幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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お待たせしました!
イタリア編はほぼ原作沿いなので少々退屈かも?
もちろん変化はあります。


第135話 「女王艦隊」

運河の底から現れた巨大帆船。俺達は、それに巻き込まれる形で乗船してしまった。

1人川岸に取り残されたインデックスに向けて俺はある物を投げ渡した。

 

「インデックス! そいつを五和に渡せ!」

「えっ? わ、わわっ!」

 

もたつきながらもなんとかインデックスが受け取ったのを確認して、俺は船に上がった当麻とオルソラに向き直った。

 

「2人共大丈夫か?」

「あぁ、俺は大丈夫だ」

「私も大丈夫でございますですよ」

 

ひとまず2人の無事を確認して、これからどうしようかと考える。

この帆船はどうみても魔術で生み出されたものだ。

触ってみたところ、冷たくはないがどうやらこの船は氷で出来ているようだ。

だから帆船全体が月明かりや街の灯りを乱反射させて、白っぽい電球色で輝いていて明るい。

当麻が右手で触ったり、俺が幻想支配で視たが何もなかった。

幻想殺しや幻想支配の魔術への反応は未だに不明瞭な所があるけど、これを作った核を壊さなきゃ破壊できないかもしれない。

 

――ガコンッ

 

「おわっ!? 進み始めたのか?」

「そうみたいだ。狭い運河を何の苦も無く削り取って進んでるぞ」

 

どういう原理で動いているか分からないが、川岸や途中の石橋を破壊しながら運河を抜けアドリア海へと進んだ。

ちなみに、さっき石橋を破壊した時の衝撃で、当麻がオルソラに覆いかぶさる体制になっている。

思わずカメラで撮りたくなったが、今はそんな事してる場合じゃない。

 

「海に飛び降りるのは、この高さは2人には無理か」

「さらりと自分なら大丈夫って言ってるが、すごいな」

 

下は海とは言え、そこそこの高さがある。

俺だけならともかく、当麻とオルソラでは骨が折れるだろう。

それにすでに沖へ出ている以上、泳いで戻るにしても距離がある。

濡れた服で遠泳するには条件は厳しすぎる。

それにこの船にすぐに見つかる可能性も高い。

そうなれば、船の側面に装備されている大砲で撃たれて一巻の終わりだ。

脱出用の小舟でもないかと見渡したが、それらしいものは見当たらない。

 

「陸から……離れていくようでございますね」

「あぁ、この帆船といい、さっきの襲撃者の目的が分からないな」

 

オルソラ狙いなのは確かだったが、法の書の件は片が付いていると天草式から聞いている。

なら私怨か。それにしてもオルソラ1人に対して大げさすぎる。

と、考え込んでいると船体内部から複数の足音が聞こえてきた。

 

「まずい。2人共隠れろ」

「は、はい」

 

上甲板に身を隠すと、複数の男たちが武器を片手に飛び出してきた。

どいつもこいつもさっき襲ってきた奴らと同じ格好をしている。

あいつらを片づけてもいいけど、狙いも戦力も何もかもが分からない中で、下手に騒ぎを大きくしても目立つだけだ。

 

「色々考えることはあるけど、まずは中へ入って安全な場所に避難するぞ」

 

声を抑えて言うと、2人とも無言で頷いた。

幸い、船室への扉は複数あり、奴らの隙をついて入り込む事には成功した。

 

 

当然というか、船内も扉も何もかも全て氷で出来ていた。

外と同様に、月明かりでも乱反射させているのか、思っていたよりは暗くはない。

でも、暗くないというのは下手に隠れても見つかりやすいという事だ。

現代の船舶ならある程度詳しいが、昔の帆船、特に魔術で生み出された船の内部構造は全く分からない。

闇雲に内部を進む前に、どこかで一度腰を落ち着かせたかった。

なので、中に人の気配がないのを確認して、すぐ近くの船室にもぐりこんだ。

外からはドタバタと走り回る音が聞こえてくるが、こちらに来る気配は今の所はない。

船室内は1人用の個室のようで、簡易な机といす、ベッドがあった。

ひとまず、当麻とオルソラはベッドに座り、安心したようにはーっと深く息を吐いた。

 

「くそっ、何がどうなってるんだ」

 

当麻がポツリとつぶやき、オルソラが困惑した表情を浮かべている。

無理もない。俺も状況がさっぱりわからない。

 

「オルソラ、襲撃してきたやつらも今外にいる連中も、ローマ正教で間違いないか?」

「はい。あの服装は男子修道服で間違いないのでございます。ですので、ローマ正教の手の者だと捉えるのが正しいのでございますが……」

「まさか、法の書の事でまた何か?」

 

当麻もさっきの俺と同じことが頭に浮かんだようだ。

 

「いや、それは片が付いている。それにオルソラ1人をどうにかするにしては大がかりすぎる。本来はもっと別の目的のための船だったんだろう」

「では、先ほどの襲撃は?」

「……恐らく、ついで?」

 

オルソラは眉を下げて、またさらに困惑の色を深めた。

襲撃はついで、そう考えるのが自然だが、襲撃された側からすればたまったもんじゃない。

改めて船室内を見ると、丸い窓があるのが見えた。

そこから外の様子を見ようと近づくと。

 

――ドボンッ!

 

突然、船窓の向こうで海面が爆発した。

 

「な、なんだ!? 砲撃か!?」

「いや、違うな」

 

窓の外では次々と海面が爆発し、大きな水柱と共にこの船と同じ形をした帆船が姿を現した。

 

「この船は敵の本拠地じゃなく……」

「大船団の一隻に過ぎなかった、って事だろうな。全くそれにしても何十隻いるんだ?」

「キオッジアでは狭すぎて展開できなかったって事か。あ、インデックス!」

 

ここで当麻がようやくインデックスの事を思い出した。

急いで携帯を取り出し、インデックスが持っている携帯にかけたが繋がらなかった。

 

「インデックスのやつ。携帯の電源切ってやがる」

 

ちなみにインデックスに携帯電話やら固定電話やら、一般的な家電について一通りのレクチャーは、当麻と同居してすぐに俺がしてある。

当麻じゃうまく教えられないようで、様子を見に行った時に教えてくれと頼まれたからだ。

 

「インデックスの事なら心配ない。最後に見た時は無事だったし。保険もちゃんと手渡してある」

「保険?」

「問題は、天草式にうまく合流できれば、だけどな」

 

インデックスにもアレの使い方は教えてあるけど、使い方が分かるだけじゃどうしようもない。

 

「何の事かわかんねぇぞ」

「あぁ、実はインデックスには……シッ!」

 

と、ここで部屋の外から何者かが近づいてくる気配がした。

ついに各部屋ごとへ探索の手がこっちに来たかと思い、当麻とオルソラに静かにするようにジェスチャーして、扉へと近づく。

 

――ガチャッ!

 

「「っ!?」」

 

ドアノブを回す音がすぐに聞こえてきた。

気配を探ると、どうやら相手は1人のようだ。

複数が来られるとちょっと面倒だけど、1人ならどうとでもなる。

 

――ガチャリ

 

ドアが開くと同時に、廊下にいる相手の手を掴み、なるべく音を出さないように地面へと転がして押さえつける。

左手で口を塞ぎ、右手に机の上にあったペンを掴み相手の首元に当てる。

もちろん、両足で相手の両手を押さえるのも忘れない。

と、ここまで一瞬でやったのだが、やっておいてなんだが、相手がすごく小さい事に気づいた。

しかも、その相手は俺も当麻もオルソラもよく知る人物だった。

 

「お前、アニェーゼ=サンクティス?」

「んっ!? っ~~!!」

「あ、アニェーゼ!?」

「まぁまぁ」

 

当麻もオルソラも驚いた顔をしているが、俺も驚いた。

けど、普通に考えればローマ正教のアニェーゼがローマ正教の船にいたっておかしくはない。

それに、アニェーゼは、オルソラとも俺達とも因縁がある。

状況が状況なので、この際贅沢は言ってられない。

彼女から情報を引き出す事にしよう。

と、言っても当麻とオルソラがいる前で過激な事は出来ないな。

アニェーゼは最初こそ驚いた表情を浮かべていたが、すぐに俺にを睨みつけて暴れだした。

と言っても、完全に押さえつけているし。

シークレットシューズなしではインデックスより幼い身体のアニェーゼでは俺をはねのけられない。

 

「あの、ユウキさん。アニェーゼさんに手荒な真似は」

「ユウキ、お前今すごい画になってるぞ」

 

……幼女を押さえつけるってのは経験ないわけじゃないが、確かに悪質な変質者にしか見えないよな。

しょうがない。

 

「はぁ~……いいか、アニェーゼ。まず最初に言っておく。俺達はお前らに敵対するためにここに来たんじゃない。むしろ、そっちが先に手を出してきてこんな事になった。理解できたか?」

「……んっ」

「じゃ、離すぞ。俺も手荒な真似はしたくないんで、ひとまず落ち着いて話をしよう、な?」

「っ!?」

 

アニェーゼを落ち着かせて安心させる為に笑顔で言ったのに、彼女は顔を真っ青にしてガクガク震えだしたぞ。

おかしいな。

ともかく、アニェーゼを離すと、彼女はささっと部屋の隅まで後ずさりして、恐る恐る俺達を睨みつけてきた。

まるで警戒心丸出しの猫だな。

 

「ユウキ、お前今何したんだよ。アニェーゼ怖がってるじゃないか」

「いや、当麻。そういう事言ってられる状況じゃないからな?」

「待ってくださいアニェーゼさん。私達は、あなたを傷つけるつもりは……ないのでございます」

 

オルソラ、そこで俺を不安そうにチラ見するなよ。

あ、なんか少し怒ってる気がする。

 

「あー……悪かった、アニェーゼ。もう何もしないから、ほらこっちおいで」

「私は猫ですか!? じゃなくって、どうしてあなた達が 【アドリア海の女王】 にいやがるんですかい?」

 

相変わらずアニェーゼの日本語はたどたどしいというか、訛りやアクセントが変というか個性的だな。

 

「さっきも言ったろ。俺達は巻き込まれただけだ。お前らにな」

 

 

そこで俺達はこれまでの事情を説明した。

旅行先でオルソラに出会って、引っ越しの手伝いをして、別れようとしたら変な奴らに襲われて、かと思えば帆船が運河に浮かび上がって巻き込まれてここにいる。

そういうと、アニェーゼは額に手をあて深く息を吐いた。

 

「はぁ~……なんで、貴方たちはそう面倒事や厄介事に首どころか全身を跳びこませてくるんでごぜいますか」

「これも全部、ローマ正教のせい」

「あーはいはい、分かりました。全部ローマ正教が……って言えるわけねぇでしょう!」

 

と、息巻いたアニェーゼだったが、ふと何か思いついたようで、いたずらっ子がよくする嫌な笑みを浮かべ始めた。

 

「ですが、これは利用できそうですね」

「その前にここの情報とか色々教えろよ」

「はぁ? いいんですか? 私がここで大声を出せば 「んっ?」 は、はいぃ~! お、教えて差し上げます!」

 

何かほざきかけたのでペンを取り出して、さっきのような笑みを浮かべる。

すると、アニェーゼはまた顔を真っ青にして色々と教えてくれた。

いやぁ~やっぱり人を安心させるのは笑顔だよな。

 

「「………」」

 

当麻とオルソラが引いてる気がするけど、多分気のせいだろう。

 

 

アニェーゼの説明によると、この艦隊の名は、女王艦隊。

アドリア海の監視を目的とした 【アドリア海の女王】 その護衛艦の1つだそうだ。

艦隊の事は、アニェーゼもここに連れてこられた時に知ったそうで、オルソラも聞いた事はないと言っていた。

ローマ正教と言っても、部署が多くあるので末端のシスターたちには知らされていない事も多いのだろう。

そこは学園都市も同じだしな。俺だって暗部を全員知っているわけじゃないし。

学園都市で行われているプロジェクトは、尼視ですら全て把握できてはいない。

だが、アニェーゼの説明を聞いていて、ふと疑問がわいた。

 

「で、艦隊の規模とか色々と不自然な感じがするけど、ホントにアドリア海の監視の為だけの艦隊なのか?」

「あぁ、俺達が襲撃された事だって、なんか引っ掛かるし」

 

俺と当麻がそういうと、アニェーゼはニヤリと悪戯っ子スマイルを浮かべた。

なので、俺も 【営業】 スマイルで応えると、ブルブルと震えて答えてくれた。

 

「あ、貴方達は、ローマ正教のプロジェクトを破壊した張本人ですよ。そんな奴らが学園都市からわざわざイタリアに来たと知れば、わかるでしょう?」

「オルソラにまで警戒する事ないだろ。しかも、襲撃までして」

「彼女については、天草式をここに入れたことが問題なんでしょうね。彼らの戦闘力はよく知られているから、警戒網に引っ掛かるのは当然。と、ここまでは建前」

 

アニェーゼはふーっと息を吐いて表情を曇らせた。

 

「ここは一種の労働施設なんですよ。私みてぇな失敗者や罪人達を働かせて、ローマ正教が受けた損失分を支払うため、のね」

「なるほど。ここ監獄ってわけか。ま、それはそっちの問題で、俺達が関わる事じゃない。で、俺達は早くここを出たいんだけど。せめて小舟を貸してくれないか? 出ないと、俺達また何をしでかすか分からないぜ?」

 

半分以上は脅しに近いが、早くここから出た方がいい。

俺の仕事は当麻とオルソラを無事に脱出させることだ。

 

「そ・こ・で、交換条、件……と、と言うのはどうでしょうか?」

 

アニェーゼは、三度悪戯っ子スマイルを浮かべかけて、すぐに引っ込めて真顔で言った。

 

「交換条件?」

「今この船には、シスター・ルチアとアンジェレネが囚われています。その2人を助けてここから連れ出してほしいんです」

「ルチアとアンジェレネが?」

 

あの2人は、直接戦った相手だからよく覚えている。

なんでもここにはアニェーゼ隊全員が労働者として働かされていて、あの2人は一度ここから脱獄して、アニェーゼ達を再度助けに来ようとして捕まったというのだ。

ここを脱獄した時の術式は今ならまだ有効のはずだから、それを使って脱出しろという話だ。

 

「アニェーゼも一緒に逃げようぜ」

「いいえ、私は残ります。今この女王艦隊は大仕事の準備で手薄になっています。私が旗艦に行くので、貴方達が動きやすくなるように隙も作れますし。それに、案外居心地いいんですよ、ここ」

 

アニェーゼは、労働者の反乱防止の為にここにいるようなのもので、その為に船内の自由行動など結構な好待遇らしい。

慕っている上司をそういう待遇にする事で反乱防止にするのは、実は学園都市でも使われる手だ。

だが、それでも何か引っかかる。

 

「あの2人がやろうとした事は空回りなんですよ」

 

2人共、馬鹿なんですよ。とポツリとつぶやくアニェーゼに違和感があったが、当麻も俺も何も言わなかった。

 

「分かったよ。でも、多勢に無勢ってなったら助ける余裕なんかなくなるぞ」

「それ、以前250人のシスター相手にケンカを売った男のセリフですか?」

 

アニェーゼの皮肉が籠った言葉に、思わず笑みを浮かべた。

一応、敵として俺達の実力は認めているようだ。

アニェーゼは、座り込んでいる当麻に向けて手を差し出した。

握手、ではなく、立って、シスタールチアとアンジェレネを助けに行け、というサインだろう。

 

「っと、ありがとう」

 

当麻は、()()でアニェーゼの手を掴もうとした。

それを見て、俺はすごく嫌な予感がした。

 

「あ、当麻待て!」

「えっ?」

 

一足遅く、当麻の右手がアニェーゼの手ごと袖口に触れた途端。

 

――キィン

 

アニェーゼの修道服の縫い目が壊れて、バラバラに落ちて行った。

 

「あら」

 

それを見てオルソラが頬に手を当てた。

 

「その露出の多い修道服は全体が魔術的な拘束を与える為の特殊な装飾でございましたか」

 

つまり、魔術で編まれた特殊な囚人服という事か。

なるほど、だったら当麻が右手で触れたらバラバラになるな。

あ、以前インデックスが安全ピンで修道服を留めていた事に、触れないでと言ったのはこういう事があったからか、なるほどなるほど。

と、呑気に考えつつ、俺は高速でアニェーゼに背を向けた。

 

「えっ……キャッ」

「「シーーッ!」」

 

背後では、すっぽんぽんになったアニェーゼが悲鳴をあげようとして、当麻とオルソラが全力で止めようとしていた。

 

「当麻……」

「あ、いや、ユウキさ、うごっ!?」

 

俺はまだ背を向けつつ、当麻に向けて蹴りを放った。

全く、どうしてこんな状況でそんなラッキースケベが起こせるのやら。

 

 

続く

 




沖田オルタがほしい!!
あ、ノッブ派ですけどね。
でも、あの巨にゅ……いや、全体宝具もちのアルターエゴが欲しかったんですよ(ォイ

さて、早く幻想郷に戻ってユウキにもラッキースケベを起こさねば(笑)
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