幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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お待たせしました。
異変解決へ向けて動きます。


第119話 「博麗と紅魔(前編)」

「ユウキさんったら今日も帰って来なかったわね」

 

神社の縁側でお茶を飲みながらぽつりと呟く。

ふと、無意識に隣を向いてしまう。

いつもこの時間は2人で縁側に座り、お茶を飲むのが日課になっていた。

たまに咲夜やレミリアなど紅魔館の連中や、文にアリスや大妖精達も一緒になる事が多い。

と言うか、今思えば2人きりの夜って思っていたより少ないわね……

ユウキさんは、3日前にアリスの所に行くといったきり戻って来ない。

慧音がやってきて、彼から伝言でやる事があるからしばらく帰れない。と言われた。

アリスの所で何かあったのか、紅魔館に誘われてお泊り会でもさせられていると思い、最初は気にしなかった。

急によそに泊まる事や、それを誰かが伝えに来ると言う事も結構ある。

だから、最初は気にしてなかったのだけど、流石に3日も帰って来ないのは初めてね。

何だか今日は眠気がないのだけど、寝た方がいいのかしら。

 

「明日も帰って来なかったら慧音に場所聞いて迎えに行くかな」

「あらら~たった3日いないだけで寂しくなるなんて、霊夢も乙女ねぇ~……うぉっ!?」

「ちっ、外したわ」

 

唐突にスキマが開いて、紫の気配を感じたから針を投げたのだけど、かわされたわ。

それにしても、今すごい声だったわね。

 

「で、一体何の用? 退治されに来たのなら大歓迎よ」

「全然歓迎されてないわね。それよりも、随分となりが寂しいみたいだけど、たまには空を見上げてみるのも悪くないわよ?」

 

紫が意味ありげに扇で空を差した。

何を言いたいのか分からないけど、仕方なく空を見上げる。

 

「別に空を見上げても、月があるだけじゃない。あれ? 今日って確か満月の日よね? なのにあの月、かけている?」

 

満月のはずの月が、僅かにかけていた。

しかも、月そのものもどこかおかしい。

 

「はぁ~……全く、様子を見に来て正解だったわね。あそこに浮かぶ月は偽物。分かりやすく言えば誰かが月をすり変えた異変なのよ」

「ふ~ん、異変ね。で、そんな事してどうなるのよ?」

「さぁ、思い当たる事はいくつかあるし、それをしそうな妖怪も心当たりがありすぎるわね。ともかく、今回の異変は人間にとって影響はないでしょうけど、妖怪にとっては死活問題なのよ」

「なるほど。けど、そっちの問題なんて知った事じゃないわ。これが異変と言うなら解決するだけよ」

 

でも、妖怪に影響が出るなら、その妖怪が暴走して人里を襲ったりとかはありそうな展開ね。

これはすぐに動いた方がよさそうね。

珍しく紫が発破をかけにきたのはこういう事か。

 

「今回は私も行くわ。少し気になる事もあるし」

「年中引き籠って寝ているあんたが!? 明日は雪でも降るのかしら」

「ぐっ、こ、今回は彼の代わりと思いなさいな。手助けはしてあげるわよ。ってそこまで嫌な顔しなくてもいいじゃないの」

 

私がどんな顔をしていたのか知らないけど、紫をユウキさんの代わりと思えと言うのはかなり無理があるわ。

 

「で、気になる事って何なのよ?」

「それは……ヒ・ミ・ツ☆」

「夢想封印!」

 

――ピチューン

 

似合わないウインクまでした紫に、ついうっかりと撃ってしまった私は悪くないわね。

 

「いたたっ、もう、パートナーに向かってヒドイ扱いね」

「誰がパートナーか、誰が!」

「ともかく、気になる事は気になる事よ。外れてるかもしれないし、今はまだ言えないわね」

 

紫は話す気はないと。

ま、いいか。今は、って事は後で言う可能性あるって事だし。

私が気になるのは、ユウキさんが不在って事なのよね。

ユウキさんって毎回異変に関わってるから、今回もどこかで絡んでないかと心配なのよね。

 

「霊夢、彼が心配かしら?」

「もう一度スペカ食らいたいのかしら?」

 

ニヤニヤと薄気味悪い笑みを浮かべる紫に、札を取り出して牽制。

ホントにぶつけてやろうかしら。

 

「コホン、それはともかく。今回の異変、夜が明ける前に解決した方がよさそうね。犯人の目的はなんであれ、朝が来ると雲隠れする可能性が高いわ」

「そうね。でも、心当たりがないし。それにもう大分夜もふけたわ。急がないと朝になるわよ」

「あぁ、それなら問題ないわよ。えいっ♪」

 

紫が指で空を弾くような動作をすると、結界のようなものが張られた感覚があった。

 

「紫、今何をしたの?」

「何って、夜が明ける前に解決するのなら、夜が明けなきゃいいでしょ? ちょっと能力で夜が明けないようにしたわ」

「なるほど……って、はぁ~!? 何してんのよあんたは!」

「いたひいたひ、ほおひっはらないで~」

 

トンでもない事をやってくれた紫の頬を限界以上に引っ張って、どうにか鬱憤は晴らせた。

今更能力解除させた所で今夜中に解決できるとは限らないし、仕方ないか。

ユウキさんが関わってないとしたら、それはそれで急いで解決させなきゃいけないし。

でも、なんだか妙に嫌な予感がするのよね。

西行妖の時とは違って、深刻なものじゃないのだけど。

さて、まずは慧音の所へ行ってユウキさんの所在確認しましょうか。

 

 

紅魔館

 

なんだか今日は慌ただしい夜ね。

いつものようにレミリアお嬢様とフランお嬢様を起こして、食事を取り妖精メイド達に仕事の指示を出した。

けれども、少し前から妖精メイド達の様子がおかしい。

みんなソワソワしている気がする。

どうかしたのかと尋ねてみても、妖精メイド達も何だか気分がいい、としか言わなかった。

妙だと思っていると、妖精メイドの1人からレミリアお嬢様が呼んでいると言われて、部屋までやってきた。

 

「お嬢様、およびでしょうか……あら、お嬢様?」

 

部屋に入ると、そこにレミリアお嬢様の姿はなかった。

今日は満月の夜、いつもレミリアお嬢様とフランお嬢様は部屋か屋上テラスで月を眺めているから、いるとしたらテラスかしら。

テラスへ行こうとすると、フランお嬢様がやってきた。

部屋に戻ろうとしているようだけど、フラフラしていて様子がおかしいわね。

 

「フランお嬢様、大丈夫ですか?」

 

手をかそうとかけよると、フランお嬢様は大丈夫と言いたげに手をだした。

 

「ううん、もう今日は部屋で休むから大丈夫。お姉様なら、パチュリーと上にいるわよ」

「一体何があったんですか? 風邪、ですか?」

 

吸血鬼が風邪をひくなんて聞いた事ないけれどね。

 

「まさか、私も良く分かってないけど、お姉様にはまだまだ修行不足って言われちゃったわ」

 

あはは、と笑いながらフランお嬢様は部屋へと入って行った。

修行不足、とはどう言う意味なのだろう。

ともかく、屋上のテラスに行きましょうか。

 

「あら、来たわね咲夜」

 

テラスへ行くと、レミリアお嬢様とパチュリー様がいた。

レミリアお嬢様は面白そうに月を眺めていて、パチュリー様は水晶をじっと覗き込んでいる。

 

「遅くなりました、お嬢様。どう言った御用件でしょうか?」

「咲夜、今夜はどこか違和感を覚えるとかないかしら?」

「違和感、ですか。みんなの様子がおかしいと言うのは感じますね」

「そう。やっぱり人間のあなたには何も感じないのね」

 

レミリアお嬢様は、フランお嬢様や妖精メイド達の様子がおかしい原因に気付いているのかしら。

 

「原因はアレよ」

 

レミリアお嬢様が指を差した方を見ると、そこには満月が……いえ、あれはかけている? 満月じゃないわ。

そこで私は、フランお嬢様や妖精メイド達の様子がおかしい原因に、ハッと気付いた。

 

「気付いたようね。そう、これは異変よ。誰かが月を偽物にすり替えた。おかげでフランにまで影響が出始めているわ。妖怪もそうだけど、私達吸血鬼にとって満月はとても重要なものなの。それを弄られちゃたまったもんじゃないわ」

 

確かに。吸血鬼と月はきってもきれない関係にある。

力が完全なレミリアお嬢様はともかく、まだまだ訓練中のフランお嬢様はその影響を受けてしまった。

だから、レミリアお嬢様は修行不足と言って、フランお嬢様もそれを自覚していたのね。

と、その時、先程とは違う感覚に襲われた。

違和感、と言うより誰かの結界内にいる感覚。

しかも、これはどこか私と似ている?

そんな私の様子を見てレミリアお嬢様は、少しだけ眉をひそめ、空を見上げると深く溜息をはいた。

 

「でも、それだけじゃなくなったみたいね。今、夜を止められたわ。月をすり替えたのとは恐らく別の誰かがやったみたいね」

「夜を止める? 私と同じ時間操作ですか? だから、今妙な感覚があったのでしょうか」

「厳密には違うわね。もっと正確に言うと夜を明けないようにしてるって事よ。大方、この異変を夜のうちに解決させる為にやったのでしょうね。だとすると、スキマ妖怪かしら」

 

水晶を睨みながらパチュリー様が説明してくれた。

 

「あのスキマ妖怪が動いたとすれば、霊夢も動くでしょうね」

「そうね。博麗の巫女とは言え、人間である霊夢じゃ気付きにくいかもしれないけど、紫が動いたのなら気付くでしょ」

 

あとは、魔理沙かしら。

 

「パチュリー様はさっきから異変の犯人について調べているのですか?」

「厳密には違うわ。私はユウキを探しているのよ。彼、ここのところ博麗神社に戻ってないって言うじゃない。そんな中で起きたこの異変。関わってるかもしれないでしょ?」

 

博麗神社にみんなで遊びに行った時、ユウキさんはいなくて、彼は数日どこかへ行っていて留守、と見るからに不機嫌そうな霊夢がいるだけだった。

それを見てレミリアお嬢様はクスクス笑って、弾幕をくらっていたわね。

 

「なるほど。で、探知魔法で探しているのですか?」

「ただの探知魔法じゃ無理ね。彼の力はまだ私じゃ感知出来ないし。けど、アリスと作った服を辿れば居場所が分かるわよ」

 

パチュリー様がアリスと一緒にユウキさんに服を作ったのは知っている。

みんな、それを聞いて大なり小なり嫉妬心を浮かべていた。

かく言う私も少し、嫉妬してしまったのは内緒。

でも、その服に発信機みたいなものを仕込んでいたのかしら。

呆れつつも、それを彼が知ったらどんな顔をするかしら?

レミリアお嬢様も呆れたような目をしてるわね。

 

「ご、誤解しないでね。私もアリスもそんな仕掛けはしてないわよ!? ただ、私とアリスとついでに魔理沙の魔力で作られた服だから、その残留魔力を辿ればって話よ! もう、レミィまでそんな顔しないでよ! いくら私でもそこまでストーカーみたいなことしないってば」

「いや、私は何も言っていないのだけど……まぁ、いいわ。で、結果は?」

「……これを見て」

 

慌てるパチュリー様が妙に怪しかったけど、それはひとまず置いておくとして。

パチュリー様に言われ水晶を覗くけど、ノイズばかりで映像が見えない。

辛うじて竹のようなものが生えている屋敷と言うのが分かる。

 

「結界で覆われている場所にいるみたいね。で、その場所には竹が生えている。これで場所はもう分かるでしょ?」

「迷いの竹林、ですね。私は行った事がありませんけども、妹紅がそこに住んでいると言っていました」

 

だとしたら彼は妹紅の所にいるのかしら。

でも、今見えたのは大きな屋敷。

妹紅は1人で小屋に住んでいるはず。

どう言う事かしら。

 

「分かったわ。とにかく迷いの竹林に行ってみるわね。うまく行けば満月を隠した犯人の手掛かりがつかめるかもしれないわ。咲夜、一緒に行く?」

「珍しいですね、彼を探しに行くならともかく、異変解決に積極的なんて」

 

妖怪であるお嬢様が自分から動くことはない。

大抵霊夢に発破をかけるか、人間である私に行かせようとする。

 

「異変解決なんて柄じゃないのは分かってるわよ。ただ、今回満月を隠された。せっかくの月夜を台無しにされて、妹にまで影響が出ている以上、放っておくわけにもいかないわ。人間であるあなたが一緒なら、格好は付くでしょ? それに彼を探しに行くついでよ、ついで」

「分かりました。そう言う事でしたらご一緒いたしますわ。それと、お嬢様。照れ隠しなら異変解決のついでに彼を探しにいく、ではないでしょうか?」

 

隣でパチュリー様が暖かい視線を送っている。

それを見て、自分の発言に気付いたレミリアお嬢様は夜でも分かるほど、顔が真っ赤になった。

可愛らしいわね。

 

「っ~~~!? い、いいから、さっさと竹林に行くの!」

「はいはい。では、行って参りますねパチュリー様」

「ふふっ、行ってらっしゃい。ユウキをよろしくね」

 

パチュリー様に見送られて、私とレミリアお嬢様は迷いの竹林へと向かった。

さて、彼は一体そこで何をしているのかしら?

 

 

続く

 




と言うわけで今回の異変は博麗組と紅魔組が主人公ポジションです。
ユウキの出番ははたしてあるのか!?(笑)
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