幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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お待たせしました!駆け足気味です(苦笑)


第102話 「ローマ正教」

突然響き渡ったオルソラの悲鳴。

距離的にはここから少し離れた場所からだ。

すぐに携帯を取り出し、当麻の場所を確認する。

当麻は現在どんな状態かまでは分からないが、オルソラとは離れた場所にいるのは間違いない。

 

「今のは……あっ!」

「俺の連れと合流する、五和も来い!」

 

天草式の五和を連れて当麻のいる方へ走った。

俺の勘が正しければ、もう手遅れかもしれない。

 

「さっきの悲鳴は向こうからでしたが、なぜこちらに?」

「確かにあの悲鳴はオルソラで向こうにがいるのは間違いないけど、同じくローマ正教の連中が集まってるはずだ。そんな中に無策で突っ込むのは無謀だろ? お前らの事情も踏まえて一度合流した方がいい」

 

素手であの人数相手では流石に骨が折れるし、下手にぶつかると後々厄介すぎる事態になるのは確実。

なら当麻と合流した方がいい。何となくだけど、インデックス達もあっちにいる気がするしな。

 

「ですが、そっちにいるとなぜわかるのですか!?」

「俺はどっかのエセ神父と違って、何も考えずに二手に別れたりはしねぇよ。ちゃんと居場所くらい把握してる」

 

当麻には超小型発信器を取り付けてある。

勿論学園都市特製だ。武器や爆弾は禁止されたが、こういう小道具は禁止されてなかったからいくつか持ってきてた。

後はその信号を携帯で追えばいいだけだ。

そうこうしてる間に、当麻やインデックス達が見えてきた。

傍らに天草式らしき男が拘束されていて、アニェーゼと一緒にいたローマ正教のシスターが2人、当麻と対峙していた。

当麻が怪我をしていて、状況は最悪らしいな。

 

「あれは、建宮さん!?」

「とりあえず、あのシスターはこっちに敵対行動を取った。自己防衛って事で、排除する!」

 

大きな車輪を持ったシスターが何かを言っている。

声は微かにしか聞こえないけど、読唇術でどうにか言っている事はわかる。

 

『そこの天草式が抵抗し、あなた達を殺めた事にしましょうか』

 

―プチンッ

 

「ふざけた事ぬかしてんじゃねぇぞ!」

「「「っ!?」」」

 

まずは車輪を掲げたシスターを視て、能力停止。

次に、隣にいるシスターを視て使用魔術を把握し、乗っ取る。

 

「きたれ、十二使徒のひとつ!」

「えっ!? そ、それは私の……」

 

ちっこいシスターが持つ硬貨袋を使った魔術を発動。

硬貨袋に色づいた羽が生え、車輪シスターに向かって突撃した。

 

「シスター・アンジェレネ! 何をしているのです!」

 

車輪シスターは自分の魔力が無力化された事で硬直していたが、咄嗟に車輪を盾にして硬貨袋を防いだ。

その間に俺と五和は当麻達を守るように立ち塞がった。

 

「大丈夫か、お前ら」

「ユウキ!? それにその人は?」

「な、なぜあなたが天草式と一緒にいるんです!?」

「なんだ。物分かり悪いなお前。そんなの法の書は盗まれていない、とか、オルソラの本当の敵は誰か、とか全部聞いたからに決まってるだ、ろ!」

 

そう言って車輪シスターを思いっきり殴り飛ばした。

勿論、殺さない程度には手加減したけど。

 

「がふっ!?」

「シ、シスター・ルチア!」

「今のは当麻に攻撃した分な。で、まだ続けるか?」

「お、おのれ異教徒の分際で、よく私を殴りましたね!」

 

ルチアと呼ばれた車輪シスターがさっきより殺気を籠めて睨んできたが、その時どこからか笛の音が聞こえてきた。

 

「ちっ、退却命令ですか。シスター・アンジェレネ!」

 

忌々しげに俺を一瞥しながら、2人のシスターは笛の音が鳴った方へと走り去った。

 

「まてっ! えっ、ユウキ?」

「ダメだ。まずはこっちの体勢を立て直さないと」

 

当麻が追いかけようとしたが、俺が止めた。

今あいつらを追うのは無謀すぎる。

 

「お前さんはイギリス清教ってわけじゃないみたいだが、学園都市の人間か?」

「俺の名はユウキ、コイツの護衛だ。お前が天草式の 【今の】 リーダーか」

 

建宮と呼ばれた男は、隣にいる五和に目を向けた。

五和が静かに頷き返したのを見て、ようやく俺への警戒心を和らげた。

 

「今のって、その口ぶりに五和も一緒って事は大体の事情は知ってるわけだな。俺は建宮斎字、天草式十字凄教教皇代理だ」

 

天草式のトップは今も昔も神裂火織。自分はあくまで代理、リーダー代わりって事か。

とことん火織の事を慕ってる連中だな。

 

「当麻もインデックスも、大体は聞いているか?」

「天草式が法の書を盗んでなくてオルソラを保護しようとしたって所は、けどまだ理解が追いついてねぇよ」

 

当麻は法の書の説明とかあまり分かってなかったっぽいしな。

まぁ、魔術サイドの話は簡単には理解できないけどな。

 

「こいつらは敵じゃなくて、ローマ正教はオルソラを殺したがってるって事だけ理解してりゃいいよ」

「……分かった。で、これからどうするんだ?」

「まずは当麻、斎字の拘束を解いてやれ。右手で触ればすぐだろ。で、インデックス、ステイルはどこだ?」

 

ステイルはインデックスの護衛をしていたはずだが、姿は見えず近くにもいないようだ。

 

「ステイルなら……オルソラをアニェーゼ達の所へ、届けに行った」

 

斎字の拘束を解きながら、当麻が心底悔しそうに拳を握りながら呟いた。

きっとオルソラをわざわざ殺したがってる相手に渡した事を悔んでるのだろうな。

 

「とにかく合流しよう。何をするにしてもな」

 

 

ステイルを探しに動き出したが、さっきまでの喧騒がうそかのように辺りは静寂に包まれていた。

あれだけいた部隊が全員この短時間で撤収したようだ。

流石は部隊行動が慣れていて、その早さに五和と斎字も驚いている。

 

「どう言う事かな? なんで君達が天草式と一緒にいるんだい?」

 

訝しげな表情をしながら、ステイルが建物の影から出てきた。

俺はステイルに今までの経緯とローマ正教の嘘を言うと、ステイルはどこか納得したような顔をした。

 

「そうか、どうりでオルソラがアニェーゼ達を見て茫然自失になっていたわけだ」

「おい、なんで引き止めなかったんだよ! お前も悲鳴聞いただろ!?」

 

淡々と話すステイルに、当麻がかみついた。

 

「無理だ、当麻。これはローマ正教の問題だ。だから、イギリス清教のステイルに強く出る理由がない。下手に刺激すれば戦争の火種になる……だろ?」

 

俺がそう言うと、ステイルはつまらなさそうに煙草の火を消した。

 

「彼の言う通りだ。法の書がいまだバチカンに保管されている以上、僕らイギリス清教がこれ以上口出しする理由はない」

 

ステイルとインデックスが言うには、これからオルソラは宗教裁判にかけられると言う。

実質、オルソラには何の罪もなく、裁く事は出来ない。

だが裁判と言いつつ、その実情は昔ながらの魔女裁判で、オルソラをローマ正教の背信・背徳などそれらしい 【表の罪状】 にて 【正当】 に裁く。

それにより法の書を解読したと言う 【裏の罪状】 を隠すらしい。

 

「つまり、その罪状が確定するまではオルソラは生きてるって事か」

「五体満足、かどうかは分からないけどね」

「ステイル!」

 

俺に続いてつまらない事を言ったステイルを、インデックスが咎めるように言った。

案の定、当麻がステイルを睨みつけている。

 

「だったらこれから助けに行けば!」

「助けに? 君の拳ではあの大人数をどうにか出来る程万能なのかい? いいかい、これはもうローマ正教内部 【だけ】 の問題なんだ。僕達がオルソラを助ける理由はない」

 

ステイルの言う事は至極真っ当で、俺でも理解できる魔術サイド内の話だ。

法の書と言う魔術サイド全体に関わる大問題が、実はブラフだった。

なんて言う事自体問題な気もするが、少なくともローマ正教徒であるオルソラの裁判に、外部であるイギリス清教が強く口出しできるレベルじゃない。

けど、それを簡単に納得出来る当麻ではない。

 

「なぁ、ユウキ。なんでさっきから黙ってばかりだんだよ!」

「俺はお前の護衛に来ている身だ。しかもステイル達と違って科学サイドの人間。手も口も出せる限界がある」

「なっ!? お前もステイルと同じく口出しするなって言いたいのか!?」

「誰もそうは言ってない。【俺が】 口出しできる事じゃない。としか言ってない」

「??」

 

俺が言いたい事を当麻はまだ分かっていないという顔をしている。

携帯にちらりと目を向けたが、追加指令は何も来ていない。

ここまでは静観って事か。

 

「そうだ、上条当麻。突入時に渡したあのロザリオはどうした?」

「何だよ、今はそんな事話してる場合じゃないだろ! ……オルソラの首にかけちまったよ。これでいいか」

 

不貞腐れたように言う当麻に、ステイルの眉が少しだけ反応した。

それはインデックスも同じで、口元には笑みまで浮かんだように見える。

 

「結構、それじゃこれで解散だ。せめてもの義務だ。学園都市の入り口までは見送りするよ」

「それってインデックスを見送りたいだけなんじゃないか?」

 

からかうように言うと、ステイルは無視して煙草に火を付けた。

だけど、その仕草は図星を差されて気まずそうにも見える。

 

 

 

『まぁ、そう落ち込むなよ少年。イギリス清教じゃない俺達天草式には、オルソラを助ける理由が十分にある。後は俺達に任せれば大丈夫よな』

 

そう言って斎字と五和は俺達と別れた。

きっと、彼らはその言葉通りオルソラを助ける為に行動するだろう。

その為の道標は五和に渡してあるしな。

 

「……」

 

学園都市への帰り道、当麻はずっと考え込むように俯いて歩いている。

インデックスが優しく諭すように色々言ったが、気持ち半分で聞いている。

 

「あっ、そうだ! 冷蔵庫の中からっぽだった! 悪い、俺ちょっとコンビニ行ってくる」

「お前さっきからその事ばっか考えてたのかよ!?」

 

突然当麻が大声を上げて、頭を抱えた。

呆れたように言ったつもりだが、本心ではない。

 

「じゃあ私も一緒に行くよ!」

「インデックスも一緒だと沢山買いこんじまうだろ。いいよ、俺だけで」

「なら俺も行くぜ当麻。外のコンビニってどういうものがあるか、興味あるしな」

「えっ、いや、ユウキさんはここで……あ、あぁ、じゃあいっしょに行くか!」

 

俺が一緒に行くと言うと当麻は派変に焦ったが、軽いウインクすると何か察したようで笑顔になった。

こういう察し方をさっきしてくれれば簡単だったのに。

 

「それじゃ僕はインデックスを君の部屋まで送っておくよ。後は好きにすればいいさ」

「悪いなステイル。道は分かっているから、大丈夫だ」

 

素っ気なく言うステイルにインデックスを任せ、俺達は走り出した。

その際、意味深な目をしていたが、絶対バレてるよな、あれ。

まぁ、そもそも俺達がこれから何をしようとしてるかなんてバレバレか。

後は、祭りに参加するかどうかだけど、そこは心配いらないな。

 

 

 

「で? 【オルソラを助ける為に】 どこに行けばいいのか分かってるのか、当麻?」

 

先を走る当麻にこれから行くべき場所を尋ねた。

俺達がこれからする事は単純明快、ローマ正教に殴りこみをかけて、オルソラを助ける。それだけだ。

 

「……やっぱり分かってたか。でも、分かってて何で止めなかったんだよ? しかも着いてきたし」

「バーカ、お前の考えくらいお見通しだ。それに、さっきも言っただろ? 俺はお前の護衛でしかないから、俺自身に止める理由はない。つまり、お前がどこへ行こうと俺が護衛について行くのは当然なんだよ」

 

上条当麻なら、ここでオルソラを見捨てるわけがない。

なら、それに付き合うのは俺の仕事だ。

物凄い屁理屈だけど、これでいい。

後々何か問題になろうとも、これでいい。

もう、後悔はしたくない。

ミクの時のような後悔だけはしたくない。

 

「ははっ、さんきゅう、ユウキ。それで、オルソラの場所だけど、アニェーゼが言ってたんだ。オルソラのローマ正教への功績を称えて、この近くにオルソラ教会って言う教会が建てられたって、多分そこにいる」

「なるほど。ま、こっちにはいらなくても向こうにはいるか」

 

せっかくルチアに仕掛けた発信機だが、【俺達】 には必要なかったか。

 

「ん? どうした?」

「なんでもない。それより急ぐぞ。殺されないってだけでそれ以外何にされてるか分からないからな」

「あぁ!」

 

俺と当麻は夜の街をひたすら走った。

目指すはオルソラ教会だ。

 

 

 

続く

 




この時期ってチルノかくろまくさんが欲しくなりますよね(笑)

あと2、3話程度で過去編終わり、幻想郷へと戻ります。
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