幻生戦です!
といっても、厳密には戦っていませんが
「ぎゃあああああっ!」
小汚い悲鳴が廊下に木霊する。
「何重にも張り巡らせた罠の……とっておきがこれよぉ」
【重力子奇木板】に右手を挟まれて悲鳴を上げている老人を見て、
事の始まりは、御坂さんのクローンである 【妹達】 を使った 【絶対能力進化計画】 が頓挫したという話を聞いた事から始まった。
計画の中身や頓挫した詳しい経緯には興味なかったけど、計画が頓挫したことで残された妹達の今後については、まぁ、色々と興味があった。
行方を調べているうちに、私以外にも妹達の事を探っている組織がいることに気づいた。
そして、それらも調べていくうちに 【木原幻生】 に辿り着いた。
あのジーサンが企む実験だから、ろくでもない事にしかならない。
まぁ、最初はそれをどうこうする気は全くなかった。と言えば嘘になるのかしら。
とにかく、幻生の実験を阻止する為、色々な手を打って、最終的には御坂さんとも、渋々、嫌々ながらも協力して追いつめた……つもりだった。
けど、それは罠だった。
木原幻生の目的は、妹達だけではなかった。
【外装代脳(エクステリア)】 私の大脳皮質の一部を切り取って培養・誇大化された巨大脳。
そんな気色悪いものが作られた目的は表向きにも裏向きにも色々あるけれど、私の能力を誰でも使えるようにするというのが、一番の目的。
そのエクステリアを完全に掌握する為、私を囮の元へ誘い込み、エクステリアがある施設を無防備にさせたのが木原幻生の罠だった。
そして、私と御坂さんが乗り込んだ時には既に遅かった。
エクステリアの完全掌握だけは免れたけれども、部分的には乗っ取られて保護していた妹達の1人にウイルスを仕込まれてしまった。
結果、幻生はミサカネットワークを使い、御坂さんの力を暴走させてしまった。
まぁ、そっちの方は、
そして、肝心の幻生は施設内のセキュリティを総動員させた結果、右手を粉砕されかけて悶絶させている。
「激痛の中で私の【心理掌握】を防げるかしらぁ?」
さっきまでの幻生相手には私の能力が効かなかったけど、今のあいつになら私の能力が使える。
と、思っていた。
「ヒヒヒ、ヒヒィ、ヒハ、ヒャ、ヒャーハハハハッ!! いやぁ~ひどいねぇ。こんないたいけでか弱い老人を痛めつけるなんて」
木原幻生の先ほどまでの悲痛な叫びは演技だった。
彼はゆっくりと右手首を
「まあ、へし折ろうにも腕がないんだけどね」
幻生の右手は義手だった。
「言ったでしょ。実験で何度も死にかけたって。僕の全身は代替え技術の見本市状態なんだよ。まぁ、実験で失ったのは一部分で、他は暗殺された結果なんだけどね」
しまった! と思った時にはもう手遅れだった。
今の木原幻生は 【幻想卸手】 を使い 【多才能力】 を身に着けている。
流石にいつかの時のような1万もの能力を身に着けているわけじゃないけれど、厳選されている分、実用性が高い能力ばかり。
そのうちの一つに、酸素を操る能力があり、それを使われた。
この手はさっきもやられたのに、また同じ手に引っ掛かってしまった。
私の周囲の酸素を奪い、呼吸困難にさせて意識奪い能力の抵抗力を無くして、私の頭の中にあるエクステリアの解除コードを奪う気だわ。
「腹の読みあいを能力に頼り切りにしてきたツケが回ったね」
幻生が何か言っているけど、今の私はそれどころじゃなかった。
「僕は何かを企む人間の空気には敏感なんだよ」
まずい。もう、意識が……
「今の食蜂君を見ればわかる。もうこの状況を靴が得ず秘策はなーんにも無いってね」
あたまのなかが、まっしろに……
「フム。リミッター解除コードゲット……入力完了」
――カチッ
その瞬間、
「お…おお……おおおおぉおおおお!?」
クソジジイに変化があった。
さっきまでの勝ち誇った笑みが一転し、苦痛と苦悶に満ちた表情へと変わった。
「なる……ほど。もう策は何もない。そう見抜かせること自体が」
「あぁ、
「な……おま、えは」
「……木原勇樹だ。ようやく会えたなクソジジイ」
すかさず幻想支配の能力停止を幻生に使った。
「散々俺から逃げ回ってたけど、鬼ごっこは今日で終わりだ」
「ヒ、ヒヒッ……さすが、きはらころ、し……」
最後まで下衆な笑みを浮かべながら、木原幻生は倒れた。
「はぁ、はぁ……やっぱ、反動が、きつい……」
前に初めて魔術を使った時以上の頭痛がするけど、これくらいはもう慣れた。
まだ後始末がいくつも残っている。
取り急ぎ、木原幻生の遺体、いや、抜け殻の処分だ。
操祈のバックから化粧品に擬態させた小瓶を取り出し、幻生に振り掛ける。
――ジュゥ
液体は幻生の体を衣服や義体ごと瞬時に溶かしつくした。
後に残ったのは、ただのシミだ。
一度は殺し損ねた相手だが、今度こそ殺せた。
「さて、美琴はまだ暴れているみたいだけど、当麻は大丈夫かな。なぜか軍覇まで出張ってきたみたいだから大丈夫だと思いたいけど……っ!?」
突然、外から凄まじい気配を感じ、悪寒が走った。
殺意とも違うこの感覚は、一度体験している。
「これは、黄金塾でのアレか? いや、あの時より、デカイ!」
以前、錬金術師と戦った時、当麻の右手が切り落とされて、その切り口から巨大な龍が姿を現したことがあった。
あの時にも今と同じ、悪寒と恐怖を感じた。
あんな恐怖は生まれて初めてだった。
しかし、その感覚もすぐに消えた。
「……これは、終わったという事か」
なぜか分からないけど、アレを感じたという事は、美琴の暴走も収まったと確信した。
「さーって、そんじゃまずは……」
バックから携帯を取り出し、操祈へと電話をかけ……ようとしてやめた。
向こうから、特殊な軍事スーツに身を包んだ操祈が歩いてきたのが見えたからだ。
「なんだ。気が早いな。今から呼ぼうとしたのに」
「エクステリアの崩壊力を確認したから、もう終わったと思ったのよ。もう完全に済んだのね」
操祈が床のシミへと嫌悪感を浮かべて、目を向けた。
「あぁ、これがあのクソジジイの末路だ。御似合いだろ?」
「そうねぇ……で、先輩はいつまでその恰好でいるつもりかしらぁ? 早く脱いで欲しいのだけど?」
シミに向けた以上の嫌悪感の籠った目で、操祈が俺を睨んでいる。
うん。睨む理由はよーく分かる。
だって、今の俺、操祈の体操服を着ているからな。
今の俺の身体じゃパッツンパッツンすぎて動きにくい。
というか、えらい絵になってそうだな。
あ、操祈が吐きそうな顔をしてる。
「まさか、女装が癖になったんじゃないでしょうね!? 変態力はレベル6!?」
「なるかアホ! 俺だって早く着替えたいんだからバック寄越せ!」
「わかってるわよ! はい! さっさと着替えて……ってここで脱ぐなぁ!」
「着替える場所なんかここらへんにあるかよ! お前が向こうむけ!」
顔を真っ赤にさせた操祈が投げつけてきたバッグから着替えの服を出して、急いで着替える。
ボロボロになった体操服は、バックと一緒に操祈へ返した。
「こうなるとは予想力働かせてたけど、思った以上にボロボロねぇ」
「ホントはお前がこうなるはずだったんだがら、柔肌傷物にされなかっただけ儲け物だと思えよ」
「わかってるわよぉ。御坂さんの方も白井さんの方もどっちも終わったみたいだし。で、本当に要求を呑む実行力は大丈夫なの?」
「大丈夫だ。そうでなかった場合、俺が対処する。そんなに心配なら再度確認するから待ってろ」
心配そう、というか不安な表情を浮かべる操祈を安心させる為、まだまだやる事は残っているけど、心の底から電話をかけたくない相手ナンバーワンに、仕方なく電話をかけた。
もちろん、電話の相手は木原尼視だ。
「俺だ。全部終わった。今度こそな。で、確認するが報酬の方はどうだ?」
『そうか。報酬は問題ない。 【ドリーの別個体】 と 【警策看取】 の処分はお前に一任する。場所も既に送ってある』
操祈に指で丸印を見せると、心底安心した表情を浮かべ、すぐにわざとらしく咳払いして誤魔化した。
美琴並に素直じゃないやつ。
『でだ。こちらも確認するが、今度こそ確実に木原幻生は死んだんだな?』
「殺した。正確には消した、だな。遺体も完全に溶かしきったぞ」
『そうか、そうか! ふふっ、はははは……いぃ~やっほ~~~!! ざまぁ~みろぉ、くそじじーーー!』
「………」
無言で通話終了。
電話の向こうで発狂している馬鹿は放置しておこう。
アイツの叫びはばっちり操祈にも聞こえていたようで、心底呆れきった顔をしている。
「やっぱり、木原は木原なのねぇ」
「はぁ、否定はしない。アイツの事は忘れろ。それより彼女の確保に行くぞ。早くしないと面倒になる」
「そうねぇ。あ、ところでぇ、先輩の影武者さんはいいのかしらぁ?」
「……あ、すっかり忘れてた」
地下道へ向かいながら、俺は影武者役を演じてくれているエツァリへと電話をかけた。
アイツがいなきゃ、この作戦の難易度はもっと上がっただろうからな。
というか、生きてるよなアイツ
続く
はい、幻生戦終了!(笑)
原作と似た展開+αになっています。
+αとなったユウキが建てた作戦の中身は次回明らかになります。
といっても、エツァリの名前が出た時点で予想はつくかと。
今まで以上に今回の展開は結構ツッコミ所ありますが、独自設定ということで(汗)