お悩み相談喫茶店   作:フワフワ尻尾

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開始早々凄まじい亀更新で草も生えない。投稿した一週間後には投稿する予定だったんだけどねぇ・・・。
言い訳をしておくと、中間試験が来襲してきたせいだと言って置きます。結果?・・・ノーコメント(´・ω・`)




第二話・胸囲の格差社会

 死とは何ぞや。

 

 その問いに人は答える。畏怖すべき『終焉』だと、生けとし生ける者全てに課せられた明確な『終着点』だと。それは何も間違っていない。事実、死とは終わり。万物が逃れられぬ自然の理。

 どれだけ力強い者であろうとも、どれだけ叡智を有する者であろうとも、どれだけ権力と金を積み重ねてきた者だろうとも――――死神の鎌からは逃れられない。

 

 人も、獣も、植物も、鉱物も、星も、何もかもには『終わり』があるのだ。

 

 ――――だが此処に例外があった。

 

 この世には『永遠者(イモータリスト)』という原因不明の不老不死体質を得ている人間がいる。死なず、老いず、永遠を生きることのできる人々が憧れ目指している到達点に在る者が。

 

 が――――彼女のそれは違った。原因不明でもなく、単なる不老不死でもない。アレは呪いであり、罰であり、罪科である。神を殺すという偉業を成すために支払った代償。

 家族を、知人を、故郷を、国を。全てを己が手で護るために背負った業。

 

 そして女は国を救った。自身が守りたい物を守り通した。

 

 ……しかし、彼女の代償は呪いだけでは無かった。例え永遠を生きる体になろうとも、顔に不気味な文様が刻まれようとも、化物の様な力が手に入ろうとも、女は既に覚悟をしていた身。そんなことでは動揺すらしなかった。

 

 自分の守ったモノに拒絶されるまでは。

 

 人々は最初は彼女を称えた。国を救った英雄だと。身を挺して邪神より我々を守った聖女だと。

 人々は次に畏怖した。彼女の並ならぬ強大な力、そして神すら屠った大いなる御業を。

 人々は最後に拒絶した。お前は化物だ、人ならざる怪物だと、一方的に突き放した。

 

 ある者は永遠に保たれる彼女の美を妬み、ある者は得ることのできない力を羨み、ある者は色欲を抱いて彼女の体を欲しがった。故に、女は絶望した。

 自分が守りたかったのは、この様な醜悪な代物だったのか。こんな物のために、自分は永遠の地獄を生きることを強いられたのか、と。

 

 人を守護するために人を捨てた女は、皮肉にも守った人々に裏切られ始めたのだ。

 

 その後に彼女は故郷を捨てた。きっとこの国が汚れているのだと、自分に言い聞かせて。

 

 だから山を越え、谷を越え、国を越えた。越えた先で――――何も変わらない地獄を、見た。

 

 国が変わったところで、人が変わるわけがない。そこには相も変わらず同胞を食い物にしているヒトが存在していた。だからこそ、女は思う。

 

 

 ――――何故自分は、こんな獣たちのために身を挺したのだろう――――。

 

 

 女は生き続ける。

 

 永遠に絶望した人の悪性を見続けることを強いられながら。

 

 だからこそ怪物()は想う。

 

 

 死は、生者に許されたただ一つの『救い』だと。

 

 

 

▽▲▽▲▽▲▽

 

 

 

 目が覚める。

 

 見えるのはいつもと変わらない自室の天井。ベッドや床に使われた木々の臭いが仄かに漂う中、女は目を覚ました。不思議と眠気は無い。カーテンの隙間から差し込む細い陽光が目元を照らしているせいか。

 

「――――馬鹿だなぁ、私。二百年も前の夢見て、どうするのさ……」

 

 自嘲の混じった声音で呟きながら、女――――セレスファル=スタグネイト、愛称セレスは温かみの残った布団から這い出た。それからカーテンを一杯に開き、明るい日の光を全身是浴びて体内時計を正常にしていく。

 光が、暖かい。ああ、生きている証拠だ。

 

「ふぅ……さて、今日の朝食は何だったかな……?」

 

 寝癖だらけの髪をゴシゴシとかきながら、はだけた寝間着のままセレスは階段を降りていく。酷い様ではあるが、色気だけは人一倍あるのは何とやら。恐らく今の彼女は青少年の股間に非常に悪い姿をしている可能性が高い。

 

 数日に二、三人しか人が訪れない喫茶店で過ごしていればこうも無防備になるのも当然かもしれないが。

 

「あっ」

 

 足と足が引っかかる。寝ぼけたまま階段を降りていればそりゃそうだ。

 幸い、階段は既に半分以上を下っているので転んだところで怪我はしないだろう。だが痛い物は痛い。セレスは「ああ……朝から災難だなぁ」と呟いて、瞼を閉じながら慣性と自由落下に身を任せた。既に抵抗する気ゼロである。

 

 だからこそ気づかなかった。――――階段の下に誰かが居たことに。

 

「――――あれ?」

「……相変わらず、貴方は何処か抜けているな」

 

 来るであろう全身への鈍痛に備えていたセレスであったが、何時までたってもそんな物が来ないのでそっと瞼を開けてみた。すると、自分を腕で受け止めている何者かと体を密着させているのを、セレスはようやく認識した。

 

 その者は、二十歳ほどの細身の男だった。黒を基調としたスーツと外套に身を包み、藍色がかった長い髪の奥から、さながら猛禽類のような鋭い目が覗いている。一見して浮かぶ言葉は冷静沈着でナイフの様な男。

 

 触れれば斬り傷程度では済まない――――そんな雰囲気を纏っている男が、セレスの決して軽くは無いだろう体を片腕で軽々と受け止めているではないか。体の線は細いが、恐らくその服の下には鍛錬により引き締められた鋼鉄の肉体が存在しているのだ。人間、外見で判断してはいけないという事である。

 

 そして何より――――その男は、セレスの知人であった。

 

「……え? アルベルト?」

「名前はまだ憶えている様だな、マザー(・・・)

 

 一年ぶりに、セレスは自分の懐かしき愛称を聞いた。

 

 

 

 

 珈琲の香ばしい香りが店の中に広がり漂う。

 

 薄暗いとはいえ窓から差し込む陽光は室内を適度に照らし、その隙間から入り込む冷たい微風は天然の換気扇となって新鮮な空気を客に提供していた。

 

 その客は今のところ一人だけで、しかも昔の知人という有様ではあるが。

 

「……まさか朝から貴方の顔を見ることになるとは思いませんでした。アルベルト」

「俺としても、一年前に行方をくらました恩師がこんな寂れたところで喫茶店を営んでいるとは予想外の限りだ」

「あ、あはは……」

 

 刺々しい言葉を遠慮なく叩き込んでいくこの男の名はアルベルト=フレイザー。帝国宮廷魔導士団のとある特殊な部署に属する超一流の魔術師。また、何年も前から交流を持っているセレスの数少ない友人。

 今のように容赦なく言葉の刃を突き刺していくのも、それ程遠慮が要らない親しい仲という証拠だ。

 

 流石にノーダメージではない様だが。

 

「セリカ=アルフォネア女史が陛下へ貴方の事を報告したようでな、偶々近場で任務をしていた俺が情報の真偽を確認するために、こうして派遣されたというわけだ。それで、駆けつけてみればあの様、か」

「……面目ございません」

 

 朝に弱いとはいえ先程のドジは自分でも「ないわー」と思うセレス。しかも打ちどころを間違えていたら割と洒落にならない事故だった。

 

 とある事情によって、セレスについては『その程度』の事は問題外ではあるのだが。

 

「まぁ、何があっても大丈夫ですよ。知っているでしょう? 私の『呪い』の事は」

「知っている。目の前で実践してくれた時の事を忘れるものか。――――だがそれが自分の体を蔑ろにする理由にはなりえないと思うがな?」

「うぐっ」

 

 どのような事情があれ、健康管理を蔑ろにする理由には足り得ない。全く以て反論できない正論がセレスへと突き刺さる。

 

「あ、珈琲とチョコチップマフィン、出来上がりましたよ?」

「……有り難くいただこう」

 

 話を逸らすための話題を脳内で検索していたら、丁度その時作っていた珈琲とマフィンが出来上がっていたことに気づいたセレスは速攻で其方へとアルベルトの意識を逸らした。

 元より話術の類で勝てるとは思っていない。なので物を使う。セレス本人は「策士だと思いません?」との弁。

 

 年季の違い? 二人の様子を見て有ると言えるなら、その人はきっと憑かれているのかもしれない。

 

「――――美味いな。あぁ、懐かしい味だ」

 

 まるで石で出来た仮面のように固まっていたアルベルトの表情が少しだけ氷解する。

 どんな冷徹漢だろうとも、思い出の品には勝てないらしい。

 

「そう? よかった。昔の味から変わっていないかなーって心配していたけど、杞憂だったようですね」

「貴女の作る料理にはいつも外れがない。イグナイト公でさえ文句を言わなかったのだから、貴族専属の料理人以上の腕前なのだろうな」

「そりゃあ二百年も生きていれば、料理の一つや二つぐらい極めますよ。暇はいつも持て余しますし」

 

 おちゃらけるようにセレスは言うが、アルベルトの反応は薄い。元々感情を表に出すタイプでは無いが、今回はそれが酷く顕著だった。

 まるで、喉から這い出かけているモノを必死に呑み込もうとしているように。

 

「なら何故、特務をやめた? 翁が嘆いていたぞ、『曲者ばかり残っているのに常識人がまた一人減った』と。イヴは『勝ち逃げされた』と地団駄を踏んで、リィエルの奴は未だに貴方の名を虚ろ気に呟いている。……マザー、戻ってくる気は、本当に無いのか?」

「……………フォローについては、いずれ。ですが、私は戻りません。……もう、疲れたんです」

「―――――――…………そうか」

 

 全く表情を変えずに、アルベルトは珈琲を飲み干しマフィンを速やかに平らげた。

 

 彼としては情報の真偽と彼女の意志を伺うことだけが目的で、それ以上は何もないのだろう。やることが済んだ以上はさっさとこの場を去り、中断していた任務を再開しなければならない。

 たとえそれが少しだけ不本意な事でも。

 

「……一応聞いておくが、マザー。グレンが何処にいるか知っているか?」

「セリカに聞いた方が早くありませんか、それ?」

「アルフォネア女史が話してくれれば俺もこうして聞いたりしない」

「ですよね~。……そうですね、ここ一年は全く顔を合わせていません」

 

 嘘は言っていない。嘘は。

 

 どこで何をやっているのかは知っているが、顔を合わせていないのは事実。しかしその抜け道に気付かないアルベルトではない――――のだが、意外にもすんなりと諦める。

 

 元より、もののついでに聞いただけで、恩師に詰め寄ってまで聞きたいことでもなかったのだから。

 

「それでは、失礼する。邪魔をしたな」

「……アルベルト」

「何だ?」

「また、何時でもいらっしゃい」

「…………肝に銘じておく」

 

 アルベルトは振り返らない。それは単純に拗ねていたからか、それともいつもの彼には全く似合わないニヤつきが思わず出たかもしれなかったからか。

 とりあえず、寡黙で仏頂面がデフォルトの彼にしては珍しい顔だったと言って置こう。

 

 客が去り、後は店主以外誰もいない殺風景な喫茶店が残る。

 

 ……朝とはいえ、客が一人しか来てない喫茶店は、果たして喫茶店と称せるのだろうか。

 賑わうのは無理だとしても、もっとこう二、三人程が店内で新聞を読んで寛いでいるような、そんな光景が実現しないかな――――なんて、儚い希望を抱くセレスだったが、頭をぶんぶんと横に振ってその考えを霧散させる。

 

「そ、そもそも趣味ですし? 偶に来たお客様とお茶や珈琲を飲みながら雑談するために始めたからセーフ、セーフです。……うん、ギリギリ……セーフ……」

 

 前言撤回。やはりここ喫茶店では無い、ただの食事提供サービス付き雑談場所である。

 

「…………後でちょっと立地条件とか経営体制とか考え直そう……いや、引っ越した方がいいかな……?」

 

 むしろなぜ今まで考え直そうと思わなかったのか。これが分からない。

 

 その後セレスは軽く朝食を摂り、いつも通り店や二階にある生活区域の清掃をする。とはいえ本格的な物では無く、軽い雑巾かけくらいだ。殆ど人が来ない店だからと言って、衛生環境を疎かにするわけにはいかないだろう。彼女も埃だらけの場所で住みたいとは流石に思わない。

 だから決して、決して一日中暇を持て余しているので掃除しかやることが無いからという訳ではない。これはれっきとした仕事である。

 

「えーと、フェジテで何処か良さそうな物件はあったかなぁ……。あ、でもこの場所も結構気に入ってるし……いっそ昼は別の場所で喫茶店を営業して、夜は此処で酒場をすれば……うん、まずは町に下見に行こうか」

 

 営業者歴一年、ようやっと本格的に店を営業する気になったらしいセレスはとりあえず軽く今後の営業方針とその構想を思い浮かべるために町に出ることにした。アルベルトのキツイ言葉が中々効いたおかげだ。

 しかし彼にとってはただの挨拶であるという事実。

 

 一応、とある組織に身柄を狙われているせいであまり表の方に出られなかったという事もある。しかし店を開く側としては、せめて安定して客足を運んでもらいたい。

 お金が欲しいわけではないが、毎日こんな光景が続けば流石に空笑いしか込み上げてこない。

 

 要は人がいなくて寂しいという事だ。まるで飼い主に構ってもらえなくなってしょぼくれている猫のようである。

 

「あと、従業員も雇った方がいいかな? 一人じゃいずれ限界がくるし……いい加減、外と交友を持った方がいいからね。最後に店から出たのは、確か……四ヶ月前だっけ」

 

 四ヶ月。それがセレスが店の外に足を出していない期間。

 

 それだけ長期間外との交流を断っていたせいか、気づけば完全に社会から孤立している状態だ。これはいけない、直ぐに何とかしなければ店を本格的に始めても集客力は今までと大して変わらない。

 

 二の舞にならないためにも宣伝役、もとい知人を作らねばとセレスは意気込んだ。

 

 

 

 

 

 フードを目深にかぶり、大きな外套に身を包んだセレスは久しぶりに街を闊歩する。

 

 外の空気は窓を開けて吸ってはいるが、こうやって広い場所で吹き付ける新鮮な風を全身で浴びるのは何時ぶりだろうか。

 涼しく爽やかな微風が、全身をくまなく撫でてくる。とても心地よい。

 

 ただ――――周りから集まってくる視線だけはどうにかしてくれないかなと思ったりはしている。

 

「すごい、綺麗な人……」

「……デカいな。八十五……いや、九十越えか……?」

 

 女性からは羨望の眼差しで見られ、男性からは胸へと執拗な視線が集まる。何故だろう、顔を隠しているのに女性たちからここまで過大評価されるのは。そして男どもは真顔で胸をガン見するのをやめてほしい。

 

 それもそのはず。セレス本人は無自覚ではあるが、天性のカリスマと言うべきオーラと魅惑的な魔性の雰囲気を盛大に振りまいていれば、注目の一つや二つも集める。本人に自覚がないのが不幸というべきか、幸いと呼ぶべきか。

 

 本人にとっては余計なモノであるようなので、今のところは不幸と言えるのかもしれない。

 

(……視線がキツイなぁ…………)

 

 久しぶりの視線がこうも多いと胃が痛くなる。元々人の多い所は好きではないのに、一度にこうも注目されるとストレスがマッハ。交流を持つ以前にコミュニケーション能力を身に付けるべきだったと、セレスは後悔した。

 

「う~ん、中々見つからない……」

 

 更に目的である物件探しは今のところ滞っている真っ最中。

 そも、貿易による交通機関の行き来が激しいフェジテは観光客もかなり多く、そのため宿屋や飲食店も少なくない。故に、人が集まりやすい物件はほぼすべて抑えられていると言っても過言では無いだろう。

 

 一応、そこまで人を集めたいわけではないのでそこそこの代物であれば十分なのだが……その「そこそこ」の物件も、ほぼ差し押さえられてしまっている。

 

 探せば一つ二つは見つかるだろう。が、これでは時間がかかり過ぎる。

 

 誰か良い場所でも紹介してくれないものか……。――――そう悲観していると、セレスはふと背後から迫る足音を聞いた。

 セレスは電光石火の速さで振り返り、懐に忍ばせた『モノ』を引き抜こうとし――――

 

「……、システィーナ?」

「へっ――――!? よ、避けてぇぇぇ――――っ!?」

 

 その顔が見知った物であることに気付き、硬直してしまう。だからこそ爆走中の少女――――システィーナと衝突してしまう羽目になるのだが。

 

「きゃああああああ――――ッ!?!?」

「え、待っ――――!?」

 

 見事なまでの衝突事故。まだまだ子供ではあるが、一人の人間の全力疾走である。当然慣性を殺しきれるはずもなく、セレスとシスティーナはそのまま一緒になって派手に地面の上を転がった。

 

 幸い、システィーナは偶然セレスの豊満な胸部によって頭部を守られたことにより事なきを得た。

 

 逆に言えば、何もないセレスは盛大に後頭部を強打したという事だが。そのダメージの表れか、口から何か白い物が飛び出しているような気がしなくもない。

 

「……………(チーン)」

「い、いたた……。? なんか、柔らかいものが……柔らかい……胸、が」

 

 この事故に置ける肉体的な傷が最も大きいのは間違いなくセレスだ。……が、精神的な傷なら、システィーナも負けてはいない。

 

 胸。自身と比べて圧倒的な差がある胸部に頭を包まれて、システィーナの思考がフリーズする。それから幽鬼のような動きでセレスの体に馬乗りになって――――何を思ったのか、彼女の胸を揉みしだき始めた。

 

 むにむにと、柔らかく揉み心地のいい感触が残酷なまでに手に伝わるのをシスティーナは感じる。

 

「…………ふ、ふふっ、うふふふふふ。一体、何を食べたらここまで育つのかなぁ?」

 

 目が死んでいる。奇しくもその眼は、彼女が蔑んでいたグレン=レーダスとそっくりだった。

 

 システィーナの胸は決して小さいわけでは無い。しかしかといって大きいというわけでもなかった。どちらかと言うと……平たい。また、周りの知り合いが年齢と不相応に大きいことも、彼女の胸部の貧相具合に拍車をかけていた。

 

 面に出さないだけで、彼女も色々と思っていたのだ。その上で友人に気にしてほしくないから、あえて自分の心を檻に入れてを制御していた。

 

 しかしその努力空しく、心の檻は顔面に直接爆発的に広がった要塞(おっぱい)によって、容易く瓦解した。

 

 最早偶然とは言えない。この一連の流れは『奇跡』と言っても過言では無い、かもしれない。

 

「なんでよ――――! 何で私だけ貧相なのよ――――っ!? ルミアとかウェンディとかリンは凄く大きいのに~~~~!?」

 

 敢えて言うなら、遺伝である。

 

「あのー、システィーナ? そろそろ揉むのをやめてくだ……んっ」

「っ、あ、ご、ごめんなさい!」

 

 言われてようやくシスティーナは自分が他人の胸を馬乗りになって一方的に揉んでいたことに気付き、青ざめながら直ぐに退いた。

 いきなりぶつかり、軽く気絶させた挙句馬乗りになって、その豊満な胸を公然と揉みまくった。

 

 ぶっちゃけ相手が相手なら警備官に突き出されても可笑しくない所業であった。

 

「すっすすすすすすみませんでしたぁ~~~~っ!! わ、悪気はなかったんです! 事後、じゃなくて事故だったんです!」

「あはは、大丈夫です。別に気にしてませんから。……とりあえず、場所を変えましょうか」

「えっ?」

 

 言われてようやくシスティーナは周りを見渡した。視界に入ってくるのは、奇妙なモノを見るような視線を向ける民衆たち。一部光悦に似た視線も混じってはいたが、焦っていたシスティーナがそれに気付くことは無かった。

 

「……チガウンデス。チガウンデスヨ」

「大丈夫、ちゃんとわかっています。普段から色々溜めていたんですね」

「違うんですよぉぉおおぉぉおおぉ~~~~~~~~!!」

 

 昼間から一人の女学生の悲鳴が、街に木霊した。

 

 

 

 




百合は良いぞ~(思考停止)

この惨状を百合と表現すべきかは色々とツッコミどころが多い気がするけど。あ、ツッコミって言っても別にナニを突っ込むわけじゃn(ry

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