幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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なんとか今日中に完成しました!


第5話 「紅魔館」

Side 咲夜

 

はぁ~~~……全く、美鈴ったら。あんなに騒いで彼を連れ出すなんて、何を考えているのかしら。

釣りをしている美鈴の様子を見に来ただけなのに、とんだ事になってしまったわね。

 

「美鈴はなんでそこまであの外来人に肩入れするのかしら」

「あ、あのユウキさんは悪い人じゃないですよ?」

「ユウキはあたいの事、さいきょーだって言った、だからいいやつだ!」

 

この妖精たちは、どうやら私があの外来人の事を悪く言ってると思ったみたいね。

無愛想に見えて、偉く懐かれたものね。

 

「別に悪く言ったわけじゃないわよ? それにチルノの事最強と言ったの?」

 

この氷精はさいきょー、さいきょーって言いふらしてるのは知ってるけど、真に受ける人がいたなんて。

ま、こっちに来たばかりの外来人だから気を浸かったのかも。

 

「うん、ユウキが言ってたぞ。あたいがさいきょーだと思うなら、ずっとそう思っておけって。それから……えっと」

「誰に何を言われても自分の事を信じて、信念を貫き通せれば、チルノちゃんは最強だ。だよ」

「そうそう、そう言ってくれたんだ!」

 

へぇ、面白い事言うのね。確か新聞には戦闘経験豊富で戦争すら体験した事がある。と書いてあったけど、それと何か関係あるのかしら?

外来人にはあまりお目にかかった事ないけど、少なくとも彼は一番強い外来人ね。

だから警戒もしたのだけど、ナイフに手を伸ばす挙動もあっさり見破っていたし、お嬢様とパチュリー様の 【あの計画】 の支障になるようなら……と思っていたけど。

でも、美鈴が警戒していないなら、私の取り越し苦労みたい。

せっかくだからあの外来人の事をもっと知れば、お嬢様のいい退屈しのぎになりそうね。

 

「あの、2人を追わなくていいんですか?」

「はっ!?」

 

大妖精に言われて、美鈴と外来人が紅魔館の門に着こうとしてるのに気付いた。

……仕方ないわね。

 

 

「あ、あれ!? 咲夜さんいつの間に門に着いたんですか?」

「遅かったじゃない、美鈴」

「あれ~? なんであたい達紅魔館にいるの? さっきまで湖にいた気がするけど」

 

そう私は2人に追いつく為、時間を止めチルノと大妖精を連れて紅魔館へ飛んできた。

美鈴も外来人も、いきなり目の前に私達が現れたから驚いてるわね。

 

「あ、これが時止めか。便利な能力だな」

 

ん? なんで外来人が私の能力を知っているのかしら?

 

「めーりん?」

「ご、ごめんなさい咲夜さん! 咲夜さん達の事話してる時にうっかり……というか自然に……」

 

初対面の得体のしれない外来人にそこまで気を許すなんて、門番としてどうなのよ?

 

「だ、大丈夫ですよ。ユウキさん悪い人じゃないですから」

「だからって能力をばらす理由には……ひょっとしてお嬢様達も?」

 

私の指摘に口笛を吹いて誤魔化す美鈴の頭部に、ナイフを刺しておいた。

 

「あいたー!? ごめんなさいごめんなさい! お嬢様やパチュリー様の事も少しだけ……」

 

外来人も呆れかえっているわね。というか目の前でナイフが突き刺さった人がいるのにそこには突っ込まないなんて、外来人にしてはかなり変。

 

「よく頭に噛みつかれたり電撃浴びせられたり、頭突き食らったりと散々な目にあってた奴いたからな。こういうの慣れた」

 

いや、それレベルが色々違い過ぎる気が……

 

「ともかく俺は幻想郷にきて間がないんだ。あまり俺を信用するな。後で俺が思ってた通りと違った事して幻滅しても知らないぞ」

 

そう言う外来人の顔が一瞬、ほんの一瞬だけ曇った……あの表情を、目を、私は知っている。

嫌な沈黙が流れる、がチルノの一言でその空気が変わった。

 

「ねぇねぇ、難しい話終わったー? あたいも大ちゃんも待ちくたびれたよー」

「もう、チルノちゃんったら我慢しなきゃダメだよ。今何か大事な御話してるんだから」

 

そこまで大事な話じゃないんだけどね?

 

「はぁ……美鈴、テーブルと椅子ここに持って来なさい。私はこれ捌いてくるから、門の外でなら大丈夫でしょ」

 

門の中なら問題あるけど、外なら大丈夫でしょう……多分。

そう言って私は、魚が一杯入ったバケツを両手に持ち、紅魔館の厨房へと向かった。

背後から気配が沢山近づいてくるのが分かったけど、美鈴がいれば問題ないわね。

 

Side out

 

 

Side 美鈴

 

「さて、咲夜さんが料理作る間、テーブルなど用意しましょうか」

「運ぶの手伝うぞ。どこにあるんだ?」

「私も手伝います」

「あたいもー!」

「それじゃお願いしよう……ん?」

 

3人を連れて、門の側にある小屋からテーブルなどを運ぼうと思ったのですが、そこに来客が来たみたいです。

 

「なぁ、紅魔館ってペットに狼でも飼っているのか?」

「番犬代わりに私がいますから、飼っていませんね」

 

湖の向こうから走ってくるのは、3匹の黒い狼のような妖怪。

こんな時間に襲ってくるとは、お嬢様の就寝時間を狙って?

 

「って、そんな知恵ありそうな妖怪には見えませんね。チルノちゃん、大ちゃん、門の影に隠れててすぐに終わらせるから」

 

さて、門番の仕事をしましょうか。

 

「まて美鈴、あれは俺がやる」

 

と、ユウキさんが私達の前に守るように立ちました。

 

「あの妖怪、昨日俺と人里の子を襲ってきた妖怪の仲間っぽい。仲間の仇打ちでも来たのかも、昨日は女の子背負ってたから逃げの一手だったけど……今は」

 

そう言ってユウキさんは懐から殴打用のグローブを両手に嵌め、狼妖怪達に向かって走り出しました。

昨日の新聞に書かれていた妖怪はあの狼だったんですね。ってそれどころじゃないです。

 

「ユウキさん、下がってて下さい。アレは紅魔館を目指しています、なら門番の私の仕事です」

「なら、紅魔館の御客を守るのも門番の仕事だろ」

 

走りながら門の影からこちらの様子を心配そうに見ている、チルノちゃんと大ちゃんを指さしました。

手に嵌めたグローブも年季が入っていますし、一連の動作の1つ1つにも慣れを感じ、一先ず私は様子を見る事にしました。

これで、彼の力が分かりますね。勿論、危ないと感じたらすぐに助太刀しますが。

 

「無茶しないでくださいね!」

「ユウキ~がんばれ~!」

「気を付けてくださいね!」

「おう!」

 

私とチルノちゃん、大ちゃんの声援を追い風に、ユウキさんは飛びかかってきた狼妖怪の一匹の懐に飛び込み、両手の掌底を無防備な腹に叩きこみます。

 

「ギャインッ!?」

「悪いな、俺は弾幕撃てないから……肉弾戦で退治させてもらうぜ!」

 

右からユウキさんのわき腹に噛みつこうとした妖怪を右の肘打ちで迎撃し、続けてその反動を利用した右パンチを残った狼妖怪の顔に放ちました。

 

「まだやるか?」

 

ユウキさんがドスの効いた声で狼妖怪達を睨みつけると、3匹ともすっかり戦意を喪失したらしく、尻尾を下げ森へと逃げ帰りました。

 

「ふぅ、ま、こんな感じでやればいいか」

 

強いですね。何か能力や霊力などの強化に頼らず、純粋に身体能力を技術で更に効率よく攻撃力に変換しています。

拳法だけでなく、空手なども合わさった総合格闘と言えますね。

 

「ユウキ、すっごーい!」

「ユウキさん大丈夫ですか? とってもかっこよかったです!」

 

息を吐き、何やら独り言をつぶやくユウキさんの元へチルノちゃんと大ちゃんが門から文字通り飛び付いて行きました。

あ、ユウキさんとても面白い表情してますね、照れ隠しでしょうか?

 

「お、おい。いきなり飛びついてくるなって。あんなの美鈴や霊夢ならもっと効率よく退治してるぞ」

「美鈴はともかく、巫女は反則だからユウキが一番すごい!」

 

は、反則って。確かに博麗の巫女の強さは反則級らしいですけどね、色々な意味で。

 

「謙遜する事ないわ、あなただってほんの一瞬で退治したじゃない。おかげで料理が冷めずに済んだわ」

「咲夜さん。もう調理終わったんですか?」

 

時間を止めてやってきたらしい咲夜さんが、門の前に並べたテーブルに出来たての魚料理を並べていました。

 

「てっきり美鈴が対峙してるのかと思えば」

 

咲夜さんの少し非難めいた視線をさらりと流し……

 

「こっち見なさいよ、美鈴」

 

流せませんでした!

 

「い、いや。私がサクッと行こうとしたんですけど」

「アレは多分俺を狙って来たんだ。だから俺がやるのが当然だろ?」

 

ユウキさんが助け舟を出してくれましたが、咲夜さんは。

 

「曲がりなりにもユウキさんはお客様です。紅魔館に害をなすものの始末をお客様の手を煩わすわけにはいきませんわ。ユウキさん、すみませんでした。そして、ありがとうございました」

 

紅魔館のメイドとして、ユウキさんに頭を下げ礼と謝罪の言葉を言いました。

少し、驚きです。咲夜さん、さり気なくユウキさんを名前で呼びましたね?

 

「あ、私からも。ユウキさんありがとうざいました」

「ユウキ、ありがとう!」

「ありがとうございました」

 

私に続いてチルノちゃんと大ちゃんもお礼を言うと、ユウキさんの顔がみるみる赤くなっていきました。

 

「お前らまで……あぁもう! 早く料理食べようぜ。せっかく作ってくれたんだから、冷めたらもったいないだろ」

「ふふっ、そうしましょうか」

 

どうやら咲夜さんもユウキさんに対する警戒心解いたみたいですね。

確かにユウキさんの強さには驚きましたし、あそこまで強くならなきゃいけないほどユウキさんのいた場所では危険があったんでしょうね。

ひとまず、咲夜さんの手料理を堪能しましょうか。

 

 

 

その後、ユウキさんは人里に向かうと言うので見送り、夕食の時に起きてきたお嬢様に報告しました。

 

「で、呑気に朝食会を開き、昼食まで用意してあげたと……」

「申し訳ありませんでした、お嬢様!」

「すみませんでした!」

 

紅魔館の主、レミリア・スカーレットお嬢様は報告を聞き不機嫌そうな声をあげました。

やっぱり、世話を焼き過ぎましたかね。

 

「別にその事でとやかく言うつもりはないわ。悪意がないと判断しての行動でしょうし、そこは咲夜や美鈴を信用しているわ。ただ、私も呼びなさいよ。そんな面白そうな外来人、一度会ってみたいわ」

「……でしたら、恐らく、あの計画の時に会えるかと」

 

ユウキさんなら、お嬢様の計画を止めに来るかもしれない。そう、咲夜さんも思っていた。

 

「へぇ、邪魔でもしにくるのかしら? まぁ、人間には有害な計画だし、それはそれで面白そうね」

「?? 妨害が増えたら計画が御釈迦になるんじゃないですか?」

「分かってないわね、美鈴。障害が博麗の巫女だけじゃつまらないでしょ。障害は多ければ多いほどいいのよ。それにそう簡単にやられる紅魔館じゃないわ」

「でも、あの妖怪にはメチャメチャにやられたけどね、レミィ」

 

レミリアお嬢様の友人で、地下にある図書館の主、パチュリー・ノーレッジ様が食後の紅茶を飲みながらポツリと呟いた一言はお嬢様のハートをブレイクしたようです。

 

「あ、ああれはまだ私達の威厳を知らしめてなかったせいよ」

「どうだか、それにしても咲夜や美鈴が気にかけた外来人ユウキ。魔力も霊力もないただの人間にしか見えなかったのに、、妖怪を素手で退治なんて結構やるじゃない」

「見てたんですか?」

 

どうやら朝の騒動を水晶か何かで覗いていたらしい。流石は魔法使いですね。

 

「まーね。で、あなた達2人はユウキを見て、どう思ったの? ただの外来人と思ってないからあそこまで世話焼いたんでしょ?」

「それは私も気になるわね。私はホントに寝てたからユウキって外来人の事何にも分からないけど、美鈴はともかく咲夜までなんて……もしかして一目惚れ?」

「「違います」」

 

いやらしい笑みを浮かべ、小指を立てるお嬢様に咲夜さんと2人で即答否定しました。

 

「あら、残念。じゃあ、どうしてそこまでしたの?」

「……似ていたんです、ユウキさんの目が」

 

咲夜さんも私と同じ事感じていたみたいですね。それも当然だと思いますけど。

 

「外来人の目がどうしたの? 魔眼だったり?」

「いえ、ただ……昔の、お嬢様に救われる前の私と同じ目をしていたんです。全てに絶望し、誰も信じようとせず、1人で生きていこうとしていたあの頃の私と……」

 

そう、紅魔館にやってきた時の咲夜さんはまさにそうでした。

お嬢様が手を差し伸べ、名前と役目を与えて、今の咲夜さんがいるんです。

 

「私も同じです。あの頃の咲夜さんと似た感じで、それを相手に悟らせないようにも感じましたし。それに……表面上は温かく優しい気でしたが、内面はとても冷たく悲しい気が満ちていました」

「……天狗が謎としか書かなかったのはわざと、かもね。私は朝読んだけど、レミィも読んだ?」

「えぇ、あのバ鴉天狗の新聞にしては妙にちぐはぐよね。わざと書こうとしなかったかのような意図を感じるわ」

 

天狗の新聞は何度か読みましたが、あの書き方は非常に違和感を感じていました。

いつもは何でもない事でも面白おかしく書いたり、脚色するのにユウキさんに関する記事は簡略されていて、何かぼやかしているかのような印象でした。

 

「ま、それは今は関係ないわね。パチェ、準備は後どれくらい?」

「もうすぐよ。下準備は出来ているから後は調整ね」

 

お嬢様の一大計画がもうすぐ始まろうとしています。

その時、ユウキさんは止めに来るのでしょうか?

来てほしいような、でもお嬢様に会わせたくないような気がしますね。

 

「ふっふっふっふっ、いよいよ始まるわ。私達の楽園、幻想郷を紅く染め上げましょう!」

 

 

続く

 




吸血鬼事変って何がどうなったのか、いつか詳しい資料出ないですかね。
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