幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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そう言えば、香霖堂みたいな中古雑貨とか昔の漫画やゲームを扱う個人店すっかりみなくなったなぁ。


第46話 「香霖堂」

博麗神社に住み始めて、数日が過ぎた。

 

「ん~……朝か」

 

窓から指す日の光で目が覚め、寒さの中服に着替える。

作りがしっかりしているのか、離れの中はそれほど寒くはない。

 

「晴れるには晴れたけど、雪がまた積もってるな」

 

ここ数日は神社から外へ出てはいない。

宴会の時は少し暖かくなってきたなと思ったけど、また寒さが戻ってここ数日は吹雪の日が多かった。

幻想郷の一年の気候がどういうものかあまり分かってないので、この時期にこれだけ寒いのは春が遅いのかいつも通りなのかは分からない。

ただ、昨日も霊夢がうんざりした顔をしながらも全く驚いていないので、例年通りと言う事なのだろう。

 

「霊夢はまだ寝てるな、朝食先に作るか。除雪は後だな」

 

ここ数日で決めた事。

まず朝食は俺が、夕食は霊夢が作り、昼食はそれぞれ外で食べる事もあるだろうからと、交代で作る事になった。

掃除は2人で分担して、洗濯はそれぞれが行う。女の子の洗濯物を俺がするわけにはいかないしな。

霊夢は気にしてないようだったけど、下着の事を遠回しに言うと顔を赤くして慌てふためき、結局各々自分でやる事に決まった。

その時の霊夢は不覚にも少し可愛らしいと思ったが、勘が鋭いので気付かれたのか横目で睨まれた。

 

「さてと、まだ食材残ってたかな。あ、昨日チルノが持ってきてくれた魚がまだ残ってたよな」

 

宴会の翌日に生活用品を買う為、人里へ行きついでに香霖堂へも行く予定だったが、紫がやってきて俺の能力の話になり、結局その日は行けなかった。

で、次の日から吹雪となり今日まで買い物に行けなかった。

俺が来る事になっていたからもしもの為にと、霊夢が買い置きしていたのがあったし、昨日もチルノが魚を持ってきてくれたから助かった。

まぁ流石に今日は無理にでも買い物に行くつもりだった。

だけど、見事に晴れたので朝食を済ませたら行こうと思う。

 

「うん、こういう台所も慣れれば特に問題ないな」

 

学園都市に居た頃からちょくちょく自炊はしていたけど、電気コンロなど最新の家電を使っていたので、釜戸を使った古風な台所には最初は苦労した。

紅魔館は多少現代よりの台所の作りだったし、咲夜の手伝いをしていただけなので不便はなかったが、博麗神社は昔作りの台所だ。

けれども、見ただけでどういう造りでどう使うかは大体理解出来たし、霊夢からも教わったのですぐに慣れる事が出来た。

ミキサーとかそういう電化製品がないのは不便を感じるけど、そこまで凝った料理は必要ないしな。

 

「おはよー……やっと晴れたわね」

 

みそ汁と焼き魚と言う簡単な物だったが、そろそろ出来あがると言う頃に霊夢が起きてきた。

 

「おはよう、霊夢。もう少ししたら出来るぞ。と言っても、そろそろ食材がまずいから、あまり豪華じゃないけど。後で買い物行ってくる」

「気にしないで良いわよ。私1人の時に比べたら結構豪華よ? それにしても……やっぱ違和感あるわね、あなたが台所に立ってる姿は」

 

霊夢は1人の時はあまり食事に拘りはないようで、簡単に済ませていたらしい。

俺が最初に幻想郷に来た日の食事は、結構ボリュームあったと思ったが、客がいればそれなりに作るようだな。

 

「似合わないか? 自覚はしてる」

 

俺が食事作るようになったのは、あのクソババアの悪趣味みたいなものだったしな。

台所に立つ俺の姿が面白いから、とか言ってたし。

 

「これでうまく作るんだから、なんか納得いかない」

「そうか? 咲夜や霊夢にはまけるぞ」

「……なんでそこで咲夜が出てくるのよ」

「そりゃ、紅魔館のメイド長だし。あそこまでうまい料理あまり食べた事ないぞ」

 

オルソラも料理上手だったけど、一度しか食べた事ないし。

 

「そういう意味で言ってるんじゃないわよ。ま、いいわ。魚、そろそろ良い具合じゃない?」

「お、そうだな。じゃ、朝飯にするか」

 

それから朝食を食べて、昼までかかってやっと神社の周りの除雪を終わらせた。

昼飯を軽く済ませて、午後は香霖堂と人里に行く事にした。

最初は人里を先に行く予定だったが先立つものがない為、香霖堂で元の世界のお金を売る為だ。

 

「私の力使っていいから飛んで行きましょ。こんな雪の中、歩くには不便だわ」

 

霊夢がそう言うなら、と幻想支配で霊夢の力をコピーして、飛んで行く事にした。

久々に霊夢の力を視て思ったが、今まで視てきた妖力や魔力とは明らかに違った。

慧音も霊力を使っていたが、霊夢の霊力はけた違いだ。

 

「やっぱり凄いな霊夢。身体が軽い、どこまでも飛んで行けそうだ」

「空を飛ぶ程度ならいいけど、あまり私の力で妖怪退治はしないでよ。紫も言っていたけど」

「分かっている。大丈夫だ」

 

博麗の巫女の力で妖怪を退治するのは、異変の時など非常事態の時以外では使うなと先日紫からも言われているので分かっている。

 

「でも……ま、危なくなったら私の力使っていいわよ?」

 

さり気なく付けくわえてくる辺り、霊夢もなかなか心配性だな。

けど霊夢の力使わなきゃいけない程の相手って、普通にヤバい相手だと思うが。

 

 

 

人里に向かう途中にある、魔法の森。

その人里側の一角に、香霖堂はひっそりとあった。

以前、紅魔館の近くから人里に向かって、慧音に運んでもらった時、ここは通ってなかったな。

外見は見るからに少し古めかしい雑貨屋と言う感じで、何を売っている店かは分からないな。

中に入ると、更に何屋か分からない程色々な物が所せましと置いてあった。

その奥に暇そう……と言うわけでもなく、椅子に座って商品らしきランプを磨いている霖之助がいた。

 

「やぁ、いらっしゃい。君の事だからすぐに来ると思ったけど、やっと来たね」

「ずっと天気悪かったんだ。流石に吹雪の中ここまで来る無茶はしないさ」

「それもそうだね。おかげでここ数日は誰も客が来なくて商売あがったりだ」

「こんにちは、霖之助さん。客が来ないのはいつもの事でしょ。それに利益とかそう言うの気にしてはいないじゃない」

 

霖之助は霊夢に指摘されると、苦笑いを浮かべながらランプを台に置いてこちらに向き直った。

 

「そうだな。冷やかしならよく来るが、ちゃんとお金を払ってくれる客は普段から滅多に来ない。それに僕は利益を出したくて店を開いてるわけじゃないね。さて、早速君の用件を済ませようか、ユウキ」

 

俺は頷き返して、財布を取り出し中にあったお金を出した。

と言っても、普段はカードで払っているから現金はそんなに持ち歩いてはいない。

 

「ふむふむ、これなら……これでどうかな?」

 

宴会の時に一度見せているので、霖之助は手慣れた手つきで俺の金を計算し、幻想郷のお金を取りだした。

 

「わっ、結構あるじゃない! ユウキさんもだけど、霖之助さんよくこんなにお金あったわね」

 

霊夢がここまで驚いているとは、紙幣価値の違いと言うか……あ、ひょっとして香霖堂って貧乏なのにこんなに金がある事に驚いているのか。

 

「外の世界のお金の換金は、八雲紫からの仕事でもあるからね。それに関してのお金は結構用意されているのさ。最も、換金時にしか使ってはいけないと言われているけど」

「なるほど、元いた世界でも古銭買取専門店とかあるしな。で、手数料がこの店の利益って奴か?」

「そう言う事……正直、ここにある品を売るより、外の世界のお金を換金する方が利益出ているんだよ」

 

どれだけ利益あるのか知らないし興味もないけど、本業より副業が儲かるのか。

 

「後、僕が収集している外の世界の品で、たまに危険な物があってね。それも八雲紫が買い取ってくれるのさ。例えば、武器とか爆弾とかね」

「普通そう言う幻想郷に害がありそうなモノは、幻想郷に着く前に紫が見つけて処分したりするのよ。でも、紫が気付かずに幻想郷に流れてきて、霖之助さんが見つける事もあるわ。あと、魔理沙が見つけて霖之助さんに売る事もあるの」

 

確かに、ピストルとか爆弾とかそう言うのを子供や、悪意ある人間なんか拾ったら大変だもんな。

何か護身用に良いモノがあれば、買おうかと思っていたけど、そう言う類のモノは期待しない方が良いか。

でも、ここにあるものは見た事あるものやないものなど本当に様々だから、少し興味が沸いた。

 

「ちょっと見て行っていいか?」

「おすきにどうぞ。壊したりしたら買い取ってもらうけど、君なら大丈夫そうだ。そうだ、君に見てもらいたいモノがいくつかあるんだ。持ってこよう」

「私も久々だから少し見てよっと」

 

霖之助が店の奥へと引っ込み、霊夢が手近にあった小さなブローチを眺めだした。

俺も色々見させてもらうか。

 

「彫刻や絵画もあるのか、でもこれ全部偽物っぽいな」

 

名前は知らないけど、本やテレビで見た事ありそうな有名な絵画が壁に飾られている。

彫刻の材質や絵画の塗り方を見ると、どことなく新しさを感じる。

俺は芸術には詳しくはないが絵画などの贋作の取引を潰した事もあるので、こういうニセモノは少し分かる。

 

「で、こっちの棚には昔流行ったロボットや玩具か」

 

コレを見る限りでは、幻想郷の外の世界も俺のいた世界とあまり変わらないようだ。

こっちの棚には見た事あるロボットやゲーム機が並んでいる。

 

「これは作り物の花? なんだか変な造花ね」

 

霊夢が珍しそうにつっついている花のようなものは、サングラスをかけた造花の玩具、フラワーロックだった。

こんなものも幻想入りしているのか、確か新しいタイプのが出てたと思ったけど。

 

「それは外からの音に反応して動く玩具だ。けど、電池がないから今は動かないな」

「そう言えば外の玩具や道具って、電池とか電気がないとダメなものばかりよね。なんか不便」

「ま、大抵そんなものさ」

 

霊夢が目を向けた一角には、古びた掃除機や冷蔵庫が置かれている。

確かにこれは電気がないと動かないな。

学園都市なら自己発電式のが増えてるから、電気がいらない物も多いけど幻想郷の外ではそういう技術はまだみたいだ。

 

「おーい、これをみてほしいんだ」

 

霖之助が大小様々な物を両手に抱えて戻ってきた。

 

「結構沢山あるな。ここにあるのもだけど、これ全部霖之助が拾って来たのか?」

「そうだよ。大抵は無縁塚という所で収集してくるんだ。あ、これをまず見てほしいんだ」

 

そう言って霖之助が箱から出したのは、健康器具の数々だ。

 

「何これ? みんな変な形してるわね」

 

霊夢の言う通り、見た目は変な物ばかりで俺の知っている健康器具とはかけ離れている気がする。

 

「名前と用途が分かるなら、これも大体予想付くんじゃないか?」

「そうは言ってもね。実際使おうと思っても、なかなかうまくいかないんだよ」

 

確かに。用途が分かっていても使い方が分からないだろうな、これは。

と言うか俺も分からないモノがある。

 

「えっと、この突起はツボを刺激するものか……こういう風に」

「うわっ!? こ、これはなかなかだね」

 

適当に手に取ったブラシを霖之助で実際に使ってみた。

 

「私もやってみようかな?」

 

気持ち良さそうにしている霖之助をみて、霊夢が少し興味をもったようだ。

 

「うーん、やめといた方が良いぞ? こういうものは毎日続けないと効果でないモノ多いし。何より幻想郷に流れてくるって事は効果があまりなくて、外の世界で興味をひかなくなったって事だろう」

「毎日か、確かに私には無理っぽいわね」

 

それからも霖之助が持ってきたガラクタギリギリのナニカを鑑定していった。

2時間ほど経過し、あらかた鑑定し終えたので霖之助が振る舞ってくれたお菓子を食べながら、談話となった。

 

「クッキーだなんて、霖之助さんにしては珍しいお菓子ね」

 

霖之助のイメージ的に洋菓子よりせんべいとかの方が似合う名。

 

「あぁ、魔理沙が午前中きてね。置いて行ってくれたんだよ」

「魔理沙がお菓子作り? 珍しいわね」

 

それなりに長い付き合いの霊夢でも、魔理沙がお菓子を作る事に驚いていた。

ま、俺も少し驚いた。1人暮らししてるそうだから、料理は出来るだろうがお菓子作りをするのはイメージが浮かばない。

 

「……そうでもないさ。魔理沙は昔から、ストレス解消にお菓子を作る事が多くてね」

「へぇ、それは初耳ね。なるほど、霖之助さんは結構魔理沙のお菓子食べてきたのね。私は食べた事ないけど」

 

なぜか含みある笑みを浮かべた霊夢に、霖之助は無表情で紅茶を一飲みした。

 

「その口ぶりだと霖之助はひょっとして、魔理沙が幼い頃から知ってるのか?」

「まぁね。僕は昔、魔理沙が生まれる前から彼女のお父さんが開いている店に弟子入りしていたんだよ」

 

魔理沙の父は人里で大型の道具屋を開いているそうで、霊夢も何度か行った事があるみたいだ。

ただ、魔理沙と父親の仲は最悪で、少し前から勘当状態らしい。

詳しくは話さなかったが、魔理沙が魔法の森で1人暮らをしている事が深く関係しているようだな。

これはレミリアやフランとはまた違った意味で、プライベートな問題のようで俺も関わるつもりはない。

 

「僕から言えるのは、魔理沙は昔から負けず嫌いだけど、それ以上に努力家だって事だね」

 

なぜか急に魔理沙の性格を言って、霖之助は話を締めた。

霊夢はそれを見て軽く溜息をついた。

まぁ、霖之助が何を言いたいのかは、何となくわかったからいいか。

 

「つまり霖之助は魔理沙の頼りになるお兄さんで、霖之助にとって魔理沙は手のかかる妹って事か」

「まぁ、そう言う事……かな」

 

霖之助は少し懐かしむように苦笑いを浮かべた。

 

ふと外を見ると、日がだいぶ傾き始めていた。

特にめぼしいモノはなかったので、俺の分は何も買ってはいない。

 

「あ、長居しすぎたわね。人里で買い物して帰りましょう」

「そうだな。じゃ、霖之助またな」

「あぁ、またごひいきに……それと、魔理沙を頼むよ」

 

小さく呟くように言った霖之助に、俺は振り向かずにこう答えた。

 

「あまり期待するなよ? お兄ちゃん?」

「ははっ、魔理沙はやらんぞー?」

「あははは、妹離れした方が良いぞー?」

「……先行くわねー」

 

笑い合う俺達を呆れた目で見ていた霊夢を追って、俺も空へと飛んだ。

 

「結構長居しちゃったな」

「そうね。この時間でもまだ良いモノ残っていると良いけど」

 

あまり暗くなると店が閉まるのは、どこも変わらないな。

 

「そうだ、霊夢。はいこれ」

 

俺はさっき香霖堂で手に入れたブローチを霊夢に渡した。

それは、霊夢が最初に眺めてそれから何度かちらちらと視線を向けていたブローチで、キラキラと輝く赤い水晶が付いている。

 

「えっ? ど、どうしたのよこれ!? 高いんじゃないの?」

「ん、色々鑑定した報酬としてもらったものだよ。霊夢それ興味あったんだろ? 色々世話になったし、これからも世話になるからな。それくらい安いモノだ……って買ったわけじゃないけど」

 

それほど派手な装飾ではないブローチだが、綺麗な水晶がついていて実際に買おうとすればそれなりの値段はしただろう。

うーん、そう考えるとあの程度の鑑定でコレは香霖堂の赤字になるんじゃないかな。

ま、そういう所は霖之助気にしないみたいだから、俺も気にしない。

 

「いや、私は別にただ変わった水晶がついてるなー、とそれくらい……だけど、その、ありがと」

 

気恥ずかしいのか、霊夢は夕日に負けないくらい赤くなりながらアタフタと何か言いかけたが、最後には御礼を言ってきた。

そして、早速ブローチを上機嫌で胸元に付けている。

飛びながら器用だな。

 

「えへへっ、どう?」

 

夕日に照らされて、少し恥ずかしそうに笑顔を浮かべる霊夢は、普段見せない子供っぽさを感じて可愛らしかった。

 

「あぁ、とっても似合ってて……可愛いぜ」

「~~っ!? そ、そんな直球でいうなぁ!」

 

俺に可愛いと言われたのがそこまで意外だったか、霊夢の顔がますます赤くなった。

全く、ふってきたのは霊夢の方なのに。

そう思うとなんだかおかしくなり、笑いながら速度を上げた。

 

「ほら、早くいかないと店閉まっちゃうぞー」

「こ、こら待ちなさい!」

 

それから霊夢は毎日そのブローチを付けるようになり、俺は文や咲夜達から睨まれることになった。

……そう言えば、ジュースとかを奢る事はあったけど、こうやって女の子にプレゼントをあげるのは、初めてだな。

 

 

つづく

 




気が付けばもう50話近く……先は長いですねぇ。

さて、次回はバトル回です!
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