フラン戦決着です!
左手の痛みはほとんどないけど、まだ動かない。フランの魔力で治癒出来ないかと試したが、痛みが引く程度しか効果がないようだ。
まぁ、ハンデにはちょうどいいか。
「私の幻想を支配する? あはは、面白い事言うねお兄ちゃん。私の何が幻想な、の!」
フランが腕を振い、赤い弾幕を撃ちだしてきた。
俺はその動きを真似て腕を振い、同じ色で同じ数の弾幕を放ち相殺する。
「あれ!? それフランの弾幕だよね? なんでお兄ちゃんが?」
「悪い、フランの能力教えてもらったけど、俺の能力は教えてなかったな。俺の能力は幻想支配、相手の能力を支配する力……と、言っても自分でもあまり良く分かってないんだけど。言葉より実際に使った方が分かりやすいか」
そう言って手近にあった大きめの瓦礫を見る。この世界の能力を使うのは、学園都市の能力者の力を使う時と似ている。
必要なのは演算でも動作でもない。空気をするかのように、何も考えずに手足を動かすかのように自然に使う事。
右手にさっきフランが出した目玉のような物体が現れた。見た目気色悪いが、後はこれを……
「ぎゅっとして、どっかーん! だっけか?」
握りつぶす。
「ええぇ~!?」
粉みじんに破壊された瓦礫を見ながら、フランが驚きの声をあげた。当然か、自分と同じ能力をそのまま使われたんだからな。
それにしても、この能力実際使ってみて分かったけど……
「すごく嫌な気分になるな」
「えっ?」
「ただの瓦礫を破壊しただけ、今までも電撃やら火炎やら何やらで色々破壊してきたけど。それでも、気持ち悪い。嫌悪感とも言うかな?」
「………」
自分の手の中の物体を握りつぶせば何であろうと破壊される。この感覚は嫌いだ。
美琴や絹旗達の能力で壁やらビルやら破壊した事もあったし、直接自分の手で人を殺した事もある。
けれどもこの感覚は、今まで感じた事ない程嫌なものだ。
「気が狂いそうになるのも分かるな。それに……ん?」
この気配は……なるほど、そう言う事か。
「それに、何?」
「いや、なんでもない。さぁ、続けようか、今度は俺の番だ 【禁忌・レーヴァテイン】」
右手に炎を纏った棒が現れる。正直、さっき見て俺も使ってみたいと思っていたスペルカードだ。
「スペルカードまで!? だったら、こっちは……【禁忌・フォーオブアカインド】」
フランが4人に分身し俺を囲む。幻影などの幻で分身する能力者はいたが、これは違う。本当にフランが4人に増えた。
「さらに~私も 【禁忌・レーヴァテイン】」
「いぃ!? それはありかよ!?」
4人に増えたフラン全員の右手にレーヴァテインが現れた。スペルカードの重ねがけ、確かに慧音から聞いた事はあるがこういう事を言うのか。
「ってかさっき俺と戦った時に使ったんじゃ?」
「「「「お兄ちゃんコンテニューしたから無効だよ♪」」」」
「ええぃ、サラウンドで喋るな!」
フランの声が変に耳に残ってしまう。
「「「「あっはは~いっくよ~♪」」」」
4人のフランが一斉にレーヴァテインを振りかざし、俺へと迫る。
どうする? 俺もスペルカードで分身するか?
「……いや、その必要はないな」
「えっ?」
分身のうち2人がレーヴァテインを振り、衝撃波と弾幕を放ってくる。
地面を転がるようにそれらをかわすと、左右から同時に残りの2人が斬りかかってきた。
「「もらったぁ!」」
「甘い」
2人に斬られる寸前、地面を蹴り宙へと舞う。
「流石はフランの力。チルノは勿論、慧音よりも速く飛べる。それっ!」
ポカーンとこちらを見上げる床の2人に向けて、レーヴァテインを2回振り沢山の弾幕をばら撒く。
「わわわっ!?」
「ちょっ、多いよ~!」
当てないようにばら撒いたんだからじっとしてればいいのに、2人はあたふたと逃げ回るので何発か掠った。
「まだ私達が」
「いるよー!」
今度はさっきまで少し離れて弾幕を撃っていた2人が、左右から斬りかかってきた。
左から来たフランをかわし、右の攻撃をレーヴァテインで受け止める。
これで左手が使えれば反撃しやすいが動かない物は仕方ない、それにフラン相手なら問題ない。
でも流石に吸血鬼の身体能力で振られたレーヴァテインを、同じレーヴァテインでとは言え右手一本で受け止めるのはキツイ、少し痺れた。
「すごいすごい!」
「すごいのはこれから、だ!」
受け止めていた右手の力を抜く。すると力を籠めていたフランはバランスを崩し前のめりになった。
すかさずフランから離れ、レーヴァテインから弾幕を放つ。
「わぷっ!?」
かわしきれなかったフランが、弾幕を何発か浴びる。
追撃を放とうとしたが、残りの3人のフランがこちらに向かってきたので距離を取った。
「せっかく4人に分身したんだから、一斉にかかってきなよ」
安い挑発だったが、フランには効果はばっちり。
「む~、いっくよ~!」
「「「それ~!」」」
地面に降りた俺に向かって、今度は4人一斉に斬りかかってきた。
4人同時に相手にするなら、不慣れな空中より地に足をつけた方が捌きやすい。
身体能力が違いすぎるので一撃一撃がかなり重い斬撃、両手が使えてもまともに受けたくはない。
1人の斬撃をかわすと、すぐに2人目の斬撃が来る。受け止める事は出来なくても、反らす事はできる。
「そおら、よっと!」
右手に力を籠め、2人目の杖を横から狙っていた3人目へと叩くように弾く。
「きゃっ! な、何するの!?」
「わっ、ごめーん!」
狙い通り同士討ちの形になった。背後に気配を感じ、咄嗟に逆手に持ち替えたレーヴァテインを振りかえらずに背中へと突き出す。
「けほっ!?」
こちらに突進してきた4人目に、カウンターでうまい具合に突き刺さったらしく分身は消えた。
普段なら後ろ蹴りや裏拳をする所だが、弾幕ごっこなのでスペルカードのレーヴァテインで攻撃したけど、思いっきり物理攻撃だよなこれ。
1人やられた事で驚いた残りのフランが集まった。
「あ、ナンバー4がやられちゃったよ!」
「同じ力で同じスペルカード使ってるのに、こっちの攻撃全然当たらない!」
「なんだか私よりうまくレーヴァテイン使っている気がするよ」
さっきからフランの攻撃が俺に届かない事に驚いているようだが、それは当然。
同じ力を使っていても、俺にはフランにないものがある。
「悪いな。俺は昔から色々鍛えられたから、こういう武器の扱いはなれてるんだよ」
学園都市で昔から、棒や日本刀やナイフなどの近距離用から、拳銃や機関銃、ランチャーまでの重火器まで沢山仕込まれた。
幻想支配が明確に発現したのは、数年前からだけどそれまではあいつら俺を兵器人間にしたいかのような扱いだったな。
おかげで今こうして役に立っているわけだけど。
ちなみに俺の一番の得意な獲物はナイフや短剣。小回りが利くし格闘戦に組み込めるからだ。
「あ、時間切れだ」
「俺もだ」
2人揃ってスペルカードの効果が切れたようで、レーヴァテインもフランの分身も消えた。
もっと色々楽しみたい所ではあるけれど、この弾幕ごっこを終わらせるか。フランを待ってる人もいるし。
「なぁ、フラン。次で最後にしないか? 俺はフランのスペルカードを迎撃しない、全力でかわす。かわせたら俺の勝ちだ」
「え~もう? うーん、いいよ。フランも今日は沢山遊べて楽しかったから」
正直、幻想支配の限界が近い。これ以上フランの力で弾幕やスペルカードを使うのはまずい。
フランの力は初めて使うタイプだから、前みたく気絶するかもしれない。それまでにケリをつける。
それにしても、これがさっきまで狂気に満ちていたとは思えないな。今のフランは見た目通りの純粋な子供に見える。
気付いているのかは分からないけど、部屋に満ちていた狂気が今はもうほとんどない。フランの力で消し去るつもりだったけど、その必要はなかったようだ。
ありとあらゆるものを破壊する程度の能力、アレの影響か。
「それじゃあ、行くよ」
フランが最後に使うスペルカードはなんだ? フランのスペルカードで俺がこの状況で使うとしたら……
「私の最後のスペルカード……【秘弾・そして誰もいなくなるか?】」
やっぱりこのスペルカードしかない!
自身の姿を消し、四方八方からの無尽蔵な弾幕攻撃。これの攻略法はただ1つ、制限時間まで避ける事。
まず大玉が俺を囲むように現れ、そこから小さな弾幕が放たれる。
空中を飛びまわりながら避ければいいんだろうけど、多分それをしたら俺が先に限界時間を迎える。
「うおおぉぉ~~!!」
ならば、いつものように地面を駆けて避けるしかない。
左手が振れないので、どうもうまく走れないがそれでも走る。
ブラブラと垂れ下がっている左手に、弾が当たらないように気を付け、全力でかける。
目指す場所はない。俺の背後、正確には部屋の入り口目がけて走れば面白い事にはなりそうだけど、後が怖い。
と、ここで弾幕に変化があられた。俺目がけて放たれた弾が、空中で停止したのだ。
設置型弾幕とでも言えばいいのか、背後から迫る弾幕をかわした瞬間、その場に止まった。
避ければそのまま通り抜けると思っていたので、あやうく衝突する所だ。
「流石に難易度高いな!」
ちらりと後ろを振り返れば、弾幕が逃げ道を塞ぐように空中で停止している。
このまま前へと駆けるしかない。それでもいくら広い部屋とは言え、すぐに壁にぶつかるだろう。
スペルカードの効果が切れるまであと少し。だが、俺は確実に部屋の隅へと追いやられていっている。
そこに逃げ道はなく、追いやられた俺は圧倒的物量の弾幕に押しつぶされるだろう。
迎撃しないと言った以上、こっちも弾幕やスペルカードで相殺はしない。ただ逃げるのみ。
「あと、15秒!」
地面を転がり、飛び跳ねながら避けているが、それでもついに壁の四隅へと追いやられた。
後ろを振り返ると、緑や赤、青と言った様々な色をした弾幕が津波のように押し寄せてきている。
「10……9……」
効果が切れる前に俺が被弾するのは確実。その時俺はこの弾幕の配置に欠点がある分かった。
全部避けると宣言した故の弾幕の配置なのだろうが、これでは逆に逃げ場を与えている。
『そもそも弾幕は相手を倒す為だけではなく、いかに相手に魅せ付けるかも重要なんで』
文の言葉を思い出す。回避不可能な弾幕はダメだと慧音も言っていたし、フランもそのルールを分かっていての逃げ場なのかもしれない。
ま、単に当てやすくした結果、こうなったのかもしれないけど。
「5……4……3……ここだ!」
残り3秒で、弾幕の津波へと全速力で駆けだす。
目指すは津波の一か所、そこに人1人通れるかどうかの小さな穴が空いている。
さらにこの津波、壁としての厚さはほとんどない。つまり、あの穴に飛びこめば、容易に通り抜けられる。
「2……1!」
穴に向けてへっとスライディングをすると同時に、弾幕の津波が部屋の四隅へと激突した。
「あ、危なかった」
後少しでも、穴に飛びこむのが遅れれば被弾していたかもしれない。
逆に、早く穴を通り過ぎてもすぐ追撃が来ただろう。
「ようやく、これで」
「うん、フランの負けだね」
床に寝転がった俺の側に立ったフランは、声こそ残念そうだったが顔は笑顔だった。
「今更だけどお兄ちゃん、すごい格好だね」
「……ほんと、今更それ言うかよ」
フランに渡された手鏡で自分の姿を見てみると、外傷もひどいが服もズボンも破れてボロボロだった。
学園都市の化学の粋を集めて作られた最新型の防寒・防弾・衝撃吸収の特殊素材で作られた防寒服。それをよくもここまで傷だらけに出来たものだ。
それにしても、吸血鬼は鏡に映らないんじゃないのか? なんで持っているんだ??
「ねぇ、お兄ちゃん。これからもフランの側でずっと遊んでくれる?」
同じような台詞を少し前にも聞いたが、今度はあの時とは違う。
恥ずかしそうな笑顔で、じっと俺を見ている。さっき聞いた時は狂気と悲哀が混じった瞳だったが、今は拒絶されるかもしれないという怯えと少しの期待が見える。
「フラン、また弾幕ごっこで遊ぶのは構わないよ」
「っ! じゃ、じゃあ!」
「でも、フランの側にずっといる事は出来ない。俺が側にいなくても大丈夫だ」
「な、なんで?」
俺の言葉にフランは瞳を輝かせたが、一転して悲しみと少しの怒りが滲んだ。
「さっきも言ったけど、フランは一人ぼっちじゃない。気付いていないだけで、フランの側にはずっと……」
部屋の崩壊しかけた入り口を指さす。
「家族がいるじゃないか」
そこには呆れた表情でこっちを見ている霊夢と魔理沙。その後ろに隠れるようにレミリアが、その横には咲夜、美鈴とネグリジェのような服を着た紫色の少女がいた。
つづく
次で紅魔郷編終わり……じゃないよ?もうちっとだけ続くんじゃ。