幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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最初に言っておきます。
うどんげファンの人、ごめんなさい!



第114話 「刺客」

私、鈴仙・優曇華院・イナバは月の脱走兵だ。

月では綿月豊姫様と綿月依姫様のペットとして、また月の兵士としての厳しい訓練を受けてきた。

月の兎の中でも、私は特に戦闘力が高いと評判だった。

だけど、いざ地球から侵略者が来て戦争になると聞き、仲間達が死んでいくのが怖くなって、気が付いたら私は月から逃げだしていた。

私は穢れた地上に降り立ち、昔この地へ追放されたと言う月の賢者八意永琳様と蓬莱山輝夜様の元へと向かった。

脱走兵としての自分をどう迎えてくれるか心配だったけど、そこしかもう行く場所がなかった。

私の不安をよそに、お2人は私を暖かく迎え入れてくれた。

こうして私は幻想郷の中にある迷いの竹林、その更に奥にある永遠亭に住んでいる。

この竹林は普通のよりも太くしなやかな竹が空を隠すほどに茂っている。

更に、この中では入った者の方向感覚を狂わせ、二度と出られなくなる迷宮となっている。

月の罪人であるお2人や、脱走兵の私が隠れるにはちょうどいい場所だ。

それに輝夜様は竹に思い入れがあるようだし。

こうして私は、永遠亭の一員となり、八意永琳様の元に弟子入りをした。

永琳様、御師匠様は厳しくも優しく主に薬学や医療系の知識を私に教えてくれた。

でも、変な薬の実験台にされるのは勘弁して欲しい。

輝夜様、姫様は外に出られない事を常日頃窮屈に思っていて、いつも私を遊び相手や話し相手に誘ってくる。

そして、元々この竹林に住んでいて主でもある因幡てゐ。

彼女は私よりもはるかに年上なのに、子供のように私に他の兎達と一緒に悪戯を仕掛けたり弄んだりしてくる。

この3人と地上の兎達のおかげで、私は月での生活以上に毎日が楽しくて笑えている。

そんな毎日がずっと続くと思っていた。

 

ある日、突然私に月からの通信が入った。

 

――モドレ、モドレ、モドレ。

 

私が脱走してから一度も頭に響かなかったのに、なぜか急に通信が届いた。

 

――次ノ満月ノ夜ニ帰還セヨ。迎エヲ出ス。

 

「えっ、ちょっと待って下さい! 次の満月って、3日後じゃないですか!」

 

次の満月は3日後、もう猶予はない。

せめてその次の満月まで待ってもらえないかと伝えたが、通信はそれから絶えてしまった。

 

「……どうしよう」

 

月から迎えが来る。

私を迎えに来るだけならまだいい。

脱走した時から、いつかは来るかもしれないと覚悟はしていた。

でも、今は、御師匠様と姫様がここにいる。

2人も見付かってしまったら、どうなるか分からないけど間違いなく言えるのは2人にも、てゐ達にも迷惑がかかる。

だから、月の迎えが来る前に私が月に帰るしかない。

そう思っていた。その時だった。

 

「おーい、ちょっとそこのウサミミさん?」

「っ!? だ、誰!?」

 

人が来るはずのないこの場所で、いきなり声をかけられ咄嗟に懐に仕舞っていた拳銃を向けてしまった。

私に話しかけてきたのは、人間の男だった。

妖怪とは違う。人里の人間かと思ったが、男の服を見て一瞬だが驚いた。

男が着ているのは月の上層部直轄の特殊部隊の服によく似ていたからだ。

白と青を基本とした、特徴的な作りの戦闘服。

もしかして、ここに私がいるのを確認しにきた偵察?

私がさっきの通信を受信したせいで、探知されて位置を知らせてしまった!?

マズい。このままだと御師匠様達が危ない。

でも、本当にただの人間かもしれない。

 

「答えなさい。あなたは一体何者?」

「俺は、ユウキだ。里に向かう途中で、たまたまただ通りかかっただけだ」

 

彼は少し驚いた表情を浮かべたけど、それもすぐに消えた。

言っている事に嘘は感じない。

けれどもあの特務隊なら、これくらいの演技は出来る。

まぁ、演技するくらいなら、特務隊の服を堂々と着てたりはしないかもしれない。

しかし、いくら動揺していたとはいえ、私が気付かずにここまで接近を許すなんて、タダものじゃない。

この男が誰であれ、ここの事を忘れてもらうしかないわね。

 

「そう。でも、見られた以上黙って帰すわけにはいかないわね」

 

私は能力を男に向けて、発動させた。

私の能力は 【狂気を操る程度の能力】

普段は抑えているけれど、私の赤い瞳を直視した者は波長を狂わされて幻覚を見る。

それを利用し催眠状態にして、自分がどこにいたのかを忘れさせる事が出来る。

もうこの男は、正常な意識を保てず、私の言うがままに操れる。

 

「このまま見た事を忘れて戻りなさい」

 

これでこの男は、ここでの事を忘れて戻るはず。

と、一安心したのがまずかった。

 

「シッ!」

「っ!?」

 

咄嗟に半歩退いた私の目の前に、銀色の光が一閃された。

男はどこか取り出したのか、両手にナイフを握っていて、私の首を狙って振ったのだ。

首は撥ねられなかったが、空を斬ったナイフが前髪をかすめたのか数本髪が舞っていた。

それに対する怒りよりも先に、戦慄が走った。

今の攻撃をかわせたのは、ただの偶然だった。

一般人だと決めつけて油断したのがいけなかった。

この男には私の能力が()()()()()()

月でも私の能力が効かない相手は限られてくる。

つまり、コイツは私を探す為に来た特務隊だ。

命令を聞いて私が帰還するかどうかと確認しに来て、私が能力を使った事で帰還の意思がないと見なされて、暗殺に移行したのだろう。

恐らく、最初は誤魔化す為に通りかかっただけのフリをして、反応を見たのだろう。

些か腑に落ちない点があるけれど、この場所を知られて、尚且つ殺す気で来ている以上、私も覚悟を決めてここでコイツを殺すしかない。

 

「くっ、やはりお前は!」

 

体勢を立て直しつつ、拳銃を撃とうとしたがそれより速く敵がナイフを投げてきた。

そのナイフは見事に銃口に突き刺さった。

もうこの拳銃は使えない。

私も懐からナイフを2本取り出し、敵に向けて突き出した。

私の素早い攻撃も敵はナイフ一本で的確に裁いていったが、流石に1本では厳しくなってきたのか、すぐに先程銃口に投げたナイフを拾いあげ反撃に転じてきた。

ナイフとナイフがぶつかり合う度に火花が散って行く。

マズイ。相手のナイフの方が硬い。

このままだとすぐに……

 

――ガキンッ!

 

思っていた通り、私のナイフが欠けた。

 

「ちっ、これだから外の世界のナイフは!」

 

さっきの拳銃も今欠けたナイフも、元は幻想郷の無縁塚と言う、外の世界からの異物が落ちてくる場所で拾ったものだ。

あそこは外の世界の色々な古い物が落ちていて、中には武器などの物騒な物まであった。

時折半妖の男や、魔女が拾ったりしているが、私も武器を探しに行っていて拳銃やナイフなど古い型のばかりだけど拾っていた。

そして、万が一の為に武器をこの竹林の至る所に隠していた。

それは私を追って来た敵を殺す為だ。

私はどんな事があっても、永遠亭のみんなを守ると決めたんだ。

その時が、今やっと来た。

しかし、敵の装備が月の物だとするならば、外の世界の遅れた武器ではかなり厳しいかもしれない。

現に今も、材質が不明なナイフに外の世界のナイフが負けた。

それでも、まだ私が負けたわけじゃない。

すぐに欠けたナイフを敵に投げつけて、竹林の奥へと駆け出した。

敵は冷静に投げられたナイフをかわして、私を追って……いや、違う!

あろうことか、敵は私が投げたナイフを受け止めて、投げ返してきた。

 

「うそっ!?」

 

自慢ではないが、私のナイフ投げは依姫様にも褒められた程うまいはず。

ここに逃げ込んでからも密かに訓練していて、腕は落ちていない。

なのに、簡単に投げ返された。

やはり特務隊は玉兎とは次元が違うわ。

それでもどうにか目的の竹林を盾にして凌いだ。

この竹の根元に隠していた武器の1つがある。

素早く根元の節を蹴り、割れた中から武器を取り出す。

この武器の名は、ウージー。

外の世界では短機関銃と呼ばれる、小型のマシンガン。

これでハチの巣にしてやる。

 

「これで!」

 

ウージーを見た敵は咄嗟に近くの岩影に隠れた。

良い判断ね、でも!

 

――バババッ!

 

連続して発射された弾丸は岩を削って行く。

この幻想郷では、弾幕ごっこという決闘のルールがある事は、てゐや御師匠様から聞いている。

自分の力を弾丸にして撃ちだして、相手を殺さずに美しさを競い合う決闘。

けれどもこれは決闘じゃない。

殺すか殺されるかだ。

私の能力を知っているであろう、この特務隊相手ならかわされるだけだ。

だから私は外の世界の武器に頼る。

私の弾幕は威力があっても、この武器に比べたら弾速と連射力は下だ。

それに弾幕は色が付いていて目立つから、避けられやすい。

最も、だからこその弾幕ごっこと言う決闘なのだろうけど。

 

「そこっ!」

 

敵は隠れのを止めて、竹を蹴り上がって宙を奔った。

正直、驚いた。

敵はしなる竹林を足場にして、空を駆けている。

 

「落ちなさい!」

 

でも、だからどうした。

自分でもこの場面ならそうやって回避する。

密集した竹林の中では、下手に地面を走ったり空を飛ぶよりも、しなる竹を最大限利用した方が断然速い。

ならばこちらは文字通りの弾幕を張って、敵のゆくてを阻めばいい。

しかし、肝心な時にウージーから音が消えた。

 

「っ!? 弾切れ!」

 

連射力は高いが、その分すぐに弾が切れるのが外の武器の欠点だ。

予備の弾倉もあったが既に使いきった。

元々拾った武器には予備の弾はほとんど手に入らなかった。

なのですぐに私はウージーを投げ捨て、近くの竹に隠した武器を手に取った。

その隙をついて、敵は私の背後に回り込んでいた。

 

「なめるな!」

 

私はナイフを持った敵の手を掴み、関節技を決めて骨を折ろうとした。

しかし、それより先に技を外され反撃とばかりに背を蹴られ、反動で距離を取られた。

 

「ぐっ、この程度」

 

こちらも反撃しようとしたが、敵は背後にあった竹を蹴り反動でナイフを振って来た。

それは読めていたのでこちらもナイフで受け止める。

 

「今度はさっきのようにはいかない!」

 

私が手にしたのは、脱走する時に持っていた月のナイフだ。

外のナイフと違い、簡単には砕けない。

 

「しっ!」

 

ナイフとナイフ、拳と拳がぶつかり合う。

敵はナイフだけじゃなく格闘もかなり得意なのだろう。

ほぼ密接した状況で放たれた拳は、思っていたよりもかなり重い。

均衡した状況の中、相手の顔を再度見た。

 

「……」

 

やっぱりこいつ、一流の暗殺者だ。

その表情は無表情、と言うよりは何も読めない。

すぐ近くにいるのに、そこにいない感覚。

気配も感情も何もかもとけこませて、消している感じだ。

これじゃ強く相手を意識しなきゃ、すぐに見失ってしまう。

こんな奴を御師匠様や姫様の元へは行かせられない。

てゐや他の兎達じゃすぐに皆殺しにされる。

そんな事、絶対にさせない!

私はもう、絶対に逃げない!!

 

「やっ、ぐふっ!?」

 

ほぼ同時に蹴りを腹に食らわせ、2人揃って後ろに吹き飛ばされた。

 

「けほっ、けほっ」

「は、はっ……」

 

助走もなしになんて鋭い蹴りを放つのだろう。

これじゃ武器なしでも拳や蹴りだけで相手を暗殺できる。

相手も私の蹴りが決まったようで、軽く咳き込み息を整えている。

今しかない。

私はさっき手にした銃を懐から取り出し、相手に向けて撃った。

今ならかわされない。

 

――パンッ!

 

だが、敵はあろうことかナイフで銃弾を弾いてしまった。

なんて動体視力に反射神経、それにナイフの強さだろう。

普通ナイフで弾いたら、腕がしびれてナイフを手放すか、刃が欠けるのにそれがない。

月の銃より数段劣るとはいえ、それなりに速い弾速の拳銃ですら弾かれるんだ。

それより遅い私の弾幕じゃ、使うだけ無駄だ。

 

「はっ、はっ……やあぁ!」

 

――パンパンパンッ!

 

ならば、拳銃でけん制しつつナイフで仕留めるしかない。

敵もナイフを盾にこちらに駆け出してきた。

ほんの1、2秒の間に間合いは完全に詰められた。

この距離じゃ拳銃は意味がない。

 

「このっ!」

 

ナイフを使った格闘術でどうにか相手の隙を作り、拳銃でナイフを弾き飛ばせた。

敵は素早く近くの密集した竹林の影に隠れた。

こっちは弾が切れたので追撃よりも補充する方を選んだ

少し離れた竹林の影に隠れ、急いで武器の補充をした。

ここには別の拳銃の他に閃光弾も隠してある。

でも、ここの銃はデリンジャーと言って、小型で弾も1発しかない。

慎重に狙わないといけない。

デリンジャーを手にまた駆け出す。

と、そこで私は嫌な予感がした。

さっき敵が隠れた場所にも、武器を隠したのではなかったか?

もし、それを見つけられたら?

私の予感はすぐに当たった。

 

――ドガンッ!

 

「きゃっ!?」

 

敵は隠していた武器、マグナム銃を手にして私に撃ってきた。

咄嗟にナイフで防いだけど、今度は逆に私の方のナイフが弾き飛ばされた。

まずいと、岩影に隠れる。

相手に追撃の隙を与えるわけにはいかない。

呼吸を素早く整えて閃光弾を相手に投げつけた。

 

――カランカランッ、カッ!

 

「っ!?」

 

敵は咄嗟に目を塞ぎ腕で閃光を防いだが、隙は出来た。

最初から目を瞑り手で覆っていた私の方が早い。

そう思い、岩影から飛びだし銃を敵に向けた。

 

――ドンッ!

 

「キャッ!?」

 

なんと、敵は私の銃を正確に撃ち落とした。

闇雲に撃ってまぐれで当たったわけじゃない。

光でこっちが見えないはずなのに、私の足音だけで銃を撃ち落とした。

しかも、マグナム弾の反動で銃を持っていた左手がやられた。

でも、相手はマグナムを撃ち尽くした。

敵は弾切れのマグナムとナイフしかない。

ナイフは今すぐ振われても私に届く前に攻撃できる。

勝機はいましかない。

 

「こっ、の!」

 

これだけ近ければ、私の弾幕でも避けられず致命傷を与えられると思い、右手を指鉄砲の形にして撃った。

 

――バシュッ!

 

「……えっ?」

 

最初は何が起きたのか分からなかった。

気が付くと、私の右足は撃ち抜かれていた。

それも、私の弾でだ。

なんと、敵の両手は私と同じく指鉄砲の形をしていて、そこから私の弾が放たれたのだ。

 

「がっ、ぐぐっ」

 

痛みを堪え地面を転がりながら竹林の影に隠れた。

隠れながら様子を窺うと、どうやら私が撃った弾も敵には届いていたようだ。

敵は右のわき腹を抑えている。

しかし、直撃ではなかったようで血はあまり出ていないように見える。

対してこっちのダメージは大きい。

右足はもう使えない。

この付近の武器は使い果たした。

残った武器がある場所は敵を挟んだ向こう側。

もう、弾幕で攻撃するしかない。

でも、なんで敵は私と同じ力で、私と同じ弾を撃つ事が出来たのだろう?

それを考えるよりも先に、敵が動いた。

こっちは痛みのせいで思うように動けない。

鈍っていたわけじゃないけど、実践不足が響いてきたわね。

こうなったら、一か八か接近させてカウンターで弾幕を当てるしかない。

スペルカード、てゐから聞いた弾幕ごっこの真骨頂、必殺技とも言える技。

これをぶつけて、殺すしかない。

敵が私の能力を知っていて指鉄砲の事を知っていたとしても、この攻撃は予測できないはず。

この攻撃は、私がここへ来てから出来るようになった攻撃だ。

 

――ガサッ!

 

竹林に隠れた私の前に、敵が走ってきた。

動けない私にトドメを刺そうとしている。

今だ!

 

―イリュージョナリィブラスト

 

目から放つ深紅の光線。

これは波長を操る能力の応用版。

武器を失い、追い詰められた時の為のとっておき。

これだけ近くにいて、不意をつけるこれなら確実に仕留める事が出来る。

そう、思っていたのに……

 

――シュッ!

 

「なっ!?」

 

敵は首を傾げるだけで、光線はかすめただけだ。

タイミングも位置も完ぺきのはずだった。

完全に不意をついたはずなのに、敵はこの攻撃を読んでいたかのように簡単によけてしまった。

 

「なんで……えっ?」

 

敵を良く見ると、さっきまでとは違う何かを感じた。

まるで、私が目の前にいるかのような錯覚。

それに、あの目、さっきまであんな色はしていなかったはず。

今は綺麗な銀色の目をしている。

敵の目に少し見惚れてしまった。

その間にも、敵は左手を私の頭に向けて弾を撃とうとしていた。

 

「あっ」

 

私の眼は敵の銀色の目に吸い込まれるように魅入られ、そらせなかった。

これは、やられる。

 

――ザクッ、バシュッ!

 

「えっ?」

 

何度目か、私の目に驚愕の光景が映った。

なんと、敵は右手にもったナイフで自分の左手を刺して、私への攻撃をそらしていた。

おかげで撃たれた弾は私の横、隣の竹を貫いていた。

 

「えっ、あっ……っ!」

 

呆気に取られたが、それでもこれは最後の好機だった。

 

――ダダンッ!

 

私は右手に力を籠めて、敵を撃った。

今度こそ私の弾は敵に直撃した。

敵の身体は小さく爆発して、吹き飛んだ。

 

「っ、はぁ、はぁ……か、勝った」

 

いや、まだだ。

爆発はしたが、敵はまだ生きている。

確実に仕留める為に、立ち上がった所で。

 

「うわあぁぁ~~!!!」

「がふっ!?」

 

突然、黒い竜巻が私を吹き飛ばした。

地面に激しく叩きつけられ、血がこみあげてきた。

 

「よくも、よくもユウキさんを!」

「な、なに……?」

 

黒い風は、右手に団扇を持って大きな黒い翼を生やした少女となった。

あれは確か、天狗と言う種族だったはず。

その表情は憤怒、目は殺気に満ちている。

 

「絶対に許さない。バラバラに切り刻んで……っ!?」

 

と、そこへ今度は数本の青い矢が天狗に向けて飛んできた。

天狗はその場を飛びのいた。

その青い矢には見覚えがあった。

 

「うどんげから離れなさい」

「し、ししょ、う?」

 

その声は御師匠様、八意永琳様だった。

その側には、半泣きの1匹の兎、お京の姿もあった。

御師匠様は弓を構えながら、私の側へとやってきた

そして、胸元から血を流す男を挟んで、天狗と対峙した。

 

「邪魔をするなら、まとめて殺す!」

「そうはさせないわ」

 

天狗が団扇を振おうとしたが、それより早く師匠が先程よりも多い矢を一斉に放った。

 

「それはこっちのセリフだ!」

 

――ゴオォ!

 

その矢は天狗に届く前に、炎の鳥によって焼き尽くされた。

炎の中から現れたのは、藤原妹紅。

彼女は男の側に降り立つと、倒れた男の姿に驚愕し、天狗に負けないほどの憤怒の表情を浮かべこちらを睨んできた。

 

「ユウキ……オマエラ……文、やるぞ!」

「えぇ!」

 

文と呼ばれた天狗は、男を守るように妹紅の隣に立ち身がまえた。

一瞬即発、殺気が渦巻く中で、また新しい声が2つ聞こえた。

 

「待って、鈴仙ちゃんも御師匠様も待って!!」

「妹紅! 文も止せ!」

「てゐ?」

 

その声はてゐと上白沢慧音だった。

 

「慧音、止めるな」

「巻き込まれるわよ? それよりユウキさんを早く安全な場所へ連れてって」

 

妹紅と文は2人を一瞥しただけで、すぐに私と御師匠様を睨んだ。

どうやっても私を殺す気みたいね。

意識が朦朧としてるけど、私も戦わないと……

 

「うどんげ、あなたは動いてはダメよ! あ、待ちなさいお京!」

 

気が付けば、お京があの男の元へ駆け出していった。

御師匠様が呼びとめるも、お京は目に涙を浮かべて文と妹紅の前に立ち、両手を広げた。

 

「お前……どけ」

「ころしますよ?」

「だめ、おにいさんも鈴仙ちゃんもみんなころしちゃ、ダメ!」

 

普段おとなしく声を荒げる事がないお京の叫びに、私と御師匠様は驚き目を丸くした。

しかし、それよりも驚くべき事が起きた。

 

「……文、妹紅、やめて……くれ」

「っ!! ユウキさん!」

「ユウキ!?」

「ユウちゃん!」

 

倒れこんでいた男が、胸元を真っ赤に染めながらも立ちあがって、私達を庇う用に両手を広げ天狗と妹紅と止めようとしていた。

こちらにちらりと顔を向けたが、その顔は心底申し訳ないと言う表情を浮かべていて、さっきまでの彼とは別人のようだった。

 

「ば、馬鹿! 寝てろ! その傷で無理するな!」

「そうです。今すぐお医者さんへ運びますから!」

「ユウキ君、その身体で起き上がるな!」

 

倒れこみそうになった彼を見て、妹紅も天狗も慧音やてゐまで血相を変えた。

 

「妹紅も文も……ダメだ。これは、悪いのは……俺だ。慧音、頼む……霊夢へ、しばらく戻れないって、うまく誤魔化して……く……」

 

それだけ言い残すと、彼は再び倒れこんでしまった。

慌てて天狗と妹紅が抱きとめる。

もう、彼女達からは殺気は感じられなかった。

御師匠様はそれを見て、深く息を吐いて弓をしまった。

 

「ともかく、彼を永遠亭に運びましょう。私が治療するわ」

「し、師匠!?」

「その言葉、信用すると思っているんですか?」

 

師匠の言葉を聞き、私は驚きの声をあげ、天狗は再び殺気の籠った目で睨んだ。

 

「どちらにせよ。人里へ連れていくよりは速いわよ。彼を絶対に死なせない。それだけは信じてちょうだい」

「文、ユウキ君を早く治療させないと本当に死んでしまう。彼女の医療の腕は人里とは比べ物にならない。私が保証する。妹紅もそれで構わないだろ?」

「……分かった。文、アイツの腕だけは私も保証するよ」

「お2人がそう言うのでしたら……」

 

慧音に説得され、渋々文と妹紅は了承したようだ。

けど、私はまだ納得し切れていない。

 

「しかし、師匠! 彼は……」

「はぁ~……あなたも少し寝て、頭を冷やしなさい」

「師匠? うっ……なぜ」

 

師匠はさっきよりも深いため息をついて、私の首に注射をした。

それは麻酔だったようで、私はすぐに意識を失った。

 

 

 

続く

 




はい。と言うわけでフラン、西行妖に続いて3度目になる殺し合い終了~
本気の殺し合いはこれで終わりではないですけど・・・

実はこの戦いは作品を書く初期から決めていたんですよね。
お互い誤解の上で、殺し合いです。
どっちも悪いですけど、先に手を出したのはユウキです。
鈴仙も月からの帰還命令で冷静さを失っていましたけど、ユウキの方が先に殺る気でしたので・・・
えぇ、ではこの辺で……
最後に、自分、鈴仙はものすごい大好きキャラです。
新参ホイホイに見事にやられました!(笑)
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