Fate/プリズマ☆士郎ちゃん   作:ギルディア シン 呪雷

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……正直に言います。受験生を舐めてました。高校受験の時みたいでしょ?とか思ってたら、ほぼ毎週休み無しのスケジュールでした。いや、もう何なの?二週に一回模試があるんですけど。

それはともかく、いつも読んでくださっている皆様、遅れて申し訳ありません。


12話 大切なものの為の戦い 前編

【士郎視点】

 

『士郎、今の力は使ってはいけない。』

 

なんで?と幼い私は聞いた。その時のお父さんの顔は、はっきりとわかるくらいに強張っていた。

 

『それは君を壊す力だから。』

 

 

———————————————————

 

 

「やっぱり、やるしかないよね………」

 

ある日の記憶を思い返しながら、私は呟いた。外はもう暗くなっている。

 

そして、最後の勝負が幕を開ける。

 

 

【美遊視点】

 

午前0時。私はカード回収にやってきた。予想はしていたけど、イリヤは来ていない。勿論、お姉ちゃんも。でも、それでいい。

 

私が、全て終わらせるから。

 

「時間ね。あの2人は、まぁ来ないわよね。」

 

凛さんが確認するように呟いた。そこに、

 

「そうですね。行きましょうか。」

 

まるで何事もなかったかのように、お姉ちゃんがやってきた。

 

「え、衛宮さんッ!?」

 

「シェロッ!?」

 

二人は驚愕の声をあげた。私も、声は出ていないが、驚いている。

 

「そんな幽霊を見たみたいに驚かなくても……。別に私は死んだ訳ではないんですよ?」

 

苦笑しながら、お姉ちゃんは答えた。

 

「お姉ちゃん…、怪我は?まだ動いちゃダメなんじゃないの?」

 

「実は、今立ってるだけで精一杯なんだよね……。」

 

でも、とお姉ちゃんは続けた。

 

 「イリヤのために戦おうとしている美遊を、放っておけなかったの。」

 

お姉ちゃんは優しくこっちに微笑み、そっと私の頭を撫でた。

 

 「一人で抱え込まないで、私たちをもっと頼っていいの。あなたは一人じゃないんだから。」

 

 「………うん。」

 

私は、一人じゃない………。同じ事を言われた気がする。けど、今はいい。今は、戦いに集中しよう。

 

 

 

 

 

【イリヤ視点】

 

 

「…………ぅん……、あ、れ………?」

 

目が覚めると、そこは私の部屋だった。

 

「どうなったんだっけ…………。」

 

何があったか、思い出せない。確か、お姉ちゃんが倒れて、病院に行って、それから………。

 

「……そうだ!お姉ちゃん!!」

 

あの時、確かに言っていた。もういい、今日で全て終わらせる、と。

 

『おや?気がついたんですか?』

 

「ルビー………、お姉ちゃんは?」

 

『士郎さんですか?カード回収に参加するそうですよ。』

 

やっぱり……。お姉ちゃんは終わらせる気なんだ。ボロボロの身体なのに、死んじゃうかもしれないのに……。私の頭には、病院のベッドで横になっている傷だらけのお姉ちゃんの姿が浮かんでいた。

 

「なんで……、なんでお姉ちゃんは自分を大切にしないの!!」

 

「それは、士郎ちゃんだからよ。」

 

「え……、ってママ!?」

 

「うん!ただいま、イリヤちゃん!早速だけど、疲れちゃったから一緒にお風呂に入りましょう!」

 

「えっ、いや、ちょ、待っ……。」

 

突然現れたママは、見事に雰囲気を壊していきました。

 

 

 

 

 

 

 

———————————————————

 

「はー、やっぱりお風呂は落ち着くわねぇ……。」

 

「…………。」

 

どういう状況なんだろうかと、目覚めたばかりの私の脳はそれを理解するためだけに働いていました。

 

「き、急な帰宅だね、ママ……。」

 

「ん〜〜。ちょっと娘たちが心配になってね。色々変わった事も起きてるみたいだし。」

 

そっか。セラたちが知ってるなら、ママだって知ってるか。

 

「それにしてもビックリしたわ。ほら、ウチの目の前に建った豪邸!あんなのが建っちゃうなんて、一瞬帰り道間違えちゃったかと思ったわ!」

 

「あはは……」

 

「セラから聞いたけど、イリヤのクラスメイトが住んでるんですってね。なんていう子なの?」

 

「み……、美遊………。」

 

「ミユちゃんかー。ね、どんな子?」

 

どんなって、えっと………、美遊は………、静かな子、必要なことしか喋らない、ていうか喋ることに慣れてないっぽい。でも、なんでも出来る子。そう、なんでもひとりでやろうとする。一人でやるのが当たり前って顔してた。だから、 美遊は一人でも大丈夫。お姉ちゃんみたいに。

 

 

「本当にそう思う?」

 

 

 

【美優視点】

 

「くっ……!」

 

「美遊!!」

 

「大丈夫です!」

 

敵の攻撃を何とか防ぐ。このカードは、〈バーサーカー〉。物理保護のおかげで何とかなったけど、次からは危険だ。

 

砲射(シュート)!!」

 

私の撃った魔力砲は、腕で弾かれた。

 

「ッ!?」

 

「■■■■■■■!!」

 

バーサーカーの拳が振り下ろされた。そこには、大穴が開いていた。

 

「なんてでたらめな腕力……!」

 

さっき防いだ一撃より、何倍も威力があった。

 

『絶対に直撃は避けてください!物理保護でも守りきれません!』

 

避けろと言っても……、フィールドが狭すぎる…!

 

「逃げ場のないここでは、あの突進力は脅威ですわ…!」

 

「せめてあいつを足止めできないの!?」

 

『無理です…! 魔力砲が効いてる様子がありません!』

 

「なら、これならッ!」

 

お姉ちゃんが矢を射る。けど、身体に突き刺さらず表面で弾かれた。

 

「嘘ッ…!」

 

「あれは、対魔力じゃない……。もっと高度な守り……?」

 

 

まさか、あの身体そのものが…、

 

「宝具…!?」

 

『間違いないでしょう。恐らくは、一体ランクに達しない全ての攻撃を無効化する鋼の肉体(よろい)、それが敵の宝具です…!』

 

なら、最強の一撃で終わらせればいいだけ!

 

砲射(シュート)!」

 

地面に撃ち、煙幕をはる。この行動に凛さんとお姉ちゃんは気づき、敵の意識を私から外す。そして!

 

「『ランサー』限定展開(インクルード)!」

 

刺し穿つ死棘の槍(ゲイボルク)!!」

 

必中の槍が、心臓を穿つ。

 

勝利を確信したその時、

 

「ッ!!美遊!!」

 

私は吹き飛ばされていた。そのまま壁に叩きつけられた。

 

「■■■■■■■■■■■■■ッ!!!」

 

「カッ…、カハッ………!」

 

「美遊!!」

 

なんで?確かに心臓を貫いたのに……。

 

「ありえない…!けど、そうとしか考えられない!」

 

蘇生能力。それが宝具の真の能力だと言う。そんな相手に、一体どうすれば良いのか。

 

「撤退よ!あんな相手じゃ勝ち目が無い!」

 

私たちはビルの中へ逃げ込んだ。幸いにも、ビルの中まで空間が続いていた。

 

「ここでいいわ、サファイア!」

 

『はい!限定次元反射炉形成!鏡界回廊一部反転!』

 

今だ。

 

離界(ジャン)——』

 

「え……?」

 

私以外の皆が離界する。

 

『なっ……!美遊様!?一体何を…!』

 

「これでいい。ようやく…、一人になれた…。」

 

「何も良くないよ、美遊。」

 

「え……?」

 

振り返ると、そこにはお姉ちゃんがいた。

 

 

 

【士郎視点】

 

「な、なんでお姉ちゃんが!?」

 

「考えてたことが一緒ってことだね。それより、何をしようとしてるの?」

 

美遊の手には、クラスカードが握られていた。

 

限定展開(インクルード)じゃ、アイツを倒せない。なら、そのカードには別の使い方があるんだね?」

 

「………知ってたの?」

 

「ううん、知らなかった。でも、一度だけカードを解析したことがあっただけ。」

 

その時の事は今でも鮮明に覚えている。燃えさかる炎と無数の剣が大地に突き立つ一面の荒野に立つ、浅黒い肌に赤い外套を纏った白髪の男。その男のものと思しき記憶が一気に頭の中に入ってきた。だからこそ、確信した。これは、宝具を仮想展開するだけのものじゃないと。

 

「美遊は知ってたんだね。そしてそれを今からやろうとしている。」

 

「……秘密にしてね。これが、カードの本当の使い方!」

 

美遊は、詠唱を始めた。

 

「告げる!汝の身は我に!汝の剣は我が手に!聖杯のよるべに従いこの意この理に従うならば応えよ!」

 

突如、天井に穴が開き、敵が降りてきた。

 

「まずい!!」

 

私は熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)を美遊の前に展開する。

 

「誓いを此処に!我は常世総ての善と成る者!我は常世総ての悪を敷く者!汝三大の言霊を纏う七天!抑止の輪より来たれ天秤の守り手——!」

 

夢幻召喚(インストール)!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

—————————————————

 

カードを介した英霊の座への間接参照(アクセス)。クラスに応じた英霊の“力の一端”を写し取り、自身の存在へ“上書き”する擬似召喚。

 

つまり、英霊になる。

 

それが本来のカードの使い方なんだろう。証拠として、美遊は、彼の騎士王の剣を使いバーサーカーを圧倒した。

 

「二度目の再生がされた。敵が起きるよ。」

 

『美遊様、敵はやはり不死身です!無限に生き返る相手に勝ち目など…!』

 

「無限じゃない。自動蘇生なんて破壊の能力……、必ず回数に限度がある。」

 

確かにそうだ。絶対に死なない生物は、最早生き物の枠から外れている。それならば、打倒出来るだろう。

 

しかし、そんな簡単な事ではなかった。

 

「ッ!刃が通らない…!」

 

『こちらの攻撃に耐性をつけている!?こんな怪物、倒しようがありません!美遊様!お願いです、撤退してください!今日が駄目でも、また次に態勢を整えて…!」

 

「次じゃダメ!…今ここで、私一人で終わらせないと……、次はきっとイリヤが呼ばれる…!イリヤはもう戦いを望んでいない。だから、撤退はしない!!」

 

「………」

 

ここまで、イリヤの事を考えてくれている。イリヤのために戦ってくれている。

……私は、何をやっているんだ。何の為にここにいる。妹たちを、守るためだろ!

 

約束された(エクス)——— 」

 

美遊の剣に、光が集まる。そして、それは一つの束となって、放たれる。

 

勝利の剣(カリバー)!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

【イリヤ視点】

 

「本当にそう思う?」

 

「えっ……?」

 

「だってあなた、全然『大丈夫』って顔してないじゃい。本当は心配でしょうがないんでしょ。今すぐにでも手伝いに行きたい、そう思ってるんじゃない?」

 

……ママの言う通り。本当は心配で仕方ない。でも、同時に怖い。

 

「そんなに自分の力が怖い?」

 

「……それもだけど、でも、もっと怖いのは、また皆を傷つけちゃうんじゃないかって事。それが、怖い……。」

 

「……ねぇ、イリヤ。士郎の力を見たことある?」

 

「え……、うん。」

 

確か、投影魔術だったっけ?お姉ちゃんのは規格外だとか言われてたような。

 

「あれはね、人を殺せる力よ。実際に見たなら、わかるわよね?」

 

「………うん。」

 

「でも、その危険はほとんど無い。だって、あの子は『守るため』にその力を使うから。」

 

守る、ため………。

 

「力そのものに良いも悪いもないの。重要なのは使う人…、あなたの意志。あなたにどんな力があろうと、もしそれが人を傷つけるものだとしても、恐れる必要はないわ。それは紛れもなくあなたの一部なんだから。」

 

うぅ……、そんな事言われたって………。私は口を湯船につけ、ぶくぶくと音を立てる。

 

「ふふ、まぁ急に理解しろなんて言っても無理よねー。だから今はわからなくてもいいわ。答えなんて出さなくていい。あなたは、そのまま進んで欲しい。」

 

「進むって……?」

 

「逃げだしたんでしょ?皆でやろうって決めた事から、あなただけ逃げたんでしょ?」

 

「……………」

 

「あなたはこのままでいいの?士郎ちゃんやミユちゃんはあなたにとってどんな存在なの?」

 

どんな存在……。そんなの、決まってる…!美遊も、お姉ちゃんも、私の大好きな人たち!!

 

「ごめんママ!私、行かなきゃ!!」

 

「えぇ、いってらっしゃい。」

 

私は、皆の場所へ駆け出した。

 

 

 

 

【美遊視点】

 

 

「ハッ……、ハッ……、んうッ!!」

 

身体から、何かが弾きとんだ。瞬間、全身の力が抜け、その場に倒れた。理由はわかってる。魔力切れによる強制送還。やっぱり私の魔力量じゃ、宝具は一回が限界か…!

 

「戻ってサファイア!早く魔力供給を!」

 

『は、はい、ッ!?』

 

私のところに戻ろうとしたサファイアを、バーサーカーは地面に押さえつけた。

 

 

 

 

まずい。まずいまずいまずいッ!そんな、こんなところで!イリヤのために、今終わらせないと!イリヤ、イリヤ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………ごめんね、イリヤ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫。私が、守るから。」

 

そこには、傷だらけになりながらも凛々しく立つ、一人の少女の姿があった。

 

「体は剣で出来ている。」

 

 

 

 

 




出来れば今年中に一期分は終わらせたいですが、下手したら来年まで投稿出来ないかもしれません。
ですが、途中でやめる気は無いので、待ってて頂けると嬉しいです。

では、次回もよろしくお願いします!

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