7月下旬は暑さで死にそうでした……
加えて今月はスカスカ様が召喚できず、財布が死にましたΩ\ζ°)チーン
どれくらい意識を失っていただろう?
数分? それとも数秒?
体が水の中から引き揚げられた感覚がして、飛び起きた。
「ぷはぁっ!」
いつもの癖で、とっさに警戒態勢をとってしまったが、目の前にいたのは当麻達を引き上げた五和達だった
「……五和、それに建宮斎字か、まさかお前まで来てるとはな」
「あっ、はい。五和です。皆さんよくご無事でしたね」
「おう、久しぶりって言うほどでもないけどな」
今いるのは、樹で出来た船の中だ。
中には五和のほかに、天草式がたくさん乗っている。
オルソラの引っ越しを手伝っていた連中以外の天草式も来たみたいだ。
インデックスも同乗していて、引き揚げられた当麻に寄り添っている。
「とにかくありがとな。当麻がいるなら、オルソラも無事か? ルチアとアンジェレネは助けれたけど、さすがに3人は抱えられなかったからな」
水没する寸前、咄嗟に両手でルチアとアンジェレネを抱えたが、少し離れていたオルソラにまでは手が回らなかった。
ルチアとアンジェレネはもう目を覚ましていて、寝転がったままだがオルソラや天草式と話をしていた。
あの時一緒に放り出されたローマ正教達も拘束はされたままだが、他の天草式が救助したようだ。
「礼には及ばんのよ。こっちもお前さんが渡してくれた発信機のおかげで救助が楽になったからな」
「はい、これ。お返ししますね」
五和が差し出したのは、女王艦隊に連れ去れる前にインデックスに投げ渡した受信機だ。
これは、俺と当麻の体内にある発信機の位置情報を3D表示したり、正確な距離まで表示できる優れものだ。
別に操作自体は難しくない。それに五和にはこの受信機の使い方は説明してある。
だから、インデックスが彼女にこれを五和に渡せば、天草式が助けに来ると確信していた。
ちなみに、俺と当麻のキャリーケースなどの荷物は天草式が回収してくれたようだ。
「しかし、魔術サイドの俺らが言うのもなんだが。学園都市の技術をホイホイこっちに手渡して良かったのか?」
「これは学園都市で作ったものだが、別に技術自体は大したものじゃないからな」
確かに受信機も発信機も学園都市の技術が使われているが、そこまで進んだ技術じゃないからどうとでもなる。
武器はともかく、こういう道具はそういう風に作られている。
そうでなければ海外に行くのに持ち出し許可が出るわけない。
「で、ここは、船。木製の潜水艦って所か?」
「ま、簡単に言えばそういうものなのよ。最も、そこまで高性能なものじゃないのよさ。われら天草式が得意とするのは、海戦よ」
「なるほど。紙から木を、そしてそれらを集めてって所か。似たような技術はこっち側にもあるけど、魔術もぶっ飛んでるな」
上下艦というらしい船を幻想支配で視てみると、女王艦隊を視た時と同じような感じがする。
その時、アンジェレネ達を看ていた天草式の1人がこちらにかけよってきた。
「教皇代理。やはりだめでした。彼女達の拘束服の効果は、我々には解除出来ません」
「そっか。そいつは困ったな」
「それはあれか。アンジェレネとルチアの拘束効果を解くってやつか? インデックスでもダメか?」
それを聞いたインデックスは、難しい顔をして首を横に振った。
「私じゃ時間がかかるからダメだね。早く破壊しないと、女王艦隊から距離が離れたら別の効果が現れると思う。それにゆうきの機械のと一緒で発信機みたいになってるかも」
「そっか。俺の幻想支配でも無理だったしな」
最初に2人の服を視た時に何か方法はないかと俺なりに探ったが、やはり魔術をかけた本人を視ないと俺にはどうにもならない。
「仕方ない、のよな。幸い少年はまだ眠ったままだし……」
そう言って斎字は下品な笑みを浮かべて、まだ気絶している当麻、の右手とアンジェレネ達を交互に見た。
ま、それしかないな。
「はいはい、男どもは全員あっちで向こう向いてるように。覗いたら承知しないわよ?」
対馬という名の女性の指示の元、俺達は船の端っこで壁を向いて立たされた。
反対側では気絶したままの当麻の周りに暗幕が張られ、アンジェレネや五和達がいる。
すごく不機嫌なインデックスとそれを宥めるオルソラも一緒だ。
「手っ取り早くアンジェレネ達の拘束を解く方法。当麻の幻想殺しで破壊するしかない。でもそれをすると彼女達が素っ裸になる。ってわけだな」
「やけに詳しいのよな。まさしくその通りなのよ」
「あー女王艦隊の中でアニェーゼに同じような事したし。インデックスも昔同じような目に合ったらしいぞ」
「なるほどなるほど。それで彼女はあんなにどす黒いオーラを……って少年、既に我らと合流する前に大人の階段を登っていたとは。流石は我らが女教皇様が見初められた御仁なのよな」
「……ツッコミはしないからな?」
程なくして、アンジェレネ達は無事に解放され、インデックスとおそろいの安全ピンだからけの修道服に着替えた。
上下艦を用意している天草式も、さすがにローマ正教の修道服は用意していなかった。
そんな中、当麻が目覚めて、軽く状況説明をしていると、イライラが頂点に達し痺れを切らしたインデックスが当麻に噛みついた。
そして、追いかけまわされた当麻が五和を押し倒し、なぜかアンジェレネがルチアのスカートを捲ったり、と中々にカオスだった。
俺はというと、騒ぎに巻き込まれたくはないから、海の向こうに佇む女王艦隊を眺めていたので何も見ていなかった。
ま、いつもの事だな。
それから俺達は一度態勢を立て直すため、キオッジオの海岸へと戻ってきた。
そして、天草式が手際よく準備をして、バーベーキューパーティーが始まった。
「ま、今は奴らも厳戒態勢なのよな。そんな中に無策で飛び込んでも何の解決にもならん。積もる話も、まずはおなかをふくらませてからなのよ」
「お腹が空いては戦はできぬ、ってやつだね。日本っていい諺あるよね、とうま!」
「お前はただ何でもいいから食べたいだけだろ……」
天草式が用意した料理の数々は、オルソラ程とまではいかなくても、そこら辺のレストランよりはとても美味しかった。
アンジェレネがチョコドリンクを所望したり、それをルチアが咎めたりと、彼女達の日常の一幕も垣間見れる事ができた。
そんな中で情報整理と作戦会議が始まった。
まずは俺達と一緒に拾い上げたローマ正教達を、やさしく尋問したのだが、アンジェレネ達同様詳しい事は知らされていなかった。
仕方ないので俺達は、女王艦隊に囚われてからアニェーゼに出会い、聞かされた話をした。
ルチアとアンジェレネも改めて、ローマ正教内での自分達の置かれた状況を説明した。
それらを説明し終えて、インデックスに意見を求めた。
「アドリア海の女王、って言うのはね。ヴェネツィアを破壊する為だけの術式なの。破壊と言っても、物理的な破壊だけじゃなく、ヴェネツィアから離れていた人や物品、更にはヴェネツィアに由来する文化も歴史も何もかも全部破壊するんだよ」
「それは、とんでもなくえげつないな。こっちでもそこまで出来るものはないぞ」
島を吹き飛ばす程度ならいくらかありそうだけど。
「でもね。逆に、ヴェネツィアに対してしか使用出来ないんだよ。対ヴェネツィアにのみ特化した大規模魔術なの」
「じゃあ、あいつらなんでそんなものを使って何する気なんだ?」
「問題はそこなのよな」
当麻の疑問を斎字が続けた。
「昔ならいざ知らず、今はローマ正教にとっても重要拠点であるはずのヴェネツィアを徹底的に破壊する利点がまるでない。それどころかローマ正教にすら打撃が来るほどなのよ」
魔術サイドに詳しくない俺でもわかる。
今のヴェネツィアはイタリアにとって重要な観光地であり、ローマ正教にとっても貴重な資金源のはずだ。
しかし、そこで俺はトンデモナク嫌な予感がした。
アドリア海の女王の効果は、物理的な破壊にとどまらず、文化や歴史にすら破壊するほどのトンデモナイ代物。
これをもし……学園都市に向けて使われたら?
「ところで、一つ聞きたい事があるんだけど? 話に出てきた 【刻限のロザリオ】 って何?」
それを聞いて、俺達は顔を見合わせた。
インデックスは、単語自体を初めて聞いたような口調だった。
10万3000冊の魔導書を頭に収めていて、知らない魔術はないというほどのインデックスが、聞いた事もない……だと?
「えっと、刻限のロザリオというのは、アドリア海の女王を発動させるために必要な術式、なのですが……」
俺達のおかしな様子に、不安な表情を浮かべたルチアが改めてインデックスに説明したのだが。
「それって変かも。私の10万3000冊の中に、そんな記述はないんだよ」
「「なんだって!?」」
それを聞いて、改めて俺達は、魔術に疎い当麻ですら驚愕の表情を浮かべた。
インデックスの中に、アドリア海の女王はあるのに、刻限のロザリオはない。
「一体どういう事なのでしょうか。私達が聞かされていたのは間違いだったのでしょうか」
「そうとは思えないのですが、では、シスター・アニェーゼは一体何のために」
アンジェレネとルチアも困惑の表情を浮かべ、斎字やインデックスも深く考え込んだ。
だが、答えは出てこない。
「なぁ、1つ聞きたいんだが、アドリア海の女王のさ、矛先を変える手段はないのか?」
「矛先を変える? それは……あくまでヴェネツィアに対しての術式だから……まさか!?」
「まさか……その為の 【刻限のロザリオ】!?」
インデックスと斎字は俺と考えが浮かんだようだ。
魔術サイドのエキスパート2人が俺と同じ結論に達したということは、この仮説間違いはないようだな。
「一体、何がどういう事なんだよ。刻限のロザリオがどうかしたのか?」
ルチア達もハッとした顔をして、1人分かっていないようなのは当麻だけだ。
「つまり、刻限のロザリオを使えば、アドリア海の女王を学園都市に向けて使えるって事だ。それがどういう結末を招くかは、わかるよな?」
「アドリア海の女王は、物理的な破壊も勿論、文化や歴史……っておい、それって!」
「そう。あいつらは学園都市にアドリア海の女王を使う事で、科学サイドを一気に破壊するつもりだ」
驕るわけじゃないが、今世界の科学の中心は間違いなく学園都市だ。
その学園都市が由来の文化も歴史も何もかもを破壊されれば、世界中の科学が破壊されてしまう。
「ば、バカげてるだろそんなの!」
「使徒十字の件を忘れたか、アレは精神的、思想的な破壊。こっちは物理的な破壊。どっちも科学の破壊だ」
「そんな……」
重い沈黙が流れた。
そんな中、アンジェレネは泣きそうな顔で、ポツリと呟くように話し始めた。
「……シスター・アニェーゼはきっと何も知らないと思います。知っていれば、絶対に黙っているはずがありません! いくらなんでも、何の罪もない一般人を大量に殺すなんて、そんな……」
「私も同意見です。それに、科学側相手とはいえ、そんなイカれた無差別大量破壊の為に、彼女を見殺しになんかできません!」
ルチアによれば、今回指揮しているのは、ビアージオ=ブゾーニ。
話を聞くと、中々にぶっ飛んだ、タカ派と言ったくそったれ野郎って所か。
「要はその魔術が発動する前に、アニェーゼ=サンクティスを助け出せばいいわけだが。これがとんでもなく難問なのよな」
斎字が冷たく突き放すように言い、アンジェレネとルチアが言い返している中、俺は頭の中で戦術をくみ上げていった。
使える道具は皆無。増援も武器もなし。乗り込むだけで死が隣り合わせ。
でも、やらなければ学園都市どころか世界の半分は破壊される。
加えて時間もなし。
さて、何をどう使うかな。
「なぁ、建宮。もう良いんじゃねぇか?」
「ん?」
当麻がいきなり、斎字とアンジェレネ達の口論を遮った。
「俺達が議論すべきなのは、アニェーゼを助けたいか助けたくないか。学園都市や科学がっていうのも大事だけど、それよりもっと根本的なのは、アニェーゼの命が失われるか失われないか、それだけなんじゃないか?」
当麻の言葉に目を丸くする。
こいつは、世界が滅びるって話を聞いても、アニェーゼを助けるかどうか、それを考えていた。
それは、御坂妹を助ける為に一方通行に戦いを挑んだあの時と、オルソラを助ける為に大勢のアニェーゼ隊を相手にした時と、全く同じだった。
「ぷっ、ははっ、あはははははっ!!」
思わず心の底から笑いが込み上げてきた。
「ゆ、ゆうき? どうしたの、かな?」
いきなり笑い出した俺をインデックスが驚いた顔をして、オルソラも口に手を当てて呆然としていた。
ま、当然の反応だよな。
「おい、建宮斎字、それに天草式十字凄教、ついでにアンジェレネとルチアもよーく聞け。これが上条当麻だ。どんな不利で絶望的な状況だろうと、助ける相手がいるなら、助けたい人がいるなら、なりふり構わず無茶をする学園都市最強の大馬鹿野郎だ、覚えておけ!」
インデックスは、仕方ないね。とに呆れた表情を浮かべ、オルソラも、全くです。と笑顔で同意した。
最初はポカーンとした斎字も、急に声をあげて大笑いした。
「ぷっ、あははははっ! 確かに、これは学戦都市最強、恐れ入ったなのよな! ったくこれじゃ俺が悪者みたいなのよな! こちとら最初からアニェーゼ=サンクティスを助ける算段も覚悟も既にあるのよ。お前達にそれを問うつもりだったんだが、その必要は皆無だったわけだ!」
どうやら、斎字は最初から俺達に、死をも辞さない覚悟を求めていたみたいだ。
でも、それも当麻に先を越されてしまったというわけだ。
「いいか我らが戦場に向かうからには、必ず生きて帰る。我らが女教皇様から得た教えは!」
「「「救われぬ者に救いの手を!」」」
これで、覚悟が決まった。
後は乗り込んで敵をぶっ潰して、アニェーゼを救うだけだ。
待ってろ、アニェーゼ。
お前が望まなくても、必ず俺達が救い出す!
そのついでに、世界も救ってやるさ!
続く
さて、長かった……というか執筆が長かったイタリア編もあと2、3話です。
これを過ぎれば幻想郷でのイチャイチャ日常、主にうどんげ編です(笑)
霊夢とのイベントが浮かばないんですよねー
紅魔郷組と文、アリス、映姫、もこたんはそれぞれ浮かんでいるのに……