最初はもっと馬鹿っぽさ出てたんですけどねぇ、真面目にしてみました!(キリッ
雲の上に張られていた結界を破り、いよいよ冥界へと突入した俺達は人魂の歓迎を受けていた。
「いきなり物騒なお出迎えだな。幽霊は墓場で寝てろってのに」
迫りくる人魂をレーザーで撃墜しながら、魔理沙は毒づいた。
気持ちは分からなくもない。
大きな門を抜けた途端に人魂が襲ってきた。それも四方八方から大量にだ。
霊夢曰くこれは幽霊らしく、冥界に多くいるものたちだ。
「ここは冥界でこいつらは幽霊、生者の私達が珍しいんでしょうね」
魔理沙と背中合わせで御札や弾幕を撃ち続けて、霊夢が答えた。
最も、幽霊だからと言って死んだ者の霊とは限らなく、自然現象として生まれる幽霊もいるらしいけど。
「もしくは侵入者である私達を追い払うように命じられている、からかしら?」
「そっちの方がありえそうだな」
俺も咲夜と背中合わせで迫りくる幽霊を追い払っている。
数が多いので弾幕ではなく、直接殴ったり蹴ったりして対処している。
それでもキリがない。
「集めた春はどうやらこの奥にあるようね。向こうから暖かい空気が流れてきてるわ。羅針盤も向こうを指しているわね」
霊夢が顔を向けた先では、空がうっすらと桜色に輝いていた。
あの下に春の光は集められているようだ。
「でもコレじゃキリないぜ。一気に突破するか」
「それしかないか。俺と魔理沙で道を……ん?」
と、思っていたら幽霊達はまるで誰かに下がれと命じられたように、急に消えてしまった。
「……来たか。妖夢」
俺達が身構えた先に、魂魄妖夢がすっと現れた。
「ここからは通しません。それとあなた達の持っている春の光、それを渡して頂きます」
「そう言われて、はいどうぞって渡すアホはいないだろ」
妖夢は2本の刀を既に抜いていて、それを俺に真っ直ぐに向けた。
「あなたはどうしても通すなと、幽々子様に念を押されていますので、ここで引き返してもらいます」
「ユウキさんだけを念押し?」
「博麗の巫女である霊夢じゃなくて、俺を通すなとわざわざ? どうしてだ?」
まぁ異変の解決は博麗の巫女の責務だから、ってのはあるかもしれないけど俺はダメと名指しか。
「あなたは危険だからです。それは私も同感です」
幻想支配の事を言っているのか。こうも危険と面と向かって言われるのは紫以来か。
「っ!?」
その時だった。とてつもない何か嫌な感じがした。
何か危険を知らせているのとは違う、虫の知らせとも言うべき嫌な予感。
嫌な予感がする事は何度も会ったけど、ここまで強いのはは生まれて初めてだ。
勘が強い霊夢を見てみたが、特に何も感じてはいないようだ。
「どうしたの、ユウキさん?」
「咲夜。いや、何でもない……」
ならここは……
「霊夢達は先に行ってくれ。俺はここで妖夢の相手をする」
「「なっ!?」」
霊夢と魔理沙が同時に驚き、妖夢も目を見開いた。
咲夜だけはただ黙って無反応だけど。
「何言っているのよ。1人でなんて危険じゃない!」
「おいおい、私から見てもアイツ結構やばそうだぞ? 大丈夫かよ」
魔理沙が心配するように、今の妖夢は前に会った時以上に殺気立っているのは分かる。
多分あの時俺に負けたのを心の底で、根に持っているのだろうな。
でも主の命を優先して私怨は心に潜めている感じだ。
「お前の主が言ったのは俺を通すな、だろ? 霊夢達の事は通すなと言われたか?」
「い、いえ、ですが侵入者を黙って通るわけにはいきません!」
「じゃあこう考えろ。俺達4人を一斉に相手にして全員通されるか、それとも主が一番危険視してる俺を確実に足止めするか」
「それは……」
妖夢は明らかに迷っているな。
迷う事じゃないと思うけど、こういう言い方をされて迷うとは、思っていた以上にかなり素直な性格だな。
「ちょっと、どういうつもりよ?」
霊夢が小声で話しかけてきた。
魔理沙も同じようで頷いている。
「どういうも何も今言った通りだ。さっきから嫌な感じがする。ここで時間を食うわけにはいかない。霊夢達は早くこいつの主の所に行って異変を解決させてくれ」
そう言うと霊夢は驚いた顔をした。
なんでそこまで驚くんだ?
「……ちょっと、意外ね。リリーホワイトと約束したあなたなら、どうしても自分で異変を解決すると思っていたのに」
「あぁ、なるほどな。でも要は異変が解決されて、春が戻ってくればいいんだろ。その為にどうすれば一番良いかを判断しただけだ」
「そういう事なら。私達に任せておけ! 行こうぜ霊夢、咲夜」
魔理沙が霊夢と咲夜を駆りたてて先に行こうとしたが、咲夜は黙って首を横に振った。
「私もここに残るわ。それなら少しは安心でしょ、霊夢?」
「お、おいおい。俺は1人で大丈夫だっての」
あまり残ってほしくはないんだよな。俺が今からやろうとしている事を知られたくないし。
でも、咲夜はどことなく気付いていそうな気がする。
霊夢は俺を何かを訴えかけるようでもなく、ただ黙ってじっと見つめてきた。
そして、咲夜の方に目を向け同じく睨むように見た。
咲夜が少し頷くと霊夢は軽く溜息をついた。
「そう、ね。元々咲夜はユウキさんのサポートで付いてきたんだし。元凶退治は私と魔理沙だけで十分よ」
あれ? 思ったよりもすんなりオッケーしちゃうんだな?
「おっ、どうした霊夢? ここは咲夜とユウキが2人になるのを妬く所、ゲフォッ!?」
俺と同じ事を思った魔理沙が余計な事を言って、見事な肘打ち食らってる……さっき俺がメルランにやったのはあんな感じか。
「と、とにかく! 早くやっつけてとっとと追いついて来なさいよ。まぁ、その頃には終わってるかもしれないけど」
「はいはい。分かったから早く行きなさい……そう言えば、妖夢がやけに静かね」
さっきから静かな妖夢へと目を向けてみると。
「いや……ぅーん、ここは……」
眉間に皺を寄せて、しゃがみこみながらブツブツと考え込んでいた。
「ま、まだ悩んでる。しかもかなり真剣に……」
「根はとても真面目なのよ。アホの子だけど……」
咲夜がフォローしようとしたが、妖夢が実はアホの子だと言う事は霊夢と魔理沙も分かったようだ。
「はぁ~……ともかく、私と魔理沙は行くわね。油断しないようにね」
「あぁ、そっちもな」
まだ悩んでいる妖夢の上を霊夢と魔理沙が飛んで行く。
俺と咲夜も今のうちに行けば良かったかもしれない。
でもそうはいかないんだよな。
「分かりました! ユウキさん以外は通って……アレ?」
やっと結論が出たようだけど、顔を上げた妖夢の先には俺と咲夜しかいない。
「あの、博麗の巫女と白黒の魔法使いは?」
「もうとっくに先に行った。気付いてなかったのかよ……」
「な、なんですって!? わ、私に気付かれずに行くなんて、流石は博麗の巫女です」
咲夜と2人で深く溜息をつく。
真剣に相手しようと思ったのが馬鹿らしくなってきた。
「あーほら、俺も先に行きたいからとっとと始めようぜ」
俺がそう言うと妖夢の目付きが変わり、刀を構えた。
切り替えが早いな。
「じゃ、やるか」
拳を握り妖夢へと走り出そうとした俺の肩を咲夜が掴んで止めた。
「待ちなさい。これを使って、いくらあなたでも素手じゃあの子は厳しいんじゃない?」
そう言って咲夜が差し出してきたのは、2本のナイフ。
咲夜が弾幕ごっこで使っていたのよりも刃渡りが広く、サバイバルナイフなどの軍用ナイフに似た形状のナイフだ。
こういうのなら俺も使いなれている。
弾幕用ナイフもだけどこんな大きなナイフを2本もどこに仕舞っていたのかはちょっと気になるが、気にしたら負けだな。
「あーやっぱり咲夜は俺がしようとしてる事、気付いてたか」
「勿論よ。魔理沙は分かってないようだったけど、霊夢は気付いていたでしょうね。だから止めると思ってたのに、意外だったわ」
「と言うわけで妖夢。これで、勝負だ」
「望むところだ」
俺がしようとしている事、それは妖夢と弾幕ごっこではない真っ向勝負。
本当は素手でやるつもりだったけど、流石にそれだと苦戦したかも。
それに弾幕ごっこじゃなく、真っ向勝負をするだなんて霊夢が聞いたら絶対に止めただろうな、薄々気付いていたみたいだけど。
前に俺と美鈴が格闘戦した時も、後で聞いて怒ってたし。
「あなたがこの前妖夢を挑発していたのは、こういう状況になるとよんでいたからかしら?」
「さーな。でも、妖夢の相手は俺がするとは決めていたさ。で、あんな勝ち方したら妖夢は弾幕ごっこではなく、剣で勝負を付けに来るとも思ってた。まぁこうもすんなりと進むとは思ってなかったけど」
「それは……でも、霊夢も言っていたけど、油断しないでね。あなたなら大丈夫だと思うけど」
咲夜もやはり気付いてたか、あの時俺の側で妖夢の動き見てたしな。
「あぁ、問題ない。弾幕ごっこならともかく、真っ向勝負なら……俺は絶対に妖夢に負けないから」
それを聞き、妖夢の耳がぴくりと動いた気がした。
俺は絶対に妖夢に負けないから
自信満々にそう言い放ち、ゆっくりと彼は私に向かって歩いてきました。
安い挑発です……でも、私はその挑発に乗って昨日不覚を取ってしまった。
博麗の巫女と白黒魔法使いは通してしまったけれども、春の光を持っている2人を西行妖の元へ導くのは好都合でそう。
彼の言う通り、幽々子様は彼以外を特に危険視せず、むしろ春の光を持ってくるのを待っていたように思えました。。
なら私は幽々子様が危険視している彼をを止めるだけです。。
あの時、私は彼を甘く見ていました。
私の外見が幼いから、女だから甘く見ている、そう思いこんでしまいました。
だから、軽く脅かすつもりで首筋に剣を当てようと踏み込み、あっけなく敗北。
確実に首を捉えたはずの刀は、彼の手の中にあり逆に私の首筋に当てられてしまいました。
何が起きたのか、あの時はさっぱり分かりません。
目にもとまらぬ速さとはまさにあの事でした。
彼は決して素人ではなく、弱くもない、そればかりか間違いなく強いです。
そして、私を甘く見ているつもりも、侮っているわけでもない。
その証拠に、私に負けないと自信ありげに言っていても、彼は決して私を見下した目をしていません。
女だから、外見が幼いから弱いなどとは思っていない目です。
彼は最初から私を強者と見ていました。私がその目に気付いていなかっただけです。
だから、私ももう侮らない。
「行きます!」「行くぞ!」
ある程度距離を詰めた所で、私と彼は同時に叫び走りだす。
右の楼観剣を横一閃に振ったけど、彼が逆手に握った右のナイフで受け止められました。
すかさず左の白楼剣を突きだしましたが、彼は身を捻ってかわしました。
逆に彼の左手のナイフが突き出されました。
無理やり体をねじり、何とかかわし再び間合いを取る。
僅かこれだけで、彼がとても強い事を再認識させられました。
それでも、勝てないとは思わないです。
「……はぁ~」
2本の刀を鞘におさめ、腰を低くしての抜刀の構え。
昨日とは違う本気の速さでの抜刀。
力では敵わないかもしれないけど、速さは私の方が上です。
十分に呼吸を整え準備をしたなら、瞬間移動とまでは行かなくても天狗よりも早く移動できます。
この速さで繰り出す抜刀で一気に勝負!
「はっ!」
そう思っていました。しかし、現実は甘くありません。
「確かに速いな」
「なっ!?」
私の最高速度の抜刀は空を斬り、真っ正面にいたはずの彼が、いつの間にか私の真横にいました。
「でもその程度じゃ、俺は捉えられない」
とっさに左手で腰にある白楼剣を抜き、彼へと振う。
全力の抜刀を繰り出した直後なので動作に遅れが出ますがが、それでも何もしないよりはマシでしょう。
「これは遅い」
今度も白楼剣は空振り。今度は私の背中に彼が周りこんでいました。
剣士として背中の傷は一生の恥。
そうおじい様から教わったのに、私は簡単に背中を取られてしまいました。
ですが、それも一瞬だけです。
「うおぉぉっ~!!」
硬直した体に鞭を打ち、全力で飛び上がる。
空中で宙返りをしながら、下にいる彼を見下ろしながら剣を振り降ろす。
それすらも彼は簡単にかわしてしまいました。
「まだ、まだです!」
両手で刀を抜き、彼へと猛襲をかける。
右で剣撃がかわされたなら、すぐに周るように左の刀で追撃。
左右同時の振り降ろし、からの時間差振り上げ。
十分な加速からの回転連続斬撃。
そのどれもが、2本のナイフのみで全て捌いて行きます。
「はぁ、はぁ……どうしました? さっきから防戦一方ですよ? 攻めてこないんですか?」
「それだけ妖夢の攻撃が激しかったんだよ」
思いっきりの強がり、やせ我慢。
私はさっきから何度攻撃しても、彼は最低限の動きでかわしています。
少し、息を整える時間を稼いだ方が良いですね。
「それに、そのナイフの扱いにとても慣れているようですね」
「まぁな。特にこの形状のは手にじっくりと馴染んできて、とても使いやすい。流石は咲夜のナイフだ」
彼の後ろでメイドの咲夜さんが少し微笑みんだ気がしました。
「でも妖夢だってすごい剣技だな。俺以上だ」
嫌味のつもりでしょうか? いえ、彼はそんな目をしていません。
「ふっ、ふふっ、嫌味ですか? 私の刀はあなたに全く届いていないのに」
分かっていてもつい言ってしまいました。
これではどっちが嫌味か分かったものではありません。
「そりゃあな。瞬発力にも動体視力にも自信があるし……何より、妖夢に足りないモノが俺には十分にあるからな」
私に、足りない物?
「それは一体何ですか? 身長とか言わないでしょうね?」
これでも背が低のは気にしてるんです。
「いや、背が低くても可愛らしいだろ? 本人がどう思っているかは別にしてな」
「か、可愛い、ですか……」
可愛らしい……真剣勝負の最中に言う事でしょうか?
咲夜さんが額に手をあて、首を振って呆れているようです。
「あ、もっと言っておくと。咲夜にも勝てないと思うぞ? 咲夜も妖夢に足りない物持ってるからな」
「咲夜さん、にもですか?」
何でしょう。気品や上品さは幽々子様からも厳しく言われていますし……
「咲夜さんにあって私にないもの……胸?」
こ、これでも人並みにはあるはず……です、よね。
「なんで最初にそこにいくのよ!? ってそんな哀しそうな顔しないの! あなただって十分にあるわよ! 流石に美鈴やパチュリー様ほどじゃなくても……ってユウキさん、私を巻き込まないでください!」
「あははっ、ごめんごめん。じゃ、勝負に戻るか。お言葉に甘えて、俺から攻撃させてもらうぜ」
なにか心にダメージを負った気がしますが、おかげで息は整いました。
これでまだ戦えます。
さぁ、次は彼から攻撃をしてくるそうですが、刀より刀身が短いナイフでの攻撃、簡単には通らせません。
彼との間合いも十分に開いています。
「……ふぅ」
彼は短く息を吐き、左手のナイフを逆手で構え、右手のナイフを私へと突き出しました。
突進しつつ右のナイフで先制し、左のナイフで追撃するつもりでしょう。
タイミングを見計らってカウンターで返します。
「………ふっ!」
「えっ!?」
彼は突然、右手のナイフを投げました。
と言っても私に投げつけるのでもなく、ただ上に放り投げただけです。
つい視線が放り投げられたナイフに行ってしまいました。
「しまっ……なっ!?」
一瞬の隙を作ってしまった事にはすぐに気付き、彼へと意識を向けましたが、彼の気配が突然消えてしまいました。
姿を見失ったわけはありません。
彼はちゃんと私の正面にいて、私を見ています。
ですが、その目からは何も感じません。
まるで目の前にいるのはただの人形……いえ、姿は見えるのに消えてしまったようでした。
この間は、1秒にもみたない時間でした。
けれども、次の瞬間には……
「………」
彼は無言で私の側を翔けぬけていました。
「……え?」
そして、私の首は鋭いナイフで斬られていました。
続く
真剣勝負と言いつつ……何やってんだこいつら!?(爆)
まぁ、それはともかく、妖夢になくてユウキや咲夜にあるもの。
それはあくまでこの小説での設定です。
ユウキはナイフ以外にも剣や槍を使えますけど、剣の腕は妖夢の方が各段に上です。
ですが、今の妖夢ではユウキには勝てません……能力を使わない咲夜にも。