幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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書いてるうちに長くなったんでここら辺で一度と上げました。



第13話 「悪魔の妹と星の魔法使い」

私、霧雨魔理沙がアイツの事を知ったのはほんの数日前。朝早く起きて、キノコ採取を終え、朝食も食べ終わったので暇つぶしに博麗神社へとやってきた時の事。

いつのもように霊夢がお茶を飲んでいたが、いつもとは様子が違い、何か不機嫌そうにしていた。

 

「よぉ、霊夢。おっはーだぜ♪」

「おはよ……ってなんなのよ、そのへんてこりんな挨拶は」

「香霖から聞いた外の世界で流行った朝の挨拶だ。幻想郷でも流行らせないか?」

 

霊夢は興味ないとばかりにお茶をすする。すると、後ろから声がかかってきた。

 

「寺子屋ではおーはー、が先に流行っているがな。おはよう、霊夢、魔理沙。霊夢、これは昨日の御礼だ。梨奈の両親から預かったよ」

 

声をかけてきたのは、上白沢慧音だった。手には少し大きい風呂敷を持っていて霊夢に渡した。

 

「おはよう。この御礼は確かに受け取ったわ。で、寺子屋ではそんなのが流行っているの?」

「おっはー、慧音。教育者として正しい挨拶を教えるべきじゃないのか?」

 

礼儀作法には割と厳しい慧音だったが、私の指摘に苦笑いを浮かべた。

 

「勿論、ちゃんとした挨拶をしなさいとは教えているさ。けれども明るくなる挨拶もたまには、な?」

「おーおー、頭の固い慧音がそんな事を言うなんて、今日は槍でも降ってくるんじゃないか?」

「弾幕なら神社と人里以外でならよく降っているけどね。で、魔理沙はともかく、あなたがこんな時間に何の用?」

 

確かに。慧音は人里の相談事などで来る事はあるが、こんな早くに神社に来るのは珍しい。

 

「実は昨日の外来人である、ユウキ君だったか。彼に用事があってな。日中ではどこかに出かけてしまうんじゃないかと思ったんだ。彼はまだ寝ているのかい?」

 

ユウキ? 外来人か? 聞き慣れない名前に首をかしげると、霊夢はさっきよりも不機嫌そうな顔をして、奥から一枚の紙を持ってきた。

 

「ユウキさんなら、もういないわよ」

 

霊夢が持ってきた紙を慧音と読む。それはユウキという人物が霊夢に宛てた置き手紙で、もう彼がここにはいない事が分かった。

 

「……そうか、彼はもういないのか」

 

心底残念そうな顔をする慧音。何か大事な用事でもあったのだろうか?

 

「そのユウキってのは、外来人だろ? なんで慧音が用あるんだ?」

「実は昨日、彼が人里の子で私の教え子を妖怪から助けてくれたんだ。それで、その子の親が彼に御礼がしたいからぜひ招待して欲しいと頼まれてね」

「ふーん、妖怪から助けたって、その外来人強いのか!?」

 

外来人は私もたまに見るけど、どいつもこいつも貧弱で妖怪の格好の餌になる奴ばっかりだ。

 

「強いわよ。多分……」

「なぁ、霊夢。さっきからなんでそんなに不機嫌なんだ? ひょっとしてユウキってのがいなくなったからか?」

「………私にだって分からないわよ」

 

霊夢の不機嫌で不満そうな顔に慧音と二人で顔を見合わせる。霊夢とはそれなりに長い付き合いだが、賽銭箱に何もなくてもここまでの顔はしないはずだけどな。

 

「……ユウキさんなら、多分人里に向かうと思うわよ。昨日行ってみるかとか呟いていたし」

「そうか、なら今から向かえば途中で見つかるかもな」

「なぁ、霊夢。お前その外来人と何かあったのか? なんか普通な対応じゃないぜ?」

 

霊夢はさん付けなのも珍しい。外来人には例え年上にもさん付けしないのに。

 

「私もそれは気になった。霊夢、彼の事を聞かせてくれないか」

 

そこで霊夢は何かを考える仕草をして、私と慧音をちらちら見て、いずれ分かる事よね。と小さく呟いたのが聞こえた。

 

「いいわ。多分、2人共これから彼と関わって行きそうな予感するしね。まずはこれ見て」

 

と霊夢が鴉天狗の文が発行した新聞、文々。新聞を私達に見せた。

そこには外来人の記事が書かれていたが……

 

「なんだ、この新聞? 謎とばっかり書かれていて、肝心のユウキの情報が少ししか書かれていないじゃないか! 年は16、霊夢や魔理沙よりも少し上か、戦闘経験豊富で外の世界では……戦争も経験してるだと!?」

「うぇ? そりゃ妖怪相手でも対処出来るはずだな。しかし、経歴がなかなか物騒だ。外の世界ってそこまで物騒だっけ?」

 

確か外の世界は物騒な所もあるけど、そこまでじゃなかったと思うな。香霖堂で外の世界の本よく読むけど。

 

「……ユウキさんはね、外の世界は外の世界でも異世界から来たのよ」

 

そうぽつりと呟いた霊夢の表情は少し、ほんの少しだけ、寂しそうに見えた。

でもすぐにいつもの表情に戻りユウキの事を話し始めた。それは、彼は結界の外にある世界ではなく、全くの異世界から幻想郷に流れついた事。

そして、元いた世界から忘れられ、捨てられた事。もう、ユウキのいた世界に彼の居場所はない。

 

「そ、それは本当なのか?」

「本当よ。まぁ、信じられない気持ちは分かるけどね。紫が昨日調べたし、私も結界を見てみたけどそれしかないわ。ちなみにこの事は文も知っている。だからこんな書き方したのかもしれないわね。問題は、ユウキさん自身がそれを受け入れた事よ。幻想郷の事も、妖怪の事も、自分が元の世界に帰れない事も全部あっさりとね」

 

それは、変だ。誰だって元の世界からこんな所に来たら混乱したりするだろうし。元の世界に帰りたいと思うはずなのに。

 

「私が言える彼の全てよ。これ以上は彼から聞いて、私だって色々聞きたい事あったのに肝心の本人がいないんじゃ分からないわ」

 

なるほど、それが霊夢の機嫌が悪かった……のか? ま、いいか。

 

「ではその事には触れないでおこう。魔理沙も不用意な発言はしないようにな」

「あぁ……ってなんで私に言うんだ!?」

「知らないよりも知らせて黙らせた方が、魔理沙にはいいでしょうね」

「霊夢まで!?」

 

いくら私でもそんな人の心をえぐる鬼畜じゃないぜ。

その後、少し話をして慧音は人里に戻り私は霊夢のせんべいを食べつつまったりと過ごした。

 

 

そして、その次の日幻想郷を紅い霧が覆い尽くして私と霊夢は原因と思われる吸血鬼の住む館、紅魔館へと向かった。

正直、まだあそこには近寄った事もないから興味津々でわくわくしていた。

道中でルーミアやチルノを難なくおっぱらって、紅魔館の門番には少し手こずったけど突破。

紅魔館に突入したけど、そこでパチュリー・ノーレッジという魔女と十六夜咲夜というメイド長の罠にはまって、2人揃って迷路の中に迷い込んでしまった。

その中で、霊夢とはぐれパチュリーと弾幕ごっこでどうにか勝って、紅魔館にある図書館を案内してもらったんだが。

突然ドカーンッという轟音と共に図書館が揺れた。霊夢が異変の元凶であるレミリア・スカーレットと弾幕ごっこ始めたのかと思ったけど、音は図書館の更に下から聞こえてきた。

 

「これは……まさか、妹様!?」

 

音に驚いたパチュリーが図書館の奥へと向かい、私もそれに続く。そこには厳重に封印された鋼鉄の扉があった。

 

「おい、妹様って誰の事だよ?」

「レミィの妹、フランドール・スカーレットの事よ、彼女の能力は結構危険なの、だから彼女は自分から地下にいるんだけど、今日はやけに興奮してるわね……まさか!?」

「ん? どうしたんだ?」

 

パチュリーが扉に手をかざし魔法で中の様子を窺っていると、驚いた顔をして声をあげた。

 

「そんな! 地下に妹様以外誰かいるわ、これは人間? どうして、ここを通る以外道はないのに!」

 

確かに、扉の向こうここよりかなり下から力を2つ感じる。これでも探査魔法も使えるんだぜ。

とこうしている間も爆音と震動は続く。外では霊夢とレミリアが激しく弾幕ごっこしてるのも見えるし、ここは私の出番か?

 

「とにかく、このままじゃ館が崩壊しちゃうわ、止めないと……っ!? ゲホゲホッ!」

「パチュリー様! もうこれ以上はダメです。ずっと魔法を使いっぱなしじゃないですか」

 

慌ててパチュリーが使役する小悪魔がやってきた。パチュリーは喘息持ちで、あまり体が強くないようだ。

 

「なんだか分からないけど、ここは私に任せてもらおうか」

「げほっ、はぁ……はぁ、ま、待ちなさい。今の妹様は危険よ。一緒にいる人間だってすぐに死んじゃうわよ」

「あいにく、それを聞いて見知らぬふり出来るほど、私はまだ人間捨ててはいないぜ」

 

それに私にはフランと一緒にいる人間に心当たりがあった。

なぜかは知らないけど、私の勘が告げているのだから間違いない。今地下にいる人間は外来人のユウキだ。

 

「それじゃ、ちょっと行ってくるからパチュリーは休んでな」

「待ちなさい、魔理沙!」

 

言うが早いか私は箒に跨り、鉄のドアをミニ八卦炉で吹き飛ばし、下に続く階段を飛んで行った。

 

「ん? なんだ? この気配……チルノか?」

 

人間とフランの力を辿って長い階段を下りて行く途中、私は人間の気配が変わった事に気付いた。

それは道中、湖の淵で出会った氷精チルノの力を感じる。

 

「どういう事だ? お、ここか……ってなんじゃこりゃ」

 

爆音のする部屋に近付いたが、そこら中の床や壁に穴が空き崩れ落ちていた。

弾幕ごっこでここまで破壊される事はあまり考えられない。

こっそりと瓦礫の影から部屋の中を覗き見て、私は絶句した。

 

「さぁ……続ケヨウカ?」

「うん、いいよ……踊ロウヨ、オ兄チャン♪」

 

少年と幼女が対峙していた。あの少年がユウキで、幼女がフランか。とてつもない妖力をフランから感じ、そのせいで部屋の中は異界と化しているようだった。

 

「あいつ、様子がおかしいな」

 

ユウキの様子がおかしい。チルノの力を感じるのもそうだけど、それ以上に全身から殺気と怒りを感じる。

何をしにここに来たのか知らないけど、間違いなくフランを殺しにかかっている。

 

「うぷっ、この妖力、いや狂気か? 人間にはキツいぜ。これのせいであいつもおかしくなっているのか?」

 

魔法使いである私は耐性があるからいいけど、ただの人間?であるユウキには影響があるようだな。

2人共狂ったように拳と爪を叩きつけ合っている。見ているこっちが痛々しくなるほどに。

 

「それにしてもなんでユウキはあんなにフランを……いや、待てよ。あの眼は」

 

ユウキの緑色の瞳には怒りと殺気と、ほんの少し羨望が見て取れた。フランを羨ましがっているかのようだ。

 

「フランもフランで興奮状態か、このままじゃどっちか死ななきゃ止まらないな」

 

弾幕ごっこでそれは見たくないな。そもそもあいつら弾幕ごっこを思いっきり間違っている。

 

「こりゃ、私がしっかりと教えないとな」

 

箒に跨り、部屋に入ろうとしたその時、ユウキの氷を纏った蹴りがフランの顔面を直撃した。

 

「おいおい、今のは流石に死んじゃったんじゃないか? ん? ユウキの様子がまたおかしいな。どうしたんだ?」

 

全身から力が抜けたかのようにその場に倒れ込み、殺気や怒りと共に同時にチルノの力も感じなくなった。

ユウキは、それから辺りを見渡すと顔を真っ青にしてフランが蹴り飛ばされた方へ駆け寄って行った。

 

「やっぱりフランの妖力にあてられていたのか、ならアイツ何しにここにいるんだ? 異変解決にきたのかな」

 

と、その時だった。フランが埋もれていた瓦礫が吹き飛び、ユウキが吹き飛ばされてしまった。

こっちにも吹き飛んだ瓦礫が飛んできて、慌てて身を隠してやりすごす。

瓦礫はユウキの体を激しく打ちのめしたらしく、全身が傷だらけになり特に左腕が酷く、骨折しているようだった。

フランはあれほどの蹴りを受けても全く応えていないようで、ピンピンしている。

そして、さっきまでよりさらに狂気に満ちた笑みを浮かべ、倒れ込んで動けないユウキにトドメを刺そうとしていた。

 

「はぁ、仕方ない。助けてやるか、ちょっと興味も沸いたし。まずはフランのスペルカードをどうにかしないとな」

 

 

 

 

突然の乱入者、霧雨魔理沙と言う魔法少女に助けられた。

意識がぼやけて行く中、箒に乗った彼女は俺の側に降りて左手を見ている。

 

「あちゃ、こりゃ完全に折れてるな。それにヒドイ傷だ」

「これくらい、慣れている。それより魔理沙だったな? ありがとう、もう大丈夫だ」

 

左腕が折れているが、それ以外は動く。ふらふらと立ち上がろうとした俺の肩を魔理沙が押さえ、また座らされた。

 

「動くなっての。少し前から見てたけど、お前フランの妖力に宛てられて正気じゃなかったんだぜ? それにそんな身体で何をしようって言うんだ? 私が代わるぜ」

 

そうか、俺は正気を失って……いや、そんなんじゃない。正気は失っていたかもしれないけど、俺は本気でフランに怒りを覚え、殺そうとしたんだ。

 

「さーってと、待たせたなフラン。私が代わりに相手だ」

「あはは~いいよ、魔理沙は簡単に壊れないかな?」

「私を壊したかったら、夢想封印1万発は撃ち込んでこないとダメだぜ」

 

ふとフランを見ると、さっきまでの狂気に満ちた笑顔とは違った眩しい笑顔。夢の中で俺を呼んだあの時の笑顔だ。

さっき俺と暴れたせいですっきりしたのか、それとも乱入者の魔理沙が物珍しくてそれで戻ったのかは分からない。

ただ分かるのは、魔理沙は箒に跨り、フランは宝石の羽を広げ、狭くて広い部屋の中で 【弾幕ごっこ】 を始めたと言う事。

 

「俺は……殺し合いしか出来なかった、か」

 

フランを中心にばら撒くように撃たれた弾幕を難なくかわし、魔理沙はお返しとばかりに光線のような色鮮やかな弾幕を放っている。

 

「おいおい。いくら自分の部屋だからって壊しまくると寝る所に困るぜ?」

「魔理沙だって他人の部屋なのに壊して……いない?」

 

魔理沙の弾幕はフランのとは違い、壁や床に当たってもすぐに消えてしまっている。

 

「相手を傷つけるだけじゃなく、魅せあうのが本当の弾幕ごっこだ。で、これが本当のスペルカードだ!」

 

懐から一枚のカードを取り出し、フランに向けて掲げた。

 

「行くぜ 【魔符・スターダストレヴァリエ】」

 

カードが淡く光ると魔理沙の周りに7つの魔法陣が浮かび、そこから星の形をした弾幕が発射された。

弾幕は全部で7色。部屋一面を鮮やかに彩り、さながら流星雨のようだ。

そのあまりの美しさに俺は見惚れていたが、それはフランも同じようで頬を少し染めながら眼を輝かせている。

あの眼はチルノや大ちゃんと似ているな。

 

「わぁ、綺麗綺麗! 魔理沙すごーい!」

 

さっき俺が使った弾幕の反応とは打って変わって今度は、純粋に子供のように喜んでいる。

 

「おーい、見惚れるのは嬉しいけど、かわさないとすぐにピチューンするぞー?」

「わわっと、危ない危ない」

 

眼の前にまで迫っていた弾幕をすらりとかわし、フランは魔理沙の真似をするかのようにカードを取りだした。

 

「今度は私の番だね。行くよ! 【禁忌・カゴメカゴメ】」

 

フランも負けじと魔理沙の周りを囲むような緑の弾幕を放つ。

 

「おぉ、その調子その調子だフラン!」

 

網目状に張られた弾幕の間をすいすいと進みつつ、フランに反撃をしている。

 

「あれが、本物の弾幕ごっこ、か」

 

殺し合う為ではなく、誇りやプライドよりももっと別の物をかけた決闘。

思えば俺は紫に弾幕ごっことスペルカードの事は教えられたが、実際にやった事はなかった。

ルーミアは餌付け、チルノも新しいスペルカードのヒントを教えただけ、美鈴は肉弾戦、レミリアとも問答だけで終わった。

そして……フランとは弾幕ごっことは名ばかりの殺し合い。

 

「……俺、ホント何しに来たんだろうな」

 

フランに誘われ来たのはいいけど、遊ぶと言っても殺し合いになってしまった。

今魔理沙がフランの相手をしてくれているけど、そっちの方がフランの為になるだろう。

現に俺と戦っている時よりも数倍楽しそうだ、狂っている様子もない。

 

「それは当然の事だけどな。俺は……何もしていない。もうここでも俺は必要ないな……無責任で悪いな、魔理沙」

 

何かをしに来て、結局は他人任せになる。思ってみれば元いた世界でも同じような事ばかりしている気がする。

 

「だから……俺はずっと独り、だったんだよな」

 

――お前は誰かに手を差し伸べる事はしても、誰かに手を差し伸べられた事はあるのか?

 

「あの時アイツに言われて気付くんだもんな。んなもん、最初からないに決まってるのに……だから俺はここ、にいる……」

 

自虐的な笑みを浮かべ、楽しそうに弾幕ごっこに興じるフランを見上げた。

 

「あぁ……手を差し伸べてくれる相手がいるお前が、羨ましいよ。フラン」

 

そこで俺は意識を手放した。

 

 

つづく

 




フラン戦は色々パターン考えてまして、よーやく決まりました。
他のパターンだとユウキが無双しすぎちゃうんで(汗)
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