幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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VS妖夢です!
最初はもっと馬鹿っぽさ出てたんですけどねぇ、真面目にしてみました!(キリッ


第56話 「冥界剣士」

雲の上に張られていた結界を破り、いよいよ冥界へと突入した俺達は人魂の歓迎を受けていた。

 

「いきなり物騒なお出迎えだな。幽霊は墓場で寝てろってのに」

 

迫りくる人魂をレーザーで撃墜しながら、魔理沙は毒づいた。

気持ちは分からなくもない。

大きな門を抜けた途端に人魂が襲ってきた。それも四方八方から大量にだ。

霊夢曰くこれは幽霊らしく、冥界に多くいるものたちだ。

 

「ここは冥界でこいつらは幽霊、生者の私達が珍しいんでしょうね」

 

魔理沙と背中合わせで御札や弾幕を撃ち続けて、霊夢が答えた。

最も、幽霊だからと言って死んだ者の霊とは限らなく、自然現象として生まれる幽霊もいるらしいけど。

 

「もしくは侵入者である私達を追い払うように命じられている、からかしら?」

「そっちの方がありえそうだな」

 

俺も咲夜と背中合わせで迫りくる幽霊を追い払っている。

数が多いので弾幕ではなく、直接殴ったり蹴ったりして対処している。

それでもキリがない。

 

「集めた春はどうやらこの奥にあるようね。向こうから暖かい空気が流れてきてるわ。羅針盤も向こうを指しているわね」

 

霊夢が顔を向けた先では、空がうっすらと桜色に輝いていた。

あの下に春の光は集められているようだ。

 

「でもコレじゃキリないぜ。一気に突破するか」

「それしかないか。俺と魔理沙で道を……ん?」

 

と、思っていたら幽霊達はまるで誰かに下がれと命じられたように、急に消えてしまった。

 

「……来たか。妖夢」

 

俺達が身構えた先に、魂魄妖夢がすっと現れた。

 

「ここからは通しません。それとあなた達の持っている春の光、それを渡して頂きます」

「そう言われて、はいどうぞって渡すアホはいないだろ」

 

妖夢は2本の刀を既に抜いていて、それを俺に真っ直ぐに向けた。

 

「あなたはどうしても通すなと、幽々子様に念を押されていますので、ここで引き返してもらいます」

「ユウキさんだけを念押し?」

「博麗の巫女である霊夢じゃなくて、俺を通すなとわざわざ? どうしてだ?」

 

まぁ異変の解決は博麗の巫女の責務だから、ってのはあるかもしれないけど俺はダメと名指しか。

 

「あなたは危険だからです。それは私も同感です」

 

幻想支配の事を言っているのか。こうも危険と面と向かって言われるのは紫以来か。

 

「っ!?」

 

その時だった。とてつもない何か嫌な感じがした。

何か危険を知らせているのとは違う、虫の知らせとも言うべき嫌な予感。

嫌な予感がする事は何度も会ったけど、ここまで強いのはは生まれて初めてだ。

勘が強い霊夢を見てみたが、特に何も感じてはいないようだ。

 

「どうしたの、ユウキさん?」

「咲夜。いや、何でもない……」

 

ならここは……

 

「霊夢達は先に行ってくれ。俺はここで妖夢の相手をする」

「「なっ!?」」

 

霊夢と魔理沙が同時に驚き、妖夢も目を見開いた。

咲夜だけはただ黙って無反応だけど。

 

「何言っているのよ。1人でなんて危険じゃない!」

「おいおい、私から見てもアイツ結構やばそうだぞ? 大丈夫かよ」

 

魔理沙が心配するように、今の妖夢は前に会った時以上に殺気立っているのは分かる。

多分あの時俺に負けたのを心の底で、根に持っているのだろうな。

でも主の命を優先して私怨は心に潜めている感じだ。

 

「お前の主が言ったのは俺を通すな、だろ? 霊夢達の事は通すなと言われたか?」

「い、いえ、ですが侵入者を黙って通るわけにはいきません!」

「じゃあこう考えろ。俺達4人を一斉に相手にして全員通されるか、それとも主が一番危険視してる俺を確実に足止めするか」

「それは……」

 

妖夢は明らかに迷っているな。

迷う事じゃないと思うけど、こういう言い方をされて迷うとは、思っていた以上にかなり素直な性格だな。

 

「ちょっと、どういうつもりよ?」

 

霊夢が小声で話しかけてきた。

魔理沙も同じようで頷いている。

 

「どういうも何も今言った通りだ。さっきから嫌な感じがする。ここで時間を食うわけにはいかない。霊夢達は早くこいつの主の所に行って異変を解決させてくれ」

 

そう言うと霊夢は驚いた顔をした。

なんでそこまで驚くんだ?

 

「……ちょっと、意外ね。リリーホワイトと約束したあなたなら、どうしても自分で異変を解決すると思っていたのに」

「あぁ、なるほどな。でも要は異変が解決されて、春が戻ってくればいいんだろ。その為にどうすれば一番良いかを判断しただけだ」

「そういう事なら。私達に任せておけ! 行こうぜ霊夢、咲夜」

 

魔理沙が霊夢と咲夜を駆りたてて先に行こうとしたが、咲夜は黙って首を横に振った。

 

「私もここに残るわ。それなら少しは安心でしょ、霊夢?」

「お、おいおい。俺は1人で大丈夫だっての」

 

あまり残ってほしくはないんだよな。俺が今からやろうとしている事を知られたくないし。

でも、咲夜はどことなく気付いていそうな気がする。

霊夢は俺を何かを訴えかけるようでもなく、ただ黙ってじっと見つめてきた。

そして、咲夜の方に目を向け同じく睨むように見た。

咲夜が少し頷くと霊夢は軽く溜息をついた。

 

「そう、ね。元々咲夜はユウキさんのサポートで付いてきたんだし。元凶退治は私と魔理沙だけで十分よ」

 

あれ? 思ったよりもすんなりオッケーしちゃうんだな?

 

「おっ、どうした霊夢? ここは咲夜とユウキが2人になるのを妬く所、ゲフォッ!?」

 

俺と同じ事を思った魔理沙が余計な事を言って、見事な肘打ち食らってる……さっき俺がメルランにやったのはあんな感じか。

 

「と、とにかく! 早くやっつけてとっとと追いついて来なさいよ。まぁ、その頃には終わってるかもしれないけど」

「はいはい。分かったから早く行きなさい……そう言えば、妖夢がやけに静かね」

 

さっきから静かな妖夢へと目を向けてみると。

 

「いや……ぅーん、ここは……」

 

眉間に皺を寄せて、しゃがみこみながらブツブツと考え込んでいた。

 

「ま、まだ悩んでる。しかもかなり真剣に……」

「根はとても真面目なのよ。アホの子だけど……」

 

咲夜がフォローしようとしたが、妖夢が実はアホの子だと言う事は霊夢と魔理沙も分かったようだ。

 

「はぁ~……ともかく、私と魔理沙は行くわね。油断しないようにね」

「あぁ、そっちもな」

 

まだ悩んでいる妖夢の上を霊夢と魔理沙が飛んで行く。

俺と咲夜も今のうちに行けば良かったかもしれない。

でもそうはいかないんだよな。

 

「分かりました! ユウキさん以外は通って……アレ?」

 

やっと結論が出たようだけど、顔を上げた妖夢の先には俺と咲夜しかいない。

 

「あの、博麗の巫女と白黒の魔法使いは?」

「もうとっくに先に行った。気付いてなかったのかよ……」

「な、なんですって!? わ、私に気付かれずに行くなんて、流石は博麗の巫女です」

 

咲夜と2人で深く溜息をつく。

真剣に相手しようと思ったのが馬鹿らしくなってきた。

 

「あーほら、俺も先に行きたいからとっとと始めようぜ」

 

俺がそう言うと妖夢の目付きが変わり、刀を構えた。

切り替えが早いな。

 

「じゃ、やるか」

 

拳を握り妖夢へと走り出そうとした俺の肩を咲夜が掴んで止めた。

 

「待ちなさい。これを使って、いくらあなたでも素手じゃあの子は厳しいんじゃない?」

 

そう言って咲夜が差し出してきたのは、2本のナイフ。

咲夜が弾幕ごっこで使っていたのよりも刃渡りが広く、サバイバルナイフなどの軍用ナイフに似た形状のナイフだ。

こういうのなら俺も使いなれている。

弾幕用ナイフもだけどこんな大きなナイフを2本もどこに仕舞っていたのかはちょっと気になるが、気にしたら負けだな。

 

「あーやっぱり咲夜は俺がしようとしてる事、気付いてたか」

「勿論よ。魔理沙は分かってないようだったけど、霊夢は気付いていたでしょうね。だから止めると思ってたのに、意外だったわ」

「と言うわけで妖夢。これで、勝負だ」

「望むところだ」

 

俺がしようとしている事、それは妖夢と弾幕ごっこではない真っ向勝負。

本当は素手でやるつもりだったけど、流石にそれだと苦戦したかも。

それに弾幕ごっこじゃなく、真っ向勝負をするだなんて霊夢が聞いたら絶対に止めただろうな、薄々気付いていたみたいだけど。

前に俺と美鈴が格闘戦した時も、後で聞いて怒ってたし。

 

「あなたがこの前妖夢を挑発していたのは、こういう状況になるとよんでいたからかしら?」

「さーな。でも、妖夢の相手は俺がするとは決めていたさ。で、あんな勝ち方したら妖夢は弾幕ごっこではなく、剣で勝負を付けに来るとも思ってた。まぁこうもすんなりと進むとは思ってなかったけど」

「それは……でも、霊夢も言っていたけど、油断しないでね。あなたなら大丈夫だと思うけど」

 

咲夜もやはり気付いてたか、あの時俺の側で妖夢の動き見てたしな。

 

「あぁ、問題ない。弾幕ごっこならともかく、真っ向勝負なら……俺は絶対に妖夢に負けないから」

 

それを聞き、妖夢の耳がぴくりと動いた気がした。

 

 

 

  俺は絶対に妖夢に負けないから

 

自信満々にそう言い放ち、ゆっくりと彼は私に向かって歩いてきました。

安い挑発です……でも、私はその挑発に乗って昨日不覚を取ってしまった。

博麗の巫女と白黒魔法使いは通してしまったけれども、春の光を持っている2人を西行妖の元へ導くのは好都合でそう。

彼の言う通り、幽々子様は彼以外を特に危険視せず、むしろ春の光を持ってくるのを待っていたように思えました。。

なら私は幽々子様が危険視している彼をを止めるだけです。。

あの時、私は彼を甘く見ていました。

私の外見が幼いから、女だから甘く見ている、そう思いこんでしまいました。

だから、軽く脅かすつもりで首筋に剣を当てようと踏み込み、あっけなく敗北。

確実に首を捉えたはずの刀は、彼の手の中にあり逆に私の首筋に当てられてしまいました。

何が起きたのか、あの時はさっぱり分かりません。

目にもとまらぬ速さとはまさにあの事でした。

彼は決して素人ではなく、弱くもない、そればかりか間違いなく強いです。

そして、私を甘く見ているつもりも、侮っているわけでもない。

その証拠に、私に負けないと自信ありげに言っていても、彼は決して私を見下した目をしていません。

女だから、外見が幼いから弱いなどとは思っていない目です。

彼は最初から私を強者と見ていました。私がその目に気付いていなかっただけです。

だから、私ももう侮らない。

 

「行きます!」「行くぞ!」

 

ある程度距離を詰めた所で、私と彼は同時に叫び走りだす。

右の楼観剣を横一閃に振ったけど、彼が逆手に握った右のナイフで受け止められました。

すかさず左の白楼剣を突きだしましたが、彼は身を捻ってかわしました。

逆に彼の左手のナイフが突き出されました。

無理やり体をねじり、何とかかわし再び間合いを取る。

僅かこれだけで、彼がとても強い事を再認識させられました。

それでも、勝てないとは思わないです。

 

「……はぁ~」

 

2本の刀を鞘におさめ、腰を低くしての抜刀の構え。

昨日とは違う本気の速さでの抜刀。

力では敵わないかもしれないけど、速さは私の方が上です。

十分に呼吸を整え準備をしたなら、瞬間移動とまでは行かなくても天狗よりも早く移動できます。

この速さで繰り出す抜刀で一気に勝負!

 

「はっ!」

 

そう思っていました。しかし、現実は甘くありません。

 

「確かに速いな」

「なっ!?」

 

私の最高速度の抜刀は空を斬り、真っ正面にいたはずの彼が、いつの間にか私の真横にいました。

 

「でもその程度じゃ、俺は捉えられない」

 

とっさに左手で腰にある白楼剣を抜き、彼へと振う。

全力の抜刀を繰り出した直後なので動作に遅れが出ますがが、それでも何もしないよりはマシでしょう。

 

「これは遅い」

 

今度も白楼剣は空振り。今度は私の背中に彼が周りこんでいました。

剣士として背中の傷は一生の恥。

そうおじい様から教わったのに、私は簡単に背中を取られてしまいました。

ですが、それも一瞬だけです。

 

「うおぉぉっ~!!」

 

硬直した体に鞭を打ち、全力で飛び上がる。

空中で宙返りをしながら、下にいる彼を見下ろしながら剣を振り降ろす。

それすらも彼は簡単にかわしてしまいました。

 

「まだ、まだです!」

 

両手で刀を抜き、彼へと猛襲をかける。

右で剣撃がかわされたなら、すぐに周るように左の刀で追撃。

左右同時の振り降ろし、からの時間差振り上げ。

十分な加速からの回転連続斬撃。

そのどれもが、2本のナイフのみで全て捌いて行きます。

 

「はぁ、はぁ……どうしました? さっきから防戦一方ですよ? 攻めてこないんですか?」

「それだけ妖夢の攻撃が激しかったんだよ」

 

思いっきりの強がり、やせ我慢。

私はさっきから何度攻撃しても、彼は最低限の動きでかわしています。

少し、息を整える時間を稼いだ方が良いですね。

 

「それに、そのナイフの扱いにとても慣れているようですね」

「まぁな。特にこの形状のは手にじっくりと馴染んできて、とても使いやすい。流石は咲夜のナイフだ」

 

彼の後ろでメイドの咲夜さんが少し微笑みんだ気がしました。

 

「でも妖夢だってすごい剣技だな。俺以上だ」

 

嫌味のつもりでしょうか? いえ、彼はそんな目をしていません。

 

「ふっ、ふふっ、嫌味ですか? 私の刀はあなたに全く届いていないのに」

 

分かっていてもつい言ってしまいました。

これではどっちが嫌味か分かったものではありません。

 

「そりゃあな。瞬発力にも動体視力にも自信があるし……何より、妖夢に足りないモノが俺には十分にあるからな」

 

私に、足りない物?

 

「それは一体何ですか? 身長とか言わないでしょうね?」

 

これでも背が低のは気にしてるんです。

 

「いや、背が低くても可愛らしいだろ? 本人がどう思っているかは別にしてな」

「か、可愛い、ですか……」

 

可愛らしい……真剣勝負の最中に言う事でしょうか?

咲夜さんが額に手をあて、首を振って呆れているようです。

 

「あ、もっと言っておくと。咲夜にも勝てないと思うぞ? 咲夜も妖夢に足りない物持ってるからな」

「咲夜さん、にもですか?」

 

何でしょう。気品や上品さは幽々子様からも厳しく言われていますし……

 

「咲夜さんにあって私にないもの……胸?」

 

こ、これでも人並みにはあるはず……です、よね。

 

「なんで最初にそこにいくのよ!? ってそんな哀しそうな顔しないの! あなただって十分にあるわよ! 流石に美鈴やパチュリー様ほどじゃなくても……ってユウキさん、私を巻き込まないでください!」

「あははっ、ごめんごめん。じゃ、勝負に戻るか。お言葉に甘えて、俺から攻撃させてもらうぜ」

 

なにか心にダメージを負った気がしますが、おかげで息は整いました。

これでまだ戦えます。

さぁ、次は彼から攻撃をしてくるそうですが、刀より刀身が短いナイフでの攻撃、簡単には通らせません。

彼との間合いも十分に開いています。

 

「……ふぅ」

 

彼は短く息を吐き、左手のナイフを逆手で構え、右手のナイフを私へと突き出しました。

突進しつつ右のナイフで先制し、左のナイフで追撃するつもりでしょう。

タイミングを見計らってカウンターで返します。

 

「………ふっ!」

「えっ!?」

 

彼は突然、右手のナイフを投げました。

と言っても私に投げつけるのでもなく、ただ上に放り投げただけです。

つい視線が放り投げられたナイフに行ってしまいました。

 

「しまっ……なっ!?」

 

一瞬の隙を作ってしまった事にはすぐに気付き、彼へと意識を向けましたが、彼の気配が突然消えてしまいました。

姿を見失ったわけはありません。

彼はちゃんと私の正面にいて、私を見ています。

ですが、その目からは何も感じません。

まるで目の前にいるのはただの人形……いえ、姿は見えるのに消えてしまったようでした。

この間は、1秒にもみたない時間でした。

けれども、次の瞬間には……

 

「………」

 

彼は無言で私の側を翔けぬけていました。

 

「……え?」

 

そして、私の首は鋭いナイフで斬られていました。

 

 

続く

 

 

 




真剣勝負と言いつつ……何やってんだこいつら!?(爆)
まぁ、それはともかく、妖夢になくてユウキや咲夜にあるもの。
それはあくまでこの小説での設定です。

ユウキはナイフ以外にも剣や槍を使えますけど、剣の腕は妖夢の方が各段に上です。
ですが、今の妖夢ではユウキには勝てません……能力を使わない咲夜にも。
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