一人の強かな少女のお話。
「ねぇねぇ、そこのひとー」
「はい?」
登校途中、この辺では見かけない制服の女の子に声をかけられた
「パプリカ学園ってどの道で行けばいいの?一回行ったことはあるんだけど道忘れちゃってさー」
「今まさに登校中です。よかったら一緒に」
「ありがとー助かるよー」
今気付いた。この人Pandemonium Doleメンバー、夢奏エルだ
「今日転入でねー。制服も用意できてないんだよねー」
「そうなんですか」
うぅー……距離感がわからない。プリパラでは知り合いなのに現実でははじめましてだもんなー
「キミは何年生?」
「中二ですけど」
「へー。じゃあ私中三だから私がお姉さんだねー」
そこからは夢奏エルによる一問一答。きっと好奇心旺盛ってことなんだろうけど、よく次から次へと質問が浮かぶなあ
「あ、着きましたよ」
「ホントだー。ありがとね。職員室の場所は覚えてるから」
「そうですか」
「また会おうねー。水島はるかさん」
……いつからバレてたんだろう
そのことが気になりまくって、午前の授業はあっという間に終わっていた
――――――
「や、はるかさん。相席いいかな?」
学食で人気の「らぁらイタリアン定食」を食べようとしたら夢奏エルさんに話しかけられた
「どうぞ」
割と空いてるのにわざわざそう申し出るということはお話がしたかったのかな
「お互い厄介なことに巻き込まれたよねー」
エルさんは「ウェスト流広島風お好み焼き」か。いい匂い
「厄介なこと?」
「チームのことだよー」
「チームの?」
「だってさ、普通に楽しみたいじゃん?なのに私達もはるかさんたちも"継承"しちゃったしさー」
トライアングルとPandemonium Dolceはお互い"継承"されて結成されたチームだ
「……似てるけど、一緒じゃないですよ」
「えー?」
「私達は名前を、エルさん達は意思を継ぎました」
「うん、そうだねー」
うー、言語化が難しいな
「名前を継ぐということは、特にトライアングルほどであればデビュー時から全てにおいて高いレベルが要求されます」
「ふむふむ」
「意思を継ぐということは、ちゃんとその意思が継がれているかの『審査』になると思うんです」
「なるほどね」
それはどちらにしても、デビューして間もない両チームにとってとても高い壁。そして何より恐ろしいのがその壁がライブが終わるまで見えないことだ
「そうなるとさー。ウチらのゴールって何なんだろうねー」
「それは……」
正直、わからない
「昨日デビューして考えることじゃないかもしれないけどさー。やっぱ気になるんだよー」
箸を持つエルさんの手が震えてる
「Dressing Paféは『あの』神アイドルSoLaMi♡SMILEのライバル。その意思を継ぐということは、つまり――」
「……何で言うかなー。やっぱそうなるよねー」
『SoLaMi♡SMILEに勝利すること』
「ですよね」
「うん。でもね」
「?」
「私は頑張りたい。夢奏エルだよ、私の名前。夢を叶えなきゃいけないの。夢叶えるまで挫けられない」
涙声で、普段の間延びした話し方をやめて真剣に語る
「正直怖いよ。ドレパやそのファンの皆さんの想いを叶えられなかったらどうしようって考えちゃう。でもそうならないために頑張るしかない」
目尻から一筋。本当は重圧に耐えられないんだ
「だって私は絶対夢を叶える『夢奏エル』だから」
力強く語る彼女は、すごくかっこよかった。今の私にエルさんに何が言えるだろう
「トライアングルは、絆が命のチームです。誰か一人欠けても成立しない」
そうだ。従姉妹とその友達というチーム構成。いいじゃないか
「夢を叶える力で立ち塞がると言うのなら――」
「私達は絆の力で貴女達に挑みます」
「……私達は手強いよー」
「望むところです」
漸く笑ってくれた
「あ、早く食べないと料理冷めちゃうねー」
「そうですね。それじゃあ改めて――」
『いただきます!』
つづく