幻想支配の幻想入り   作:カガヤ

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お待たせしました―!
独自設定またまた強めです。


第96話 「風斬氷華」

美琴達と別れ、俺はシェリーの足取りを追っていた。

 

「おい、シェリー=クロムウェルに関して開示できる情報はあるか?」

『さぁな?』

 

ダメ元で尼視にシェリーについて分かってる事を聞こうとしたが、案の定はぐらかされた。

 

「じゃあ、今朝の一件の報酬としてシェリーに関する情報を言え」

『くっくっくっ、どうした? やけに焦ってるな』

「………」

 

焦りもする。シェリーと話をする事で目的を探ろうとしたけど、巨人を相手にしていたせいでロクに会話もできなかった。

あいつの狙いが幻想殺しか禁書目録か、それとも別の何かか。

それを早く突き止めなきゃ被害が拡大する。

使う魔術の全貌が分からないけど、あの巨人だけでも十分に脅威だ。

もし今度は人の多い所でアレを使われたら……

 

『まぁ、いい。お前にも関係ないとは言えないからな。恐らく今回の一件の原因は20年前だ。お前がいつか調べていた、魔術と科学の実験の事だよ』

 

尼視や学園都市の一部の者には魔術と言う存在が認識されていた。

ならばそれに関わる事件や実験などが行われていた可能性が高い。

インデックスの一件があってから今後魔術サイドとの接触や戦闘に備えて、俺は可能な限り調べてみた。

その中で20年前、木原一族の者がイギリス清教の一部と手を結び、ある実験が行われた事を知った。

施設を作り、その中でエリスと言う能力者にイギリス清教側の魔術師が魔術を教えて新しい法則を生み出そうと言う実験だ。

ただし、当時は知られていない事だが能力者には魔術は使えない。その結果、エリスは身体が崩壊し重傷を負った。

すぐには死にはしなかったが、イギリス清教の 【騎士派】 と呼ばれる一派が情報漏洩を防ぐために施設に乗りこんできた。

エリスは、自分に魔術を教えたイギリス清教の魔術師を庇い死んだ。

しかし、科学側、と言うか木原は能力者が魔術を使うとどうなるかはある程度予測していたようだ。

なので、こちら側からすれば結果的に実験は成功したとしている。

ここまでが俺が知っている事。

で、尼視が教えてくれたのが、エリスに魔術を教えた魔術師の名が、シェリー=クロムウェルだと言う事。

 

「なるほど……そう言う事か」

 

まだ釈然としない事はあるがこれでシェリーが堂々と侵入して、街中をうろつくわけが大体わかった。

自分の友達を殺したあの実験が、科学側が憎いのだろう。

だから学園都市に復讐にきた……のだけど、やっぱりしっくりこない。

もっと本人に会って話をしてみるしかないな。

 

「ん、新しい目撃情報か。これによると、地下街に向かってる? 当麻とインデックスに合流した方がいいな」

 

すでに地下街には特別警戒宣言による封鎖警告が出ている。

アイツの狙いが具体的には分からないが、やはり狙いは当麻とインデックスだろう。

不特定多数の能力者を狙っているのならもうとっくに暴れているはずだ。

そう思い当麻に電話をしたが、出ない。

 

「……おかしいな」

 

今日は学校午前で終わりとっくに家に戻っていると思ったのだが。

緊急事態なので、仕方なく小萌先生に電話をかけて何か変わった事がないか確認する事にした。

 

「あ、もしもし小萌先生ですか? 俺です、ユウキです」

『あーユウキちゃんですか! どうしました? 今日お休みする事はちゃんと聞いていましたよ?』

「その件じゃなくてですね。当麻に用事があったんですけど電話繋がらなくて、アイツちゃんと学校来てましたか?」

 

もしかしたら既に巻き込まれていて現在交戦中、なんて事もありえなくはないからな。

 

『上条ちゃんはちゃーんと登校していましたよ。あ、でもなぜかインデックスちゃんも付いてきちゃいましたけど』

 

……何やってんだよ。

学校なんかにインデックス連れて……いや、勝手についてきたって所だろうな。

それからなぜか、当麻が始業式をサボってインデックスや見知らぬ女の子とイチャイチャしてたり、元春が連絡もなしに学校に来なかった事まで愚痴を聞かされた。

俺のせいじゃないのに、って元春やっぱり休んだか、今回の一件では動かないと聞いたけど他に仕事が入ったみたいだな。

 

『それでですね、姫神ちゃんが言うにはその時一緒にいた風斬氷華ちゃんって子とインデックスちゃん連れて、地下街に遊びに行ったようですよ?』

「……風斬氷華?」

 

当麻とインデックスの行き先が分かったが、同時に聞き覚えのある名前が出てきた。

風斬氷華、詳しい事はあまり知らないけど、能力者が発するAIM拡散力場が人の形になったものだったか。

俺の幻想支配がAIM拡散力場を元に能力をコピーしたりしてる関係で、風斬氷華を使う実験をする予定だったが色々事情があり中止になった事がある。

その風斬氷華が当麻やインデックスと一緒にいる、しかも魔術師が侵入しているこのタイミングで?

出来過ぎ感が否めないけど、シェリーが狙う可能性は特大だな。

 

「ありがとうございます、小萌先生!」

『あ、ユウキちゃんちょっとまっ……』

 

電話を一方的に切って頭の中で先生に謝罪する。

これ以上話す事はないし、こっちも急いでいる。

アジトのどれかに行けばカメラの映像で当麻達もシェリー達も追えるけど、そんな時間はない。

近くの地下街出入り口からは避難指示によって、多くの学生などが出てきている。

そこを通らず非常口を通って、俺もすぐに地下街へと入った。

 

――ドォン!

 

地下街に入った途端、轟音と共に激しい揺れに襲われた。

 

「ちっ、あっちの方が早く見つけやがったか!」

 

恐らく、シェリーが当麻達を発見して攻撃を開始したのだろう。

 

「おい、開けろよ!」

「いやぁ、出してぇ!」

 

地上へのゲートが閉じられ、逃げ遅れた人々が殺到している様を横目に地下街を走った。

当麻に電話をかけたがまだ出ない。

ただ闇雲に地下街を走っても探せるわけがないが……もうすぐ起きるはずの音へ耳を傾けた。

 

――ドォン!

 

「きたっ! あっちか!」

 

さっきの轟音とは違く爆発のような音、戦闘によって起きる音だ。

この音を頼りに懐から演算銃器を取り出し、爆弾を確認して走る。

普通の銃器では歯が立たないのはさっき分かった。

だから演算銃器と爆弾を使って倒す。

 

「演算銃器、大分小型化したとはいえ、まだ懐に隠して持ち運ぶには大きすぎるのが欠点だよな」

 

なんて事を考えながら次第に大きくなる銃声音と叫び声を頼りについに追いついた。

そこには愛穂先生を筆頭に装甲服で身を固めた警備員達が、通路の向こうから迫る巨人相手に奮闘していた。

 

「愛穂先生!」

「ユウキ!? またお前か、こんな所に来たら危ないじゃん!?」

「それ、誰に言ってるんですか? 全員、巨人の左足首を集中して撃て!」

「っ、その少年の言う通りにするじゃん!」

「「は、はい!」」

 

いきなり現れた子供の俺に命令され、戸惑っていたが愛穂先生が発破をかけてくれたおかげで全員従ってくれた。

警備員達のライフルは小口径ではないが、威力が足りない。

巨人の足を少しは削って行くが、すぐに周りの地面や壁のタイルが磁石のようにくっついて補強していく。

でも、さっきよりは銃弾の密度が高いのですぐには全て回復しない。

 

「これはどうだ!」

 

演算銃器を構え、ちょうど巨人の右足首に続けて発射した。

コイツらの前で銃器を使うのには慣れているし、後でどうとでもなる。

一度に両足首を砕かれ、流石の巨人も体勢を崩した。

 

「腕は良いけど、品が無いわね」

「そんなゴテゴテの玩具作るお前に言われたくはない!」

「……なんだって?」

 

巨人の悪口を言うと、どこかプライドを傷つけられたのかシェリーの表情に苛立ちが見えた。

 

「ちっ!」

 

それを好機と見た警備員の1人が手榴弾のピンを抜き、投げつけようとした。

俺も同じ事を考えていたので、動作を合わせて粘着式の爆弾を投げようとしたが、それよりシェリーの方が速く動いた。

 

「エリス!」

 

両膝を付きながらもシェリーがエリスと呼んだ巨人は、腕を地面に叩きつけて地響きを起こした。

俺は危うく爆弾を手放しかけたがどうにか堪える事が出来た。

しかし、警備員はピンを抜いた手榴弾を落としてしまった。

 

「伏せろ!」

 

その警備員の襟を掴み、後ろに投げ飛ばした。

 

――ボゥン!

 

警備員を投げ飛ばすと同時に、近くにのシールドに隠れた。

おかげでどうにか爆風と破片の直撃はやりすごす事が出来た。

それでも衝撃で頭がグアングアン言っているし、擦り傷だらけになった。

しかし、他の警備員は俺よりも危ない。

シールドやバリケードで身を守っていたが、衝撃により全員武器がどこかへ飛んでいき、大半が気絶している。

かく言う俺も衝撃と破片によって演算銃器が使えなくなってしまった。

ったく、一介の警備員が持つにしてはちょっと威力高すぎだろ! と愚痴りつつ投げ損ねた爆弾を取り出し、シールドから飛びだしエリスの足へとくっつけた。

 

「何っ!?」

 

流石にすぐに反撃してくると思わなかったのか、今回はシェリーの反応が遅れてエリスの足が吹き飛んだ。

俺が投げたのはさっきの手榴弾とは違い、爆発範囲を縮めて威力を集中させるように爆発するタイプの爆弾だ。

 

「エリス!」

 

エリスの右足は綺麗に吹き飛んでいた。

それでもすぐにさっきまでと同じく、修復が始まっている。

 

「大丈夫ですか!?」

 

その時背後から学生服をきたツンツン頭がやってきた、当麻だ。

爆発音に反応して来たのだろうけど、あまりの惨状に固まっているようだ。

それもそうだ。重装備の警備員が大勢血を流して倒れているのだ。

こんな光景を見慣れている学生は多くない。

 

「少年、こんな所で何を……月詠先生んトコの悪ガキじゃん」

 

愛穂先生が驚いた声をあげているけど、俺はやっと来たかと言った感じだ。

 

「愛穂先生? それに、ユウキ!?」

「当麻、話は後だ。あの巨人と魔術師を止めるのが先だ」

「あ、あぁそうだな」

 

当麻は俺がこの場にいるのに驚いたが、すぐにエリスに向き直った。

 

「当麻、インデックスと風斬氷華は?」

「お前なんで風斬を……って、インデックスはさっきあっちで会った御坂と一緒に白井が外へ連れ出した。風斬は向こうで待たせている」

「……そうか」

 

美琴と黒子が当麻達と一緒にいたのがちょっと意外だったが、2人の安全を確認してほっとした。

後はあいつらをここで倒せばいいだけだ。

 

「あら、うふふ、こんにちは。幻想殺しの方に出会うなんてね。あの虚数学区のガキと禁書目録は一緒じゃないのかしら? それとそっちのガキはさっき会ったかしら?」

 

ん? あれ? 何か……違和感が、まぁいいか。

 

「あぁ、さっきは白井が世話になったな、シェリー=クロムウェル」

「……へぇ、科学の街でも私の名を知ってる奴がいたんだねぇ。なら、イギリス清教とわざわざ名乗る必要もないわね?」

「イギリス清教!? こいつインデックスと同じ組織の人間かよ! なのになんでインデックスを襲おうとしてるんだ!?」

 

当麻の反応見ると、シェリーがインデックスや自分を狙ってきてるってのは知ってるみたいだな。

でも、まさかインデックスと同じイギリス清教の魔術師が襲ってくるとは思わなかっただろうな。

 

「お前の目的は察しが付いている。科学と魔術の世界で戦争を引き起こしたいんだろ? 20年前の復讐として」

「なっ! 戦争って、それに20年前ってなんだよ!」

「っ!?」

 

さっきまで笑っていたシェリーの顔色が変わった。やはり復讐のために戦争を起こす気か。

さて、当麻にこの話をしていいのかどうか……これから魔術の世界にも関わるのなら知っておいた方がいいな。

 

「20年前の話だ。科学側と魔術側が歩み寄って協力し合い1つの実験を行う事になった。そこで魔術側から1人の魔術師が選ばれた、名はシェリー=クロムウェル。彼女は科学側からやってきた能力者の少年に自分の魔術を教えた」

 

俺の話を黙って聞いているが、シェリーの表情が険しくなってきている。

 

「だが、当麻も知っての通り能力者に魔術は使えない。当時はその法則が知られていなかった」

 

表向きは、な。

 

「その後、習得した魔術を使った能力者である少年は、どうなったかは三沢塾で目にしただろ? アレが起きたんだよ」

 

それを聞き、1か月ほど前の事を思い出した当麻の顔色は真っ青になった。

 

「それからすぐ魔術側の一派が実験を潰す為に施設を強襲、瀕死の少年はシェリーを逃がす為に……死んだ」

「そ、んな事が……」

「その少年の名は、エリス」

「黙れ!」

 

エリスの名を口にした途端、シェリーが強く唇を噛み叫んだ。

横で愕然としている当麻が今何を思っているのかは正確には予想できない。

けど、全くの加害者側だったシェリーの、被害者としての一面を知らされて動揺はしているようだ。

 

「そうさ。科学は科学の世界で、魔術は魔術の世界でキチンと住み分けていれば、あんな事には、エリスは死ななかった!」

 

そう叫ぶシェリーの姿はさっきまでとは違って見えた。

けれども、それは一瞬で終わった。

 

「だから……私には必要なのよ、科学と魔術の戦争の火種がね! その為には何だって利用する! 私がイギリス清教の者だって事も、虚数学区の鍵も、禁書目録のガキもね!」

 

その時、シェリーの目線が俺にも当麻でもなく、俺達の後ろに向いている事に気付いた。

当麻も同じ事に気付き、2人で後ろを振り向くとそこには。

 

「あ、あの……」

 

当麻よりも少し背が低く、少し茶色が混ざり長いストレートの髪を一房だけ横に纏めたメガネをかけた少女がいた。

間違いない、彼女が風斬氷華だ。

 

「……風斬? っ、馬鹿野郎! なんでここにきた!」

「危ない、伏せろ!」

 

当麻と2人、風斬氷華に向けて走り出したが、それよりも速くエリスが動いた。

 

「エリス!」

―ゥガアァーー!

 

突然背中に衝撃が走り、俺と当麻は地面に倒れてしまった。

エリスが地面を殴り、その衝撃で抉られた地面のカケラが飛んできたのだ。

 

「えっ……」

 

茫然としていた風斬氷華の顔面にも大きく尖ったタイルのカケラが、直撃した。

 

「か、かざぎりぃ~!!」

「くそぉ!」

 

エリスに向き直り懐に手を伸ばしたが、演算銃器はさっき使えなくなり爆弾はこの状況では周りに被害が出る。

今俺に使える武器は幻想支配だが、まだコイツには使えない。

 

「……かざ、ぎり?」

 

背後から当麻の困惑した声が聞こえ、振り向く。

そこには風斬氷華が倒れていたが、顔面に大きなカケラが直撃したのに不思議と血や脳髄などが出ていない

それよりも問題なのは、その傷口だ。

確かに風斬氷華の頭半分は砕かれている。しかし、その傷口から見えるのはただの空洞。

まるで割れた陶器を見ているかのように、風斬氷華の頭の中は空洞なのだ。

それだけではない。空洞の中から僅かに見えたのは三角柱の形をした結晶のような物。

俺はそれに似た物を前に見た事がある。

幻想御手事件。その時対峙したAIMバーストと呼ばれた異形の怪物。

ソイツの頭部、中心核と思われる物体と同じ結晶だ。

 

「かざ……ぎり?」

 

困惑した当麻の声が、静寂した辺りに響き渡った。

 

 

 

続く

 




展開ちょっと早いです。
シェリー戦だけなら次か、そのまた次くらいで終わって
すぐに法の書事件に移ります。
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