幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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まったり回


第109話 「夜雀の屋台」

映姫とデー……人里の案内翌日の午後、俺は紅魔館にやってきている。

と言うのも、パチュリーが図書館の仕事を久々に手伝ってほしいとの事だ。

報酬として夕食は向こうが用意すると言っていた。

別に用事はなかったから良かったのだけど……

 

『では、これからお連れいたしますね、ユウキ様』

 

迎えに来た咲夜が終始ハイライトが消えた目をして無表情で怖く、そのあまりの迫力に霊夢ですら何も言えなかった。

なぜあんまに不機嫌なのだろうか?

と思ったら、レミリアやパチュリーも不機嫌だった。

パチュリーは俺が来た時には、既に眠っていたがこぁいわくずっと不機嫌だったらしい。

美鈴とフラン、こぁだけは久々にやってきた俺に飛びついてきそうな程ご機嫌だった。

実際、フランとこぁには飛びかかられたが。

なんで不機嫌なのか、本の整理しながらこぁに聞いてみると苦笑いを浮かべこう答えてくれた。

 

「そりゃあ見知らぬ美少女さんと人里でデートしてたからですよ」

「えっ、なんでそれ知ってるんだ?」

 

何でも昨日、咲夜が人里で偶然に俺を見かけたそうだ。

で、紅魔館に戻ってきて不機嫌な顔をしていたのを不思議に思い、レミリア達もその事を知り今に至ると言うわけだ。

なぜそれで不機嫌になるかな?

 

「別にデートじゃなかったんだけどな。で、こぁ達は上機嫌だったのは?」

「そりゃ、最初は私もムスッとしましたよ。美鈴さんは苦笑いを浮かべているだけでしたけど、フランお嬢様は終始無言で怖かったですし。ですけど、今日来てくれたので帳消しです」

 

要するに単純って事か。

 

「?? 何か言いましたか?」

「いや、なんでもない。とっとと終わらせようぜ。元はと言えば悪いのはお前だろ」

「にゃははっ……ご迷惑おかけします」

 

パチュリーの魔力を使っての魔導書整理と言えば聞こえはいいけど、実際はちょっと違う。

こぁがイタズラで魔導書の表紙を滅茶苦茶に入れ替えてしまい、下手に触れなくなってしまった。

それだけなら以前にも何度かしてしまった事だが、今回はちょっと危険なブツにまで手を出してしまった。

パチュリーくらいの魔力でなければ識別も整理も不能であり、本人は最近体調が優れないので俺に代わりにやってほしいとの事だ。

忘れたけど、パチュリーって身体があまり強くないんだったな。

俺が来てからしばらくは調子が良かったけど、その反動でもきたのかもしれない。

 

「で、これを封印すればいいんだな。アレで」

 

テーブルの上に置かれたのは、桃色の魔力を発する本。

なんか話に聞いているよりは深刻と言うか、邪悪な気配はしないんだよな。

これに正しい表紙をかぶせて、封印をし直せばいいだけ。

俺が来る前にベッドで眠ったパチュリーが書き残したメモで教えてもらった封印呪文を頭の中で再確認する。

 

「はい! これが本来この魔導書にあった表紙です!」

「はぁ……やるか」

 

表紙を翳し、呪文を唱える……やる気は起きないけどな。

 

 

「プープクチャガマデドンドコドーン! プープクチャガマデドンドコドーン! プープクチャガマデドンドコドーン! ぽわぽわりんりんらぶはーと!」

 

――ヒュゥ~

 

地下なのに冷たい風が図書館を流れた。

 

「おい、本当にこの呪文であってるのか?」

「はい……以前、パチュリー様も同じ呪文を使いました。そして、今のユウキさんと同じく、顔がりんごよりも赤くなりましたよ」

「そりゃそーだよ! なんだよこの呪文! しかも、思った以上に魔力使うし! 作った奴ぶっ飛ばしてやる!」

 

唱えた後、今までにないくらいの脱力感に襲われた。

消耗する魔力量が異様に高いのだ。

 

「あ、それもパチュリー様と同じ事言ってますね」

「マジか」

 

見ると、魔導書は確かに表紙が覆いかぶさり、しっかりと封印がなされていた。

どうやら定期的に封印をし直さないと、今回みたいに簡単に外れてしまうようだ。

 

「……どうやら、うまく言ったみたいね」

「パチュリー、まだ寝てなきゃダメだろ」

「パチュリー様!」

 

パチュリーが奥の寝室からフラフラしながらやってきた。

俺が来た時は紫色の顔色だったが、今はかなりよくなっているように見える。

慌てて抱き支えると、顔色がまたよくなった気がする。

 

「薬も飲んでぐっすり休んだから大丈夫よ。それよりごめんなさいね、ユウキ。うちの馬鹿のせいで、後でウンと拷問するから」

「え“っ!? パ、パチュリー様? 私、かーなり御仕置きされたんですけど!?」

「ふふっ、馬鹿ね。あれは御仕置き。これからするのはただの拷問よ」

「ひえぇ~!? ユウキさーん、助けてくださーい!」

「イヤだ」

「即答!?」

 

当たり前だ。俺だって相当な精神的被害を被っているんだ!

幸いなのは、レミリア達は一切覗き見してない事だな。

パチュリーが今回ばかりは、レミリア達には見られない方が絶対良いと前もって忠告をしてくれた。

俺も嫌な予感しかしなかったので、フランにも終わるまではレミリア達と待っているように言ったし、レミリアにも覗き見するなって強く 【お願い】 をした。

 

「こぁの拷問は後にして、レミィ達の所に行きましょうか」

「いいけど、本当に休んでなくていいのか?」

「えぇ、なんだかせっかくあなたが来たのだもの。仲間はずれは寂しいわ」

 

何のことやらと思いつつ、レミリアの所まで戻ってきた。

 

「あら、もう終わったのかしら? お疲れ様。パチェも顔色良くなったわね」

「えぇ、おかげさまでね」

「お兄ちゃん! 終わったんだよね? あそぼあそぼ!」

 

早速とばかりにフランが飛び付いてきて俺の手を引いて外へ行こうとして、レミリアが立ちあがり止めようとしたが……

 

「待ちなさいフラ……」

 

――グゥ~

 

瞬間、時が止まった。

別に咲夜が能力を使ったわけじゃない。

だって、咲夜本人も目を丸くして驚いてるもん。

さて、今鳴ったこの音はお腹が鳴った音。

俺でもないし、近くにいたフランでもパチュリーでもこぁでもない

この音はもっと遠から聞こえた。

正確には椅子から降りようとして、真っ赤に固まっているレミリアから聞こえてきた。

今、ここには聴覚が鋭い人のが多いからすぐに出所分かるってイイヨネー。

 

「……なによ」

「「「いえ、別に」」」

「言いたい事あるならいいなさいよ。そうよ、今のは、私のお腹が盛大に鳴らした音よ! だって仕方ないじゃない! 私今日昼抜いてるんだもの!」

 

俺達は何も言っていないのに、レミリアは今にも爆発しそうな程赤くしながら一気に噴火した。

 

「なんで昼を抜いたんだ?」

「それはですね。午後からユウキ様が来ると夢で知り、急きょ昼過ぎに目を覚ましたのですが、ちょうど昼食が終わった時でしたので何も用意がなく私が作ろうとしたのですが、ユウキ様が来る時に食事中じゃ失礼だからと……」

「あー、なるほどね」

 

吸血鬼であるレミリアとフランは昼夜が人間と逆転している。

俺が来てからは人間に合わせる生活リズムへと変えたのは知っている。

しかし、それでもたまには夜に起きて、昼に寝ると言う生活をしているらしい。

たまたま、今日はフランが起きていたがレミリアは寝る日だった。

で、能力のせいか、俺が紅魔館にやってくる事を夢で知って、急いで飛び起きたが時間が微妙だったため昼食を食べ損ねたと……

 

「はぁ~……昨日はあんなに不機嫌だったのに、彼が来ると知って子供みたいにはしゃいでたのね、レミィ」

「う、うるさいわね! そういうパチェだっていつにも増して仏頂面だったじゃない!」

「お2人とも落ちついて下さい」

「「ずっと能面だった咲夜に言われたくはない!」」

「あらら……」

 

うーん、相変わらずのぐだぐだっぷりだなここは。

 

「ねぇ、腹ペコお姉様なんかほっといて遊ぼう……と、言いたいけど私もお腹すいちゃった」

 

てへっと舌を出すフランが可愛いと思った俺は、正常だと思いたい!

 

「そうね。私もずっと寝てたからお腹が空いたわ。時間もちょうどいいし、咲夜夕食の支度は出来ているのかしら?」

 

外を見ると、もう陽もかなり沈んでいた。

結構長い間図書館にいたんだな。

 

「あ、それでしたら今日は外食の予定です。フランお嬢様がぜひ皆で食べに行きたい所があるそうですよ」

「珍しいわね。それでどこへ行きたいの、妹様?」

「うん、みすちーがやってる屋台に行ってみたいんだ!」

「みすちーって、ミスティア・ローレライの事ですか?」

 

パチュリーとこぁは今日の夕食の事は聞かされていないようだ。

それにしても、みすちーの屋台か。

やっていると言うのは知っているけど、一度も行った事なかったな。

 

「と言うわけで、今日はそこで夕食にしようと思っているのだけど、ユウキもそこで構わないかしら? それとも咲夜の手料理の方がいい?」

「いや、構わないよ。咲夜の手料理も魅力的だけどな」

「ふふっ、言ってくれれば365日3食用意するわよ?」

「あ、それ私知ってます! 『この美味しい味噌汁を、毎日飲みたい!』 ですよね~♪ キャンッ!?」

 

こぁが何か言ったけど、ナイフを頭に数本生やしているだけだ。俺は何も聞いてない。

ついでに周りの皆の空気が一瞬張りつめた気がするけど、気にしない。

 

「今から行けばちょうど焼き始めているくらいね」

「随分詳しいな、レミリア?」

「一度だけフランと2人で食べに行った事があるのよ」

「へぇ~♪」

「ユウキ、その笑みはどう言う意味かしら?」

「何でもないぞ?」

 

もうレミリアとフランに蟠りは全くないな。良い事だ。

 

「むぅ、まあいいわ。それじゃあ、行きましょうか。咲夜、美鈴にも出かけると言いなさい」

「かしこまりました、レミリアお嬢様」

「わーい、みんなでおでかけおでかけー!」

 

こぁ曰く、幻想郷に来るまでみんなで揃って出かける習慣が全くなかったそうだ。

その割にはよく博麗神社に来てるよな。

 

「あの、パチュリー様。せめて回復魔法を」

「ダメよ。あなたは今日一日その格好ね。死にはしないんだからいいじゃない。ナイフを生やした悪魔なんてあなたくらいよ?」

「全然よくありません! 痛いものは痛いんです!」

 

痛いとかそういう問題なのか?

 

 

 

美鈴が出かける支度を終えてから、私達はミスティアの屋台にやってきた。

屋台はリヤカー式で、テーブルや椅子もいくつか用意されている。

これらは全部霖之助の所でもらった物らしい。

屋台は森の奥にあるけど、そこまで分かりにくい場所ではない為色々な妖怪たちがやってくるわね。

まぁ、人里から離れているから人間はやってこれないけど、たまに人里でやっているのを見た事がある。

霊夢曰く、人を襲わなければ人里では何をしてもいいらしい。

 

「おや、珍しい団体さんの御到着だね。いらっしゃーい」

「お邪魔するわね。結構な人数だけど、大丈夫かしら?」

「大丈夫ですよー今テーブル出しますね。ってユウキ先生!?」

 

ミスティアはユウキの姿を見ると羽をパタパタさせて駆け寄ってきた。

そう言えば彼女もフランと同じく寺子屋に通っているのよね。

 

「よっ、来たぜ」

 

対してユウキは右手を上げて苦笑いを浮かべながら応えた。

未だに先生呼びされるのは慣れていないのか、珍しく照れているのが何か可笑しかった。

見ると、咲夜と美鈴もクスクスと笑ってるわ。

 

「わ、笑うなよ。先生なんて元々柄じゃないのに最近こんな感じなんだぞ?」

「ユウキ先生の授業面白いし、分かりやすいから人気だよ?」

「それ、絶対慧音には言うなよ」

 

彼がここまで照れたり困惑したりするのは珍しいわね。

先生と慕われるのが彼にとってよほどの事なのか、それとも少しずつ傷が治ってきてるのかしら。

 

「はいはい。そこまでにして、早く注文しちゃいましょう。お腹空いたわ」

「パチェの言う通りね。ミスティア、私とフランはこの前と同じようにね。あなた達はどうするの?」

「そうだな。こういう所は初めてだからまずはレミリアと同じもので」

「じゃあ、私達もそれでお願いするわ。いいでしょ、美鈴。同じものを沢山の方がしやすいでしょうし」

「私とこぁもそれでいいわ」

 

結局全員、同じ焼き物とおでんの詰め合わせを頼んだ。

 

「そう言えばさ、ここは結局何の屋台なんだ? 見た所おでんはあるけど、後は焼鳥?」

 

ユウキの言葉に、ミスティアが軽くずっこけたのが見えた。

私とパチェも少しがくってなったのだけどね。

 

「あなた、知らなかったの?」

「あぁ、みすちーには来てからのお楽しみって言われてたし」

「そ、そう言えば先生には教えてなかったね。って焼鳥なわけないでしょ! 私は夜雀! 同族売ってどうするの!?」

「自分の身を削ってるのかと。回復能力高いから1日で全部元通りとか?」

 

それを聞いて、またミスティアがずっこけた。

今度は咲夜や美鈴までもが……ユウキ、天然なのかわざとなのか。

 

「いやいやいや、そんなスプラッタな事無理だから!? 回復能力高くても絶対にしないから!?」

「で、結局ここは何を焼いてるのよ。人間、なわけないでしょうし、まさかそこら辺の妖怪?」

 

人間焼いていたら霊夢どころかユウキも黙ってないでしょうね。

それにミスティアが妖怪を捕えられそうもない。

 

「ミスティアなら逆に食べられそうね」

「さ、咲夜さん……まぁ、私もそう思いますけど」

 

2人共辛辣ね。私も同感だけど。

 

「ひ、ヒドイ。違います! 私が焼くのはコレです!」

 

そう言ってミスティアが取り出したのは、串に刺さった2つの長い物体。

 

「これは、ウナギ、とヤツメウナギかしら?」

 

流石咲夜はヤツメウナギも一目で分かったようね。

私は最初ウナギとしか思わなかったわ……

 

「正解! 私は焼鳥撲滅委員会の会長だからね。焼鳥の代わりに焼きうなぎを普及させようとしてるのよ」

 

委員会と言いつつ、ミスティア1人しかいないのだけどね。

 

「なるほど。で、おでんは分かるが、卵入ってるけどそれはいいのか?」

「あ、それは……先生に食べてほしくて、私が生んだ産みたてだよ……って冗談です! 冗談だから!」

 

わざとらしく顔を赤らめて、身体をしならせたミスティア。

だけど、すぐに赤くなった顔が青白くなったわね。

ユウキは白い目を向けただけだけど、私達は全員それぞれ武器を構えて殺気を出していた。

こぁまで冷たい微笑を浮かべならが、両手に魔力を纏わせて威嚇してるわ。

いけないわねぇ。ちょっとムカついたからってつい本気で殺気を出しちゃったわ♪

 

「はぅ~先生の事になると、ここのみんな冗談が通じなくなるよぉ~」

「みすちー、同じ鳥だからって文やはたてみたいな事するなよ」

 

それは関係ないよ思うわよ、ユウキ。

 

「夜雀、変な冗談言った罰よ。何かサービスしなさい」

「お前は鬼か!?」

「あら、吸血鬼よ」

「そう言えばそうだったな」

「おいぃ~!? このネタもう何回目よ。ってその目はわざとじゃなくて本当に忘れてたの!?」

 

本当にこの男は……フランも爆笑してる場合じゃないでしょ! 吸血鬼としての威厳の問題なのよ!

 

「分かりましたー先生が初めて来てくれた事だし、とっておきのお酒を用意するわね」

 

ミスティアはごそごそと屋台の下から大きな酒樽を取り出した。

 

「じゃじゃーん! 花見の時には間に合わなかったけど、これがとっておき! 伝説のお酒、その名も 【雀酒】 よ!」

「「「雀酒?」」」

 

聞き覚えのないお酒に私達は揃って首を傾げた。

意外にお酒に詳しい咲夜ですら知らないのね。

 

「あーそれが雀酒なのね。私も本でしか見た事がないけど、へぇ、これが……」

 

ただ1人、パチェだけは知っているようで興味深そうに酒樽を覗き込んでいる。

 

「パチュリー様、雀酒っていつか飲んでみたいと言っていたアレですか?」

「そうよ、こぁ。雀酒とは古来、雀がお酒を最初に作ったと言う伝説を元にしたお酒なの。雀は青竹の切り口に餌のお米を蓄えていたけれど、鳥頭だからその事をすぐに忘れてしまい。青竹に水が溜まり、いつしかお酒となったと言うわけよ」

 

言われてみれば、昔パチェが竹を使って実験をしていた事があったわね。

まさかお酒を作ろうとしていたとは思わなかったわ。

 

「私が説明する所だったのに~……」

 

誇らしげに何かをしゃべりだそうとしたポーズのまま、ミスティアが固まっていた。

 

「ほら、そんな事よりもう焼けているわよ」

「えっ!? わわっ!」

 

咲夜に言われてミスティアは煙が上がっている焼き物をひっくり返す。

手際はいいのにどこか抜けているのよね。

 

「さーって、出来ましたよ。私特製の蒲焼とおでん!」

 

全員分を作るのは時間がかかると思ったけど、ミスティアはあっという間に全員分焼きあげた。

皿に出された鰻と八目鰻の蒲焼からは香ばしい良い匂いで、こぁと美鈴は目をぎらぎらさせて早く食べたそうね。

 

「うわぁ~いい匂いですよ、パチュリー様!」

「本当においしそう。焼鳥ならたまに人里で食べるんですけどね」

「私は洋食メインだからこういうのは作らないわね。今度作ってみましょうか」

 

食べる前からみんなもう夢中になってるわね。

 

「それじゃ、頂きましょうか」

「「「「いただきます!」」」

 

こういう串焼き系を咲夜は作らないから、パチェとこぁは珍しそうに食べている。

美鈴はともかく、咲夜は食べ慣れてない味に驚いているわね。

フランは相変わらずの美味しさだと言ってもう一本食べ終えた。

 

「へぇ、思っていたより濃い味付けじゃないんだな」

「濃い方がいいならタレもあるよ? 薄味の方が好みって言うのが多いからね」

「俺はこれくらいでいいさ。酒もある事だし」

 

ユウキは竹を切って作ったコップに注がれた雀酒に手を伸ばした。

 

「……なんでお前らじっとこっちを見てる?」

「いえ、雀酒がどんなものかと思いまして」

「だったら美鈴、自分で飲めよ。俺は毒見か!?」

 

そういうつもりはないんだけど、ついね。

溜息をつきながらも、ユウキは雀酒を一口で飲み干した。

ここに来た当初、ユウキはあまり酒を飲まなかったけど、最近はよく飲むようになったわね。

 

「お、なかなか飲みやすいし美味しいな。蒲焼にちょうどいいぞ」

 

美味しそうに飲む彼を見て、私達も雀酒を飲み始めた。

伝説のお酒とミスティアが息まくだけあって、初めて味わう美味しさね。

 

「純米酒でも吟醸酒でもない味ね。屋台で出すにはちょうどいいお酒ね」

 

洋酒派な咲夜も気にいるほど、これは美味しい。

 

「ねぇ、ミスティア。これの製法教えてもらえないかしら?」

「これは企業秘密だからダメですよー飲みたかったら次からお金払って下さいねー」

「むむっ、絶対にこのお酒自力で作って見せるわ」

 

パチェは変にやる気を見せたわね。そこまでこれを飲みたいのかしら。

でも、出来たら私もまた飲みたいわね。

 

「へっへー今日は先生が来てくれたんで、お酒代だけ特別です。ささっ、どんどん食べて飲んでってねー」

「わーい、ありがとうお兄ちゃん!」

「そこは私にお礼を言うべきじゃないかな?」

 

それからしばらく皆で食べて飲んだりして、この屋台の常連である妹紅と慧音もやってきた。

更に、お腹をすかせたルーミアやリグルもやってきて上機嫌になったミスティアが歌を披露して、宴会のように盛り上がった。

フランもそうだけど、ユウキも楽しそうに一緒に騒いでとてもいい夜を過ごせた。

ユウキは霊夢にも飲ませたいと、数本分の雀酒を分けてもらい神社へと戻って行き、お開きとなった。

 

 

翌朝、紅魔館に酔っ払い達のハイテンションな笑い声が響き渡った。

あのお酒、飲めば翌朝に超ハイテンションになって踊りだすと言う変な効果もあったのね。

咲夜ですら鼻歌を歌いながら掃除をして、パチェも上機嫌にこぁと踊って、ぜんそくが悪化した。

フランは分身したまま紅魔館を飛びまわって、美鈴やメイド妖精達が苦労していたわ。

後で聞いた話だと、博麗神社でも同じようにユウキや霊夢、一緒に雀酒を飲んだ魔理沙も踊りまくっていたらしい。

ちょっと、混ざりたかったと思ったのはないしょ。

 

 

「パチェ、そう言えば結局ユウキに頼んで封印したアレって何が封じられてたの?」

「……女にとりつく色欲の魔物よ。いくらあなたでも抗えないほど強力なのよ。アレに憑かれたら、皆してユウキに襲いかかっていたでしょうね。で、そうなったら霊夢が黙っていないわよ」

「……一生封印しておきましょう」

 

でも、いざとなったら……

 

「ダメよ」

「ケチ!」

 

 

 

続く




急に鰻が食べたくなった!
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