Fate/プリズマ☆士郎ちゃん   作:ギルディア シン 呪雷

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一カ月ぶりの更新です……。遅れて本当にすみません!




10話 暗殺者の罠、イリヤの力

【美遊視点】

 

何かの間違いであって欲しかった。

 

 

でも、間違いじゃなかった。

 

 

大地は抉れ、そこにあったはずの森は消し飛び、イリヤを中心に大きなクレーターが広がる。

 

 

この私の目の前に広がる惨状こそが、

 

 

イリヤの、力なのだと……。

 

 

 

時は、数分前に遡る。

 

 

 

 

 

【イリヤ視点】

 

私たちは、今夜もカード回収にやって来た。だけど、

 

「どういうことですの?敵はいないし、カードもない……。もぬけのカラというやつですわね。」

 

ルヴィアさんの言う通り、いつもならすぐに何かが起こるのに今日は何にもなかった。

 

「嵐の前の静けさかもしれないから、皆警戒はしてね?」

 

「そうね。特にイリヤ!!周りにちゃんと気を配りなさい!」

 

「ふぁいッ!?」

 

突然矛先が私に向き、変な声が出た。そして慌てて言われた通り周りを見渡してみる。だけど、やっぱり何も起きる気配がない。

 

「もしかして、場所間違えたとか?」

 

「それはないわ。元々境界面は単なる世界の境界、空間的には存在しないものなの。それがこうして存在しているとなると、必ず何処かに原因(カード)があるはずだわ。」

 

なら間違いないよね。私は改めて周りを見渡す。

 

「あれ?なんだか今回空間が狭くない?」

 

「カードを回収するごとに歪みが減ってきてる証拠ね。最初の頃は数キロ四方もあったらしいし。」

 

うへ〜……。そんな広い所を探すなんて大変だっただろうなぁ〜……。

「取り敢えず歩いて探すしかないのかな…。」

 

『ん〜む…。何とも地味な……。もっとこう、魔法少女らしく、ド派手に魔力砲ぶっ放しまくって一面焦土に変えるくらいのリリカルな探索法をですね。』

 

「それはただの破壊行動だよ……。」

 

ルビーとそんな事を話していた時、不意に後ろで何か動く気配がした。

 

『?どうかしましたか?』

 

「ううん、何でもない。」

 

「イリヤー?早く来なさい。置いてくわよー。」

 

凛さんに呼ばれた方へ向かう。でも、やっぱり気になってしまった。私は後ろを振り返った。

 

「気のせいかな?さっき何かうごっ!!?」

 

言いかけた途中で頭を何かに押さえつけられた。私の頭は強制的に腰のあたりまで下げられた。

 

「戦闘、準備っ!!」

 

私のすぐ近くから声が響く。私はその方向に目を向ける。そこには、肩から血を流しているお姉ちゃんの姿があった。

 

「えっ……?」

 

「衛宮さん!!」

 

「美遊!」

 

砲射(シュート)!」

 

美遊が森に向かって魔力砲を放つ。でも、そこには何もいなかった。

 

「お姉ちゃんッ!!!」

 

「大丈、夫…。はや、く、全方位を、警戒して!」

 

お姉ちゃんがそう伝える。

 

「わかったわ。方陣を組むわよ!」

 

「不意打ちとは、ナメた真似してくれますわね!」

 

「攻撃されるまで全く気配を感じなかったわ!しかも完璧な急所狙い…!気を抜かないで!下手すれば即死よ!」

 

死……。覚悟をしていたといったら嘘になる。いっぱい怪我をするかもしれないけど、命までは失わないと思っていた。でも、今死という言葉が今まで以上に現実味を帯びたものに感じられた。

 

私達の取った手は、密集しての全方位警戒。死角をなくしどんな攻撃でも対処できる陣形…、だけど。

 

 

 

 

 

 

結果としてそれは、無意味に終わる。

 

 

森の中から、骸骨の仮面を被った敵がぞろぞろと顔を出した。

 

『敵視認!総数…五十以上!!』

 

「そんな……。」

 

草木の間、または木の上などから私達を狙っている。

 

「嘘でしょう……!?完全に包囲されていますわ…!!」

 

「何てインチキ……、軍勢なんて聞いてないわよ!」

 

敵の手の中では武器が構えられ、ヂャキッ、と音を立てている。

 

「立ち止まらないで!的にされるわ!イリヤと美遊は火力を一点集中!包囲網を突破するわよ!!」

 

凛さんが指示を出す。でも、私の耳には届かなかった。何故なら、

 

「お姉ちゃん!どうしたの!?」

 

「か…、からだが……、うごか…ない……。」

 

目の前でお姉ちゃんが倒れていたから。

 

「衛宮さん!!まさか、あの時!」

 

「武器に毒を仕込んでいるなんて!!」

 

毒?私を庇ったせいで、お姉ちゃんに毒が?

 

「!!二人共、よけ…」

 

美遊が何か叫ぼうとした時には、私はもうその状況に直面していた。私とお姉ちゃんに向けられた全方位からの攻撃。

それは、まるで王手をかけられた駒みたいだった。

 

凛さんの判断は冷静で正確だったし、今回の敵だって前のに比べたら大したことなかったはずなのに。ただ一つ、最初の一手で後れをとった。それだけのことで死んじゃうの?

 

どうすれば、良かったのかな?

 

 

 

【士郎視点】

 

駄目だ……。体が全然動かない……。

 

イリヤ……。

 

「あ、きらめ、られる、かぁぁぁ!!!」

 

私はイリヤの上に被さった。私はどうなってもいい。でも、イリヤだけは、

 

「絶対に、護る!!!」

 

 

でもそれは、違う意味では叶わなかった。

 

「そっか………。」

 

「イ、リヤ…?」

 

「魔力砲で一面焦土に…、そうだね。フフ、それなら簡単だ。」

 

 

突然イリヤから魔力が放出され、私達は弾き飛ばされた。突如としてイリヤから放たれた魔力、その原因を、私は知っていた。

 

「ダメ…、それだけは…。」

 

私の制止が間に合うはずもなかった。次の瞬間、辺りは衝撃に襲われ、私の意識はそこで途切れた。

 

 

 

【イリヤ視点】

 

「なに……、これ……。」

 

気がつくと森は消滅していて、私を中心に大きなクレーターができていた。いつの間にかクラスカードが落ちていたが、今はそんな事どうでも良かった。

 

「私が……、やったの………?」

 

「イリヤ……。」

 

「美遊………、凛さん………、ルヴィアさん………」

 

振り返ると、そこに三人いた。でも凛さんとルヴィアさんは、何か焦っている様だった。

 

「ルヴィア!あるだけ宝石を貸しなさい!」

 

「シェロの為ですわ!いいから貴女は治療に専念なさい!」

 

「何…、!?お姉ちゃん、血が……!」

 

 

 

 

 

 

そして、ようやく全て思い出した。

 

 

「なん……なの、なんで私がこんな、敵も皆も巻き込んで……。」

 

自分のものとは思えない、思いたくない記憶が、鮮明に浮かんでくる。

 

「イリヤ……。」

 

「もう…いや……、もう嫌ッ!!」

 

こんなのは私じゃない。早く帰らなきゃ。私の居場所はここじゃない。

 

離界(ジャンプ)

 

帰らなきゃ。早く、帰らなきゃいけない。

 

『落ち着いてくださいイリヤさん!それに士郎さんがまだ!』

 

もう嫌、帰るの。私は普通の人間なのに、変なステッキに騙されて、ちょっと魔法少女やっただけで、まるで、私が私でなくなっちゃうように感じる。

 

「かえらなきゃ、はやく、かえらなきゃ、はやく、もっとはやく!!」

 

『上空……!?まさか、転移!?こんな距離を一度に…!』

 

「あった…!」

 

私の家。はやく、かえらなきゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ガタンッ。私は玄関に倒れこんだ。

 

「!?イリヤさん!?しっかりしてください!イリヤさん!!」

 

やっと、帰ってきた……。

 

 

【士郎視点】

 

気がついた時には、既に全てが終わっていた。こちらを心配そうに、そして私が目覚めた事に安堵しながら見つめてくる、遠坂さん、ルヴィアさん、美遊。

 

そして、そこには一番いて欲しかった人がいなかった。

 

「…イリヤは……どこ…?」

 

今にも消えてしまいそうな声で尋ねた。

 

「…恐らく家よ。現実を受け止めきれず、逃亡したんだと思う……。」

 

イリヤは無事だ、そう言われた。でも、私には聞こえてはいなかった。

 

「守れなかった………。」

 

「衛宮さん……。」

 

まだ、だめ。もうちょっとだけ待って。

 

「…ごめんね、大丈夫だから。イリヤも私に任せて、皆はもう帰って……。」

 

今はまだ、我慢しなきゃいけない。今泣いたら、抑えきれない。せめて、皆が行くまで。

 

「わかったわ。衛宮さんも気をつけて帰ってね。それと……」

 

あまり一人で抱え込まないで。遠坂さんは私の耳元で優しく言ってその場を立ち去った。その後に次いでルヴィアさんと美遊も帰っていった。

 

周りには何もなく、辺りは静寂に包まれていた。

 

「うっ、ううっ」

 

もう、こらえきれなかった。溢れでるものを止める事は出来なかった。

 

私の慟哭が、閑散とした森林に響き渡った。

 

 





遅くなりましたが、評価してくださった方々、そしてお気に入りにしてくださった方々、ありがとうございます!

いつの間にか六人の方が評価をしてくださり、またお気に入り数は200を超えていました。本当に感謝しております。

まだまだ至らぬ点も多いとは思いますが、どうかお付き合いください。

では、次回もよろしくお願いします!

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