幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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お待たせしました。
劇場版第1作と3作目が大好きです(何の話だ)


第121話 「相棒」

数時間前 永遠亭

 

 

俺達は月の異変を起こした理由を聞く為永琳の元へきた。

最初は、素直に理由を教えてくれないだろうと思っていたが、永琳は俺達を見るなり溜息1つ付いてこう言った。

 

「分かりました。全てをお話ししましょう」

「師匠!?」

 

側にいた鈴仙は驚いた声をあげたが、輝夜は特に何も反応はせず楽しそうに微笑んでいた。

 

「いいじゃない鈴仙。仮にここで嘘を言っても彼には通じなさそうだし。妹紅だけならまだしも、彼と文まで相手にするのは得策じゃないわ」

「だからってそんなあっさりと!」

「それに、あまり時間に余裕はなさそうよ」

 

永琳はチラリと外に目を向けた。

彼女も自分達以外の誰かが、何かをした事に気付いたようだな。

それらへの対処の為にも俺達への対応はスマートに行かせたいんだろう。

妹紅と文に目を向けると、2人共黙って頷いた。

 

『下手に事を荒げるつもりはない』

 

それは俺だけではなく彼女達も同意見だ。

一応、人間である俺と妹紅はともかく、妖怪である文には月の異変はどうしても放置出来ない物だった。

だから最初は少々血気盛んに見えたけど、永琳達には俺が面倒をかけて、尚且つ借りが沢山あるんだから穏便にいくならそうしたいと言うと、渋々納得した。

 

「と言うわけで、全てと言っても時間がないから掻い摘んで話す事になっちゃうわね」

「あぁ、それで構わない」

「と言っても、ほとんどの事情はあなたも妹紅も知っているから、そこの天狗さんに話すって事になるわね」

 

そうして永琳は自分達が月からの逃亡者で、鈴仙に月から今度の満月の夜に使者が来ると言う連絡が入った事を説明した。

ついでに、その連絡のせいで俺の事を月の刺客と勘違いした事も言うと、妹紅も文も鈴仙を睨みつけたがすぐに向き直った。

 

「その使者が幻想郷にこられないように月に細工をしたのよ。どうやったかは企業秘密ね。で、これをすると幻想郷の妖怪達に影響が出ると言う事も分かっていたわ。それを知られないようにする為にもあなたをここに引きとめたと言うわけなのよ」

「やけにペラペラと話してくれますね。何か裏があるんじゃないですか?」

「あら、それはブン屋としての勘かしら?」

 

永琳の話に裏はない。

これは、俺が暗部で培った勘によるものだ。

それは文も同じのようだ。

でも、だからこそ、彼女がここまで話すのが納得……あぁ、そう言う事か。

 

「永琳、俺、いや俺達に協力させようって事か」

 

そう言うと永琳は目を見開いた。

流石に気付かれるとは思ってなかったか。

 

「あー……なるほどね」

「そう言う魂胆でしたか。納得ですね」

「? なんの事ですか?」

 

妹紅と文も気付いたが、鈴仙だけは分かっていないようだ。

これは永琳と輝夜で考えた事で、鈴仙には知らせてなかったんだな。

 

「簡単な事だよ鈴仙。俺達を月からの使者への迎撃要員として考えていたって事さ」

「えっ? えぇ~~!?」

「ユウキさんのお人好しさを知った皆さんは、鈴仙さんを迎えに月から刺客が来て、尚且つ彼女自身が月へ帰りたくないと思っていると知ったら、妨害の手伝いをすると考えたんでしょうね。ユウキさんはあなた達に借りがあると思っていますし」

 

呆れながら文が言う通りだ。

俺も鈴仙が月へ戻りたくないのに刺客が来ると知ったら、手伝っただろうな。

 

「で、ユウキが手伝うと言えば、彼を心配して付きっきりの文も渋々ながらも手伝うと言いだすでしょうね」

「あら、それはあなたも同じでしょ、妹紅?」

 

妹紅は、輝夜の指摘に顔を赤くしてそっぽを向いた。でも、否定しないのか。

さて、この推論は多分当たりかな。

実際俺は話を聞いて何か手伝えることがあれば手伝おうって思ってたし。

文と妹紅がノリ気になるかどうかは、それは彼女達次第か。

ここ数日接して思った事、永琳って紫以上に頭が切れる策士だろう。

でも、なぜか紫と違って嫌悪感は抱かなんだよな。

それほど紫が信用ならないからかな。

 

「ともかく、刺客の心配はいらないと思いますけど?」

「それは、どういう意味かしら?」

「幻想郷には外部から侵入出来ないように結界が張られています」

 

これは霊夢から何度か聞かされたな。

結界がいくつも張られていて外部からの侵入者を防ぐようにされている。

万が一突破されてもすぐに対処できるようにもしてあると。

 

「月の科学力を甘く見ない方がいいわよ」

「いえいえ、甘く見てないからこそ、八雲紫は当時の博麗の巫女と協力して強力な結界を張ったんです」

「……あなた、千年以上生きてるわね?」

 

それを聞いて、永琳の目が細まった。

そう言えば、昔紫は月を攻めた事あったんだっけ。

前に萃香がみすちーの屋台で教えてくれたな。

 

「と、歳の話はユウキさんの前でしないでください!」

「それを言うなら妹紅だって千歳は軽く越えてるわよ?」

「さっきからいちいち私を巻き込むな! それを言うならお前だってそうだろ輝夜!」

「むっ、私はいいのよ。永琳なんて億単位なんだし」

 

話が壮大にズレまくってるんだが。

 

「聞かなかった事にしよう」

「……そ、そうしてちょうだい」

 

あ、輝夜に億単位って言われて永琳がショック受けてる。

否定しないって事は、そうなんだろうな。

 

「ゆーちゃんがこの中じゃ一番若いって事で」

「と言うか、まともな人間が俺しかいないんだが」

 

そう言うとなぜか全員が一斉にこっちを向いた。

なんだその顔は。

 

「ユウキが、まともな人間、か」

「何でしょうか。至極真っ当で正論で事実なんですけど、どこか否定しなきゃいけないような……」

「うん、まとも、って所は言い過ぎた」

 

人殺しとかしまくってたし、まともなわけがなかったな。

 

「いえ、そういう意味じゃなくて、その……えっと」

 

鈴仙が苦笑いを浮かべて何か言いづらそうにしている。

 

「はっきり言ってくれ、鈴仙」

「ゆーちゃん、人間やめてない?」

「それははっきり言い過ぎじゃないか、てゐ!? やめてないしやめた事もない……多分」

 

何この否定しにくい空気。

 

「確かに医学的にも生物的にも人間なのは間違いないわね」

「どうしてそこまで専門的に分析しなきゃ人間って分からないんだよ。もっと簡単に分かるでしょ、永琳」

「蓬莱人や宇宙人や妖怪からこうも言われる時点で、あなた人間じゃないと思うわ」

「お前、俺がかぐや姫を知らなかった事、絶対根に持って言ってるだろ輝夜……じゃなくって! また、話が、ズレてる!」

 

もう何の話をしてたのかわかんなくなってきた。

 

「ふふっ、話を戻すわね。確かにあなた達の指摘は間違ってないわ。けど、誤解しないでね。こちらからあなたにお願いしよとしたのよ。仕事の依頼としてね」

「依頼として?」

「えぇ、あなたは幻想郷で何でも屋をしてるって聞いているわ。だから怪我の様子次第でと思ってたのよ。でも、文の言う通りなら、そこまで警戒する事もなかったのね」

 

そう言いながら永琳は大きく息を吐いた。

まるで、肩の荷が降りたかのようだ。

 

「ここに引き籠って数百年。外の情報は手に入れてたけど、幻想郷も外の世界も色々変わったのね。永琳、もう隠れる必要はないんじゃないかしら?」

「姫様……そうですね。鈴仙もそれでいいかしら?」

「はい。私はお2人にどこまでも付いて行きます」

 

なにやら永遠亭の中で色々話が進んでるみたいだけど、そう簡単にはいかないんだよな。

 

「そちらはそれでいいかもしれないけど、一度異変を起こしちゃったのでしたら後には引けませんよ? すでに異変解決のために八雲紫が動いているみたいですし」

「あら、じゃあやっぱりこれは彼女の仕業ね。こんな事が出来るのは彼女くらいのものだし」

 

永琳達と紫には、月の侵攻以外にも色々と因縁があるみたいだな。

そっちは俺には関係ないけど。

 

「博麗の巫女である霊夢さんもこの異変解決のために動いているはずです。そちらはどうするんですか?」

「そうねぇ、このまま待ち受けましょうか」

「「えぇ~!?」」

 

のほほんと言った永琳に、鈴仙とてゐが驚いた声をあげた。

妹紅と文も驚きの表情を浮かべている。

 

「月の結界を解除してもいいのだけど、八雲紫が上書きしちゃったからちょっと面倒ですし。どうせなら、博麗の巫女さんに自己紹介を兼ねてここまで来てもらいましょう」

「はぁ……進んで異変の退治側になる人を初めて見ましたよ」

 

それは俺も同感だ。

 

「じゃ、俺もそちらの計画通り協力するかな」

「あら、もうあなたが手伝ってくれなくてもいいのよ? 幻想郷側への対抗ではなく月側への対抗手段と思っていたのだし」

「そうよ。それにこれは私達の問題。怪我人のあなたに無理をさせられないわ」

「心配してくれてありがとな、鈴仙。怪我なら鈴仙だってそうだろ。それに借りは少しでも早く返したいんでね。勝手に返済させてもらう。迷いの竹林で待ちかまえておくよ」

 

それに、異変を解決する側じゃなく異変を起こす側に付くのもたまには悪くない。

 

「ユウキさんだと誰もここに近寄れなくなると思いますけど」

「買い被りすぎだ。弾幕ごっこなら霊夢達の方が何枚も上手だろ。あ、弾幕ごっこなんだから文も妹紅も手を出さなくて大丈夫だぞ」

 

まともに戦えば勝てると思うけど、弾幕ごっこじゃ無理だな。

現に、霊夢相手に何度か練習で弾幕ごっこした事あるけど、負け越してる。

 

「あぁ、月からの刺客よりは遥かにマシだしな」

「そうですね。そっちの方が面白そうですし。じゃ、私はこっちを使いますか」

 

文はどこからかカメラを取り出したが、どこにしまってたんだ?

 

「では、取材許可を貰えますか? 異変解決の瞬間を撮りたいので」

「ちゃっかりしてるわね。いいわ、あなた達を利用しようとしたのだしね。でも、昔の事はあまり書かないでね」

「はい。勿論です! ではユウキさん、行きましょうか。私は手を出しませんけど、近くでばっちりカメラガール役しますね」

 

ガールって……いや、突っ込んだら負けだな。

そこへお京がやってきた。

彼女は迷いの竹林周辺の様子を探っていた兎達から報告をもってきたそうだ。

それによると、2人組の人影が空を飛びまわっているとの事だ。

 

「2人組ね。鈴仙、あなたはユウキ君と一緒にお客さんのお出迎えをしなさい」

「えっ、私ですか!?」

「そうよ。相手が2人組ならこっちも2人の方がいいでしょ? てゐは兎達の指揮があるし、私は姫様の護衛。ほら、あなたしかいないじゃない」

「でしたら、私がユウキさんのパートナーになります!」

「いや、なら私がユウキとペアを組む」

 

2人組、パートナーか。

 

「鈴仙はここら辺の地形が良く分かっている。けれども、弾幕ごっこは不慣れ。なら、弾幕ごっこに慣れているユウキと組んで弾幕ごっこに慣れた方が今後の為でしょ?」

「分かった。よろしく頼むな、鈴仙」

「「「えっ!?」」」

 

えっ? なぜにみんなそこまで驚く?

俺がすんなりと鈴仙と一緒なのを承諾したのが、そんなにビックリか?

 

「ま、まぁ、ユウキさんがそういうのでしたら、私は何も言いませんけど。どうせ近くに私もいますし!」

「私も何かあった時の為に近くで待機しておく」

 

なんで2人共不機嫌になったんだ?

鈴仙はもうわだかまりないってのに。

 

「?? ともかく、時間もあまりなさそうだし。行こうぜ、鈴仙」

「あ、はい。では、お師匠様、姫様、行ってきます。てゐ、あなたも急ぐ!」

「気を付けてね。あなた達のいる方に行くように結界を調整するから」

「楽しんでらっしゃい♪」

「は~い。鈴仙ちゃん、顔赤いよ~?」

「うっさい!」

 

 

 

結局、成り行き任せで彼と一緒に侵入者の迎撃をする事になって、今こうして2人してやってきた2人組と対峙しているけど。

はぁ~なんでこうなっちゃうのかな。

なぜ私なんかと一緒になるのを、まるで喜ぶかのように承諾したのかを彼に問いただそうとする暇もなかった。

やってきたのは、見た所吸血鬼の幼女と人間のメイドと言う変わった二人組だった。

彼女達はユウキの知り合いみたいで、彼の姿を見て驚いていた。

 

「よっ、こんばんは2人共。今日はいい月夜だな」

「なんであなたがそこにいるんですか、ユウキさん?」

 

2人共、滅茶苦茶睨んでる。

異変が原因で睨んでいるのじゃなくて、ユウキさんがこっちにいるのが原因なのは明らかね。

なんだかちょっと優越感みたいなのがあるけど、気のせいね気のせい。

 

「なんでって、半分は仕事で、半分は借りを返す為、だな」

「借りを返す?」

「そう言えば、咲夜にも関係してる事だったな。うん、彼女達には借りがあるんだよ。白玉楼の一件でのな」

「なるほど、あの時の薬の出所はここだったわけね」

 

それって、前に彼が瀕死の重傷を負って妹紅さんが薬をもらいに泣きながら土下座した事を言ってるのかしら。

それなら、私ではなくお師匠様と妹紅さんへの借りだと思うのだけど、誤魔化してる?

 

「咲夜、ここは引きましょうか。彼は元気そうだし、思ってたより深刻な状況じゃなさそうよ。恐らく霊夢も動いているみたいだからそっちにやらせましょ。それに天狗や蓬莱人の気配もあるし、面倒はごめんよ」

「本当ですか? なんで天狗までいるのか気になりますが。正直拍子抜けもいい所です。私にとっても恩人になるわけですし、一度引きますか。ですが」

「ええ、分かってるわ。このまま黙って帰るわけにはいかないわよね」

 

吸血鬼とメイドは小声で話しているけど、私にはバッチリ聞こえてるのよね。

隣の彼は首を傾げている所をみると、聞こえてないみたいだけど。

 

「コホン、分かったわ。私達はこれで手を引くわ」

「えっ? あれ?」

 

何を納得したのか分からないけど、彼女達は手を引くみたいね。

正直、ありがたい事なのだけど、嫌な予感しかしないわ。

彼も彼女達が何もせずに帰ると言うのは拍子抜けだったようね。

 

「この異変に関してはもう興味なくなったわ。あなたがそっち側にいる時点で深刻さはなさそうだし。でも……」

「横にいるウサミミの彼女は一体……」

「「ダレ?」」

 

――ゾワッ!

 

な、何今の? 殺気!?

2人が私を睨んだ途端、背筋がぞくぞくっとした。

一体何だって言うの?

 

「あぁ、彼女は鈴仙・ウドンゲイン・イナバだ」

 

今、発音おかしくなかったかしら?

 

「……鈴仙・優曇華院・イナバよ。あそこにある永遠亭の住民、と言った所ね」

 

詳しく自己紹介する必要は今はないでしょう。

 

「うん、彼女は俺の相棒だ」

「「「はっ?」」」

 

相棒、確かに彼と2人でってお師匠様も言っていたけど、だからって相棒とあっさり言われると、意外だけど少し嬉しい。

仲間を見捨てた逃亡者の私を、勘違いから殺しかけた私を、彼は当然のことのように言ってくれた。

侵入者を前にして、自然と頬が緩む。

そんな私を見て、吸血鬼とメイドは深く息を吐き、今度はユウキさんを睨んだ。

あれ、こういう反応つい最近どこかで見た気がする。

 

「……なるほど、ユウキまたなのね」

「えぇ、またなのですね。ユウキさん」

「また、って何が?」

 

あっ、わかった。妹紅さんとあの天狗だ。

まさか、この2人もユウキさんの事を?

ということは、今の状況って非常にまずい気がするんだけど!?

 

「ねぇ、咲夜。どうしましょうか。今日はこのまま帰ろうと思ったのだけど、なんだか非常にムカついてるわ」

「そうですね、お嬢様。私も非常に腹が立っています」

「おーい? 2人ともなんか顔怖いぞ?」

 

ユウキさんって鈍感すぎるにもほどがあるでしょ!?

あんなに殺気や気配に敏感なのに、なんでこういうのには超鈍感なの!? わざとなの!!?

 

「そこのウサギ。悪いんだけど……」

「八つ当たりに付き合ってくださいね。大丈夫、ハリウサギになってもらうだけだから♪」

 

吸血鬼は紅く輝く爪を伸ばし、メイドは両手にナイフを構え、とてもいい笑顔でこちらにやってきた。

あ、この顔知ってる。お師匠様がマジ切れした時の顔だわ♪

なんて思ってる場合じゃない!

 

「ちょっと、どうするのよユウキさん!?」

「えっ!? これ、俺のせいなのか!?」

「「「どこからどうみてもあなたのせいよ!!」」」

 

3人で同じことを叫んじゃったじゃない。

あーもう、不幸だー!!

 

 

続く

 




ユウキもげろー爆ぜろー回(笑)
次回はVS紅魔コンビです。
ちなみに、博麗コンビは魔法使い組と森の方でバトってます。
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