鉄血の薩摩兵子 <参番組に英才教育> 作:MS-Type-GUNDAM_Frame
薄暗い地下の一室で、イズナリオ・ファリドは一抱えの物体がゆっくりと降ろされるのをじっと見ていた。
降ろされた物体の目の前に鎮座しているのは、白鳩のような純白の翼と、鋼よりも固い体を持つ機械の天使だった。
「まさか、初代の遺産がこのような形で役に立とうとはな」
世界の均衡のために。
ギャラルホルンの存在意義は、過去から一貫してそうあったわけではない。
むしろ、そのようにしてまとまり始めたのはアグニカ・カイエルが死んでからしばらくしてからだった。
アグニカ・カイエルはギャラルホルン設立の魁となった男ではあるが、ギャラルホルンにその直系は残っていない。何故か?
それは、例え人類が存亡の危機にあろうとも、利権、妬み、恐怖、そういった感情が人類の頭から消えることは無いという証明だった。
今でこそアグニカ・カイエルを祭り上げてはいるが、謀略の果てにアグニカ・カイエルを人界から抹殺したのは、各国の支援を受け計画を実行した他ならぬセブンスターズの始祖なのだから。
故に、この話を先代から聞いたイズナリオ・ファリドは自身の行いを肯定する。所詮、セブンスターズと言えど、厄災戦前と何も変わらない人間なのだから。
暗いイズナリオ・ファリドの笑みに応えるように、様々なケーブルに繋がれた機械製の天使の目は仄暗い緑に輝いた。
◇◇◇◇◇◇
エドモントンの入り口にて、鉄華団と合流したマクギリス、ガエリオ、アインは、二手に分かれた。アイン、ガエリオは、シノ、昭弘、豊久と共に蒔苗を議会へ護送。
マクギリス、オルガ、三日月は、マクギリスの案内の元海岸へ移動していた。
「なあ、モビルアーマーってのは、そんなにヤバいもんなのか?」
ビスケットの運転で走るトレーラーで、オルガはマクギリスに疑問を投げかけていた。
「オルガ・イツカ。君は、厄災戦についてどの程度知っているかな?」
「なんか、人がやばい数死んだってくらいだな」
「モビルアーマーのせいで人類の4/3?が死んだんだっけ?」
三日月の言葉に、マクギリスが笑いながら答えた。
「3/4。そう、モビルアーマーは人類を減らすことに長けている。モビルスーツはその討伐のために強化され、究極系としては君が乗るガンダムフレームが存在するわけだが・・・」
マクギリスが、床に広げられた地図を指示した。
「そんな兵器が、この海岸から接近しているという情報が入った」
「そんなもんがまだ残ってるにしても・・・ふつうわかんねえだろ」
「イズナリオ・ファリドが行っている事は、どうしても人手が必要になる。人の口には戸が立てられないからね」
「これは、依頼ってことで良いんだな?」
「ああ、そう思ってもらって構わない。報酬は、私の資産から出すとも」
椅子にもたれて話を聞いていた三日月が、いきなり窓を見た。
「どうした」
「今、何か変な感じがした」
窓からは、既に崖の下に海が見えていた。
「ビスケット、止めてくれ!」
三日月をよく知るオルガは、何かある、そう判断した。特に、最近の三日月は凄まじい勘をしている。
「まさか、もう来たのか!」
「さあな。けどよ、何かあるぜ、これは」
波立つ海は、いつもと変わらないように見える。しかし、いきなり海面が持ち上がり始めた。
「三日月、バルバトスに乗れ!早く!」
言われるや否や、マクギリスと三日月はコンテナに走りよっていた。
「前衛は君に任せよう」
「そう。よろしくね」
「オルガ!?何があったの!?」
「此処は退くぞ、ビスケット!」
オルガも急いでトレーラーを発進させる準備をした。
「アイツらが出次第すぐにここから離れろ!」
「コンテナなら切り離せるよ!」
コンテナを切り離すよりも早く、コンテナから鈍い音が響き、二機のガンダムが崖に降り立った。海から飛び上がった巨大な影は、二機のガンダムを前に強烈な唸り声を上げる。
何百枚もの金属を打ち鳴らしているような轟音に顔を顰めながら、オルガは撤退を開始した。
「さて、ファリド家の栄光が欺瞞に満ちたものだったとして・・・このガンダムの武勇だけは本物にしなくては」
コンパネに浮かぶシジルを目で確かめながら、ガンダム・アガレスは赤く塗られた棍を構えた。すぐ目の前で、バルバトスも抜刀している。海からは、黒塗りの小型ユニットが湧きだしている。
「雑魚は任せてくれ。君は奴を」
『解ってる。あれが・・・大将首だ!!』
凄まじく低い姿勢で、バルバトスはモビルアーマーの足元へと駆けだした。群がろうとするユニットを、巻き上げる様にアガレスが吹き飛ばしてゆく。
モビルアーマーは口部のビーム砲口を収納し、羽の付け根にある砲門を開いた。砲門には、尖った金属が顔を覗かせている。
「それは当たるな!」
『!』
バルバトスが、駆けだした勢いのままにモビルアーマーの足元に入り、後方に向けて蹴り飛ばした。凄まじい威力にモビルアーマーの体は一瞬浮き、発射されたダインスレイヴは天空に向かって消えた。
「それは、モビルスーツのナノラミネートアーマーをも容易く貫く禁止兵器だ。替えの弾もあると見た方が良いだろう」
『なんか尻尾があるね』
モビルアーマーの背後から、モビルスーツの胴体ほどもある尾が姿を見せていた。金属製らしいそれは、やけに有機的な動きで関首を擡げている。
「流体金属製?そんなものまであるとは・・・」
『これは・・・!?』
金属の尾は一瞬にして大剣のように形を変え、バルバトスに叩きつけられた。上に構えて太刀を防いだバルバトスだったが、次の瞬間には槌のように平坦になった先端をバルバトスに正面から叩きつけていた。
「厄介だな・・・無事か!?」
『自分で飛んだから、大丈夫』
三日月とマクギリスの二人が苦戦する一方で、議会のある首都の方でも騒ぎが発生していた。
◇◇◇◇◇◇
「おい!ガリガリ!なんでこんな所でギャラルホルンが張ってるんだよ!」
「貴様!ボードウィン特務三佐になんという暴言を!」
「お前ら落ち着け!アイン、俺はもうあの小僧で慣れた。あまり気にするな。それで、シノだったか?お前は作戦の説明を聞いていなかったのか?」
「だってよお、あんな難しいこと言われても分かんねぇし、後でオルガに聞こうと思ってたんだよ!」
議会へ至る道には至る所にモビルワーカーが張っており、町中へモビルスーツが持ち込めない上に兵力が決定的に不足しており、戦力に圧倒的に差がある以上逃げ回るしかなかった。
「大体お前ギャラルホルンで一番偉いんだろ!?もっと部下とか連れて来いよ!」
「それも聞いていないのか!いまボードウィン卿はギャラルホルンに反旗を翻していて、決着がつくまでそう言ったことは出来ないんだ!」
弾丸を背に受けながら、曲がり角を蒔苗の乗る車を庇いながら曲がる。
テイワズから補給してもらった装甲版を使っているが、このままでは直になくなるだろう。
『シノ!もうすぐ着くってさ!』
「お、もうすぐ目的地か!」
『こっちは準備OKだ』
QCCSの回線で準備が整ったことを聞き取った昭弘から通信が入る。首都を見上げる丘陵から、ガンダム・グシオンが長大な滑空砲を構えた。
「あ、なんか思い出してきた・・・昭弘があそこからギャラルホルンのモビルワーカーをぉ!?」
凄まじい爆音と共に、ギャラルホルンのモビルワーカーが砕けた。
「全く、阿頼耶識システムの力というのは凄まじいな」
「力は力です。使うものが良し悪しを分けます」
「そうだな。その通りだ」
一見すると普通の民家にしか見えない場所に、議会へ通じる秘密の通路がある。
それは、ギャラルホルンにも知る者がいない設備だった。
「無事議会に着いたそうです!」
「団長?こっちは・・・あれ?」
突然、全ての通信機器が動きを止める。
「馬鹿な・・・いくら権力に固執するとはいえ、ここまで!」
「特務三佐!」
いきなり、影が落ちて来た。アインがモビルワーカーから降りていたガエリオを拾い、なんとか全員無事だったものの、近接していた建物のいくつかが完全に破壊されていた。
「おい坊ちゃん!こいつは!?」
「知らん!ろくでもない事と敵であることは確かだ!」
いきなり、落ちて来た巨体から火花が散った。
『ダメだ、この距離じゃあ威力が出ない、近くに行くぞ!直接殴る!』
『ちょっと、豊久さん!?』
『はっはー!よか首が有るではなかか!』
モビルワーカーの上では、ガエリオが頭を抱えていた。
「ボードウィン特務三佐!どこかけがをされたのですか!?」
「いや、いろいろ聞いていて頭がおかしくなりそうだと思ってな」
息を一つ着いたガエリオは、すくっと立ち上がった。
「キマリスで出る。お前たちもだ!早く行くぞ!」
「そうこなくちゃなぁ!飛ばせよライドぉ!」
立ち上がった通常の三倍近い体躯のモビルスーツに、ガエリオは、吠えた。
ガンダム・アガレス
ファリド家の初代が乗っていたとされる主武器はレアアロイ製の棍。
見た目はグリムゲルデをビルドアップしてガンダム顔にしたような感じ。
コンセプトは特に考えてないが、主武器の棍は爆発反応装甲のような仕組みで打撃時に爆発する。更に副武器としてバエルソードと同一素材製の大太刀を持っている。
多分使いこなせばバルバトスの近接特化型みたいな感じ。