応援よろしくお願いします。
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