幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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第154回 「EXステージ:神様取材」

人里

 

俺と文は永遠亭に行く前に、少し遅めの昼食のために人里へと寄った。

昼食をとるのは、いつもの蕎麦屋だ。

人里には意外と食べ物屋が多いけど、なんとなくここが馴染みになってしまったな。

 

「あら、ユウキ君いらっしゃい。今日は天狗様とデートかい?」

「今日は、ってなんだよ。今日はって」

 

またこの流れか。

 

「あ、大丈夫です。私も全部分かっていますから。霊夢さんやレミリアさん達だけではなく閻魔様まで一緒に食事したのには驚きましたけど」

 

今更だけど、人里での俺のプライベートが筒抜けすぎな気がする。

 

「ところで、この前ユウキさんと来た時よりメニュー増えてませんか?」

 

確かに最近ここのメニュー、特にデザートが増えている気がする。

 

「あぁ、それはちょっと前にきた子から外の世界のお菓子を教わって作り始めたんだよ」

 

外の世界から最近やってきた子、ひょっとして早苗かな?

 

「なるほど、早苗さんでしたか……」

 

文も同じように思ったらしいが、その表情は険しい。

 

「どうした文? ひょっとして、早苗の事で何かあったか?」

 

妖怪の山にいきなり幻想入りした一件は、確か天狗たちは様子見の方向で解決したはずだ。

 

「えっ? いや、そういうわけではないですよ。なんだかんだ早苗さんとはお話する事多いですからね。他の天狗たちもあらかた容認してます」

「なら問題ないだろ。何そんな険しい表情を浮かべているんだ?」

「いえいえ、どちらかと言うとあなたの事ですよ、ユウキさん。随分と早苗さんと仲良く話をされているとよく聞きまして。そこらへんはどうなのかなーと」

 

どうって、どう答えればいいんだ?

 

「私だって早苗さんに色々話を聞きたいと何度も神社に行きましたけど、大体霊夢さんやあなたの事ばっかりで肝心の早苗さんや神様の話を聞けずじまいなんですよねー?」

 

早苗はよく博麗神社に遊びに来る。

霊夢も最初はちょっとめんどくさそうにしていたけど、純粋に自分に憧れを抱く早苗を邪険に出来ずなんだかんだ仲が良い。

俺も人里で会って食事に誘われてここに来る事も多い。

って、そういえば俺も霊夢も守谷神社の神様に会った事ないな。

 

「ひょっとして守谷神社の神様ってまだ会った事ないのか?」

「そうです! それもあります! 大天狗様はお会いした事あるみたいですけど、私はなぜか毎回他の用事だったりで会った事も見た事すらないんです! そうこうしているうちに大天狗様からは天狗や河童達は接触は控えろと言われて、取材が出来なくなりました!」

 

人里から妖怪の山の守谷神社へ行く道は、基本的に天狗たちが参拝客を陰から守護するという形になった。

神様を下手に刺激すれば山全体の大問題に発展しかねないそうだ。

それほど守谷神社の神様は力が強いらしい。

 

「だったら向こうから本人が来たなら問題ないだろ? ほら」

「えっ?」

 

ちょうど蕎麦屋の入口で早苗と見た事ない紫の髪をした女性が入ってくるのが見えた。

多分、あの女性が神様なんだろうな。

早苗が神奈子様と呼んでるし、うまく隠しているみたいだけど、今まで視た事がない力を感じる。

 

「あ、ユウキさぁ~ん!」

 

早苗は大声をあげて俺の方へ手を振ってるけど、そこまで店内は広いわけじゃないのですごく目立ってしまった。

でも、他のお客さんは特に気にする様子はない。

 

「皆さん慣れっこなようですねー」

 

文はすぐ横にいる自分の名前が呼ばれなかったのが不満なようだ。

 

「よぅ、早苗。ちょっとぶり」

「はい。お久しぶりですね! 今日は文さんがご一緒なんですね! 文さんもお久しぶりです!」

 

今日も早苗はハイテンションで元気いっぱいだ。

 

「こんにちは。私の事なんて目に入ってないかと思ってましたよ」

「はい。全く目に留まっていませんでした!」

「あ、あややや~……」

 

ものすごい笑顔でハッキリ言っちゃったよ。

 

「こら、早苗! そんなにハッキリ言うんじゃないよ。天狗殿に失礼でしょ。と言うか私の事もほったらかしかい?」

「あわわっ、ごめんなさい、神奈子様! コホン。ユウキさんに紹介しますね、こちらが守谷神社の神様であられる八坂神奈子様です。神奈子様、こちらがユウキさんです」

「初めまして、八坂神奈子様。俺はユウキです。博麗神社の、居候です。よろしくお願いします」

 

俺が自己紹介すると、神奈子は俺の顔をジーっとみつめてきた。

紫のようにこっちを警戒してるわけじゃなく、品定めをされているようだ。

でも、永琳のように俺の事を観察するように見ている感じで不快感はない。

 

「うんうん、君がユウキ君ねぇ。早苗から色々とよーく聞いてるよ。耳にタコができるくらいね」

 

そういう神奈子の表情は心なしかうんざりしてるように見える。

色々苦労してきたんだろうな。

 

「で、そっちの天狗殿は射命丸文、だよね?」

「はい! ご挨拶が遅れました。射命丸文と申します」

 

文はいつもの取材口調とも違う、畏まった言葉遣いだ。

流石に神様相手ではそうなるか。

 

「君の事は恵来(えこ)から聞かされているよ。どうやらお邪魔だったみたいだね」

 

と、ここで意味深な視線を俺に向けてきた。

別にただ雑談してただけだし、作戦会議みたいな事はしてないので問題ない、はず。

ちなみに、恵来と言うのは文の上司で天狗たちの取り纏めをしている大天狗の名前だそうだ。

 

「い、いえいえ」

「ちょうどよかった。ユウキ君の知り合いなら相席お願いしてもいいかい? ちょっと混み始めちゃってねぇ」

「早苗が良ければ、俺は構わないですよ。文もいいだろ?」

「えっ? そうですねぇ…」

 

文の方は色々と考え込んでいるようだ。

 

「ほら、今なら相席のついでに取材しても問題ないだろ」

「う~ん、そうですね。相席を頼まれたら仕方ありませんよね、あはははは!」

 

と言うわけで、俺の隣に早苗が座り、向かい合う文の隣に神奈子が座った。

 

「では、早速ですが八坂神奈子様。色々とお聞きしたい事があるのですが」

「ん? あぁ、天狗社会も大変だね。いいよ、恵来には私から言っておくから。大体、私はいつでも誰でも取材いいよと言ったのに彼女が変に気を遣ってくれたんだよねぇ」

 

豪快に笑う神奈子につられて、文は苦笑いを浮かべた。

後で聞いた話だけど、大天狗の恵来を名前で呼ぶ者はほとんどいなく、なぜか気が合って親友と化した神奈子くらいだとの事。

 

「神奈子様ったら幻想郷に来てから久方ぶりに直に敬わられてテンションが上がりまくってるですよ」

 

外の世界じゃ、神社への参拝客が減り誰かに敬わられる事もなくなり信仰が減って、神奈子が存在が消滅しかけた。

けど、幻想郷に来て人里での早苗の布教活動の成果もあって、人間だけじゃなく山の妖怪の一部からも信仰心が集まってきたそうだ。

 

「でも、その割には神奈子がこの店に来た時は特にそういう反応はなかったな」

「そうなのよ、ユウキ君! この人里での信仰心は集まってるんだけど、もっとこう昔ながらの信仰の仕方ってものがいまいちなのよね」

「昔ながらの信仰?」

「有難みって言えば分かるかね。道行く人が拝み倒していく、そういうのがここにはないのよ。ま、私以外にも沢山神様いるみたいだから見慣れているのかもしれないけどね」

「つまり、神奈子はもてはやされたいのか?」

「うーん、そういうのとも違う、のかねぇ……ところで、ユウキ君、うちに婿に来ないかい? 早苗も君の事気に入ってるようだし」

「「ぶーっ!?」」

 

何かいきなり飛んでもない話をされた。

文も早苗も思いっきりお茶を吹き出してる。

俺はと言うと突拍子もない話に目をパチクリさせた。

 

「か、神奈子様!? いきなり何を言いだすんですか!? 勧誘するにしても言い方ってものがあるじゃないですか!」

「そうですよ! 今この場に霊夢さんいたら夢想封印どころか、夢想天生されますよ!?」

「あー博麗の巫女ってのはそこまで野蛮なのかい。で、どうだいユウキ君?」

「どうだいって言われても、ハッキリ言うと俺は神様がどういうってのに興味ないし。無神論者とまではいわないけどさ」

 

学園都市にいた頃から、宗教には興味がない。

これは別に俺が木原で、科学者の端くれだったから信じていないと言うわけじゃない。

神の力の一部を借り受けたり、本物の天使の偶像が現れたりとか色々目にしてきたから信じていないわけじゃない

神がどうこうって言ってる輩にはロクなのがいなかったし。

 

「それは残念。ま、冗談だけどね。博麗神社に喧嘩売るつもりもないし。無理やり引き入れても信仰がないんじゃ意味ないしね」

 

どうやら神奈子流の冗談だったようだ。

 

「や、やだなぁ神奈子様。冗談にも程がありますよ」

「そうですよ。危うく心臓が止まりかけました。いや、ホント、マジで……」

 

文の顔色がさっきから二転三転してて面白いな。

 

「それにしても、まさか神様と分かっててもこうも気さくに話出来る人間がいるなんて。大胆不敵と言うか豪胆と言うか、そういう意味でも君には興味湧くねぇ」

 

神奈子がニヤリと悪巧みしてそうな笑みを浮かべた。

言われてみれば、ずっと神奈子って呼び捨てにしてたな。

神様相手には不敬すぎたか。

 

「これは大変失礼いたしました八坂神奈子様」

「「「………」」」

 

あれ? どうして3人とも固まるんだ?

 

「うん、君の言いやすい言葉でいいよ。別に悪口言われてるわけでもないしね」

 

なんだ? 敬う気持ち籠めて丁寧な言葉使ったのに、神奈子がげんなりした表情を浮かべたぞ。

この表情、前に紅魔館で執事をやった時のレミリア達と同じ表情だ。

 

「……ユウキさんはやっぱりそのままが一番ですよ、はい」

「え、えぇ」

 

文どころか早苗までも微妙な表情を浮かべている。

やっぱり変なのか。

俺だってここのおばちゃんや梨奈の両親とか、敬語で話す事多いと言うのにこんな反応されたことない。

 

「いえ、変だとは言いませんよ? ですが、その……」

「普段とのギャップが激しすぎて、正直似合ってないですね」

 

早苗に真顔で言われてしまった。

 

「いや、ほら、皆素の君が一番だって言ってるだけだしね。変に気を遣われるよりは私も話しやすいから、ね?」

 

神様に慰められるって初めての経験だ。

何とも言えない空気が流れる。

こういう場合、俺はなんて返事をすればいいのか。

 

「あーららダメだよ文ちゃんに早苗ちゃん、普段から色々してやられてるからってユウキ君イジメちゃ。ほら、ユウキ君もこれ食べて元気だしな。サービスしておいたからさ」

 

そこへ琴葉さんが頼んだ料理を運んできてくれた。

俺はただのざるそばを頼んだのに、普段より大盛でおまけに天ぷらまで付いていた。

 

「ははっ、ありがとう琴葉さん」

「とりあえず、食べようか」

「そうですね」

 

その後、何事もなかったかのように食事をしながら歓談を終えて俺達は別れた。

俺達は永遠亭を目指して、迷いの竹林へと向かった。

 

「で、良かったのか文?」

「えっ? 何がですか?」

「神奈子への取材、ろくに出来なかっただろ」

 

結局、神奈子への取材はうやむやになり、早苗の天然な所を神奈子がぶっちゃけて、早苗がその度に否定していくと言う流れだった。

 

「あー、いいですよ。本人から何時でも神社に来ていいとお墨付き頂けましたし。はたて達にもそう伝えてくれと言われた程ですからね」

 

これまでよりは守谷神社には天狗たちは行くやすくなるって事か。

 

「思ったよりは気さくな神様だったな」

「そうですねぇ。私も思い描いていたイメージとのギャップが凄いかったですよ」

「ひょっとして幻想郷の他の神様もあんな感じか?」

「うーん、考えてみれば結構気さくな神様多いですね、秋姉妹とか。ま、ユウキさんならいずれ神様以外にも色々な種族に出会うと思いますよ」

 

さらりと文の口から出た秋姉妹とは、思っていたよりも早く出会う事になるのだった。

 

 

一方、永遠亭では……

 

「遅い! あいつったら遅すぎるわ!」

「鈴仙ちゃんったら朝から同じこと何十回言ってるのさ。ゆーちゃん達来るのは午後だって御師匠様も言ってたでしょ。あ、そうだ。そんなにイライラしてるなら息抜きにさ……」

 

とある兎の悪巧み。

 

 

続く

 




おかしいなぁ、永遠亭にまだ着かない(笑)
次回はやっと永遠亭に着きます。
けど、訪問予定のまだ1か所目、終わるのに何話かかるやら~
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