インフィニット・デカレンジャー~クールで熱い戦士たち~外伝 作:憲彦
今回は久我司、次回は織斑兄弟、最後は久我一家です。ではでは、いつも通り読み終わったら感想等をよろしくお願いします!それじゃあ!は~じめ~るよ~!
あ、卒業後の話になるので、本編の時系列からかなり飛びます。
そして、変に長いです。伸びた理由は分かってます。ですがそれを承知で先へどうぞ。
銀の福音事件。条約で禁止されている筈の軍事運用を目的として製作されたISの暴走事件。あの事件から早5年。あれ以降なにか特別な事があったかと言えば、そう言うわけではない。相変わらず世界は女尊男卑だし、宇宙を見ている人間も極わずか。あった事と言えば、福音開発国であるアメリカとイスラエルに各国からの経済制裁とISコア所持制限、開発企業・両軍上層部解体、IS委員会からの期限付きの除籍が行われた。
当然両国は反発したが、ありとあらゆる証拠と軍用機開発と言う企画が通るまでの不正の事実。これら全てを出されぐうの音も出なくなった。そして今、あの時戦っていた彼らはと言うと、
「はぁ!」
「踏み込み甘いぞ」
「チッ!オラァ!」
「脇が開いてる」
司は現在織斑千秋の剣術指導をしている。あの事件では織斑千冬、織斑千秋、篠ノ之箒がSPDと学園上層部の命令を無視し現場に乱入。事態を悪化させ事件解決の妨害をしたため、一時的にSPDが身柄を拘束。その後元特凶の第1部隊隊長、初代デカブライトのリサが「戦いたいなら鍛えてやる」と言って、3人を鍛え始めた。しかし学園の生徒と教師と言う事もあり、長期間の拘束は行わずに拘束解除後はリサに監視と訓練を続けられていた。
「よ!相棒」
「相棒って言うな。何のようだ?今は仕事が立て込んでる筈だろ。ボスの引退もあるんだ。遊んでる暇は無いぞ」
「それ秘密事項。知ってる人間一部だけなんだから口外するなよ」
「悪かった。で?用件は」
「見にきただけだよ。あれから随分経って、監視や諸々も解けたのに、アイツだけずっと訓練を受けてるって言うから」
「あぁ。今やってるぞ。初めよりは大分強くなった。でもボスに食い付くのはな~……」
「いや。そうでもないみたいだぞ」
訓練を始めたばかりの頃は、一般人に毛が生えたくらいの強さで、リサ曰く村人G位の強さと言っていた。だが日をおう毎に力を付けていき、監視等の処分が解除される頃には城の兵士F程になっていたそうだ。基準は良く分からないが、成長はしている。
「そうか?俺には大きい変化があるようには見ないが」
「ボスの剣速に徐々にだけど適応してる」
「ッ!?言われてみればそうだな。少しずつ追い付いてる」
「ボスは手加減してるんだろうけど、スゲーな」
剣術をやっている竜馬だからこそ見つけた成長だ。本来なら微々たる成長。他人は気付かないし自分でも気付かないような小さな成長を見付けたのだ。それを見たら満足したのか、訓練所から出ていって自分の仕事の続きを始めた。2人の訓練はそれからちょうど30分後に終了し、千秋は「また勝てなかった!」と悔しがりながら訓練所から出てきた。
「ボス、お疲れ様です。」
「ホージー。別に見てなくても良かったぞ?」
「いえ。束からもしもの時補助をするように言われてので。離れる訳には生きません」
「そんなに気を回さなくても良いんだが……別に今日明日倒れるって訳じゃないぞ?」
少し呆れている。引退はするしそれに伴う理由はあるが、ここまで気を使われる必要はない。まだ一部の人間しか知らないと言うこともある。1人で居ても問題はないのだ。しかし、隊員達の体を1番知っているのは束。その束本人からの頼みなら無視できないのだろう。
「で?皆にはいつ言うんですか?体のこと」
「引退まではまだ時間があるんだ。今はまだ伝えるつもりはないさ」
「ですが、前もって言っておかないとアイツらが悲しみますよ。いざ引退の日が来たときに、何の準備もなく言われたら……」
「あぁ。そこが俺も気になるところだ。だがどうやって打ち明けるべきか、俺には分からない」
今まで前線で戦い、長く一夏たちと居た身。その立場から何と言って打ち明けるべきかは本人ですら分かっていない。躊躇いもあるのだ。
「いっそ、もう歳だから引退する!って軽いノリで言ってしまおうか……」
「それは流石に……」
余りにも雑だ。確実にメンバーからは納得されないだろう。そんな不安を抱いているが、今考えたところで何も出てこない。ホージーと司も訓練所から出て自室に戻ろうとした。
ドカン!!
「「ッ!?」」
突然大量のガラスや壁が割られた様な音が派手に響き渡り、煙で視界が遮られた。
「竜馬!何があった!?」
『襲撃だ!そこから4ブロック先のエリア!』
ホージーがSPライセンスで竜馬に状況を聞き、急いで司と襲撃されたエリアへと向かっていく。
時間は少し遡る。千秋が訓練所から出てしばらくしたときだ。負けた事が相当悔しい様で、次はどうするかとブツブツ呟きながら歩いていた。
「1本じゃダメだ……2本で行ってみるか?イヤ。俺二刀流できないわ。体術?負ける未来しか見えない……」
最近は司に負けるたびにこれの繰り返し。毎回ブツブツ呟きながら次の事を考える。その為人にぶつかる事もしばしばある。声をかけられても気づかないこともだ。
「あ、織斑君」
「む?千秋ではないか」
「上段からの降り下ろしは重たすぎて受ければ隙が出来る。避けて右から薙ぎ払う?いや避けたら完全に振りきる前に刀を止めて逆に薙ぎ払われる。なら更にそれを受け止めて顔面に拳を入れて視界を奪って蹴り飛ばす。でもそれだと拳を受け止められた時点でアウトに近い……刀を囮に……イヤ武器がない状態では確実に勝てない。捨てたと見せかけて拾い上げて斬る?でも鍔迫り合いは直接的な腕力が関わって来るしそれじゃあ勝てない。刺突攻撃は体重が関わってくるからそれでも勝てなくて。あ、体作りから始めるか。……それじゃ勝つの何年後だよ」
この様に、真耶とラウラに声をかけられたのだが、気づきもしない。これが最近多くなってきている。最近の日本署内では、「ブツブツ状態の千秋に声をかけても無駄」と言われるようになってきた。
「おい千秋!」
「ウワッ!?……なんだラウラか。それと山田先生」
「なんだじゃないだろ……声をかけたのにブツブツブツブツと何か言って。見ろ。お前に無視されたと思って、母様が泣きかけてるぞ」
ラウラが指をさすと、そこには壁に体育座りになりながら寄りかかり、涙目になっている真耶が居た。ガチ泣きしそうになっている。
「や、山田先生?大丈夫ですか?」
「い、良いんです……どうせ私なんて影薄いですから。気づかれませんから……」
「いや、その……本当にすみません……」
全力で謝っている。後ろには「誠心誠意を込めて謝れ」と目で訴えてくるラウラがナイフを構えている。レーゲンを展開しないのは優しさなのだろうか。待機状態のレーゲンが無いことから今日は身に付けていないとも受け取れる。その時だった。
ドカン!!
1つの何かが日本署の壁を突き抜けて侵入してきた。見たところ侵入してきたのはIS。それも打鉄やラファールの様な量産機ではない。使用者に合わせて作られた専用機だ。
「「「ッ!?」」」
「あ?出るところ間違えたか?地獄の番犬がいると思ったんだが……お?誰かと思えば世界初の男でISを使えるって話題になった織斑千秋じゃねーか!良いもん見つけたぜ~。弟弟子の相手をする前に、お前を拉致るのも悪くねーな」
「拉致る?今更俺を狙いにきたのか?」
「は?な訳ねーだろ。弟弟子を見つける前にお前を見付けたってだけの話だ。勘違いすんなよ。まぁ、暴れてれば出てくるよな!」
「グゥ!」
ISをまとった襲撃者はここにいる人間には理解できない様な事を話ながら暴れ始めた。手始めにと言わんばかりに、最初は千秋を襲う。
「♪~。この攻撃を受け止めるとは思わなかったぜ。データ見た感じだと気にかける程の強さでも無かったから驚いたぜ」
「舐めるな!ラウラ!早く近くの人を避難させろ!急げ!」
突然の突進。しかしすぐに白式を展開し攻撃を受け止めラウラに避難誘導の指示を出した。軍人であるラウラはこの状況を見て、自分がやるべき事は避難誘導だと理解すると、安全かつ迅速に避難を開始させる。
「ウォォオオ!!」
「ウオッ!中々のパワーだ。学生時代のデータが嘘のようだな。潰しがいがありそうだ」
この女が言うように、確かに学生時代の千秋と比べれば、今はかなり成長したと言えるだろう。しかし、それでも目の前の相手とは天と地程の差がある。これではまともな時間稼ぎすらできないかもしれない。
「しっかり着いてこいよ!」
「ッ!?グワァ!!」
「ガッカリさせんな!それで終りか?!」
背中にある蜘蛛を彷彿とさせる8本の武装。それが不規則かつ高速で千秋を襲う。雪片で防いではいるものの、全てを防ぐことが出来ず徐々に追い詰められていく。
「グッ!ガァア!!」
ついに、防御が追い付かなくなり攻撃をその身に全て受けてしまう。白式はダメージ過多により解除。絶体絶命の状態に陥ってしまった。
「意外と楽しめたぜ。じゃあ~なっ!」
「エマーシェンシー!デカマスター!!」
「ウオッ!?出たな地獄の番犬!待ってたぜ!!」
「SPDの基地に襲撃を仕掛けるとは。貴様、何者だ」
「ふん!警察なら調べてみろ!」
そう言い放つと、千秋を攻撃した8本の脚をしまいブレードの様な物を取り出す。司と同じ土俵で戦う様だ。
「ハァア!ディヤ!!」
「ふん!ハァ!」
敵の行ったこの行動に、その場にいた全員が司の勝利を確信した。しかし、一向に勝負が決まりそうにない。それどころか司が押され始めたのだ。
「オラァ!」
「グッ!…この剣は……!何故お前がその剣を使う!?何故使えるんだ!」
「素直に教える訳ねーだろ!!」
「ウワァア!……何故、銀河一刀流を。しかも、その動きは!」
「クククッ……1つしかねーだろ。答えなんてよ~。でも、正直拍子抜けだな。弟弟子の強さがこんなもんだとは思わなかった。地獄の番犬って言われてる位だから期待したんだけどな~。全力で戦えよ。じゃないと、大切な部下が死ぬことになるぜ」
「ッ!?千秋!!」
背中にしまった8本の脚を千秋めがけて飛ばす。ISをまとっていない人間が受けたら確実にミンチ。生きて帰れはしない。だから、身を呈して千秋を守った。
「グワァァァア!!!」
「ボス!」
「司くん!?」
「父様!?」
司のデカスーツが解除され、そのまま倒れてしまった。周りから司を呼ぶ声が聞こえてくるが、反応が徐々に薄れていっている。
「次は本気で殺し合おうぜ。この2人は預かっていく。お前にとって大切な人間らしいからな」
「ま、待て……!真耶!ラウラ!!ウッ……」
襲撃者はラウラと真耶を掴んで日本署から飛び去っていく。連れていかれた大切な2人に手を伸ばすも、その手は届きはしなかった。
襲撃後、デカレンジャーの隊員と千秋が作戦室に集まった。理由は1つ襲撃者の事を調べるためだ。だが、部屋の空気は重苦しかった。
「ボスが負けるなんて……」
「それにラウラと山田先生まで……」
その場に居なかった一夏と鈴の頭の中はそれで一杯だった。どんな相手にも勝ってきた司が敵に負け、更にラウラと真耶が拐われる。襲撃されただけでも大事だが、その上更に誘拐まで建物内で行われたのだ。デカレンジャーの隊員としては、やるせない思いなのだろう。
「今わかってる事を説明するね。襲撃者のISは第2世代のISで、過去にアメリカから奪取されたアラクネだってことが判明したよ。操縦者は彼女。亡国機業メンバーのエージェント『オータム』それ以外は不明」
束が集めた情報をモニターに映しながら説明をする。だが頭には余り入っては来ないだろう。今回起きた事のショックが大きすぎるからだ。それに何より、襲撃者よりも先に説明して欲しいことがある。
「束さん。なんで久我のデカスーツは、ISの攻撃で解除されたんですか?」
「…………」
「答えてください!デカマスターのデカスーツは、本来の隊員が使うスーツよりも出力が高い!にも関わらず!第2世代のISの攻撃で解除された!これはどう言う事ですか!?それに最近、皆も何か隠してる…鈴や一夏は知らないみたいだけど、一体何を隠してるんですか?」
その言葉に、ホージーも竜馬も束も隠せないと判断したのか、襲撃者の情報を一旦消して、モニターにデカスーツの出力表を出した。
「右に映ってるのが俺のデカブルーのスーツの出力。数値的には平均的なものだ。そしてこれが今ボスが使っているデカスーツの数値」
「ッ!?」
「どう言うこと……」
「通常スーツの、半分以下……」
モニターに出ているデカマスターのスーツよ出力は、平均的な物の半分以下の数値を示していた。しかも部分的な物ではなく全体的な物。ISの攻撃で深傷を負うのも納得できてしまうレベルの数値だ。
「そして、これが学園時代の出力。この時は、俺達のスーツの約3.5倍~4.5倍程の出力だった」
「でも、それを維持できなくなってきたんだ。元々ボスの体はゆっくりと限界に近付いていた。スーツの出力も年々徐々に下がっていたし、戦えなくなるのは時間の問題だった。そしてそれを加速させたのが、福音の暴走事件。あの時の傷が更に進行を速めた。結果、スーツの出力をここまで下げることになったんだ。それに、引退も間近だった……」
3人の説明に、鈴、一夏、千秋は言葉を失った。そんな状態で戦っていたこともそうだが、そんな状態になってまで戦っていたと言う事実、そして気づけなかった自分達の未熟さ。その全てに言葉を失ってしまったのだ。
「な、なんで、久我は戦えない体になっていってたんだ?俺にはそれが理解できない」
「銀河一刀流。その剣技は弱点がないと言われるほどに強い、最強の剣術の1つと言える。一撃一撃が必殺級の威力を持ってて、大振りでありながらも急所を的確に斬り落とす。そして相手の動きによって型を自由自在に変えられる。これが原因だ」
「どう言う事ですか?」
竜馬曰く、銀河一刀流は体にかかる付加が他の剣術とは比べ物にならないとのこと。技や動きは体の基礎が出来上がって初めて教えられる程のもの。しかし、司はそうではなかった。織斑夫妻に技を教わる前に、独学で動きや技を習得していったのだ。その結果が今に繋がったとのこと。
「今までは耐えられた付加でも、長く続けば続くほど体に与えるダメージは大きくなる。その限界がそろそろだったんだ」
「それって……」
「戦えば、ボスが勝てる確率は低い。人質がいる状態じゃ当然俺達でもオータムに勝つのは難しいだろう。万全とは言えないが、ボスを圧倒したんだ。何故かは知らないけど。千秋は何か知らないのか?その場に居たんだ。話は聞こえなかったか?」
竜馬の質問に千秋は素直に答えた。あの場で司とオータムがどの様な事を話していたのか。どんな戦いをしていたのか。そして、オータムが司と同じ銀河一刀流を使っていたと言うことも。
「これくらいだ。アイツの狙いは最初から久我だった。でも暗殺とは捉えにくい態度だ。多分、純粋に戦いを挑みに来たんだと思う。それに、久我の事を弟弟子って言ってた。同じ師匠だったんじゃないか?まだ久我にしか気付けてない事もあるだろうが、あの場で聞いてたのはこれくらいだ」
あの会話や戦いは鮮明に覚えていたようだ。それほどまでに印象に残っていたのだろう。司の敗北や、敵の強さが。現状の情報をまとめていると、束のSPライセンスに1通のメールが入ってきた。鑑識課からの情報だ。現場に落ちていた髪の毛。それには奇跡的に毛根も付いており、更に詳しくオータムと言う人物を調べることができたようだ。
「ん?妙だな……」
「何がです?」
「毛根から採取したDNA、普通の物じゃない。もしかして、クローン?」
「可能なんですか!?クローンなんて作るの!?」
現実では可能だ。実際に羊だがクローンの製作に成功している。しかしそれは羊だから成功した。人間では到底成功しそうもない。仮に複製する人間の細胞と同じ構造の受精卵を作れたとしても、それが人間の胎盤で着床して分裂を繰り返し成長する確率は動物に比べてかなり低い。健康に出産し何事もなく生きていける確率は更にそれを下回る。表の技術じゃ不可能だ。
「裏社会の技術なら、そう難しい事でもないよ。大体今の段階で難しいって言われてるのは、人間1人を完全に作り出すのにかかるリスクと資金面の問題。更には生命倫理とかの話が関わってくる。でも、裏ならそんなの関係ない。資金は簡単に調達できる。それも一国の国家予算程なら1ヶ月もあれば集められるし、研究所もテロリスト達が喜んで提供するよ。でも、今回の場合は同じ人間を複製したと言うより、短期間で複製した体に人格を入れたんだと思うよ。この細胞の構造を見るからにね」
「複製した体に人格?」
「そ。人間の人格って言うのは、生活してきた環境や体験した経験から形成される。まぁ簡単に言えば記憶だね。そして動きは脳からの電気信号で神経に伝わってくる。だから頭の中の物を別の体に入れるのはやり方さえ分かってれば難しくは無いんだよ。あ、しかもこの細胞の大元は日本人だね。日本人の女で銀河一刀流……残ってたかな?」
束はそう呟くと、司のデスクを漁り始めた。そして1つの古い書類を取り出す。銀河一刀流門下の名簿だ。全員の名前や住所、連絡先に顔写真が乗っている。
「結構ありますけど、探せんるんですか?」
「いっくん。束さんを舐めちゃダメだよ。オータムの今の体は戦いに適した年齢の体。さっき竜ちゃんが説明した通りなら、銀河一刀流を習ってた時か道場を卒業した直後がもっとも戦いに適した体になる。そして細胞の構造。あれは長期的に使える体じゃない。傷付いたらすぐに替えがきく所謂使い捨ての体。大元の細胞に上乗せした分を見ればその体が何体目かの大体の予想は立てられるよ。だから……この辺かな?」
束の恐ろしく早い頭の回転。そして底無しとも言える膨大な知識量。それら全てを駆使してあっという間に名簿からその人物の居たであろう年代を割り出してしまった。
「あ、この女」
そして写真から見付けた。まだ白黒の写真の時代だ。その写真の中には、司の師匠である織斑夫妻の若い頃の姿と今回襲撃したオータムと瓜二つの人物が写っていた。
「巻紙礼子。当時28歳だな」
「書類を見るからに、双子では無いから完全にこの人だね。と言うか織斑さん若いね。最後に会った時いくつだったんだろ?2人は覚えてる?」
「さぁ?」
「もう完全に記憶には無いですからね。姉さんも両親については余り知らないようです。幼かった自分達を置いていったことに、恨んでさえもいましたからね」
スポーツ選手や武道を身に付け常に鍛練を続ける人間は本来より若く見える。現に司はもう30後半でそろそろ40代になるが、見た目は老けて見えない。むしろ若く見える。それと同じだろう。
「人物は分かっても、後は場所だね。一体どこにいるんだか……」
「コアの反応は辿れないんですか?」
「無理。辿ろうとしたけど場所までは絞り込めなかったよ。コアネットワークからも離脱してるコアだから、追跡は不可能だね」
「俺に心当たりがあります」
そう言うと、ホージーはパソコンから1つのデータを呼び出してモニターに映し出す。1つは道場。もう1つは岩や崖に囲まれた採石所の様な場所だ。
「1つ目はボスが教えてもらっていた道場です。住宅街からは離れてますし、余り人が近付かない場所なので潜伏しても気付かれにくいかと。そして、もう1つの場所はボスの師匠達が消息を絶った場所です。俺の予想だと採石所の可能性が高いです。前者だと大規模な戦闘は行えませんので」
「なら早く行きましょ―」
「余計な事をするな」
ホージーが割り出した場所。そこに今ずくに乗り込んで連れていかれた2人を助け出そうとしたが、突然部屋に入ってきた司に止められた。
「ボス?!……体は大丈夫なんですか?」
「あぁ。心配かけたな。問題ない」
「それよりも、場所が分かったんです!早く全員で行きましょう!」
「いや。お前たちはここで待機しろ」
鈴が急かすように司に言うが、司は自分以外を行かせるつもりは無かった。全員に待機を命じる。
「何でですか?!全員で行けば必ず助けられますって!ボス1人だけの方が危険です!」
「アイツは俺との一対一の戦いを望んでいる。ここで下手に全員で行けば、人質の命はない。それくらいお前らでも分かるだろ。相手は小細工が通用しない。なら、望み通り正面から俺1人で行く」
「でも」
「感情に任せて事態を最悪の方向に持っていくつもりか?少しは冷静になれ。助け出したいと言う気持ちは俺にも分かる」
オータムの行動力から察するに、司の言うことに間違いはない。下手に全員で人質救出に動けば、2人を殺すと言う最悪の事態に発展する可能性が高い。この場は司1人で行った方が正解なのだ。
「束、ちょっと来い」
「え?」
待機の命令を飲むと、束だけ外に連れ出されてしまった。束本人は少し意外と言う顔をしていた。
「これ。調整してくれ。出力は俺が学園に居た頃と同じで頼む」
「……体がもたないよ。今の出力はその体が耐えられる限界の数値。出力を元に戻したら、五体満足で帰ってこれる可能性は低いよ?」
「構わない。今すぐやってくれ」
差し出されたのはマスターライセンス。デカスーツの出力を学園に居た頃までに戻すようだ。しかし、今の体では耐えられる筈の無い数値。戦うとしたら短時間で勝負を決めるしかない。恐らく全力で戦えるのは10分あるかどうかと言う所だろう。
「はぁ……分かったよ。5分待ってて」
「すまないな。こんなことを頼んで」
「いいよ。どうけ行くとは思ってたし。でも、必ず五体満足で帰ってきて。死んだりしたらその体、私が余すことなく研究させてもらうから」
「分かった。死んだらこの体を好きに使ってくれ」
そんな恐ろしい契約を交わした5分後、鉄工所で調整を終えたマスターライセンスを持ってきて司に渡した。
「言っておくけど、この戦いが終わったら二度と戦えない体になる。絶対に前線に復帰しないで、引退の日を待っててね。ホージーが予想した場所とISの向かった方向は入れておいたから」
「助かる」
「後、スーツを装着してか30分経ったら問答無用で皆を向かわせるからそのつもりでね」
マスターライセンスに入っている情報に目を通すと、束に背を向けてオータムが待っていると思われる場所に向かおうとした。
もう使われてないであろう採石所。山の中にあるためか人は滅多に来ない。分りやすい例えとしては特撮でよく出てくる場所。と言う感じだ。そこにある崖の1つに、襲撃してきた女、オータムがISを展開して立っていた。
「さてと。アイツが来るのは時間の問題だな。アイツとの戦いが楽しかったらお前らを解放してやる。大人しく待ってるんだな」
「クッ!」
「おいドイツ軍。そのナイフは持たない事をお勧めするぞ。それと、手首を外して縄脱けしようとしても無駄だぜ。手首を痛めるだけだから止めておけ」
「ラウラちゃん言う通りにして。きっと、きっと司くんが助けに来てくれるから」
「はい……父様が、きっと助けてくれますよね」
ラウラと真耶は信じている。司が来ることを。そして必ず勝負に勝って自分達を助けてくれることを。
「来たか……」
オータムが司の姿を確認すると、2人を巻き添えにならない場所に置いて司の近くに降りていった。
「来たぞ。オータム。真耶とラウラは無事なんだろうな?」
「あぁ。危害は加えていない。崖の上から戦いを見てるよ」
「そうか。なら―」
「おっと、勝負はまだだ。その様子を見ると、デカスーツの出力は上げてきた様だが、お前自身の方はどうだ?どうせ鈍ったままだろ。だから」
「「「「ウィィン!!」」」」
「訓練用のメカ人間……あの時盗んでたのか」
「その通り。終わるまで見物しとくよ」
オータムはその後もう一度見物ができる場所に登り、司を観察することにした。訓練用のメカ人間の数は100体。まずはそれを倒してからになった。
「ざっと数えて100体。勘を取り戻すにはちょうどいい。エマジェンシー!デカマスター!!」
コールを受けた日本署から微粒子状になった形状記憶特殊合金が転送され、司の体を包み込んでデカスーツを形成していく。
「フェイスオン!百鬼夜行をぶった斬る!地獄の番犬!デカマスター!!」
「クククッ。ようやく本気できたな。日本署内部で戦ったときとは気迫が違う。これなら楽しめそうだ!」
「ディーソード・ベガ!銀河一刀流の剣技、とくと味わうがいい。ハァァァァァア!!!」
腰のホルスターからディーソードベガを抜き、トリガーを押して封印を解除する。石化していた刀身は刀本来の輝きを取り戻し、メカ人間達を切り刻んで行く。
「ディヤ!ハァ!トァ!」
一度の斬撃で複数体斬っていき、数のハンデを物ともしない勢いで片付けていく。
「ハァ!ダァ!!」
『ウィィン!』
『ウィン!』
『ウィウィン!』
「ハァラァ!!」
メカ人間も当然攻撃をする。だがそれは軽々と受け止められ逆に切り捨てられる。100体いたメカ人間はあっという間に蹴散らされてしまった。
「次はお前だ!オータム!!」
「ニッシシ!良いぜ!楽しく戦おうじゃねーか!」
「残りの脚は出さなくて良いのか?」
「刀で戦うんだ。あったら邪魔だろ?じゃあ、行くぞ!!」
ブレードを構え司に全速力で突っ込んでいく。それに合わせて司もディーソードベガを振る。一時的に、辺りからは金属と金属のぶつかる音以外なにも聞こえなくなってしまう。呼吸や刀を振るうときの声すら聞こえない。
「ッ!」
「ッ!?ッ!!!」
勝っているのは司だ。オータムの刀を弾き、剣先をオータムの喉に突きつけている。
「勘を取り戻させた事を後悔するんだな」
「よく言うぜ。呼吸も荒れてて心拍数も上昇。思ってた以上に力が出て体がコントロールできてない証拠だ」
「安心しろ。そろそろ慣れてくる」
その言葉を火切りに再び斬撃のやり取りが始まる。だがさっきとはまた状況が変わってきた。依然として勝っているのは司だが、その動きに変化が出てきた。更に速くなってきたのだ。徐々に体が出てくる力に適応し始めた様だ。
「ゼェイ!!ッ!?」
「ハァ!」
「グアッ!?(なんだ今のは!?私の予想を圧倒的に上回った動きだった?!)」
オータムの繰り出した刺突の一撃。それは確実に司の頭を突き刺したと思ったが、突如姿を消すほどのスピードを出して背後に回り込み、逆にオータムを斬った。
「時間が惜しい。この一撃で決める!ハァァァァ……ベガスラァァッシュ!!!」
「ッ!ハァア!!」
お互いの全力の攻撃がぶつかり合った。だが、司の攻撃の方が威力が大きかった。オータムの攻撃を押し退け、ブレードごと専用機のアラクネを斬り飛ばしたのだ。ISが待機状態に戻ると、司も変身を解いて生身の状態になった。
「……何で今の一撃を手加減した?あの攻撃なら、絶対防御を突き抜けて私を殺せたはずだ」
「貴様にはまだデリート許可が出ていない。そして、銀河一刀流を使うお前なら、今から俺のすることが分かるはずだ」
「へ。今更律儀に教えを守るときが来るとはな」
銀河一刀流の教えの1つ。同流派を使う者同士のいざこざは、己の技と刀を使って解決する。決着はどちらかが敗けを認めた時。早い話が決闘だ。ここからは完全に銀河一刀流を使う者としての戦いになる。
「楽しい勝負の礼に1つ教えてやるよ。師匠達、織斑夫婦を殺したのはこの私だ」
「なに?」
「私は戦いたかった。強くなりたかった。その為なら何でもしたさ。だが、師匠達はそれに気付いた。私が間違った方向に向かってると言うことに。だがそんなこと私には関係ない。強くさえなれれば良かったからな」
「それで止めに来た師匠達を殺したのか?!」
「そうだ。この刀はその時に貰った。私の強さの象徴としてな」
取り出したのは1つの日本刀。何処と無くディーソードベガと似たような雰囲気のある刀だ。
「その体になったのも戦うためか?」
「あぁ。女の体は難儀なもんだからな。筋肉を着けてもすぐに落ちる。手足の長さも男に比べて短く細い。力も出せない。そしてすぐに衰える。それが許せなかったからこの体になった。いつまでも戦ってられる人生を選んだ。と言っても、これから先お前より面白そうなヤツは現れないだろうから、生きてても仕方無いんだけどな」
オータムの体の真相や師匠達の事がようやく判明した。全てが分かったとき、司はマスターライセンスを取り出してオータムに合わせた。
「亡国機業エージェントオータム。巻紙礼子!数々のテロ行為と織斑夫婦の殺害、及びSPD関係者略取の罪で!ジャッチメント!!」
『ジャッチメントタイム』
SPDの権限で、凶悪犯罪者に対し即時判決を求めることができる。地球のどこかに存在する地球最高裁判所では束の技術で時間の流れが外と違う。その為十分な審議を施し判決を言い渡すことができるのだ。
『×』
「デリート許可!さぁ、来い!同じ流派として、決着を着けるぞ!!」
オータムは刀を抜き司に斬りかかる。スーツと言う補助を無くした司だが、それでも苦戦することなく戦えている。数分の間に交わされた何百もの斬撃はお互いの体を少しずつ傷つけていく。
「ハァ!ゼィ!」
「ウッ!……フハハハ。私の敗けだ。楽しかったぜ。弟弟子」
最後を決めたのは司だった。その直後、オータムの体はその場でドロドロに溶けて無くなってしまう。クローンの体ゆえに起こったことなのだろう。
「よっと。2人とも大丈夫だったか?」
「はい!助けてくれるって信じてたので!」
「私もです!やっぱり父様は強いです!」
2人を縛っていた縄を解き、日本署へと連れていこうとした。だがその時だった。
「ウッ!グッ!アァ!」
突然司が胸を押さえて苦しみだした。立つこともままならなくなり、血を大量に吐き出している。真耶は咄嗟にマスターライセンスで通信を取り、日本署に救助を要請。すぐにSPDの車が駆け付け、メディカルルームへと搬送されていった。
「…………どこだ?ここ」
「司くん!?目が覚めたんですね!」
「真耶?……メディカルルームか」
「はい。襲撃者をデリートして私たちを助けたあと、突然苦しみだして……」
「それでここに運ばれたのか。相変わらずしぶいとい体だな~」
「はは。束さん怒ってましたよ?あと48時間以内に目を覚まさないと、例えその後に目を覚ましても風の力を受けて超人に変身するベルトを身に付けた改造人間にするって言ってました」
「そうならなくて良かった……」
ある意味、それは死んだ体を実験に使われるよりも酷な話に思える。戦いから身を退くのに更にこの先何十年も悪と戦いそうで怖い。
「それと、ラウラちゃんスゴく泣いてましたよ?今は泣き疲れて司くんの部屋で休んでます」
「悪いことしたな。後で謝らないと……」
「本当ですよ。……引退したら、どうするつもりだったんですか?」
「のんびり生きていくつもりだ。真耶とラウラと俺の3人で」
「え?」
「最初はラウラの部下の間違った知識からだけど、2人と家族みたいに過ごすのは悪い気分じゃなかった。だから、本当の家族になって欲しい」
「えっと……それって、もしかして」
「俺と、結婚してくれないか?真耶」
「こ、このタイミングで言うんですか?!酷いです!ズルいですよ!!///」
いい忘れたが、この2人まだ結婚していないのだ。そしてこのタイミングでのプロポーズ。卑怯としか言えない。
「真耶、俺は本気だ。俺はお前たちと、本当の家族としてこれからを過ごしたい。不安は沢山あるが、3人で満足できる暮らしができる様に頑張る。だから」
「断る訳、無いじゃないですか。私だってそうしたいんですから。これからも、ずっとずっとお願いします!司くん!」
「あぁ。よろしく頼んだ」
終わったけど一言。ナゲーわ!ただただナゲーわ!!どんだけナゲーんだよ!12000文字超えるとか頭可笑しいだろ?!自分のことだけど!!
と言うわけで、次回以降はできる限り短くします。これ映像にしたらそこそこの長さ行けるよ。手軽かつ気軽に読めるが俺のモットーなのに……ラストにも色々と言いたいけど、もうここまで!
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