カミテン~遊戯王TFへ転生してハーレム目指す――でも~   作:ニョニュム

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ネタ回です。


勘違いの10連勝

 カイザー亮に99連敗を期した翌日。デュエルアカデミアにあるテラスの片隅で膝を抱えて蹲っているコナミの姿があった。

 

「また、負けた。どうしたらカイザーに勝てるんだよ……」

 

 どんよりと暗い雰囲気を纏うコナミがカイザーとの戦いを思い出しながら呟く。

 機械族デッキに対して本来なら完封出来る筈の構成で挑んだデッキだった。手札の引きも悪くない。むしろ、カイザーに大ダメージを与えたのだ。デッキはとても良い回転をしてくれた筈。それでもあのネタデッキでしかないカイザーに勝てないのは何故なのか。

 

(もしかして、積んでいる? いや、流石にそれは無いか……。じゃあ、どうして……)

 

 段々と黒い妄想がコナミの思考を支配していく。万全を期したデッキで勝てないのは相手が悪い。基本的に性格が捻じ曲がっているコナミは自分が悪いと認めない。負ければただデッキの構成が悪かったと考えるのだ。

 

 だからこそ、コナミのデッキ達はコナミとの信頼関係を築けない。コナミにとってドローはただ確立の問題であり、デッキとの信頼関係でどうこうなるようなものではない。そう考えている。元々、余計な異分子(セキヒト)が入り込む前のコナミは幾つものカードと共に生きてきた戦友だ。カード達はコナミの期待に応えようと手を伸ばすが異分子(セキヒト)が入り込み、本質がズレてしまった今のコナミには手を伸ばすカード達に気付きもしない。

 

 カードに愛されて育ったコナミとこの世界からすれば卓越したタクティクスと知識を持っていた異分子(セキヒト)。この二つが噛み合えば、伝説の決闘者にすら引けを取らない立派な決闘者になっていた筈。しかし、現実は甘くない。カードを友として、家族として扱ってきたコナミとカードをただの紙切れとしか思っていない異分子(セキヒト)。プラスとマイナス、形の違う歯車が噛み合うことなど有り得ない。

 

(あのカード達を使うのか?)

 

 それはかつて異分子(セキヒト)が普通の赤人だった頃、強力過ぎるという理由で使用が不可能になっていった禁止カード達。この世界では禁止カード達の制限が緩い。あちらでは強力な禁止カードとして扱われているモノでもこちらではクズカードとして扱われているモノが多い。聖なる魔術師(セイント・マジシャン)やキラー・スネークなどの低ステータスモンスターは完全に無用の長物として扱われている。

 

 コナミがまだ赤人だった頃の禁止カードの未使用。それは赤人なりの矜持だった。

 

(いや、それは負けた気がする)

 

 元々、負けているので何を今更であるが、コナミは原作キャラクターに対して圧倒的な情報を所持している。コナミの前ではデッキを全て公開しているようなモノ。そんな状態でも勝利することが出来ないのだから、コナミの噛み合わなさ加減は相当なモノだ。

 

 相手は平気で“強欲な壺”や“天使の施し”、途方も無い宝札系カードを使う。それは別にいい。禁止カードを使って原作キャラクターに勝利した所でコナミとして喜ぶが、赤人としては空しいだけ。

 

(まあ、どっちにしろ、DP(デュエルポイント)を溜めなきゃカイザーには挑めない)

 

 コナミはあまり気にしていないが遊戯王GXの平行世界である遊戯王TFでは多少の違いが存在する。デュエルアカデミア共通の通貨であるDPはその体現でもある。DPは授業を受けることで少しずつ個人所有のPDAに追加されていき、デュエルの際は一定のDPを掛けて戦うことになる。

 

 それと同時に決闘者ランクと呼ばれるモノがあり、DPを消費することで自分のランクを1~10の間で決定できる。デュエルアカデミア創設者の方針でアカデミアは弱肉強食がモットー。当然、ランクの低い決闘者は満足にサポートを受けることが出来ない。寮も男女別とはいえ、ボロボロのオシリスレッドだ。

 

 その扱いに奮起する者もいれば、不貞腐れる者もいる。勿論、卓越した実力を持ちながら赤色の制服が格好良いと言って、出て行かない者もいる。コナミも赤色以外の制服がしっくりこないのでオシリスレッドにいる者の一人だ。

 

 対戦する決闘者のランクによって勝負を挑む時、掛け金となるDPは変動する。決闘者ランクがそれなりでしかないコナミがアカデミア最強のカイザーに挑戦するにはかなりのDPが必要となる。前回の決闘でDPの大部分を使い果たしたコナミはいまだに膝を抱えた状態で、どうやってDPを溜めるか悩み始める。そんな時だった。

 

 

「大丈夫ですか、気分でも悪いんですか?」

 

 

 一人の天使がテラスの片隅で蹲るコナミを心配して声を掛けた。

 

 

「あっ……」

 

 

 顔を上げたコナミとコナミへ声を掛けた天使――宮田ゆまの視線が交じり合う。次の瞬間、ゆまの表情が若干強張った。

 

 

「げ、元気そうなので失礼しますね」

 

 

 元々、快活で心優しい少女であるゆまはコナミを傷つけないようにゆっくりと後退を始める。完全に逃げる体勢だ。他人に悪意や苦手意識を持たないゆまであるがコナミだけは特別に苦手としている。何故ならそれは――――。

 

 

「うぅ、ゆまたんがオレの心配を……。けど、ごめんね、ゆまたん。今のオレはカイザーへ挑む為にDPが欲しいんだ。だから、DPを掛けてオレとデュエルだ!」

 

「ふえ~ん、やっぱり~」

 

 

 じりじりと後退するゆまを逃がさないようにコナミは立ち上がるとデュエルディスクを構えて、決闘を宣言する。瞳に涙を溜めて、半泣きになっているゆまが決闘者の習性としてデュエルディスクを構える。

 

 

「「デュエル!」」

 

 

 ウキウキした少年の声と半泣きである少女の声と共に決闘が宣言される。デュエルディスクの決めた先攻はコナミ。

 

 

「オレのターン、ドロー! ごめんね、ゆまたん」

 

「うぅ……、またですか。酷いですよ~」

 

 

 自分の手札を見て、謝罪するコナミ。その謝罪を受けたゆまが半べそをかきながら呻く。

 

 

「オレは手札から連弾の魔術師を召喚!」

 

 

 コナミのフィールドに出現した一人の魔術師。ゆまの姿を認めると、またか、と言いたげな表情を浮かべる。

 

 

 連弾の魔術師☆4闇 ATK/1600DEF/1200

 効果・このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分が通常魔法を発動する度に、相手ライフに400ポイントダメージを与える。

 

 

「そしてオレは手札から永続魔法“悪夢の拷問部屋”を発動。このカードは相手ライフに戦闘ダメージ以外のダメージを与える度に、相手ライフに300ポイントダメージを与える」

 

 ゆまとしてはもう何度も見てきた悪夢の光景。いい加減、ゆまはコナミとの決闘から逃げ出してもいい筈だ。

 

 

「オレは手札から魔法カード“デス・メテオ”を発動。ゆまたんへ1000ポイントのダメージ」

 

 

 出現した巨大な火の玉がゆまを襲い、げんなりとした連弾の魔術師と物言わぬ悪夢の拷問部屋が追い討ちを掛ける。

 

 宮田ゆまLP4000→2300

 

 

「そして更に魔法カード“火炎地獄”を3枚発動。相手ライフに1000ポイントダメージを与え、自分は500ポイントダメージを受ける。ゆまたんの受けた痛みはオレも引き受ける!」

 

 

 良い事を言ったような満足気な表情で宣言するコナミだが、やっている事はただの追い討ち。灼熱の炎が二人を包み込み、ゆまのLPを0にする。

 

 

 宮田ゆまLP2300→-2800

 

 小波赤人LP4000→2500

 

 

「うぅ、また、私まで回ってきませんでした」

 

 

 半べそのゆまががっくりと肩を落とす。人嫌いするゆまではないが、コナミだけは苦手としている。何故ならコナミと決闘する場合、高確率で自分にターンが回ってこない1キルをかまされるか、ゆまが先攻になったとしても後攻で1キルされてしまう。はっきり言ってしまえば、コナミとの決闘では決闘でありながら決闘の体を成さない。

 

 アカデミアでは相手に直接ダメージを与えるバーンカードを禁止していないのでコナミのプレイは反則でもなんでもない。しかし、ここまでガチガチのバーンデッキを持っているのはコナミと友人でもある原麗華ぐらいだ。

 

 

「それじゃあね、ゆまたん」

 

 

 ゆまのPDAからコナミのPDAに譲渡されたDPを確認したコナミは元気を取り戻して、歩いていく。決闘に勝てば好感度が上がると思っているコナミはゆまに対して何のフォローもしない。

 

 去っていくコナミの背中を眺めながら、ゆまは溜息を吐く。コナミの考えていることがゆまには分からない。自分の事をゆまたんと言ってくるのには身構えてしまうが、コナミから向けられる感情は明らかに自分を異性として意識している好意だ。人格面で多少問題はあるが、悪人という訳ではない。向けられる好意自体はそんなに嫌じゃない。それなのに決闘が終わると碌な会話もせずに去っていってしまう。

 

 

(でも、元気になって良かった……)

 

 

 ウキウキとしているコナミの背中を眺めて、ゆまはそんな感情を覚える。アカデミア最強のカイザー亮に挑んでは敗北を繰り返すコナミの事をゆまは知っている。普通なら折れてしまうような状況でも不屈の精神で最強へ挑んでいくコナミの姿だけは純粋に憧れる。コナミの落ちこんでいる姿は似合わない。

 

 

(アレ? なんで私――――)

 

 

 いつのまにか、ゆまから笑みがこぼれた。やる気を出したコナミはまたいずれ、アカデミア最強に挑むのだろう。そんなコナミの姿を想像したら、少しだけドキドキした。

 

 その感情がどのようなものなのか、ゆまにも理解出来なかった。

 

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