幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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ちょっと短いですが、宴会後片付け+αです!


第44話 「宴会Ⅵ」

深夜近くにまで及んだ宴会も、ようやく終わった。

今は慧音と藍が残って後片付けを手伝ってくれている。

 

「全く……あいつらったら、たまには片付けをしてくれてもいいのに」

「まぁまぁ、私達が残っているからいいだろう?」

 

散らかった皿など、惨状を見ながら文句を言う霊夢を慧音が慰めた。どうやら、毎回こうらしい。

 

「咲夜くらいは残ると思ったのに、レミリアが酔い潰れて看護の為に一緒に戻ったし!」

「フランが呆れた目をしていたな」

 

フランはレミリア並に飲んだはずだけど全く酔っていなくて、ぐでんぐでんになったチルノや大ちゃんを介抱していた。

吸血鬼も酔い潰れるんだな。覚えておくか。

 

「ユウキ君。君は今日の主役だ。後片付けは私達に任せて、もう休んだらどうだ?」

「私も構わないわよ。明日からはしっかり手伝ってもらうし」

 

藍と霊夢はこう言ってくれたが、久々にお酒を飲んだせいだろうけど眠気が全く来ない。

ま、4日間徹夜した事もあるし。

 

「せっかくだけど、眠気もないし。それに、こういうのは新入りがやる事じゃないか?」

「ふふっ、君は面白いな」

 

そう言って藍は笑った。美鈴のような大人っぽい笑みや、咲夜のようなお淑やかな笑みとは違う、上品な笑みだと思った。

 

「とか言って、本当は藍と一緒に片付けしたかっただけじゃないの?」「? 別にそんな事ないぞ? 男手あった方がいいだろうし」

 

ジト目で霊夢に睨まれた。慧音はそれを見て向こうで笑ってるけど、何だろ?

 

「……ふんっ」

 

なぜか不機嫌になった霊夢は台所に行ってしまった。

 

「あの博麗の巫女がか……うん、君をここに住まわせた紫様の判断は正しかったようだ」

「紫の判断? 何か怪しい事企んでるとか?」

 

式神である藍の前で主人の事を言うのは、おかしな話だけど紫は油断ならない怪しい奴と言う認識は伝えた方がいいだろう。

 

「やれやれ、紫様もすっかり警戒されてしまったか。仕方がない事だが、まだ君には何も手を出していないはずなのだがな」

 

主人を悪く言ったのに藍は諦め顔で溜息をついただけだ。どうやら、紫は怪しいという認識は藍もあるらしい。

 

「同じような空気をする奴、元いた場所で何人も見てきているからな。藍には悪いけど、紫は胡散臭いし」

「ぶっ、あははははっ。胡散臭い、か。確かに。だが、そうはっきりと言う外来人は君が初めてだ。本人にも言ってあげるといい、きっと驚くよ」

 

藍、本当に紫の式神か? 思いっきり肯定してるし。

 

「紫様は確かに胡散臭いが、それでもこの幻想郷を愛しているのは確かだ。そして、霊夢と君の事もかなり気にかけている。それは忘れないでくれ」

「あぁ、それは感謝してる」

 

従者の顔になった藍に、少し照れくさかったが返事をした。

確かに紫は警戒しているが、同じくくらい俺を気にかけている。

なぜかは知らないけど、何かに利用するような感じではないな。

ま、隠しているだけかもしれないけど。

 

「それで、結局藍は何しに来たんだ?」

「何、とは?」

「俺に、何の用があったんだ?」

 

俺と藍の間に冷たい空気が流れた。台所から食器を洗う音だけが聞こえてくる。

霊夢も慧音もこっちにくる気配はない。気付いていて、止めないだけだろうが。

 

「……君は、本当に鋭いのか鈍いのか分からないな」

 

藍はそう言って苦笑いを浮かべた。別に隠す気はなかったのかもしれない。

 

「ただの、観察だよ」

 

そう一言だけ言って、藍は座布団の山を持って奥へと行ってしまった。

俺もそれ以上追及する気はなかった。これはメッセージ。

紫が何を企んでいようとも、利用されるだけで終わるつもりはないという、宣戦布告に近いメッセージだ。

 

 

 

宴会が終わり半刻程過ぎて、やっと後片付けも終わった。

ユウキさんや慧音達のおかげで、思ったより早く済んだわね。

部屋に戻って寝ようと思っていると、離れの縁側にユウキさんが座って月を見上げているのが見えた。

 

「……疲れただろうからゆっくり休みなさいって言ったのに」

 

仕方ない。と私はユウキさんの元へと行った。

なぜこうも気にかかるのか、自分でも分からないけど彼を放っておく事が出来なかった。

それに、どうしても聞いておかなければいけない事もあるし。

 

「ユウキさん、どうしたの? 眠れないの?」

「霊夢こそ、疲れただろうに寝なくて大丈夫か?」

 

近付く私に振り向いたユウキさんの顔、なぜかさっきとはまるっきり違うように見えた。

さっき見たユウキさんは、まるで生気を感じないような顔をしていたように見えたけど、気のせいだったのかしら。

 

「私はこれから寝ようとしてたのよ。で、あなたはどうして?」

「ちょっと、な……」

 

私は彼の横に座り、一緒に月を見上げた。

今夜は満月。明るい星空と月明かりのおかげで、灯りがなくても外は明るかった。

彼は何も言わず、私も何も言わない。

そう言えば、さっきも外で妹紅と一緒にこんな事してなかったかしら?

 

「霊夢、ここの連中はどうしてあんなに気前が良いと言うか、人がいいんだろうな。大体が人じゃないけど」

「一つ忠告しておくわ。連中は妖怪よ。人を襲うし、食べもする。そうする事が存在意義だから」

「それは分かっている。レミリアやフランは人の血で出来たケーキとか食べてたしな。でもなぜかすぐに普通のケーキ食べるようになったけど」

 

あの吸血鬼姉妹がね……別に人里を襲ってなきゃ私も紫も何も言わない。

大抵は外来人が運悪く捕まって餌食になるだけ。

ま、見かけたら助けていたけどね。

でも彼とは皆、割と親切に接しているわね。チルノや大妖精たちは元から無邪気だけど、ミスティアやリグルは警戒心強いはずなのに。

それより何より、文が一番驚いた。彼女だって最初はかなり彼を警戒していた。

でもいつの間にか……あ、あそこまで露骨にアピールするようになったし。

レミリアやフラン達は異変の時に借りが出来て、それから1週間ほど生活する中で色々仲良くなったかもしれないけど。

ちょっと、違和感があるわね。

 

「でも、全員が全員あなたに好意を抱いているわけじゃないのよ。油断してると食われても知らないわよ?」

「それも分かってるさ。紫はまだ俺を警戒してるし、いざとなれば殺す気だろうな。後は、幽香と……魔理沙か」

 

驚いた。紫や幽香はともかく、魔理沙の事まで気付いていたなんて。

霖之助さんは言い渋っていたけど、魔理沙がユウキさんの事で何か言ったのを気にしてたのだと思う。

 

「そ。気付いているのなら聞くけど……魔理沙に何をしたの? あの子にしてはちょっと珍しいわよ?」

 

魔理沙は他の連中同様に最初ユウキさんに興味を抱いていたけど、今は警戒心どころじゃなく完全に敵意を向けている。

 

「うーん、思い当たるのは、数日前に魔理沙が紅魔館の図書館に侵入してきた時の事かな」

 

そう言って、ユウキさんは魔理沙と弾幕ごっこをした時の事を話してくれた。

 

「本当にそれだけ?」

「あぁ、幻想支配で魔理沙の能力を使ったけど、それはパチュリーと魔理沙を助ける時の一瞬だけで、後はパチュリーの力使ったぞ。能力停止も使ってないし」

「なるほどね……」

 

彼の言葉通りなら、魔理沙が敵意を抱いた原因は……お姫様だっこされた事? あの子アレで結構乙女だから……って絶対に違うわね。

なら、残る可能性は1つか。でもこれは私から言う事じゃない気がするわね。

それよりも、ユウキさんが何も感じていないようなのが気になるわ。

魔理沙から嫌われていると言われても、ふーん、とほぼ無反応だし。

 

「意外ね。魔理沙の事、全然気にしてないの?」

「気にするって……何を?」

「敵意を向けられているって事よ。そう言えば、幽香に殺意を向けられても気にしないどころか、それ以上の殺意で返答していたみたいだし」

 

さっきの場面を思い出す。藍が止めていなければ2人の間に割って入ったかもしれない。

それほどに、あの時のユウキさんは冷たく怖いほどだった。

 

「うーん、これ何度も言っているけど、元の世界で戦争を経験したり、外道な奴らと渡り歩いたりしてきたんだ。あの程度の敵意なんて、俺には慣れっこだ」

「そういうものかしら……まぁ、ユウキさんがそう言うならいいわ。ただ、魔理沙以上に幽香には気をつけなさいとだけ言っておくわ」

「ありがとな、霊夢」

 

元の世界……学園都市と呼ばれるユウキさんがいた場所。

そうだ。ユウキさんに聞かなければいけない事があったんだ。

 

「ねぇ、ユウキさん……」

「ん? なんだ?」

 

だけど、面と向かってしまうとどうしても言葉にならない。

これを聞く事がユウキさんにとってどんな意味を持つか、その答えがどんなものか、私には分からない。

でも聞かなければいけない。そんな使命感にも似たものを感じる。

だから……聞く。

 

「ユウキさん……元の世界に帰りたい、なんて思わないの?」

 

その時、ユウキさんの表情が見えなかった。確かに表情が変わったのに。

月が一瞬雲に隠れ、その影がユウキさんを覆ったからだ。

雲が晴れて、またユウキさんの顔が見えるようになったが、その時はいつもの表情だった。

 

「……思わないな。元の世界へは帰れないって言われたんだ。なら、こっちで生活する事を考えるのに手一杯だったし」

 

レミリアから宴会の途中で昼間の話を聞いた。

ユウキさんは、他人に忘れられる人間じゃない。

幻想郷に来てから性格や人格が変わったとは到底思えない。

つまり、ユウキさんは幻想郷に来る前からこんな厳しい中でも誰にでも優しくて、お人よしだったはず。

レミリアがそれを指摘した時、彼はひどく狼狽した。過呼吸にまで陥るほどに。

トラウマ。彼にとって幻想郷に来た事自体がトラウマになっているのか、それともそれ以前にトラウマになるような事があったかは分からない。

 

「そう。なら早くここでの生活にも慣れてもらわなくちゃね。さ、明日は私もゆっくり寝るつもりだから、早起きしなくていいわよ。食事も宴会の料理で残りがあるからすぐに用意出来るしね」

 

これ以上、彼とここで話すと多分、私か彼、どちらかが壊れそうな気がした。

だから一方的に切り上げる。

 

「あぁ、俺も眠れそうだ。おやすみ、霊夢。明日からよろしく」

「こちらこそ。明日からビシビシこき使ってあげるから覚悟なさい。根を上げないようにね」

「ははっ、そう簡単に俺は根を上げる事はないぞ?」

 

軽口を叩きつつ、笑顔で彼におやすみを言えた……と思う。

それから自分の部屋に戻り、後ろを振り向くと彼も自分の部屋に戻って行ったのが見えた。

 

「……おやすみなさい、嘘つきさん」

 

 

つづく

 




宴会終了!
次回からは博麗神社での日常編です。
と、その前に人物紹介っぽい話が少しあります。
次の異変前にまたどこかでバトルがある予定です。
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