全日本「語尾にッスを持っているキャラ愛好会」が世に送る、特に意味もないただの日常小説。「~ッス」キャラって、いいよね。「~ッス」キャラ流行らせこら!

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ぜってぇ許さねぇ


ッスっスっす

1.

 語尾。それは本人、または作者がキャラ付けのために目立つようにつける概ね言葉の最後に付け足されるもの。有名所でいえば『キテレツ大百科』に登場するカラクリロボこと『コロ助』等が例としてあげることができるだろう。「~ナリ」というあまりにも強烈すぎる語尾は、創作が溢れる現代でも消えることなくインパクトを残し続けている。

 身近な所で言えば、昨今の年下の人間が目上の人間に対して敬語として使う「ッス」等も挙げられるだろう。主にあまり丁寧でない男性が癖でつい語尾に付属して使ってしまう姿は、もはや日常の一部である。

 男性が使えば没個性なこの語尾、では女性が使えばどうなるだろう。運動系の人間が使えば没個性としてあまり気にしないかもしれないが、そうでもない人間がわざとらしく一々細かく付けている人間であれば、それは間違いなく個性として嫌でも印象が残るというもの。

 丁度、あなたの目の前の彼女がその一人だ。

 

「うおぉぉ……! もう嫌、線画したくない! 手が壊れちゃうぅ!」

 

 文句を露呈する彼女に、あなたは乳首トーンを張りながら仕事をするように急かす。

 

「いやそうは言っても、ほら手がもう休みを求めてこんなに震えてるんスよ! これはもう休むしかないのでは?」

 

 絵とは言え現在進行形で見たくもない野郎の裸見せられているあなたは、思わず力が入って怒りの蹴りを椅子に向かって放つ。オフィスチェアーであるそれは勢いのまま不安定に蹴りを入れた方向へと進み始める。

 慌てる彼女を見て、あなたの溜飲は少し下がる思いだ。

 

「先輩はちょっと私に厳しすぎるッス! 態度の改善を要求するッス!」

 

 棄却。

 

「なんでッスかー!」

 

 あなたがここに来た経緯は簡単だ。週に二度訪れる休日を満喫していたあなたの元に電話が入った、それはあなたが可愛がっていた後輩、"田村ひより"からの緊急の呼び出しであった。曰く、人生を揺るがすほどの大問題と直面してしまったから、助けて欲しい。切羽詰まったような声で呼び掛けてきた彼女の申し出を断れるわけもなく、信用してホイホイと来てみれば同人誌の締切が本日付でここままでは間に合わないと泣きついてきたのだ。

 あなたは大いに呆れたが来てしまった手前頼みを断ることもできず、こうして作業を手伝っているのだ。

 

「まぁ……とりあえず少し休憩して、やる気を補填してからまた書き始めるっスよ。無理したって越えられる壁じゃないでスから」

 

 急遽の呼び出しにも関わらず、あなたと違い文句一つ言わずに作業をする先生に、あなたは頭が上がらない。後輩のせいで苦労をかけて申し訳ない、と"荒木比奈"先生へ素直に謝罪をした。

 

「今回は奇跡的に余裕の脱稿だったスからね。たまには知り合いのために一肌ぐらい脱がないと」

 

 そう言って拳で胸を叩く姿は頼もしいの一言に尽きる。あなたは世の中捨てたものじゃないと目頭が熱くなるのを感じた。少しでも先生の力になるべく、男の裸に慣れるべきかと考えもしたが、浮かべた瞬間にその考えを叩き落とす。普通の男性であるあなたにノーマルの道から踏み外す勇気など引き出せるわけもなかった。

 

「あ、じゃあ私お茶入れてくるッスよ」

 

「心配なのでついていくっス」

 

「先生まで酷くないッスか!?」

 

 そうして二人はやんややんやと騒ぎつつ部屋を出ていく。そこに残ったのはBL同人誌の原稿と、あなた一人。休憩の間まで直視したくないあなたは徐に距離を取った。

 

 

2.

 時は過ぎて、田村家の前。ノイローゼになりかけながらもトーン作業を終わらせたあなたはそのままその他もろもろも手伝い、田村ひよりの原稿は無事完成を迎え、あなたと荒木比奈はそれを見送ろうとしていた。

 

「お二人とも、ありがとうございました! このお礼は絶対に!」

 

 手入れがちゃんと行き届いていることがわかる黒髪は、頭が下がった時の勢いでふわりと宙を舞い、シャンプーの良い香りがあなたの鼻孔をくすぐった。彼女の手には原稿の入った封筒と、ほんの少しの荷物が入った鞄。暗くなりかけているが、今から全力で向かえば間に合うかもしれない時刻だ。あなたはとにもかくにも急いだ方がいいと田村ひよりの背中を押した。

 

「じゃあ、田村ひより、いきまーす!」

 

 そのまま彼女はママチャリに跨がり、荷物を無造作に籠へ投げ入れると最初からギアを高めにしてあっという間にこぎ去ってしまった。そこに残ったのはあなたと荒木比奈の二人だけ。彼女はふっと息を吐くと、あなたへと視線を移した。どうにも何か言いたげのようだ、目がじとっとしている。

 

「君ってもしかして、髪フェチっスか?」

 

「――――!?」

 

「いーや、比奈の目は誤魔化せないでスよ。ひよりちゃんの髪に見とれてたじゃないっスか」

 

 あなたは決意に満たされた。この誤解をどうにかして解かねばならないと、不名誉であるレッテルは剥がさなければならないと。それに、あなたの性癖は別にある。あなたのパソコンやスマホの履歴を見れば、それは一目瞭然である。

 あなたは口を動かす。仮に、自分が髪フェチだとして。その対象に先生が入ることは考えなかったのか、と。

 荒木比奈は一瞬たじろいだ。

 

「い、いやいやいや、ありえないっスよ」

 

「――――」

 

「何でって、だってアタシの髪なんてこんな、そんなに手入れだってされてないから綺麗じゃないし、サラサラでもないし、キューティクルだって全然……」

 

 そんなのは全く問題にならない、大事なのは魅力的であるかどうかだ。その点荒木比奈の髪は十分魅力的だ。天才的なまでに計算された跳ね、愛くるしい癖毛、可愛いボサボサ、荒木比奈の髪は誰がなんと言おうとも自分に取っては魅力的である。最高of最高、良さみを感じる、荒木比奈史上最も可愛いまである。あなたの力説が炸裂する。

 実際、効果はばつ牛ンのようだ。

 

「わかった、わかったから! もう口開かなくていいから! おいやめろ馬鹿っス!」

 

 実際まだ語りたいのだが顔真っ赤で止められてしまっては仕方ない、あなたはGN灰皿が飛んでこないことを祈った。

 

「……こんな手入れもされない状態のもの、誉められても嬉しくないっス」

 

 その割には思ったより顔に血が集まっているような気がする。

 

「これは怒りっス、顔面トランザムでスー」

 

 しかしぶっちゃけどっちでも構わない、荒木比奈という存在であるという時点でどちらも可愛い。あなたはそれをよく分かっていた。

 

「も、もうアタシは帰るっスよ! 今日はもう解散!」

 

 背中を押され反対方向を向けさせれてしまったあなたの背後で、荒木比奈がさっさと立ち去ってしまったのを感じる。

 少し残念に思いながらも、あなたもまた趣味のために自宅へと足を進めた。

 

 

3.

「――――は? なにそれ、惚気っすか? それともいじめ? ボクへの当て付けかなにか?」

 

 あなたの耳につけられたヘッドフォンから大呆れの声が聞こえる。あなたはそれをデスクトップ内で大暴れする自分のキャラをコントローラーで操りながら、話し半分に聞いていた。それにしても今宵のルーサーもドロップが酷い。

 

「次からどんな顔して会えばいいかって、知らないっすよそんなこと。少なくともボクに相談することじゃないよねそれ」

 

 しかし実際問題、あなたの身近で頼れる大人といえばデスクトップ向こうの彼女"ジナコ=カリギリ"以外には存在しない。体のいい相談相手と言えばそれまでだが、彼女が思う以上にあなたは彼女を深く頼っているし敬愛している。こんなことを喋れるのなんてジナコ以外に存在し得ないんだ、と伝えると少しだけ反応が変わる。

 

「……ほんと声は無駄にいいっすね。あー、あー、わかったわかった。好きに吐けばいいじゃないっすか。ただし、ボクの答えに期待しないこと。ボクはあんたより長く生きてるだけで、経験値はあんた未満なんだから」

 

 なんだかんだ言って聞いてくれるし考えてもくれるジナコ=カリギリは、間違いなくあなたにとって頼れる年上なのだ。

 

「その話はまた後で聞くとして……ドロップ、どうだったっすか?」

 

 あなたの手持ちには購入チケットが二枚増えただけである。

 

「相変わらず屑運っすね。RTAとかしたら再生数稼げるじゃないんすか?」

 

 そんなことしたら試走の時点で心が折れてしまう、そこまであなたの心は強靭に出来てはいなかった。

 

「ま、明日もあるだろうし付き合うっすよ。やることって言ったら、キャラメイクぐらいだし」

 

 そのキャラメイクに凝りすぎて全く返事の一つもしなかった人間が言うことだから、あなたはあまり信用できなかった。まさか返事だけで一時間も待たされるなんてあなたは思いもよらなかっただろう。

 

「や、あれはもう謝ったじゃないっすか。それに今回のはかなり難しいんすよ、妥協もしたくないし」

 

 なら無理に付き合わなくても大丈夫だとあなたは伝えた。そんなに大事にしていることならとことん突き詰めて欲しいし、邪魔なんてもっての他である。ジナコ=カリギリの新作が見れるなら安いものだとあなたは考えている。

 

「息抜きも大事っすからね、そこまで深く考えないでも大丈夫だって。まだまだ初心者なんだから、長いものに巻かれてればいいんすよ」

 

 プレイ時間が300を越えてもまだ初心者と言うか、と思ったが彼女のプレイ時間はあなたのの三倍以上はあるらしいと聞いたことがある気がしたので、彼女にしてはそれも致し方ないのかもしれない。しかしあなたはいい加減中級者ぐらいには認められたいものだと苦悩していた。

 

「これが私に出来ることだから」

 

 静かに呟いた言葉は、あなたの耳には届かない。

 

「ううん、なんでもないっす。さ、こうなったらドロップするまでひたすらマラソンあるのみっすよ。何事も重ねるのが一番大事っす」

 

 あなたは肯定してコントローラーを握った。いくら屑運と言えど朝までかかることなんてあり得るわけがないと軽い気持ちで返事をしたが、それを朝日が上る頃にあなたは後悔することになった。

 すっかり明るくなったころに、あなたもジナコ=カリギリも疲れきった声でお別れを告げ、そのままベッドの上で意識を手放した。

 

 これが、あなたの大まかな日常である。あなたは変な語尾に付きまとわれている日々を過ごしている。





Q.ちょっと待って! 一之瀬はじめちゃんが入ってないやん!
A.未視聴

Q.ちょっと待って! ペパロニちゃんが入ってないやん!
A.未視聴

Q.ちょっと待って! ステルスモモが入ってないやん!
A.未視聴

Q.ちょっと待って! プリニーが入ってないやん!
A.それ需要ある?

Q.ちょっと待って! 糸鋸刑事が入ってないやん!
A.需要0だからね

Q.ちょっと待って! ティーダが入ってない!
A.未プレイ

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