幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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お待たせしました!
上海回……ではなく、アリス回です(笑)


第54話 「人形と人間」

マヨヒガから元いた場所に戻ってきた俺達は現在、猛吹雪に襲われていた。

橙からもらった御札は、こっちに戻ってきた途端に小さな羅針盤に変わった。

この針が指す方向に白玉楼があるようだけど……

 

「ちょっと、これはヒドイわね」

「さっきまで、暖かい所にいたから、尚更響くわ……」

 

飛ぶのに慣れている霊夢と咲夜でも、この猛吹雪の中進むのは困難だ。

 

「なら……これで、どうだ」

 

魔理沙の力を使い、俺達の周囲に吹雪を防ぐ球体状のバリアを張ってみた。

魔法使いだからこれくらい出来るだろうと思ってやってみたけど、あっさり出来たな。

でも、こういう結界や防御魔法は魔理沙には合わないみたいだな。

魔力の消費が思ったより多い。

 

「ユウキさんこんな事も出来たの?」

「寒い事は寒いけど、これで少しはマシね。ありがと、ユウキさん」

「魔理沙の魔力で出来るかと思ってな、やってみるもんだ……で、2人共そんなにくっつく必要ないんだけど?」

 

慣れない魔法で大きいバリアが張れなかったからか、霊夢も咲夜も俺の両脇にぴったりとくっついている。

 

「べ、別にいいでしょ。私の方狭いんだし、咲夜の方はまだ余裕ありそうだけど、少し離れなさいよ」

 

いや、霊夢の方もほどほど余裕あるからな?

 

「そうかしら? あまり大きいバリアを張ると、ユウキさんに負担がかかると思ってくっついたのだけど?」

「気遣いは嬉しいけど、なんでわざわざ腕を絡めてきた?」

 

そう言うと咲夜は含みのある笑顔から一転して、真剣な表情に変わった。

 

「ユウキさん、この魔法長くは続かないでしょ? 魔理沙って弾幕はパワーとか言って、攻撃的な魔法ばかり使うからこういうの慣れてないはず」

「あ、そうか。そんな本人も慣れてない魔法は飛行しながらだと、ユウキさんの消耗が激しくなるわね。だから私達で支えて飛ぶと言うわけね」

「うっ、なんか話の風向きが変な方向に……」

 

ちょっと無理してる事がバレてたか。

 

「変じゃないわよ。さ、このまま行くわよ」

 

そう言って霊夢が咲夜と反対側の腕に自分のを絡めてきた。

飛行に魔力はあまり使っていないけど、このバリアは魔力の消耗が激しいから、すぐに幻想支配が解けてしまいそうだ。

だから、霊夢と咲夜に支えてもらって移動するのは、非常に効率が良いと言うか、負担が少ないからいいとは思うけど……

 

「なんだろうなこの図」

「両手に華でいいじゃない?」

「自分で言うか咲夜さんよぉ? ま、2人共華なのはその通りだけど……って、うお!? 霊夢、いきなり手を離すよ!」

「なっ、何いきなり変な事言ってるのよ!?」

 

今魔力をバリアにのみ使っているので、霊夢に手を離されるとバランスを崩してしまう。

 

「うふふっ、照れているのね霊夢は」

「そ、そんな事ないわよ! ほら、早く行くわよ……ってあら? 何か飛んでるわね」

 

霊夢が見上げた先には、小さな人影のような物が宙に舞っていた。

人ではないようだけど、妖精でもない。微かに魔力がある……これは。

 

「あれは……咲夜、ちょっとごめん!」

 

咲夜から手を離し、飛びあがってその人影をどうにかキャッチ出来た。

 

「それ、人形? って上海じゃない」

「あぁ、酷く消耗している。一先ずどこかに降りよう。そろそろ幻想支配も限界だ」

「あそこがちょうどいいんじゃないかしら?」

 

幻想支配の力も弱くなり、吹雪はますますひどくなってきたので、俺達は一先ず森に降りた。

ここら辺は木々が密集しているので吹雪があまり来ないようだ。

 

「で、上海って確かアリスの人形よね?」

「そうよ。アリスが操っているんだけど、何でこの子だけ飛んできたのかしら?」

 

俺の腕の中にはぐったりとした上海がいた。

人形なので元からぐったりはしているだろうけど、時折微かに動いている。

その姿は今にも死にそうな病人のようだ。

 

「多分、アリスから離れ過ぎて魔力の供給が途切れたんでしょうね。散歩していたら吹雪でここまで飛ばされたのかしら。アリスはたまに自由に行動させているみたいだし」

 

アリスは完全な自立式人形を作ろうとしている、と言っていた。

で、沢山の人形を持っているが、そのうち上海ともう1体は式神に近い存在へとなりつつあって、よく何も言わなくても自由に動く時があるとも言っていたな。

散歩しようと外に出たら吹雪で吹き飛ばされた……なんかペットの放し飼いを想像してしまった。

 

「ともかく、早くアリスの所へ連れて行ってあげないと」

 

操っている人形の魔力が切れたからと言って人形自体が死ぬわけではないが、どうもこのシャンハイは少し違う気がする。

 

「はぁ~……そうね。アリスの家はこの先にあるはずよ。ついでに休ませてもらいましょ」

「そうしましょうか、これ以上は流石に少しきついわ」

 

霊夢や咲夜がこんな事を言うのは珍しいけど、仕方ないな。

周りの木々のおかげで吹雪がだいぶ和らいでいるとはいえ、まだ昼間なのにかなり冷え込んできている。

いつぞやのロシアよりはマシだけど、それでもマフラーがなかったらちょっと危なかったな。

 

 

 

 

私が初めて作った人形、上海がどこかへ行ってしまった。

蓬莱が言うには、私が人形の修繕に集中している間に外へと行ってしまったみたい。

上海と蓬莱は、他の人形と違い私が何も命じなくても勝手に行動する時がよくある。

最初は完全自立人形になったのか、それとも魂が宿ってしまったのかと思った。

人里で出会った死神曰く、付喪神や式神に近い存在になりつつあるようね。

って、そんな事はどうでもいいわ。

 

「まずいわね。魔力の繋がりがかなり薄いわ。この吹雪で遠くへ飛ばされたのかしら」

 

人形達は私の近くにいれば、どこにいようと分かる。

だけど、この吹雪に飛ばされたようで、詳しい場所が分からないわ。

今まで私からの魔力が途絶えた事はないから、もしあの子への供給が止まったらどうなるか分からない。

最悪、上海が他の人形と同じように、ただの操り人形に戻ってしまうかもしれない……それは嫌。

微かな魔力を辿って探しに行こうと身支度していると、ドアを叩く音が聞こえてきた。

 

「こんな吹雪の中一体誰かしら? あぁ、この魔力は魔理沙ね。霊夢と咲夜もいるみたいだけど、ちょうどいい機会だから色々返してもらわないと……あれ?」

 

ドアの向こうからは確かに魔理沙の魔力を感じた。けれども、その力はとても弱くすぐに消えてしまった。

 

「魔理沙? こんな天気でどうしたの? ってユウキじゃない。いらっしゃ……上海!?」

 

ドアを開けると、雪で真白になったユウキと霊夢、咲夜がいて、更にユウキさんの腕の中には上海がぐったりとしていた。

 

「よっ、アリス。迷子のお届けだ」

「こんにちは、アリス。見ての通りよ。そこで上海を拾ったから届けにきたの。しばらく休ませてもらえる?」

「えぇ、勿論良いわ。さ、入って入って」

 

ユウキ達を中に入れて急いで上海を診つつ、他の子達にタオルや紅茶の用意をさせた。

紅魔館のメイド長である咲夜の口に合うかどうかはちょっと不安ではあったけど、彼女は美味しそうに飲んでくれたからほっとしたわ。

上海の方は怪我なのはなく魔力が切れただけなので、補充するとまた動き回れるようになった。

私に心配かけた事を謝り、そしてユウキの方へ行きぺこぺこと頭を下げた。

 

「本当にありがとう。ちょうど探しに行こうとしてたのよ」

「シャンハ~イ」

「飛んできた上海をたまたま捕まえられただけだ。それに礼は俺じゃなく霊夢に言えよ。最初に見つけたのは俺じゃないんだし」

 

ユウキは上海と会話しているかのようね。

あの子はシャンハイとしか言葉に出せないし、その意味は私にしか分からないはずなのに。

 

「シャンハーイ!」

「あー私も別に御礼はいいわよ。こうやって美味しい紅茶頂けたしね」

 

上海が霊夢にもぺこぺことお辞儀をすると、彼女は照れくさそうに笑って答えた。

霊夢、少し変わったわね。

以前なら誰にでもぶっきらぼうと言うか、無愛想に近かったのに年相応の女の子みたいな顔しちゃって。

 

「ホウラーイ!」

「ん、この子は、ひょっとしてほうらいって名前か?」

 

蓬莱も上海を助けてもらったお礼が言いたいようで、ユウキの前で両手をパタパタさせた。

 

「そうよ。この子は蓬莱。上海と一緒で私が初めて作った人形なの。双子みたいなものね」

「そうかそうか、よろしくな蓬莱」

 

ユウキはまるで女の子を相手にしているかのように、優しく蓬莱の頭を撫でた。

蓬莱は気持ち良さそうにしているけど、それを見て霊夢と咲夜は訝しげな表情をした。でも、それは私も同じ。

宴会の時もそうだけど、ユウキは上海も蓬莱もまるで人間の女の子のように接している。

私としては嬉しい事、けどやっぱり違和感しかない。

人里の子供達もたまにやる人形劇の時には、ユウキと同じように上海達を人間のように話しかけたりする。

でも、ユウキの場合はそれとは違う。

人形を人形と分かっていて、それでもこのように接しているようだわ。

外来人の彼からしたら、気味悪がってもおかしくないのに。

色々な妖怪と出会ったせいでそこらへんの感覚がマヒしたのかしら?

 

「それで、こんな天気の中3人してどうしたのかしら? まさかと思うけど、今頃異変解決に動いている、とかじゃないわよね、霊夢?」

 

幻想郷に春が来ないばかりか冬に逆戻りになってしまった。

寒いのが苦手な霊夢ならもっと早く動くかと思ったけど、ここまできてようやくなのね。

 

「……異変解決よ」

 

霊夢は私が言いたい事が分かっているようで、バツが悪いのか少しそっぽを向きながら返事をした。

 

「まぁ、霊夢が鈍いせいでこの異変の事何も分からなかったのだけど、ようやく原因と首謀者の事がわかったのよ」

「私が鈍いってどういう事よ!?」

「あら、言葉通りよ?」

 

咲夜が霊夢への嫌味を交えて、冬が終わらない異変について教えてくれた。

春の光、ねぇ。私も幻想郷にはそれなりにいるけど、それは初耳だったわ。

と言う事は、アレがそうなのかしら??

 

「もしかして……アレも春の光かしら?」

 

私が指さした先にあるのは、テーブルの上にある小さな小瓶。

その中には淡い光を放つ桜の花びらのようなものが、数枚入っている。

霊夢がそれをじっくりと見てから、私に問いかけた。

 

「間違いないわ。形は少し違うけど、リリーが持っていたのと同じ力を感じるわ。アリス、どうしたのよこれ?」

「少し前に森の中で見つけたのよ。最初は暖かい光だなぁと思って触ろうとしたら、こういう形に変わったの」

「あなたコレを調べようとはしなかったの? パチュリー様は興味深そうにして色々調べたのに」

 

パチュリーはこの光について調べたのね、でも私は特に気にしなかったのよね。

 

「別に? 最近寒いから便利なものを手に入れた、そんなくらいにしか気にしてなかったわ。興味がないと言えばウソになるけどね。で、これがそういうモノと分かった以上、手元に置かない方がよさそうね。霊夢にあげるわ」

 

そう言って私は花弁を小さな巾着に入れ替えて霊夢に手渡した。

彼女は最初キョトンとして、ユウキや咲夜も頭に?を浮かべた。

 

「3人共何固まっているの?」

「いやいや、いいのか? パチュリーはこれを使って実験をしたがってたから、てっきりアリスも興味沸いて色々するのかと思ってたのに」

 

珍しくユウキが驚いているわね。まぁ、分からなくはないけど。

魔法使いにとって、四季の光は実験などで使えそうないいサンプルにはなるでしょうね。

 

「いいも悪いも、これをどうにかしようだなんて今も思ってないわよ。逆にこれが春の光で、それを物騒な手を使ってでも集めている危ないのがいると分かったなら、手元に置きたくないのは当たり前でしょ?」

「それは、まぁ分かるけど」

「それに私の魔法は人形を操る事が主に目的だから、あまりコレは役に立ちそうもないわね。パチュリーの魔法使いとしての目的は別でしょうから。彼女がこれを欲しがっても不思議じゃないわね」

 

魔法使いにはそれぞれ目的がある。

私の目的は完全な自立人形の作成。

それにこの光はあまり役には立たないし、そもそも分野が違うわ。

 

「アリスがそう言うのならこれは私達が預かるわ。春を取り戻した時にコレもきっと必要になると思うし……本当に暖かいわねコレ」

 

霊夢が巾着を懐に仕舞いこむと、途端に顔が崩れてほわーんとなった。

私も外に出る時に同じようにした事あったから、霊夢がああなるのは凄く分かるわね。

 

「懐炉代わりにちょうどいい暖かさね。あ、そうだ。アリス、これ後2個貸してもらえる?」

「2個? あぁ、なるほどね。上海、持ってきてくれる?」

「シャンハーイ!」

 

上海から巾着を2つ受け取ると、霊夢はその巾着に花弁を数枚ずつ入れて、ユウキと咲夜に渡した。

 

「はい、2人共。これで少しはマシになるでしょ?」

「ありがとう、霊夢、アリス。うん、結構温まるな」

「気がきくじゃない、霊夢。これなら問題ないわ。アリスもありがとう」

「気にしないで、これくらい上海を見つけてくれた御礼には安すぎるわよ」

 

私はずっと平然としていたけど、実は結構驚いている。

霊夢とは結構長い付き合いだけど、彼女が自分からこういう気遣いをするなんて。

ホント、ユウキの影響かしら?

 

「アリス、これ借りていくわね。異変が解決したら返すわ」

「霊夢は魔理沙と違って借りパクなんてしないしね。って、そう言えば、ユウキは魔理沙の魔力使ってたのよね? 魔理沙は一緒じゃなかったの?」

 

魔理沙の魔法で寒さをしのぎながらここまで来たと聞いたけど、それならどこかで魔理沙に会っているわよね。

と言うより、異変の解決なら魔理沙は自分から首を突っ込むと思う。

 

「そう言えば、魔理沙はどうしたっけ?」

「気が付いたらいなくなっていたわよね。1人で先に進んだのかしら?」

「霊夢、自分でぶっ飛ばしておきながら魔理沙の事忘れていたのかよ。しかも、咲夜まで」

 

異変解決の為に一緒に出たけれど、霊夢に吹き飛ばされてそのままだったようね。

しかも、その理由がユウキ絡みで霊夢をからかったから、だなんて。

本当に異変解決してる最中なのかしら?

と、その時だった。誰かがやってきた気配がしてドアが勢いよく叩かれる音がした。

 

「ん、噂をすれば、多分魔理沙だ」

「確かにこの魔力は魔理沙ね。それも幻想支配の力だっけ? 便利な能力よね。って、そんなに乱暴に叩かなくても今開けるわよ」

 

壊されそうな勢いで叩かれているドアを開けると、全身真っ白な魔理沙が震えながら飛びこんできた。

 

「ざ、ざむい……あ、ああありす、だずげてぐれぇ」

「どうしたのよ、魔理沙。大丈夫……そうには見えないわね。上海、タオル持ってきて。蓬莱はお風呂にお湯張ってちょうだい」

「魔理沙、力借りるぞ」

「アリス、台所借りるわね」

 

ユウキは震える魔理沙を暖炉の前まで運んで、彼女の魔法を使って全身を熱で覆った。

咲夜は台所で生姜湯を作り魔理沙に飲ませた。

 

「全く、手間かけさせないでよね、魔理沙」

「いや、霊夢がぶっ飛ばしたせいだと思うぞこれ」

 

霊夢も盛大に溜息を吐きながらも、タオルで魔理沙を拭いてあげた。

風呂の用意が出来た所で、霊夢が運んでいれてあげると、ようやく元気になった。

 

「ふぅ~……ヒドイ目にあったぜ。霊夢にぶっ飛ばされて雪山に突っ込んでしばらく動けなかったからなぁ。ブレイジングスターでようやく脱出出来たぜ」

「ぅ、ごめん、魔理沙……正直、やりすぎたわ、夢想封印」

「あれ夢想封印だったのかよ!?」

 

霊夢も流石にやりすぎたと反省したようね。

でも、夢想封印って、やりすぎにも程があるわよ。

 

「魔理沙、ブレイジングスターって、前に俺に使った奴じゃなく八卦炉をブースターにして改良した奴か?」

「あ、あぁ。本当はお前用に使うはずだったんだけど、まさかあんな事で使う羽目になるとはな……って何で知ってるんだ!?」

 

ブレイジングスターは確か、霊夢用に開発したけどユウキに呆気なく破られて改良中だった魔法よね。

ようやく改良終えて、チルノ相手に試すつもりが逆に新スペカで返り討ちにあって、結局使う事が出来なかった。

ユウキへのリベンジ戦でも使う予定だったけど、うやむやになってまたお預けになったと、前に魔理沙から聞いた。

まさかの初使用が雪山からの脱出だなんて、お気の毒様ね。

 

「幻想支配で朝魔理沙を視た時に分かったんだよ」

「な、何ィ!? そんな事も出来るのかよ!? ひ、卑怯にも程があるぜ……」

「魔理沙、ユウキさんはその事も説明したじゃない。忘れてたの?」

「私も聞いたし、紅魔館のみんなも知ってる事よ?」

「そ、そう言われてみれば私も聞いた覚えがあるぜ……」

 

へぇ、幻想支配って、本人が新しく使えるようになった魔法まで瞬時に理解する事も出来るのね。

これにはちょっと興味が沸いてきたわね。

今度大がかりな人形劇がしたくて、幻想支配でその手伝いを頼もうと思ってたけど、これは楽しみになってきたわ。

 

 

それからせっかくだからと、4人で昼食を食べた。

この家でこんな大人数で食事するのは、初めてだからちょっと私もはしゃいじゃった。

彼は私の手料理を美味しいと言ってくれて嬉しかったし。

まぁ、その時霊夢と咲夜にすごく睨まれたけどね。

片付けも終わり、咲夜が淹れてくれた紅茶を飲みながら雑談をした。

上海も蓬莱もすっかりユウキが気に入ったようで、2人して膝に座って気持ち良さそうにしていた。

それを見た霊夢と咲夜がまた不機嫌になったのが、すごくおかしかったわね。

でも、それを見て改めてユウキの様子に違和感を感じた。

彼は霊夢と咲夜がなぜ不機嫌になっているのかを、嫉妬している事に気付いている。

だけども、それを他人事のように見ていた。

 

「お、やっと吹雪が止んだみたいだぜ」

 

外を見るといつの間にか吹雪が止み、雲の切れ目から陽が差し込んできていた。

 

「それじゃ、行きましょうか。結構な時間足止め食らっちゃたわ」

「じゃあな、アリス。また遊びに来るぜ」

「今度来るときは持って行った魔導書を返しに来なさい。でないと今度は凍えそうになってもいれてあげないわよ」

「あ、あははは……」

 

魔理沙は笑ってごまかしてるけど、コレは返す気なさそうね。

今度家に直接強襲してやろうかしら。

 

「アリス、今度は紅魔館にいらっしゃい。今日の御礼に最高の手料理、御馳走するわ」

「楽しみにしているわ、咲夜。フランにも人形劇見せてあげたいしね」

 

咲夜とは宴会の時はあまり話せなかったけど、今日は結構話せたわね。

宴会にも来ていたフランドール・スカーレットが実は上海の事を気にしていた事も聞けたし、今度人形劇をする事も約束した。

でも、主であるレミリアの承諾はいいのかしら?

 

「アリス、避難させてもらっただけじゃなく、昼食までごちそうになって、悪かったな」

「気にしないで。上海を助けてもらった御礼もできたし、私も楽しかったわ。ね、上海、蓬莱?」

「シャンハーイ!」

「ホウラーイ!」

 

ふふっ、すっかり彼と仲良しね。

ユウキも上海達の頭を撫でて、外へと出て行った。

 

「あ、そうだ。ユウキ、少し待って!」

 

私は彼に聞きたい事があった事を思い出し、呼びとめた。

 

「ん? どうした?」

「ユウキ、あなたに1つ聞きたい事があるわ。あなたはどうして上海と蓬莱を最初から人形としてじゃなくて、人間の女の子のように接してくれたの?」

「どうして……って言われてもなぁ」

 

質問の意図が良く分からないのか、ユウキは少し困った顔をした。

こんな反応されるこっちが困るわ。

 

「初めてなのよ。初対面でこの子達をそう言う目で見て、接してくれたのはね。霊夢も魔理沙も驚いたけど、それはあくまで人形としてだったわ。他にも外来人と出会った事があったけど、自由に動くこの子達を気味悪がったりもしたのよ?」

「あーなるほどな。別に俺だって上海や蓬莱は人形と思ってるぞ? でもな、俺にはそれは些細な事だからな」

 

些細な事、ねぇ。

 

「この子達が人形だろうが妖怪だろうが、心があって意思があるなら、それは俺にとっては人間と同じなんだよ」

 

そう言う彼の目は一瞬だけ遠くを見ていた。

視線は私に向けられているけど、でも、別の誰かを見ているようだった。

その眼がほんの一瞬ひどく哀しそうに見えたのは、気のせいじゃないと思う。

 

「ま、要するにユウキは女には見境ないって事だな」

「おい魔理沙、それはどういう意味だ?」

 

魔理沙が身も蓋もない事を言うけど、私も心の中でちょっと同意しちゃったわ。

 

「そうね。吸血鬼の誘いに呑気に乗っちゃうほどだし。無謀と言うか考えなしと言うか馬鹿って事ね」

「れ、霊夢まで……否定しないけど」

 

そこは否定しないのね。認めちゃうんだ……

 

「あら、それがユウキさんの良い所よ? 包容力があって偏見も何も持たない。素敵な人よ、ユウキさんは」

 

咲夜、うまいフォローするわね。

でも、それは私も思うわ。

 

「アリス、さっきから口に出してるけど、まさかお前もユウキの事……」

「えっ? ち、違うわよ魔理沙。私は別に……はっ!?」

「「ア~リ~ス~?」」

 

魔理沙が突然トんでもない事を言いだした。

すぐに否定しようとしたけど、霊夢や咲夜が殺気立った目で私を睨んでいた。

なんだか、今日この2人に睨まれる事多いわね。

 

「まさかアリス……」

「あなたも……」

「だから違うってば! それに、あなたもって何よ、もって!」

「あら言葉通りよ? ねぇ、霊夢?」

「そ、そこで私に振らないでよ? 私は関係ないわ!」

 

咲夜は本当に彼への好意を隠す気ないのね……

で、霊夢? 今更何を言っても説得力無いわよ?

 

「おーい、お前ら早く行くぞ!」

 

そして、当の本人はと言うと、もう空へ飛んでいてこっちを呆れたように見ていた。

鈍感、とは違うわねやっぱり。

 

「あ、ユウキさん。なんで先に行こうとするのよ」

「おまっ、ここは混ざる所だろ!」

「はぁ……やっぱりこうなるのね。じゃ、今度こそ行くわアリス」

「えぇ、気を付けてね」

 

漫才のような会話をしながら異変の原因、白玉楼へと飛んで行く4人を見送りながら私はポツリと呟いた。

 

「彼は嘘つき、か。霊夢の言う通りね。それにまるで糸のない操り人形のようだわ」

 

 

 

続く

 




あっれー?戦闘はー?弾幕ごっこはー?
おかしいな……アリスVS魔理沙の予定だったのに、ヽ(~~~ )ノ ハテ?(2回目)
次こそはちゃんと戦闘させたいです(笑)
ユウキに何があったのか。過去編を挟みつつとはいえ、全部分かるのが大分先なんですよねー……うーん、難しい(汗)
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