幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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お待たせしました!
タイトルがなかなか浮かばない・・・


第110話 「蛍姫の仕事」

博麗神社

 

「ぁ~……」

「ぃ~……」

「ぅ~……」

 

真っ昼間の博麗神社、ちゃぶ台にだらんと突っ伏している俺、霊夢、魔理沙。

みすちー特製の雀酒を飲んで陽気に騒いで、完全に二日酔いだこりゃ。

途中から萃香も雀酒の匂いにつられてやってきたけど、朝いつの間にか消えていた。

 

「こういう副作用があるんだな、雀酒」

「ただ飲み過ぎただけだろう。しかし、よく効く酒だ。萃香のお墨付きだもんな。そう言えば、今頃あいつも二日酔いかな?」

「さぁ、鬼に二日酔いなんて言葉あるのかどうか分からないわ」

 

そろそろお腹も空いてきた。

朝食は何も作る気が起きず、何も食べていない。

昼食の時間だが、まだあまり動く気にならない。

 

「にゃっはっはっはっ! そのとーり! 鬼に二日酔いなんてあるわけない!」

 

頭にガンガン響く怒鳴り声が聞こえたと思ったら、これまたいつの間にか大きな荷物を背負った萃香が立っていた。

 

「萃香、鬼にはなくても人間には二日酔いってものがあるのよ。大声出さないでよ」

「ごめんごめん。雀酒なんて珍しいものを飲ませてくれたお礼に、二日酔いに効く物作るから勘弁してよ」

「二日酔いに効く物? って萃香料理出来るのか?」

 

まっかせとけー! と萃香は台所へ行ってしまった。

 

「霊夢、萃香って料理出来たのか?」

「さぁ、少なくとも私は見た事もないわ。ユウキさんは?」

「俺に聞いたってわかるわけないだろ。とにかく待ってみようぜ」

 

それからしばらくして、小さな萃香が3人分の御盆を持ってやってきた。

この萃香は能力で分身したものだ。

便利だよな。今度俺も幻想支配でやってみるかな。

出てきた料理は野菜たっぷりの雑炊にシジミの味噌汁、大根おろしがたっぷろ乗った焼き魚、納豆と言ったシンプルな和食だった。

 

「おぉ~うまそうだぜ! でも、思ってたよりは質素なんだな。もっとこう豪快な料理かと思ってたのに」

「それは私も思ったわ」

「同じく」

 

てっきりイノシシとかの丸焼きが出てくるのかと思ってた。

それを見て萃香は苦笑いを浮かべた。

 

「いや、まぁ、そのイメージは間違ってないけどさ。これでも鬼は酒宴好きなんだよ? 酒に合う料理くらい得意さ」

 

ほとんど天狗や河童に作らせてたけどね。と小声で付け加えたのを聞き逃さなかったぞ?

文もにとりも昔は苦労したんだろうなぁ。

 

「でもこれ酒に合うんじゃなくて、二日酔いに効く料理だろ? 鬼は二日酔いしないのになんで得意なんだ?」

「うぐっ!? いや、それは……あはは~」

 

萃香にしては珍しく言葉に詰まってる。

そんなに動揺する事なのかな?

 

「はは~ん、分かった。昔好きな男が酒に弱くていつも二日酔いになってたから、看病がてらに料理作ってた……ってまさかそんなわけないよなー?」

 

あはは~と魔理沙は冗談で言ったのだろうが……

 

「ささっ、冷めないうちに食べてよ。味見もしたし自信作だよ!」

「「「(図星かい!)」」」

 

冷や汗を流しつつ分かりやすく誤魔化す萃香、流石に可哀相と言うか可愛い一面もあるなーと思いつつ、黙って昼食、いや朝食? を食べる事にした。

まずはシジミの味噌汁を一のみ。

魔理沙は雑炊を、霊夢は焼き魚を一口食べた。

 

「へぇ~……」

「ほぉ~……」

「おぉ~……」

 

俺達の口から思わず零れた感嘆の呟き。

 

「ふふーん、どんなもんだい?」

 

それを聞いた萃香は満面の笑みを浮かべる。

 

「いや、冗談抜きで美味しいな。この雑炊、食べやすくてちょうどいいぜ」

「この魚も焼き方が絶妙ね。大根おろしをのせるとさらに美味しいわ」

「味噌汁も塩味が効いてて美味しいぞ」

 

三者三様に料理を褒めた事で、萃香の機嫌が更によくなった。

 

「そうでしょそうでしょ! おかわりもあるからじゃんじゃん食べてよ!」

「いやいや、いくら軽いからってそんなに食べたら意味ないだろ」

「えぇ~、せっかく沢山作ったのに~?」

 

台所へ見に行ったが、雑炊も味噌汁もまだまだ大量に作られてあった。

魚もほどよく焼かれている。

 

「どれだけ作ったのよ!? 私達4人分よ!?」

「にゃはは、久しぶりだからちょっと張りきっちゃた」

「ま、まぁいいじゃないか霊夢。夜も食べればさ……焼き魚だけ今食べようか」

 

今日一日で食べきれるかちょっと心配なくらいだけど。

その時だった。

 

「「「こんにちは~!」」」

 

外から数人の明るい声が聞こえてきた。

この声は、チルノに大ちゃん、それにリグルか?

 

「ここにいた! ユウキ~遊びにきたよ!」

「あれ? 魔理沙さんと萃香さんもいる?」

「こんにちは。あ、食事中でしたか、ごめんなさい」

 

大ちゃんが俺達の様子を見ながら謝ってくるけど、視線が料理から離れないな。

いつもいるみすちーがいないけど、屋台の準備でもしてるのかな?

ってルーミアもいないな?

と、思ったら背後から急に抱きつかれた。

 

「やーほー、ユウキ~♪ 美味しそうな匂い~♪」

 

抱きついてきたのはルーミアだった。

料理の匂いにつられてるのか、よだれが出ているぞ?

 

「よっ、いらっしゃい」

「相変わらず好かれているな、ユウキ」

「言うな、魔理沙」

「こら、ルーミア。ユウキさんから離れなさいよ」

「は~い!」

 

と霊夢に言いつつも、ルーミアは俺の背中から離れようとしない。

視線は料理にくぎ付けだ。

良く見ると、チルノとリグルもじーっと料理を見つめている。

チラリと霊夢達に目を向けると、3人共黙って頷いてくれた。

よし、これで萃香の料理を無駄に出来ずにすむ。

 

「お前ら、良かったら、一緒に食べないか?」

「「「えっ!? いいの!?」」」

 

その言葉を待っていたとばかりに、チルノ達はテーブルに座った。

チルノと大ちゃんは俺の両隣に座っている。

で、ルーミアは相変わらず俺の背中に抱きついたままだ。

 

「ルーミア?」

「だって私が座る場所ないんだもん」

 

確かにチルノ、大ちゃん、リグルが座ってスペースがもうないな。

 

「魔理沙、あなた食べ終わったわよね? どけなさい?」

「えっ? 私かよ!? いや……はい、いまよけます。食器、洗ってきます……ごちそうさまでした」

「ルーミア?」

「はい!」

 

素早くルーミアは魔理沙のよけたスペースに滑り込んだ。

うん、この数秒間、俺は何も見なかった。

チルノ達だけなく萃香も顔色悪いけど、気のせいだ。

霊夢がさっきから能面のような顔をしているのも全部気のせいだ!

 

「ふぅ~食べた食べた」

「おいしかったのだ~」

「御馳走様でした。萃香さん料理上手なんですね」

「あっはっはっ、みんな良い食べっぷりだったね」

 

チルノ達も料理に大満足で、萃香も嬉しそうだ。

 

「それじゃ、また遊びにくるねー」

「ごちそうさま―」

 

腹いっぱい食べて満足したのか、チルノとルーミアは帰ろうとした。

あいつら何しに来たんだ?

 

「「ちょっと待った!」」

 

が、リグルと大ちゃんが2人を呼びとめた。

正確には2人の襟首を掴んで止めた。

帰ろうとしていたチルノとルーミアはそのまま……

 

「「ぐぇ!?」」

 

奇声をあげてしまった。

結構勢い付いてたからうまい具合に首を絞めてるな。

あ、ちょっと白目向いてる。

 

「待って、まだ何も用事済んでないよ?」

「今日は私がおにーさんに相談があって来たんでしょ!」

「「そ、そうだった。ごめんなさい……離して」」

 

どうやら今日はリグルの用事出来たようだ。それも俺に相談があるみたいだな。

チルノ達が座りなおし、改めてリグルが俺に向き直った。

霊夢と魔理沙、萃香は縁側でお茶を飲んでいる。

 

「で、俺に相談って?」

「うん。おにーさんがいた外の世界って、色々な能力者がいたんだよね? 動物を操る能力者もいたって聞いたけど?」

「ん? あぁ……いたな。人間を操れるのも、動物を操れるのも」

 

久々に学園都市の話を振られた気がする。

リグルが言う、動物を操る能力者もいるにはいるが、もっと詳しく細分化される。

精神操作の頂点である、操祈は人間は操る事が出来ても、動物は無理だ。

逆に動物、それもげっ歯類や小型哺乳類と言う細かい種族限定で操れなくても、意思疎通が出来るレベルの能力者も知っている。

 

「じゃあ、虫を操れる能力者っていなかった!?」

 

リグルは何か希望に満ちた表情で聞いてくるが、何を相談したいのかさっぱり分からない。

それにしても、虫か。確かいたはずだけど。

 

「多分いたはず。と言っても俺はデータを見た事もあった子もないな。それがどうかしたか?」

 

虫を使う能力って使い道がなかったから幻想支配で視ようとは思わなかった。

確かレベル1、2程度で虫の居場所が分かる程度だったはずで、使い道がな。

動物系の能力者なら、小ささを使って建物への潜入や盗聴器代わりに使えたけどな。

それを聞くと、リグルはさっきまでと打って変わってしょんぼりしてしまった。

 

「実は、みすちーが焼鳥撲滅のために焼き鰻をやっているのを見て、私も虫の地位向上のために何か始めようと思ったの」

「それでどんな事をすればいいかって私達も考えたんだけど思いつかなくて、色々な能力をみてきたユウキさんならもしかして、って思って」

「なるほどな」

 

確かにみすちーは焼鳥を撲滅する為にそれに代わる焼き鰻屋をやっている。

それが成果をあげているかは別問題だが、あの屋台はたまに人里でも出店してて好評だ。

虫のお姫様であるリグルがそれを見て、いつも気味悪がれて駆除される虫の為に何かしたいって思うのは当たり前か。

でもな、虫の地位向上のために出来る事か。

 

「それは無理なんじゃない? 実際害虫だったり毒虫だったりで存在自体が人間から見たらダメなの多いし」

「だな。寝てる間にぶんぶん飛び回って五月蠅かった事も多いぜ」

 

霊夢や魔理沙が言うように、農作物に被害を及ぼす虫など人の生活を脅かす虫も多い。

リグルも分かっているようで、2人に反論はせず俯いてしまった。

 

「でも、自分の眷属の為に何かをやりたいって気概は良い事だと思うけどね、私は。ユウキは何か思い浮かばないのかい? そっちの世界で虫を使った仕事とかさ」

 

仲間意識が強い鬼の萃香だけは、そんなリグルに好感を持っているようだ。

 

「そう言われてもな。虫を使った仕事か……養蜂場くらいかな」

「養蜂場なら人里でもうあるよ、おにーさん」

 

そう、養蜂場はもうすでに人里のハズレに一軒ある。

なら別の事で何かないかな。

養蜂場、養鶏場……にわとり、コケコッコー……あ、そうだ!

 

「お、ユウキのその顔は何か思いついたようだね」

「まぁな。リグルは虫ならどんな種類のでも操れるんだよな?」

「操れる、と言うか、話が出来るけど?」

「それで十分だ。じゃあさ、虫の知らせサービスなんてどうだ?」

「「「虫の知らせサービス?」」」

 

何の事だとみんな首を傾げた。

 

「あぁ、予め決まった時間にその人の所に言って、予定があるよって教えるんだよ。例えば朝早く起きなきゃいけない人には虫が起こしに行ったりするんだよ」

「お、おぉ~! なるほど!」

 

ちょうど携帯のアラーム機能のような事を虫でやってもらう。

まぁ、虫よりも鳥の方が鳴き声でアラーム代わりになるだろうけど、小さな虫だからこそその人の近くに行ける。

 

「でも虫なんかが行った所で退治されて終わるんじゃない?」

「もしくは無視されちまったりな、虫だけに」

 

魔理沙が何か言ったが、みんなスル―。

チルノですら聞かなかった事にして、流石の魔理沙も縁側にのの字を書いて凹んでいる。

 

「だから、それは派遣する虫を選べばいいんだよ。スズメバチが行った所で怖がられて退治されるのがオチだけど、綺麗な

蝶とかならそこまで警戒されないだろ?」

 

それに前もって予定時刻に虫が来ると分かっているだけでも、警戒心が違ってくるはずだ。

まぁ、最初は色々問題が山積みだろうけど、ひとまずの方向性は見えたかな。

 

「うんうん、それいい、すごいいい! 流石、おにーさん!」

「お、おいおい」

 

喜びのあまり思わずリグルが俺に飛び付いてきた。

正直、そこまで喜ぶとは思わなかった。

結構問題が多い案だと思うんだけどな。リグルの悩みが解決しそうだからいいか。

と、ここで刺すような冷たい視線をいくつか感じた。

あ、この流れはヤバい。

 

「「……」」

 

やっぱり、霊夢と大ちゃんがジッとこっちを睨んできてる。

チルノとルーミアは羨ましそうにみてるし、魔理沙と萃香はニヤニヤと意味深な目で見ている。

もう、どうにでもなーれ。

 

「じゃ、私早速色々と準備するね。ありがとう、おにーさん!」

 

そう言って、リグルは文字通り飛び去って行った。

 

 

その後、リグルは正式に 【虫の知らせサービス】 を始めて、俺が文に頼んで文々。新聞に広告を載せたり、口コミで広めたりと少しは好評になった。

ただ、やはりそれでも虫は虫なので、気味悪がられたりはしているけど……

リグルがこれで納得してるならいいか。

 

 

続く

 




そろそろ永夜抄へ向けての話にしていきたいけど、日常もまだ続きますよー
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