幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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ユウキが幻想入りした理由は、紫が言った事は半分正解、半分ハズレです。


第2話 「世捨てられ人」

博麗神社

 

Side 文

 

あややや~興味深い外来人が来たと思ったら、とんでもない事になりましたね。

 

「それ、本当なの紫?」

 

博麗の巫女も流石に驚いています。

他人の能力を使える事にも驚きましたが、まさか異世界から、それも忘れられての幻想入り。

私の記憶が確かなら、異世界からは幻想郷には来られないはずなんですけどね。

そもそも人間が忘れられて幻想入りする事なんて、滅多にありませんし。

 

「そうよ。物体と違って生きている人間、それは存在するだけで世界に認識されているわ。そして、いかに外の世界の人間に昔ほどの繋がりが薄れたとはいえ、そうそう忘れられるものではないわ」

 

事故か何かで親戚を失った人。他人に嫌われたり、存在感がなく忘れられる人も外にはいる。

けれども幻想入りするには当てはまらない。

例えホームレスになろうとも、道行く人の目に止まればそれだけで認知される事になる。

 

「それでもたまにはいますわ。それでも彼は特例中の特例です」

 

八雲紫も少し困惑した表情を浮かべている。彼女にしては珍しい表情だ。

と、3人で唸り合っていたけど、肝心の外来人を忘れていたわ。

さっきから無言だから、さも傷付いているのかと思ったら……

 

「そうか」

 

とやけにあっさりと納得した。

 

「いや、あの……なんでそんなに淡泊なの? あなた、混乱してるのかしら? えっと、もう少し分かりやすく言うとね。あなたはあなたのいた世界の皆から、世界そのものから忘れられた、捨てられたのよ? それに、異世界から来たのなら私の能力の範囲外、私でも元の世界に帰せないの」

 

八雲紫は状況を理解させようと必死でユウキさんに説明していますが、それでも彼の表情は変わりませんね。

 

「俺は自分の状況理解してるから大丈夫だ。それより、文だったよな?」

「は、はい! 清く正しい射命丸文です! 何のご用でしょうか?」

 

いきなり名前を呼ばれて思わず敬礼までしちゃったわ。全く鬼が相手じゃあるまいし……

 

「さっきの取材の続き、しなくていいのか? 俺は何回も取材受けるの嫌だから今回だけにしたいんだが」

「あっ、えっ? 取材?」

 

本当にこの人は何を考えているのだろう?

霊夢さんも流石に呆れてるし、スキマ妖怪に至っては少し脱力してるわね。

 

「はぁ……なんだか疲れましたので、てっとり早く終わらせましょう。まずはユウキさんの言う能力や学園都市について御伺しますね」

 

こうして、私はユウキさんから色々な事を聞き出せた。

なんでもユウキさんがいたのは、学園都市という人口の大半が学生で、しかもそのうちの半分近くが何かしら超能力を持っているなんていうとんでもない世界でした。

超能力と言っても1人につき、1つしか能力を持っておらず、火を出せる能力者は水を出す事も飛ぶ事も出来ないとか。

幻想郷にも大抵の力ある人や妖怪は能力がありますけど、それとは別物みたいですね。

で、更に能力者も強さに応じたレベルわけがされていて、最高はレベル5、最低は能力を持たないもしくはとてつもなく弱いレベル0。

でもレベル0と言っても解析不能な能力を、レベル0と認定する場合もある。

ユウキさんはそのレベル0。なぜかと聞いたが、ユウキさんの能力である幻想支配は原理も何もかもが不明な力で解析不能だからだそうだ。

学園都市最高の能力者は全部で7人、そのうち6人の能力を聞く事も出来た。

ベクトルを操って地球の自転から人体の生体解析までなんでもこなせる一方通行(アクセラレーター)

未知の物質を生み出し世界の常識を外れた現象を起こしたり、応用性の高い未元物質(ダークマター)

 

「とんでもない所ですね、学園都市って」

「学園都市の外にもとんでもない連中が大勢いるけどな」

 

彼のいうとんでもない連中、それは魔術師と呼ばれていて、学園都市を【科学】として、その正反対に位置する【魔術】

幻想郷にも少数ながら、魔法使いがいるけどそれと似たようなものらしい。

魔術師が能力者になる事は可能だけど、能力者が魔術師になったり、魔術を使う事は出来ないらしい。

でも、それを可能にするのがユウキさんの幻想支配。

 

「俺も最初は魔術なんて存在知らなかったけど、ちょっとした事件に巻き込まれて初めて魔術を目にした時、使えるようになった。と言っても能力者相手にする時と同様に、魔術師が使う魔術しか使えないけど」

 

なるほど、チートに見える幻想支配にも色々制約があるようですね。

とはいえ、見ただけで霊夢さんの力を使えるのは妖怪にとって脅威にもなりますね……待てよ?

 

「それじゃ私や八雲紫の能力も使える。って事ですか!?」

 

私の疑問を霊夢さん達も抱いていたようで、ユウキさんに視線が集中します。

対するユウキさんはじっと私や八雲紫を見つめました……なんだか少し照れてきますね。

 

「……駄目だ。霊夢には使えるけど、2人にはまだ使えないみたいだ」

「そうですか……って『まだ』とは?」

「初めて魔術を見た時もそうだったけど、どうやら初めてみる形態の力は最初は全然使えなくて、徐々に馴らしていくと使えるようになるみたいだな」

 

霊夢さんの霊力を初めて見た時、すぐに倒れてしまったのは身体が慣れていない力を使ったから、だそうです。

 

「末恐ろしい能力ね。妖怪に慣れてしまえば、私の力すら使えるようになるとは……」

「天使の力を支配したこともあったなー……死にかけた事あったけど」

 

天使……どうやらユウキさんの世界にも、妖怪に負けず劣らずのトンデモナイ存在がいっぱいいるみたいですね。だから、私を見て人間じゃないと気付き、妖怪と言われても驚かなかったんですか。

妖怪としては、人間に驚かれないと言うのは少し複雑ですね。

 

「それじゃあユウキ君のこれからの事ですが……明日にした方がよさそうですわね」

 

ユウキさんがさっきからウツラウツラとしている。眠いと言うよりは霊夢さんの力を使った後遺症みたいなもの、と本人は言っています。

 

「そうね。色々あって私も少し頭を整理したいし。ユウキさん、今日は泊っていいわよ。私には別の布団あるし」

「いや、女の子の家に男一人泊るわけにはいかないぞ?」

「別に私は気にしないわよ? 襲われたら叩きのめせばいいんだし。それにさっき助けてもらったお礼も一応兼ねてるし」

 

初めてユウキさんに困惑の表情が浮かびましたね。意外と初心なんでしょうか? さっきから驚かされっぱなしなんで、こういう方向で攻めて見るのも面白そうですね。

 

「それを言うなら俺の方だろ。しまった……悪い、言うの遅れたけど。森で助けてくれてありがとう、霊夢、文」

「あやややや、私は別に見てただけなので、御礼は霊夢さんだけに言って下さいまし」

「私はこれが仕事だし。見捨てても目覚めが悪いからそうしただけよ、それこそ気にしなくていいわ」

 

私達のやりとりを八雲紫は面白そうに眺めている。それにしても彼女があまり口を出してこないのが珍しい。

 

「さて、ブン屋さん。少し話があるのだけど、2人きりでね」

 

と思ったけどこのまますまないらしい。けれども話の内容はおおよそ想像が付くわね。

 

 

神社の外にでて、中にいるユウキさんに聞かれないような場所まで来て、八雲紫はゆっくりと口を開けた。

 

「言われなくても分かっているとは思うけど……彼の事、彼のいた世界の事」

「分かってますよ。明日の新聞に彼の事を書く時は、ここに来た原因はぼかしますし、学園都市や能力に関しては書きません」

「あら、珍しい事もあるわね、明日は隕石の雨でも降るのかしら?」

「失礼な。私だって空気を読む事はあります! 彼の能力は危険ですし、妖怪達が変に興味持つのは幻想郷にとってバランスが悪くなる危険がある。ですよね? 彼が幻想入りした理由を書きたくないのは、個人的な理由ですけど」

 

そう、世界に捨てられて幻想郷に来た。これを面白おかしく広めるのは気が進まない。

幻想郷に住む妖怪は、外の世界で幻想となり、存在を忘れられ消滅の危機を回避する為にここにいる。

ユウキさんが幻想入りした理由と変わらない。だから分かる……忘れられる恐怖を。

世界にお前の居場所はないと、突きつけられる理不尽さ、行き場のない怒りと悲しみを。

 

「ホント、明日は隕石どころか太陽が降ってくるでしょうね。と言っても私も同じことを感じましたけれども。世界から居場所がなくなる。ある意味死よりも残酷。ですが、それでも幻想郷は受け入れましょう。彼の孤独も……」

 

たった1人の外来人に私と八雲紫が同情している。確かに他の妖怪が知ったら天地がひっくり返るくらい驚くわね。

はたてや椛が聞いたら、それだけで死にそうなほど驚くかも……自分で言っててなんだか虚しいわ。

 

「それと、彼の能力についてはいずれ色々な形で知る事になるでしょう。ですけど、それを一度に大勢に知られるのは危険。そういう意味で新聞には載せないで欲しいのよ。彼の能力が未知数のうちはね。学園都市に関しても同じような事ですわ」

 

やっぱりこのスキマ妖怪は何を考えているのか分からない。彼自身に関する事には同情しているが、彼の能力に関しては何か思う所があるようだ。何かに利用する気?

 

「それじゃあ、私は失礼するわ。冬眠を叩き起こされて、色々面倒な調査までさせられて眠いったらありゃしない。霊夢には彼の面倒を見てあげてと、ユウキ君にはあまり能力を使わないようにと伝えてくださいな。それでは、おやすみなさい」

 

そう言うと八雲紫はスキマを使って、自分の寝どころへと帰って行った。

 

「ちょっと待って下さい、それはご自身で伝え……て、って行っちゃいましたか。私が伝言役に使われるなんて……しかも、こんな事、霊夢さんに何を言われるやら、とほほ」

 

案の定、八雲紫の伝言を霊夢さんに伝えると、無責任だの、何だのと散々言われました……私のせいじゃないのに。

ユウキさんは話をしている間に眠ってしまったらしく、伝言は明日伝える事にしました。

 

「ではでは、私もこれから帰って急いで新聞を書かなければいけませんので失礼します! また明日ユウキさんに取材にきますねー」

「来なくていいわよ……と言っても来そうだから、せめて何か食べ物とお酒を持参しなさい」

「あははは~……考えておきます。では~さようなら~~」

 

そして、夜もすっかり更けた妖怪の山に帰ってきた私は、早速新聞の作成に取り掛かりましたが、そこでとある失敗に気付きました。

 

「そう言えば、ユウキさん自身については能力以外何も聞けませんでした……私とした事がぁ!」

 

ユウキさんの名字や家族構成、趣味、などなど肝心の人物像には何も触れてません!

 

「仕方ありませんね。新聞には必要最低限だけ書いて、明日早めに御酒と食べ物持って博麗神社に行きますか……」

 

と、私がユウキさんと話して感じた事から性格や人物像を書き、なんとか記事にする事ができました。

 

 

翌日、改めて博麗神社を訪れた私は、ユウキさんがいなくなった事を知りました。

霊夢さんがまだ眠りに付いている早朝に、こんな書置きを残して出て行ってしまったそうです。

 

『 霊夢へ   色々世話になった。昨日幻想郷の事も沢山教えてもらったから、どうにか生きていけそうだ。この礼はここのお金手に入れたら御賽銭箱に入れる事にする。それじゃあ、さようなら。   ユウキ』

 

続く

 

 




紫や文も人間に関して、同情はあまりしなさそうですけどね。
でも、こんな紫や文もアリ! だと俺は思いたいです!(笑)

早く戦闘も書きたいなぁ……と言うわけで次回で入れたいと思います。
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