幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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新年あけましておめでとうございます。
今年最初の更新です。
花映塚編&文花帖編スタートです!


花映塚&文花帖編
第151回 「取材開始」


そろそろ夏も終わりが見えてきた頃、いつものように朝目が覚め境内の掃除をしようと外へ出たのだが。

 

「なんじゃこりゃー!?」

 

目の前に広がる信じられない光景に、思わず叫んでしまった。

摩訶不思議な事には慣れていたつもりだったが、流石に今回のようなファンシーな光景は始めてだ。

 

「博麗神社が、花に埋もれている」

 

博麗神社の周りが花に囲まれているくらいなら、まだ、分かる。

人里の花屋さんや、幽香に花の種沢山もらって育ててたからな。

でも、これは囲まれているどころじゃなかった。

文字通り、花に埋もれている。

住居も、鳥居も、本殿も何もかもに花が咲き乱れている。

観賞用の花の事はよく知らないけど、咲いている花は桜やタンポポ、チューリップ、鈴蘭、その他諸々季節感がまるでなく、色も形も多種多様すぎて綺麗だとは思えない。

昨日寝る時には何もなかったのだがら、この一晩で博麗神社は花まみれになったのか。

 

「ちょっと、なんなのよこれー!?」

 

霊夢が叫び声をあげながら部屋から出てきた。

 

「おはよう霊夢」

「おはようユウキさん、じゃなくって! これは一体どういう事なのよ! なんでうちの神社が花だらけになってるわけ!?」

「うーん、これはもう 『花麗神社』 に改名するしかないな」

「そこじゃないわよ!」

 

朝からテンション高いなー

 

「博花神社の方がいいかな?」

「だから、そこじゃないわよ! これは立派な異変よ!」

 

霊夢は空へと飛びあがり辺りを見渡した。

 

「ほら、見て!」

 

霊夢の力で空へと上がって辺りを見渡すと、確かに森や紅魔館や人里付近、幻想郷中が色々な花で埋め尽くされていた。

けど、ここから見る限り紅魔館の建物自体には花が咲いていないように見える。

博麗神社だけが敷地も建物も花で埋め尽くされている気がする。

あとで様子見に行くか。

 

「あ、これがそうなんだ。なるほどね、うん」

 

おや、霊夢が何か1人で納得したような顔をしている。

ひょっとしてこの異変に覚えてでもあるのかな。

 

「心配しないでユウキさん。これは異変は異変でも、今までと違って比較的安全な異変よ」

「異変に安全ってあるものなのか?」

「先に朝食にしましょ。その後、教えてあげるわ」

 

そう言うとなぜか得意げな顔をした霊夢は神社へと戻って行った。

 

 

朝食を終えると、霊夢は今回の異変について教えてくれた。

それによると、60年に1度の頻度で外の世界から大量の幽霊が三途の川へと流れてくる。

その量は渡しの死神のキャパシティーを超えていて、渡しきれない幽霊が一時的に幻想郷の花に取り付いて溢れ出す。

でも、時間が経てば死神が幽霊たちを彼岸へ運んでいくので、花も正常な数に戻って行くようだ

 

「つまり、これは自然に起きる異変で、黒幕はいなくて文字通り時間が解決してくれる異変って事よ」

「なるほど。だからいつもに比べて危険な感じがしなかったわけか」

 

今までの異変は、この前の月の異変以外は何かしら危機感というか嫌な感じがしていたからな。

 

「というわけで、ユウキさんがこの異変を解決する必要は、いっっっさいないの! 分かった!?」

「お、おう」

 

やっぱり今日の霊夢はハイテンションで少し変だ。

異変で興奮するのは妖精だけじゃなかったっけ。

 

「分かればよろしい。じゃ、私は見回り行ってくるから留守番よろしくね」

「見回り? 別に危険な異変じゃないのにか?」

「別に異変自体は自然と解決するものでも、それに便乗して妖精や妖怪達が何かしでかさないように見回るのよ。あ、言っておくけどこれも特に緊急性とかはないんだからユウキさんが関わることじゃないからね!」

 

霊夢が何に対して釘を刺しているのかいまいちわからない。

異変解決の邪魔をするつもりはないんだけどな。

 

「相変わらず霊夢さんはユウキさんの事になると超が付くほど心配性になりますねぇ」

「まぁ、それでこそ霊夢だろ」

 

と、そこへ空か声が聞こえてきて、文と魔理沙がやってきた。

 

「おはよう、文、魔理沙。今日は早いな。悪いけど、もう朝食は終わったぞ?」

「えっ、それは残念……いえいえっ、そんなユウキさんの手料理をご馳走になりにきたわけじゃないですよ」

「私も同じくだぜ。今回の異変について霊夢なら何か知ってると思ってな」

 

文はともかく魔理沙は異変解決に動き出したようだ。

 

「異変と言ってもいつもの異変じゃないわよ。ユウキさんにもちょうどその話をしていた所だし」

 

そう言って霊夢は俺にしたのと同じ説明を魔理沙に行った。

魔理沙は感心して聞いていたが、文は少し訝しんだ表情を浮かべている。

 

「へぇ~そんな自然に起きる異変ってのがあるんだな。私は知らかなかったぜ。流石は博麗の巫女、物知りだな」

「これくらい知っていて当然の事よ」

 

魔理沙の誉め言葉をさらりと流した霊夢だったが、声色が若干弾んでいた。ちょっと動揺している気がする。

 

「そうですねぇ~流石は霊夢さん。いつぞやの時の事を教訓にして色々お勉強なさったようで」

「なっ! どういう意味よ文」

「春以来何度も稗田家の所でお勉強しているようですし」

 

文がニヤニヤしながらそう言うと、霊夢の顔がみるみる真っ赤になって行った。

 

「べ、別にいいでしょ。私にだって知らない事沢山あるからそれを勉強するのがどこが悪いのよ!?」

「いえいえ、悪いとは言いませんし思ってもいませんよ。ただ博麗の巫女としての自覚がますます強くなってるなーと天狗仲間の間でも感心していた所なんですよ。まぁ、博麗の巫女としての使命感3割、残り7割はまた違った理由からでしょうけどねぇ」

「ほほぉーそれはそれは」

 

ニヤニヤが止まらない文と、それを聞いて魔理沙も何か分かったようで同じくニヤニヤと暖かい目で霊夢を見ている。

で、なぜか俺が霊夢に睨まれた。

 

「なぜ俺を睨むのか分からないけど、阿求の所で勉強してるのは前から知ってるしな。俺が慧音から阿求を紹介された時も霊夢いたしな」

「……ぁ、そうだったぁ」

 

俺がそう言うと霊夢が俯きながら小声で呟いた。

やっぱり今日の霊夢は朝からおかしいな。

これも異変の影響かな。

 

「ところで、異変の話をしていたのなら今から早速調査に行くところだったのか?」

「調査と言うか見回りよ。ちょっと気になる事も……あ、なんでもないわなんでもない。ユウキさんは気にせず留守番していてね」

 

誤魔化し方が下手すぎる。

それにしても、霊夢も今回の異変で気になることがあるようだ。

俺も気になる事はあるけど、どうやら霊夢も同じ事思っていたみたいだし。

ここまで気を回してくれてるならそっちは霊夢に任せよう。

 

「ほほう。ユウキさんは異変の見回りにはいかない、ですか。でしたら好都合ですねぇ。霊夢さん、ちょっとこちらに」

「何よ? えっ、ちょっと?」

 

そう言って文は霊夢を連れて、境内の裏へと行ってしまった。

 

「なんなんだ文の奴」

「さあな。文は最初からユウキに用があるみたいだったけど、心当たりは? まぁ、文の事だからただ単に遊びに来ただけかもしれないけどな」

「それを言うなら魔理沙もいつも大抵用事なしに来るだろ」

 

というか、紅魔館組や大ちゃん達、みんな大抵用事なしに遊びに来るし。

 

「ははっ、まぁな。でも、今日はなんだかウキウキだったぜ?」

「ウキウキ、になる理由までは分からないけど。仕事の依頼なら受けてたから多分それだろ」

「へぇ、文からの依頼なんて珍しいな。どんな事依頼されたんだ?」

「近々天狗の間で新聞大会が開かれるからそれの取材の手伝いをしてほしいってさ。詳しい内容は取材当日にって事だったんだよな。だから今日がそうなんじゃないか?」

「なるほど。お、戻ってきたぜ」

 

魔理沙の言うように、文と霊夢が戻ってきた。

文は相変わらず笑顔のままだが、霊夢はどこか納得いかないような表情を浮かべている。

 

「ユウキさん、話はつきました。以前お話した取材のお手伝いですが、今からお願いできますか? あ、霊夢さんの許可は取ってあります」

「あーやっぱりか。それにしても、なんで霊夢の許可を取ったんだ? まぁ、文の手伝いを近々するとは言ってあったけど」

「それがまさか今日、異変の真っ最中に行うなんて思わなかったのよ。でも、文から詳しい事聞いたし、ここで留守番させておくよりは安全だろうから、私は許可したの。あとはユウキさんの判断に任せるわ」

 

うーん、元から文から依頼来たら霊夢に外出する話をして取材するつもりだったから、この流れはおかしくないけど、どこか釈然としないな。

 

「あははっ、まるで霊夢がユウキの保護者みたいだな」

「ま、俺は居候の身だから間違ってはいないけどな」

「それはそれで私が納得できないのだけど。まあいいわ、魔理沙も異変の見回りに行く? それとも、ユウキさんに付いていく? 私は後者の方が……あー、魔理沙がいたら余計に拗れそうな気がするから私と一緒に見回りね」

「おぃ! それは一体どういう意味だよ。ったく、ま、でも私は最初から異変の事で霊夢に誘いに来たんだし。それにユウキと文に付いて行って馬に蹴られる趣味はないからなぁ」

「魔理沙、余計な事言わない!」

「どわっ!? じょ、冗談なんだぜ~!」

「待ちなさい! あ、ユウキさん、くれぐれも無理はしないように。文、ユウキさんに何かあったら夢想封印10発は覚悟なさい!」

 

逃げる魔理沙を追いかけるように霊夢はそのまま飛び去って行った。

 

「は~い。霊夢さんも魔理沙さんもお気を付けて~♪」

「馬に蹴られるって……そういえば、幻想郷に馬っているのかな」

 

牛や豚、鶏は見かけるけど、馬はいたっけかな。

魔理沙が馬を知ってるって事は馬はいるんだな、多分。

 

「魔理沙さんの言った事全く理解できてないんですねぇ。哀しいようなホッとしたような、複雑です」

「そんな事よりも、結局取材の手伝いってなんなんだ? まぁ、なんとなーく予感は出来るけど」

 

文は、言った。もうすぐその時期が来る、と。

つまり、文は一定の周期で訪れるこの花が咲き乱れる異変がもうすぐ起きる事を知っていて、その異変を取材の題材にするつもりだった。

で、俺が手伝えることは、異変の解決の取材、でもあれ? この異変は自然に終わるから解決も何もない。

それは文も知っているはず。なら、俺は一体何をするんだ?

 

「ふっふっふっ、実はですね。ユウキさんはこれから幻想郷中の各地をまわって、みなさんと弾幕ごっこをしてもらいます!」

「微妙に違うけど、俺が予想していたとおりだったか」

「ただ単に弾幕ごっこしてもらうだけじゃもったいないんで、せっかくだから花の異変の時に行えば絵面もよくなるじゃないですか」

 

危険性はないとはいえ、異変を利用するとはそこまでして新聞大会で優勝したかったのか。

 

「で、条件は2つ。幻想支配で使うのは私の力のみ。相手の力をコピーしたり能力停止は禁止。どうでしょうかー?」

「どうでしょうかって言われてもな。文の力は何度も視てるから慣れてるし、飛行速度は抜群だから回避に専念するだけで済みそうなのもいるか」

 

避けまくるより弾幕で応戦した方が写真写りはよくなりそうだけど。

 

「そこらへんは全てお任せします。私はただユウキさんと皆さんの弾幕ごっこを写真に収めたいだけですから。あ、美鈴さんや妖夢さんみたいな相手にはナイフや体術使った接近戦も行ってくださいね。勿論私の力を使ってください。そっちも絵になりますから」

「ん、分かった。それにしても、霊夢がよく許可したな」

 

弾幕ごっこするのはともかく、体術や剣術を使った模擬戦にはあまりいい顔しないのに。

 

「まーそこは、私の交渉術でうまく丸め込んだと思っていただければ」

「隠す気も誤魔化す気もなく丸め込んだってストレートに言いやがった」

「それはもう。ユウキさんに対して嘘や誤魔化しは萃香さん並みに通用しないって分かってますから」

「鬼と一緒にされるのはどうなんだろ」

 

嘘や誤魔化しが嫌いなのと見抜けるのは全く違うと思うんだけどな。

 

「まぁまぁ、ともかく早速行きましょう! どこをどう回って誰とやるのかは大体決めてあります。勿論皆さんにアポも取っていますよー」

「そいつはなんとも準備が良い事で」

 

誰とやりあうにしても、結構知り合い増えたから今日1日で終わるのかな。

 

「あ、ちゃんと宿泊場所も決まってますので」

「まさかのお泊り確定!?」

 

ホントよく霊夢が許可したな……なんで俺は霊夢がこういうの許可しないと思ったんだろ?

ま、いっか。

 

「それで最初はどこから回るんだ?」

「最初はですね、迷いの竹林になります。ささっ、レッツゴーですよー!」

 

こうして俺は文の力を使い、幻想郷中のみんなと弾幕ごっこをすることになった。

文の力しか使えないけど、ちょうどいいから幻想支配が幻想郷にどこまで馴染んできたか確かめるにはいい機会だな。

 

 

続く

 




今回の異変は花映塚ですが、文花帖の話も加えてになります。
文花帖としてのストーリーは新聞大会と文の取材紀行って所だけですけど。
次回からは弾幕ごっこが始まりますが、弾幕ごっこや格闘戦だけとは限らない?

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