霊夢はレミリアや幽々子達と楽しく話こんでいるので、俺は別の所に行く事にした。
で、席を立った途端。美鈴やフラン達と一緒にいた幽香と目が合った。
幽香はニコリと微笑んだだけだけど、これは確実によばれているな。
どこに行こうか悩んでたから構わないけどな。
そこにいたのは美鈴とフランと幽香、それに大ちゃんとリグルだ。
何だかメンバーが中途半端な気がするな。
「よぉ、楽しんでるかフラン」
「お兄ちゃん! 待ってたんだよ!」
「ユウキさん、ここどうぞ」
大ちゃんが場所を空けてくれて、フランとの間に座る。
何だか、前の宴会の時と同じような気がするけど。
それを見ていた幽香と美鈴がなぜか笑った。
「? 何を笑ってるんだ?」
「宴会の時もそうだけど、あなたは本当に子供に好かれやすいと思ったのよ。梨奈にも好かれてるでしょ?」
そう言えば梨奈は幽香と仲良かったんだよな。
「ルーミアもチルノもよくおにーさんの事、楽しそうに話してるしね」
「ルーミアの場合、餌付けのせいかも。で、また俺をおにーさんと呼んでるのか、リグル」
師匠よびといい、名前以外で呼ばれるのは未だに慣れない。
かろうじてフランによばれるのが慣れたくらいだ。
「ユウキさんよりこっちの方が言いやすいし、個性だよ個性」
「個性って、自分で言うものかそれ」
「やっぱり私もユウキさんよりお兄様の方がいいかな」
まぁ確かにチルノやルーミアといるとキャラが強くて、リグルじゃ影薄くなっちゃいそうだよな。
俺の隣で考え込む大ちゃんも何気に個性強いし。
「おにーさん、何だか失礼な事考えてない?」
「あぁ。良く分かったな。いや、ホントリグルは大変だなと思って……がんばれよ」
「否定もせずに即答!? しかも、なんか励まされた!?」
リグルのツッコミがツボにハマったらしく、幽香とフランは大爆笑して大ちゃんと美鈴は必死に笑いを堪えているがすぐに崩壊した。
「ところでチルノやみすちーはどこにいるんだ? てっきり大ちゃん達と一緒だと思ったのに」
「あ、チルノちゃんならここにいますよ」
美鈴がちょっと体をずらすと、チルノが丸まって眠っているのが見えた。
顔が真っ赤なので酔っ払って眠ってしまったのか。
チルノは意外と酒に強いはずだったんだけどな。
「で、あの鳥妖怪と闇妖怪は上ね」
「上?」
幽香が指さす方を見ると……
「まーてーおーにーくーチーキーン!」
「ちょっと、ルーミア私は鳥だけど、肉じゃないわよ! あぁもう悪酔いするんじゃないの!」
ルーミアがみすちーを追いかけ回していた。
「何してるんだ、アレ。ん? あっちでも誰か飛びまわってるな」
向こう側の空では誰かが弾幕ごっこをしているようだった。
それにしては派手にやってるようだけど。
「「「魔理沙―ニゲロニゲロー! さあ、逃げなきゃ食べちゃうぞー!」」」
「わわっ、ちょっと待てフランズ! そのセリフはレミリアが言いそうなセリフだぜ!」
3人のフランが魔理沙を追いかけ回していた。
こっちもあっちも追いかけっこ。
「これ、どんな状況なんだ? ルーミアは何となく予想付くけど、なんでフランが分身して魔理沙を追いかけてる?」
俺の隣に座っているフランに目を向けると、あはははは、と冷や汗をかいている。
美鈴と大ちゃんは苦笑いを浮かべ、幽香はくすくす笑っている。
というか、美鈴がいたのになぜこんな事に?
「え、えっとね。力を完全に制御できるようになったの見せる為に、フォーオブアカインドを使って見せたんだけど」
「魔理沙さんが 「それじゃ酔っ払っても制御できるかこの分身達で試してみようぜ」 と言って分身のフランちゃんに沢山お酒を飲ませたんです」
「つまり、あれは魔理沙の自業自得って事か。それにしても大ちゃん魔理沙の口真似うまいな」
「え、えへへっ」
まぁどうせ碌でもない理由だとは思ってたけど、本当にくだらない理由だった。
「気付いた時には手遅れでして。レミリアお嬢様は放っておきないと言っていましたし……」
「うん。それで正解だな。皆あれを肴に飲んでるみたいだし」
助けろー! と上から聞こえるけど、無視無視。
助けてー! と言う別の声も聞こえるけど、そっちも多分大丈夫だろう、多分……たぶん?
「ところで、今回の異変、私からも礼を言っておくわ。春を取り戻してくれてありがとう」
「どうしたんだよいきなり。それに異変を解決したのは霊夢だ。礼は霊夢に言ってくれ」
まさか、幽香から礼を言われるとは思わなかった。
そう思ったのが顔に出たらしく、俺の顔をみて幽香は笑った。
「ふふっ、私からの礼は意外だったみたいね。冬が長引いたせいで春の花が咲けなくて、ちょっと困ってたのよ」
つまり、冬のままだと春の花も咲かず、花の妖怪としては見過ごせないってわけか。
「霊夢がまだ動かないようだったら、私が動く所だったわ」
「もし幽香が動いていたら、多分事態は悪化していたでしょうね」
そこへアリスとパチュリーがやってきた。
前回もそうだったけど2人とも酒には強いのか、まだ酔っている様子はない。
「あらアリス。それはどういう意味かしら?」
「何でもかんでもぶっ放すだけのあんたじゃ、今回の異変は解決しなかったって言ったのよ」
「霊夢や咲夜に聞いた話だと。今回の異変はユウキと霊夢、魔理沙、咲夜と妖夢がいなきゃ無理だったわね」
幽香が睨むように言ったが、隣に座ったアリスは全く気にせず毒を吐くように言い、パチュリーもそれに同意した。
前の宴会の時も思ったけど、アリスって幽香の事昔から知ってるみたいだな。
「あら心外ね。私を魔理沙みたいに言わないで頂戴」
「弾幕はパワーだぜ。が決め台詞ですからね、魔理沙さんは」
美鈴が苦笑いを浮かべながら言うけど、アレ決め台詞だったのか。
そう言えば、フランの部屋で最初に会った時も言われたっけ。
フランも俺と同じ事を思ったのか、俺の方をチラチラ見てくる。
「あの事はもう気にするなって言ったろ?」
「えっ、うん。ありがとうお兄ちゃん」
少し落ち込み気味だったフランの頭を撫でる。
それだけで安心したのか笑顔が戻ったが、反対側から視線を感じ振り向く。
「………」
大ちゃんが催促するような目でこっちを見てきてる。
何だろ。幻想郷に来てからこういう事ばかりな気がする。
しょうがないから軽く一撫ですると、大ちゃんはそれだけで満足に笑った。
「大ちゃんもなかなか行動的になりましたね」
「そう? あの子は前から行動派よ? チルノやルーミアの影に隠れて目立ってなかっただけよ。でも、今は目立ってるわね」
よくチルノや大ちゃん達と遊ぶ美鈴と、昔から知っているアリスの見解は分かれている。
けれども、大ちゃんは変わったと言うのは2人共一致しているんだな。
「おい、お前らさっきから人が助けを求めてるのに、無視して呑気にいちゃついてるなよ!」
「あぅ~ヒドイ目にあったぁ」
そこへボロボロになった魔理沙とみすちーがやってきた。
どうやら分身フランはタイムリミットで消えて、ルーミアは酔っ払ってるのに激しく動きすぎてダウンしたらしい。
向こうで慧音と妹紅が介抱しているのが見えた。
妖怪なのに酒に弱いんだな。
「みすちーはともかく、魔理沙のは自業自得だろ」
「ルーミアに絡まれるのは結構あったけど、今回は流石に命の危機を感じたわ」
「まぁまぁ、無事だったから良かったじゃない」
半泣きのみすちーを、リグルが慰めている。
ルーミアに追いかけられるのは今回だけじゃなかったのか。
「魔理沙、ごめんね?」
心底申し訳なさそうな顔をしたフランに、流石の魔理沙もこれ以上は何も言えなかった。
「い、いいって事だぜ」
「何よ偉そうに。ユウキも言ってたけど、元凶はあんたじゃない」
「いくら妹様が力制御出来るようになったからって……美鈴、あなたが付いていながら何やってるのよ」
「うぐっ……反省してます」
「すみませんでした……」
アリスとパチュリーに責められ、魔理沙とついでに美鈴は縮こまってしまった。
「ところで分身とはいえフランと、ルーミアやチルノがここまで酔うなんて何飲んだんだ?」
「えっと、これだよ。魔理沙が持ってきたんだけど。全部私の分身とルーミアが飲んじゃった」
フランが手にしたのは空の瓶だが、その形はとてもお酒が入っているような形には見えない。
「嫌な予感がしたから私は飲まなかったのよね」
「フランお嬢様達が飲みたがってたので、私も飲まなかったんです」
1口飲んだフラン、ルーミア、チルノが気にいってしまって、3人で一気に飲み干してしまったようだ。
瓶に残った酒の匂いを嗅いでみたけど、普通のお酒の匂いがするだけだ。でも、何だか妙な感じがする。
「ちょっと、いいかしら? 魔理沙、これ本当にお酒?」
「どれどれ。うわっ、ナニコレ。魔理沙、あんたまさか……」
魔法使いのパチュリーとアリスが匂いを嗅ぐと、何か分かったようで目付きが鋭くなった。
魔理沙は口笛を吹いて明後日の方を見ている。
「どうしたんだ2人共?」
「これ、お酒を元にして作った魔法薬の一種よ。人間には害はないけど、妖怪や妖精には物凄く効くように出来てるわ。毒じゃないだけまだいいけど……」
「……魔理沙?」
「は、はい!」
パチュリーの説明を聞いて俺が笑顔で魔理沙を振り向くと、なぜか魔理沙は正座した。
おかしいな、何だか魔理沙の顔に恐怖の色が浮かんでいるぞ?
「えっと、だな。宴会の為に変わった飲み物用意しようと色々試して、これが一番美味しかったから持って来たんだけど、まさか人間以外に作用する魔法薬になってるとは思わなかったぜ」
「要するに……全部お前のせいかぁ!」
「いだだだっ、ぎ、ギブぅ~! 頭ぐりぐりするのやめろぉ~!」
魔理沙への制裁を終えて、皆で飲み直した。
その時ふと大ちゃんにお酒をついでいる幽香を見て気になった事があった。
「それひょっとして幽香が作ったお酒か?」
「えぇ、そうよ。花から作ったお酒。大ちゃんやチルノ達が好きなのよ。あなたも飲んでみる?」
幽香が作ったという牡丹酒をもらって飲んだが、これがまた結構なうまさだった。
だけど、気になったのは酒の味じゃない。
「魔理沙もだけど、幽香も今回は自分で作ったお酒持って来たんだな」
確か前回の宴会ではお酒は人里から買ったりしたもので、自前のお酒はなかったはず。
「うーん、言われてみれば、お酒は作っても宴会に持ってきたのは初めてだぜ」
「そうね。この前の宴会の時は、これ持ってきてなかったし、持ってくる気もなかったわ」
「そう言えば、私も今回は自前のお酒持参したわね。レミィは嫌な顔してたけど」
パチュリーが飲んでいるのは、レミリアにちょっとしたトラウマを植え付けた梅酒だ。
さっき飲ませてもらってけど、幽々子には負けるがかなり美味しかった。
「それがどうかしたんですか、ユウキさん?」
大ちゃんに聞かれて、少し答えに困った。
「どうもしてはいないけど、何か気になって。今回自分で作ったお酒持ってくる人多いからさ。酒造りがブームなのか?」
「ブームと言う程じゃないけど、長年生きてると、趣味が色々出来てくるのよ。で、自分にあったお酒を作るようになる妖怪が多いわけ。私や魔理沙みたいにね」
「おいおい、私はまだ十数年しか生きてない人間だぜ? お前達と一緒にするなよ、幽香」
長年生きてると趣味が増えて、お酒を作るようになる。
それはいいんだけど、引っ掛かると言うか、気になると言うか……うーん?
「ユウキさん、どうしたんですか? まさか、変な予感でもしてるんじゃないですか?」
少し考え込んでいると、美鈴が心配そうな顔で聞いてきた。
パチュリーやフラン達も同じような顔をして俺を見ている。
「い、いやいや。別に大した事じゃないさ。色々なお酒があって賑やかな花見だなと思っただけだよ」
これは嘘じゃない。嘘じゃない、けど……頭に何か引っかかりを覚えたのも確かだった。
けれども、それが何か分からないまま、花見は終わった。
続く
予定がちょっと変わって、次回からいよいよ萃夢想編に入ります。
ちょっと短めになると思いますが……異変が終わった後が本番だったりします。