幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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大変お待たせしました!
これにて永夜抄編終了です


第124話 「月見酒」

輝夜達が仕掛けた異変から丸一日が過ぎた。

今私は、ユウキに誘われて博麗神社でお月見という名の、いつのもの宴会に参加している。

 

「なんか釈然としないわ」

「お前さん、それこの前の宴会の時も言ってなかったか?」

「これがいわゆる天丼ってやつですねぇ」

 

ムスッとした表情を浮かべ、私と文に愚痴を言ってくる霊夢。

いつもなら霊夢の愚痴を聞くのは魔理沙かユウキだったけど、今は2人共いない。

ユウキは紅魔館組に絡まれていて、魔理沙はフランの相手をさせられている。

魔理沙は、彼がらみで溜まったフランのストレスの解消相手にさせられたって所ね、ご愁傷様。

 

「ユウキさんの事もだけど、あなた達の事も納得できないのよ、文に妹紅!」

「なんで私まで?」

「ま、気持ちは分かるけどね」

 

霊夢と紫がユウキと鈴仙を倒して永遠亭にやってきた時、私と文は隠れていた。

だけど、すぐに紫のスキマによって引きずり出された。

なぜ永遠亭にいるのか霊夢に詰め寄られたけど、ユウキがなだめて一先ず異変解決を優先させることになった。

それから、永琳と輝夜が退治されて無事に異変は解決した。

でも、霊夢にとっては異変を解決したことよりも優先させる事があった。

それはユウキが今まで何をしていてなぜ永遠亭にいて、異変を起こす側にいたかということだ。

 

西行妖の時に自分の命を救ってくれたのが永琳だと偶然知り、恩返しの為に今まで永遠亭で手伝いをしていた。

内緒にしていたのは、永琳たちは自分たちの事をあまり知られたくないからだった。

そして、今回の異変を起こしたのは月から永琳たちを迎えに使者が来る事になり、それを防ぐ為に月との境界を封じた。

たまたま竹林に取材の種を探しに来た文と、月の異変を知り駆け付けた私が幻想郷の結界について説明した。

納得して結界を解こうとしたらさらに別の結界が張られた事で霊夢たちが来る事を知り、どうせなら大々的に異変を起こしたことにして退治されようという話になった。

弾幕ごっこにあまり練れていない鈴仙の為に、ユウキが助っ人として補佐する事になった。

 

以上が異変解決後に、霊夢やレミリア達に説明した内容だ。

嘘は言っていないし、間違ってもいない。

ただ、言っていない事があるだけだ。

霊夢達もそれに気づいたようだが、ユウキがそれ以上何も言わない雰囲気なので結局お流れになった。

 

「あーもうまたムカムカしてきた。ちょっと行ってくる!」

 

そういって霊夢は、酒瓶片手に紅魔館組に絡まられているユウキの元へと突撃していった。

あれはかなり出来上がっているわね。

自業自得とはいえ、ユウキはご愁傷様ね。

 

「はぁ、やれやれ。助かりましたねぇ」

「また後で飛び火してきそうな気もするけどね。ところで、文。聞こうと思っていた事があるのだけど……あの夜何を見たの?」

「何を、とは何のことですか?」

 

私が聞きたがっている事を察しているはずなのに、文はとぼけた顔をした。

 

「ユウキと鈴仙が殺し合いをしていたのを、あなたは見ていたんでしょ?」

 

あの夜、私と慧音はてゐから助けを呼ばれて駆け付けた時には、文がすでに来ていて鈴仙と対峙していた。

状況はてゐから聞いていて、血まみれのユウキを見て私も血が上ったけど、少し気になる事があった。

ユウキを永遠亭に運び入れた後、文の様子がおかしかった。

助けに入るのが間に合わなかった事への罪悪感かと思ったけど、それだけじゃなさそうだった。

 

「……そうですね。あなたには話してもいいでしょうね」

 

周りを確認して誰も自分たちに注目してないのを確認して、文は小声で話し始めた。

 

「私は今まで自分を狙う人間だったり、ただの殺人鬼だったり、人間の為に妖怪を倒そうと意気込む人間など、色々な人間を見てきたわ。けど、あの時のユウキさんのような人は見たことなかったわ」

 

文はすごくまじめな表情を浮かべた。

口調が素になっているあたり、かなり真剣なのだろう。

 

「感情が、というか生気すら感じない表情を浮かべていたわ。まるで、能面、いえ能面の方がまだいいわね。とにかく、普段から何を考えているか表情が読みづらい時がある彼だけど、あの時は別格だったわ」

「それで、助けに入るのが遅れた、か?」

「……否定はしないわ。あれがユウキさんとは思えなくて、少し怖くもなったし」

 

並み居る妖怪たちの中でも大妖怪に位置する文が、ここまで言うなんてよっぽどだったのかしら。

 

「鈴仙は彼と初対面だからそこまで動揺してなかったけど、あれを霊夢やフラン達が見たら……ショックを受けるかもしれないわ」

「そこまでなのか。じゃあ、ユウキが鈴仙と殺しあった事を霊夢達に隠したのは」

「西行妖の一件で懲りたんでしょうね。あの夜あった事を知れば、霊夢達が鈴仙を許さない。だから鈴仙達を守るために隠した。けど、もう1つはあの時の自分を知られたくなかったんでしょうね」

 

正直、私としてはそっちの方が驚きなんだけどね。

今までユウキは自分の事を考えなかったし、自分に対しての周りからの感情にもすごく鈍感だったから。

 

「ま、数か月もほぼ毎日あんな状況だと、流石にどんな鈍感でも気づくと思いますけどねー」

 

そういって、いつの間にかアリス達まで巻き込んで大騒ぎしているユウキの元へと、カメラ片手に文は飛んで行った。

私は、ああいうのには混ざりたくない。

恥ずかしい、のもあるけど、巻き添えはごめんよ。

それに、少し妬んでいるから、なんて慧音にも知られたくないしね。

 

 

という会話を木の上で文達に気づかれないように聞きながら、私は杯に次の酒を注ぎこむ。

竹林で本当はあいつに何があったか、っていうのにはあまり興味がなかったけど、耳に入ったなら気になっちゃうよねぇ。

それにしても、あいつもやっと、ここまできたか。

パッと見は変わってないように見えて、ちゃんと変わってきてるんだねぇ。

その話題のあいつに目を向けると、さっきまでレミリア達と飲んでいたのに、いつの間にかアリスや大妖精までやってきて大所帯になっている。

まぁ、元々紅魔館の全員を相手にしていたから最初から大所帯か。

で、そこへ酒ビン片手に霊夢が文字通り突撃。

ありゃりゃ? 霊夢ったら顔が真っ赤になってすっかり出来上がってるね。

 

「ちょっとそこ、どきなさい」

「は、はいぃ!」

 

ちゃっかり彼の隣に座っていた美鈴を退かせて、ドシンと座り込む。

その迫力にレミリア達は何も言えずポカーンとしていた。

私でさえブルッと来た程だもんね。

霊夢って、あいつが関わると博麗の巫女としての時より迫力出る時多いねぇ。

まさに恋する乙女はムテキだね。

 

「で、どうなのよぉ?」

「何がだ? ってか、霊夢酔いすぎ」

 

あんなに酔ったの、初めて見るかも。

 

「仕方ないじゃない。私達だって納得してないんだし」

 

レミリアがそういうと、咲夜達も頷いた。

まぁ、あの説明じゃ完全には納得できないよね。

それはあいつもわかってるようで、苦笑いを浮かべている。

 

「そんなんじゃなくてぇ~! 私が気にしてるのはぁ、あのうさぎとの関係よ。いったいあのメスウサギはなんなの!?」

 

霊夢の言う兎というのは、月の兎である鈴仙の事かな。

しかし、月の兎ってのは懐かしいねぇ。

まさか竹林の奥にいるなんて思わなかったよ。

紫は知ってたようだけど、それでも手を出さなかったのは昔の事がトラウマにでもなってたのかな。

 

「メ、メスウサギって、鈴仙か? あの時も言ったろ、相棒で友達だって。弾幕ごっこに不慣れだったからサポート役になったんだよ」

 

その言葉に数人が不快感を示した。

いや、ただの嫉妬だね、ありゃ。

あいつが自分から()()って言う事は今までなかった。

相手から言われてやっと認識するくらいだ。

それが会って間もないはずの鈴仙を()()()()といった。

霊夢達から見れば、面白くないどころじゃすまない。

でも、そこらへんはまだあいつは気づいていない。

そこはまだまだだねぇ。

 

「しぃ~しょ~!」

 

と、そこへ意外な人物、妖夢が涙目で叫びながらあいつに飛びついた。

 

「今の話本当ですか!? 相棒を作ったって!」

「あ、いや、本当というか、何にそんな反応している? というか酒の臭いが……酔っぱらいすぎだろ妖夢!」

「酔ってなんかいませんよー! それに久しぶりに師匠にお会いするんですから、ちゃんと化粧してきたんですよ~!」

 

これは、いいものが見れたねぇ。

確か妖夢はまだ自覚症状なかったと思ったんだけど、知らぬ間に恋心がすくすくと、か。

妖夢は、酒は多少飲めるけど、一度酔い始めると面白いことになる。

くっくっくっ、これからはますます酒の肴が増えるねぇ。

 

「ちょっと、妖夢なんかに構ってないで私の質問に答えなさいよぉ、あの女とはどこまでいったのよ!?」

「おいおい、なんか質問が変わってるぞ? どこまでいったってどういう意味だよ?」

「しぃしょぉ! 師匠の相棒って私の事ですよね? ねっ?」

「お前は質問の意図が全くわからん!」

 

ありゃりゃ、霊夢も妖夢も完全に酔っぱらってるねぇ。

今日はあの時みたく酒に細工なんかしてないのに、随分と深酒したもんだよ。

いつもなら嫉妬の目を向ける咲夜達は、巻き添えを食らわないように少し離れてるね。

あ、レミリアだけは違うみたいだ。

 

「……咲夜、ワインをありったけ持ってきなさい。足りなかったら酒ならなんでもいいわ」

「レミィ、あなた、霊夢と妖夢に出遅れたからって、酔っぱらった勢いでユウキに絡もうとしてるでしょ」

「ギクッ、そ、そんな事あるわけないじゃない!」

 

そういって、レミリアは咲夜が持ってきたグラスを一飲み。

でも、そのグラスに入っているのは多分違うよね。

 

「ふぅ~甘くて美味しいわ、このぶどうジュース♪ って違うでしょ! 私はワインと言ったのよ、咲夜!」

「お嬢様、真っ昼間からお酒を飲んで霊夢達のようなあのような醜態をさらす事は……そういえば、ないですね。失礼しました、今お持ちします」

「?? まぁ、いいわ。早く持ってきなさい」

 

一度は主をいさめようとした咲夜だったけど、少し考えて日本酒をたくさん持ってきた。

でも、レミリアは確か……あぁ、そういう事か。

 

「ぐぅ~……」

「呆れた。レミィったら、自分は酔っぱらったら眠っちゃうって事忘れてるんだから。咲夜も、わざと日本酒を飲ませたわね?」

「さぁ、なんのことでしょうか、パチュリー様?」

 

レミリアは飲みなれないお酒がある程度入るとすぐに眠ってしまう。

あのメイドもそれはわかりきってるからこそ、わざとレミリアにワインではなく日本酒をたくさん飲ませたのか。

主に醜態を晒させない為、ではなく霊夢や妖夢のようにユウキに絡むのを防ぐ為、の方が理由としては強いだろうね。

 

「あ、ここにいましたぁ~!」

 

と、ここで新しい乱入者がやってきた。やってきたのは、これまた霊夢達に負けず劣らず酔っぱらって顔を真っ赤にした鈴仙だ。

ユウキを見つけると、満面の笑みを浮かべて彼の横に座り、すばやく腕に抱きついて頬ずりまでしてきた。

これはさすがに予想外だ。

いいぞ、もっとやれぇ。

 

「もぅ、どこにいたんですか、探したんですよ~?」

「鈴仙? お前も酔っているのかよ」

 

この状況で酔っぱらった彼女がやってくるのがどれだけ危険なことかは、ユウキもわかっているようだ。

ま、見てるこっちは面白くなってきたけどねー

 

「むぅ~酔っぱらったらいけませんかぁ~? 大体あなたがいないから1人でずーっとお酒飲んでたんですよー?」

 

あ、彼女の後ろでてゐが空っぽになった酒ビン抱えて、ユウキにウインクした。

それだけでこの状況はてゐが作ったと分かった。

てゐは、あんな見た目に反して、文よりもずっと古くからいる大妖怪だ。

なーんてこんな言ってるとお前が言うな、って霊夢に言われそうだけどさ。

そんなあいつが月の賢者や兎を匿ってたってのは、少し驚きだ。

 

「ちょっと、なんであんたがそこにいるのよ。どきなさい!」

「そうです! ししょーの隣は私が座るんです!」

「ってあんたもちゃっかり隣にすわってるんじゃな~い!」

 

ユウキを挟んで反対側に陣取ったのは妖夢。

霊夢は出遅れたようで……おや?

 

「あの~? 霊夢さん?」

「あによ~? 文句あるわけ?」

「いえ、ないです」

 

霊夢はあぐらをかいてるユウキの正面にちょこんと座り、彼に身を預ける体制になった。

 

「では、私はここ……「ここはわたし~!」……あややや~!?」

「フラン!?」

 

文はユウキの背中に飛びつこうとして、飛んできたフランに突き飛ばされて星となった。

それを見てはたてとにとりは爆笑してる。

うん、平和だねぇ。

 

「えへへっ~♪」

「しーしょ~」

「おにいちゃーん♪」

「……どうしてこうなった」

「知らないわよ」

 

四方をがっちり女の子で固められてハーレム状態のユウキだけど、身動きが全く取れなくなったね。

咲夜やアリス達は羨ましそうな視線を送っているだけだ。

霊夢が目で思いっきり威嚇してるからね。

 

「あのさ、俺これじゃ動けないんだけど? まだ何も食べてないし飲んでもいないんだけど?」

「じゃじゃあ、私が食べさせてあげますよ、はいあーん♪」

 

すかさず妖夢が近くにあった団子をユウキへと差し出した。

 

「自分で食べてるから、離れてくれないか?」

「あーん♪」

「お前今日変だぞ、何か変なものでも飲んだか?」

「あ~~ん♪♪」

「………」

 

とうとうユウキも諦めたね。

仕方なく妖夢の差し出した団子を食べだしたよ。

それを見て霊夢はピコーンと何かがひらめたようだ。

ユウキにとっては絶対ろくでもない事だろうけどね。

 

「ユウキさん、お団子だけじゃ喉がつまるでしょ。このおさk……「ユウキさん! むちゅ~♪」……っ!?」

 

瞬間、時が止まった。

咲夜が能力で止めたわけじゃない。

私もあまりの衝撃で酒を吹き出しちゃったよ。

 

鈴仙が、ユウキに、キスをした。

 

「~~~!!?」

「んん~っ♪」

 

突然の出来事にユウキも目を大きく開けて固まっている。

 

「っ、ぷはぁ~! どうでしたか?」

「れ、鈴仙……お前今何をしたんだ?」

「何って、喉を詰まらせたらいけないと思って、お酒を口移しで飲ませたんですよ?」

「いや、えっ? 口移しって、え? マジ?」

「あ、大丈夫です! 私の~ファーストキスですから~♪ きゃっ♪」

 

あーこれはヤバいね。うん、ヤバすぎる。

避難した方がよさそうだね。

同じ予感がしたにとりやはたてはもうすでに逃げ出している。

慧音もチルノ達を連れて離れ……あ、大妖精とルーミアが!?

 

「……今何ヲシタ?」

 

鬼の私でも身震いするほどの冷たい声があたり一面に響き渡った。

その声に反応するかのように、ゆらりゆらりと1人、また1人立ち上がっていく。

あふれる殺気を隠そうともせず、狂気すら浮かべる様は、まさに悪鬼羅刹。

 

「鈴仙、やばい、逃げろ!」

「えっ? もう一度してほしいんですか? じゃ今度はあなたからしてくださ~い♪」

「お前馬鹿だろ!?」

 

鈴仙は自分がした事がどんなに愚かな行為か、まだ気づいていない。

それどころか、火に油、いや、火山に爆弾を投下した。

もう霊夢も妖夢もユウキの側にくっついてはいない。

2人共他の連中と一緒に虚ろな目をしてユウキ、正確には鈴仙を取り囲んでいる。

ユウキは冷や汗を流しながらなんとか周りを諌めようとしてる。

けど、誰も聞く気はないようだ。

 

「あーあ、これじゃユウキが誤魔化した意味ないじゃないか」

 

ユウキと殺し合いをした事が霊夢達にばれたらタダじゃすまないだろうから、彼は誤魔化したっていうのに。

ある意味殺し合い以上の事をみんなの目の前でやらかしてしまった。

今の鈴仙には死相が見えそうだよ。

 

「さーって、ここら辺一帯が更地になる前に私も退散しようかねー」

 

背後で爆音やら悲鳴やらが聞こえてきたけど、私は振り返らない。

 

「でも、いいものは沢山みれたねぇ」

 

ユウキにも少しは人間らしさも出てきたことだし。

あいつが来てから、ここの宴会は退屈しないで済みそうだねぇ。

 

 

 

続く

 




鈴仙大暴走の巻~
女難レベルが上がってきてるけど、それにともなって爆発レベルも上がってきてるぞー(笑)
ちなみにユウキ、これがファーストキスです。

次回からは過去編、大覇星祭+イタリア編。
ちょっと長くなるかもしれません。
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