鉄血の薩摩兵子 <参番組に英才教育> 作:MS-Type-GUNDAM_Frame
次回は1話の直近辺りを書きたいが…
「やはり、こうなったか」
赤染の甲冑から白髪を覗かせる男は、並みの人間ならば眼光の睨みだけで気絶するのではないかというほどの気を放っている。周囲に控える男たちは、緊張の面持ちで次ぐ党首の言葉を待った。
「俺は、野に下る」
やはり、と、全員が思った。この武人が、腐敗に身を阿るような奸物ではないと全員が確信していたのだ。
「まあ傭兵でんやれば、糊口は凌げよう。お前らは…好きにせい」
二つ返事で、着いて行くと口にした部下たちを見て、党首はくくっ、と小さく笑った。
「お前ら、馬鹿じゃ」
「それでも、腐れるよりはマシです」
全員が頷くのを見た党首、島津龍伯は、今度こそ大笑いした。
「それでこそ薩摩兵子よ。よか。モンタークの婆さんを訪う。そん後は戦よ。野に下るんはよか、じゃっどん、ただ逃げるは駄目じゃ」
部屋の入り口に、一人の男が立った。にかっと笑う男は、部屋に入るや否や膝をつく。
「おやっど、命令をばくれい。儂等が奴らん首でん何でん掻いちゃる」
「ああ、獲れれば獲っておけい。ただ、こいだけはあ奴に言うておけ」
◇◇◇◇◇◇
アグニカ・カイエルが死んでから、50年後。全てのモビルアーマーが停止したと宣言され、アグニカ・カイエルの死後に主立った生存者、七星勲章の取得者上位七名を盟主に、ギャラルホルンという組織が発足した。
盟主たちの何れもが、世界の経済界と繋がりのある名家の出身であり、モビルアーマーの鎮圧に多大な功績を残した猛者である。
「本当に、島津とモンタークを切ると?」
「致し方あるまい。あれ等はアグニカ・カイエル同様、報酬など目にも入れぬ戦馬鹿。今のままでは世界との連携を崩し、このギャラルホルンの成立すら危うい」
クン・イシューの言葉に、頭を振って答えたのはアリ・バクラザン。
「だが、あの能力をわざわざ野に放つと?」
「戦乱の世ならば正に無双の兵法じゃがのう、果たして太平の世の兵士があのような兵法を使えるものか…」
能力至上主義だ、と主張する、ハウル・エリオンの言葉に、マリ・ファルクが反論した。
エリオンが、能力至上主義だという合理的思考の割には直情的な人間であることは、この場の人間の全員が知っていた。
60を超えてなお屈強な体格を誇るハウル・エリオンに対し、余り健康的とは言い難い体系のマリは穏和な性格をしている。
自分の息子が機械の天使に怯えず過ごせるようにと、利権とも何も関係なく阿頼耶識システムの実験に参加した人間はこの場には少ない。
「少なくとも、戦闘不能な味方の機体を盾にするような戦法は戦乱の世でしか使えまい。私の息子、孫にやらせるのもやられるのも御免だ」
だから、未来を見据えた発言が多い、とも認知されていた。
「それは…そうかもしれんが」
少なくとも、これからの平和にこういった考えの人間が増えるだろうし、そう言った人間に認められなければ組織としてギャラルホルンは成立できないだろう。そう理解したハウル・エリオンは残念そうに眼を閉じた。
「モンタークも、というのは、我々の胴元と繋がりの無い財源と繋がりがあるのは不味い、という事か?」
「そうだ」
「全く、早くも不正を為すとでも言うのか?」
「組織には清濁が必要なんだ、クジャン」
サミュエル・ファリドが、マクリ・クジャンと、ガイウス・ボードウィンの発言に答えた。
「我々は、アグニカ・カイエルという英雄を失って尚戦い続け、荒廃したこの新しい世界の秩序を作ろうとしているんだ。最早、アグニカ・カイエルは過去の人間。これ以上混乱を起こすこともあるまい」
暗に、それはモンタークの息子の事を指しているのだと全員が悟った。世に出回っているアグニカ・カイエルは、英雄として名前こそ知らない人間は居ないものの、顔を知っている人間は皆無だ。だから、いかにモンタークとアグニカ・カイエルの子供が生き写しだとしても、取り潰して権力を取り上げてさえしまえば現体制を崩すほどには至るまい。
まあ、最終的には暗殺するがな、とサミュエルは心中で独白した。
ともかく、仕方がない、という空気が会議場に流れたその時、警報が鳴り響いた。
『侵入者です!現在警備兵の殆どが戦闘中とのことで連絡が取れず、現状の把握が
不完全、あ、ガッ!?』
雑音が響き、会議場が沈黙する。
「まさか、まだギャラルホルンに攻め込むような組織があったとは」
バクラザンの呟きを、誰も拾わなかったが、心中では同意していた。
「しかも、かなりの手練れだ。一体…」
会議場の大扉が、凄まじい音を立てて吹き飛んだ。警備兵を引き摺って会議場に飛び込んできた男は、まさしく東洋人と言うべき風貌をしていた。
全員がその男に見覚えがある。赤く染められた具足、黒い髪、狂気を帯びたような黒い瞳、何より、このような状況で尚呵々と笑うその顔を。
「島津の!?」
驚いたようなボードウィンの叫びを無視して、島津家久は自身に纏わりつく警備兵をあっという間に伸してしまった。
直ぐに、破られた扉から警備兵たちが飛び込んでくるが会議室のメンバーがメンバーだからか、誰も撃つことが出来ない。
「挨拶ばしに来た」
納刀した島津家久は、地面に鞘の先をついた。
「政事は俺にはまだわからん。じゃっどん、筋の通らんことは分かる。俺らはギャラルホルンを離れるど。これが土産じゃ!」
いきなり、島津家久はサミュエル・ファリドに斬りかかった。しかし、警備兵も意地を見せようと、サミュエル・ファリドと豊久の間に発砲した。
「ここまでか…さらば。そこで伸びとる男にはクソでも食ろうておれと言うがいい」
射線から要人が離れたが、跳弾の危険があるとまだ警備員が発砲できないでいるうちに、島津家久は窓に駆け寄った。
「覚えておけ、我ら島津は敵と見定めた者をば、幾年かかろうとも必ず殺す。子々孫々まで語り継ぐが良い、サミュエル・ファリド」
切り取られた窓ガラスは容易く銃弾を跳ね返し、その隙に島津は飛び降りた。わらわらと湧き出したサムライの恰好の男たちが、飛び降りた島津の跡継ぎをキャッチする。恐らくは、一人とて部下は失っていないのだろう。
「流石にこれは公式の記録には残せまい」
「こうもはっきりと辞表を叩きつけられてはな」
警備兵たちが、脱出する島津の兵士に蟻の子のように散らされるのを見て、マクリ・クジャンは嘆息した。
「この男に協力してから、何年経ったか…老いたな。況してや、我らの子孫の誰か一人さえあのような事が出来るものか…」
斯くして、後年にまとめられたギャラルホルンの記録にはこの事件も島津の名前も残っていない。ただ、歴代の党首が圧倒的な軍才と異常極まる精神力で天使の駆逐に貢献し続けたサムライの名を知るのみである。
◇◇◇◇◇◇
『貴方の子供を身ごもっていたモンターク女史は、後のセブンスターズのメンバーから害されないようにとガンダムのパイロット達に守られ、その後出産しました』
モビルスーツからかなりの出力で発信される電波は、マクギリスの声を克明に周囲へ拡散し続けている。
『その子供は父親の事を聞かされながら育ち、貴方を裏切った者たちの作った組織、ギャラルホルンに地球から追放されました』
「ねえ、モンタークって」
『ああ、俺の仲間だった女だよ。あいつは良くアグニカに付きまとっていたが、まさか子供が出来るまで行くとは俺も俺も思っていなかった』
300年前の人間がそういうなら、多分そうなんだろう。三日月は、単純にそう思った。じゃあ、あのデカいのに乗っているのは、チョコの人の…爺さん?
『300年なら最早先祖、としか言えないだろうね』
ムーの言葉に、ふうん、と三日月は目線をアガレスへ戻した。
『困窮したモンタークは、商会を立ち上げました。地球圏に散らばるかつての仲間の伝手を借り、自身の能力を用いてそれなりの組織を築きました』
熱の入ったマクギリスの言葉は、恐らく何年もの昔から脳裏に思い浮かべていたものだったのだろう。
『20年ほど前、モンタークの跡取りは一人の庶子を儲けました。庶子とはいえ、父親であるモンターク商会長は子に愛情を注ぎ、先祖の昔話をしました。しかし、俺が5歳の時です。俺の母親は強盗に殺され、捕まった俺は必死に抵抗してスラムへ逃げ込みました。そして、あの男に拾われた』
ガン、と、硬い物を叩く音が響く。
『スラムに居た俺を、あの男、イズナリオ・ファリドは男娼として拾い上げました。そして、拾った子供の中から能力を見て、俺を後継者に据えたわけです』
マクギリスの他には、誰も、一言すらも発しなかった。
『15歳の時、貴方の名前を見つけました。嬉しかった。同時に、悔しくて堪らなかった。何故、ギャラルホルンを導くはずだった英雄が、その子孫がこのような目に会うのかと!』
力なく、アガレスの拳がグレイズ・シュバルツの胴体を打った。いつの間にかグレイズの上に伏していたアガレスをその場の全員が見ている。
『その後俺は、イズナリオ・ファリドから全てを聞き出しました。あの男は、滑稽なほど舌が回りましたよ。貴方がどのように死んだのか、なぜセブンスターズがこれほどの権力を持っているのか、余すことなく。
俺は、その瞬間から復讐を誓いました。他の何を犠牲にしても、セブンスターズをこの世から消し去って見せると。
しかし、結局は駄目でした。俺は友に絆され、婚約者を愛し、こうして英雄の貴方を地面に伏させている』
『マクギリス…お前、泣いてるのか』
『ああ、そのようだ、わが友』
鉄華団のQCSドローンが、戦場に声を届けている。戦場の外、市民が避難した郊外にも、それは流れていた。
『そうか』
眼にした誰もが、その瞬間を記憶に焼き付けただろう。グレイズ・シュバルツの胴体が割れ、内部から水槽が出て来た。水槽の中央に、様々な機器に覆われ、鎮座していたのは300年前の英雄その人だった。
傷こそないものの、骨と皮だけのようにやせ細った英雄に皆声を無くした。
『モンターク嬢が、俺が帰ってきたら教えると言っていた。今ようやく分かった』
見れば、喉は動いていない。恐らくは、スピーカーが声を再現しているのだろう。
『300年越しの子孫よ、顔を見せて欲しい』
アガレスのコクピットが、開いた。
「此処に」
『鏡を見ているようだ…だが、眼はモンターク嬢そのものだな』
マクギリスは、水槽の前に跪いた。
「15年間、貴方の影を追っていました」
『300年、俺は捕らわれていた』
「世界は、既に貴方が知らないものになっているのでしょう」
『俺が、こんな風に暴れさせられた、という事は、結局世界は碌でもない儘なんだな』
「俺は、生きた貴方に遭えた。それだけで…」
『もう、死んでいる。水槽で生まれ、水槽に還った。それだけだ』
「俺は…俺は……」
『生きろ。あの日人に絶望した俺には、最後までサミュエルを止めようとしてくれた彼女だけが真実だった、お前は…う…う、な…』
沈黙した英雄を前に、マクギリスは静かに立ち上がった。
「我らの英雄に、別れを」
ラスタル・エリオンが、ガエリオ・ボードウィンが、画面に映るマクギリスに習い、アグニカ・カイエルを前に跪いた。
第一席、東アジア経済圏出身。イシュー家。
生存者を含めない全てのパイロットの中でも第五位の七星勲章を取得した初代、クン・イシューは、優れた指揮力でアグニカ・カイエル亡き後の連合を大きく勝利へと導いた。アルビノであり、若くから薄かった髪色は老人となって雪のように白く染まっている。
実はアグニカ・カイエルにコンプレックスを患っており、サミュエルは上手い事誘導したが、一歩間違うと「今日のアグニカはアグ味が深い。とてもバエる」とかしゃべり始めていたと思う。
乗騎のベリアルは、掘削機のようにナノラミネートアーマーを「削る」突撃槍を持った白塗りの機体。エイハブリアクターの重力制御を利用した斥力で地面から浮遊する戦車のようなオプションパーツを使って、地上で多大な戦果を挙げた。
第二席、バクラザン家
専らの戦闘行動は熟す万能型で、安定した戦い方で生存と撃墜スコアを両立した。ラテン出身であるにも関わらず、陰気だとボードウィンに詰られることが多々あった。しかし、性格的な適性か戦略構築に長け、良くサミュエル・ファリドとモビルアーマーを駆逐する戦略を打ち出していた。
現セブンスターズを説得するための材料をファリドと共に考えた。
乗騎のフルフルは、ガンダム開発計画とは別途のプランで開発されたモビルアーマー拘束用兵装・スレイプニルを唯一使用できるモビルスーツである。戦い方も陰湿だとは、口さがないボードウィンの言葉。
第三席ファリド家
北欧の貴族、ファリド家の党首。ファリド家は古くから謀略で地位を固めて続いてきた貴族であり、腹は真っ黒。
世界経済を牛耳る資産家たちの命でアグニカ・カイエルの命を絶ち、報酬としてその死体を得ている。同情の余地が無い悪役が書きたかったので良いところが出る予定は無い。
見た目はどこぞの魔人探偵と戦っていた新人類をイメージしてます。
乗騎のアガレスは作者が北方水滸伝を呼んで九紋竜史進が好きになり過ぎた結果考えたガンダムなので非情にパイロットと合っていないと思う。
第四席ファルク家
ロシア出身の資産家の次男。自分の子供たちのためにガンダムのパイロットに志願した。というか財力で成った。
子供のためには何でもするタイプで、孫は最早甘やかされ過ぎてまともに生きて行けるか不安になるレベル。
本人は戦後の不摂生で太った。
アグニカが生きていればその力を利用してつ新しい戦争が起きると唆されてアグニカを裏切った。
乗騎はキマリスに次ぐ加速力とプロトタイプのγナノラミネートソードを持つゼパル
第五席エリオン家
アメリカ出身の資産家の一人息子。父親に反発してガンダムのパイロットに志願し、実力でその座を勝ち取った。有能な人間が大好きなアメリカ人らしいアメリカ人(偏見)で、基本的に肉を食べて生活しており、生肉も食べるので野菜は必要ないと豪語する。
爺の割にはとても体格が良い。
アグニカ・カイエルはかなり気に入っていたがサミュエル・ファリドに説得され続け、拒否するも結局アグニカ・カイエルを殺すための囮の1つにされてしまった。
乗騎は現代のバルバトスのように槌を用いるガンダム・レラージュ。
槌には強力な振動発生機構が内蔵されており、衝突の瞬間に追加で振動することでナノラミネートアーマーのクッション性を無視してダメージを与える事が出来る。
防御機構の試験機体でもあり熱に強い新型のナノラミネートアーマーを持つ。
第六位クジャン家
元々は旧南アフリカを牛耳っていたワーレンベルグの遠戚で、鉱物資源の採掘場所が宇宙に変わったタイミングで西アジアに移った。どっちにしろオリエントかアフリカンな褐色の肌の持ち主。
日本大好きで趣味は写経。作者が黒人さん超かっこいいと思っているので肌が黒いのはアフリカ由来としておく。イオク様の髪の毛もドレッドヘアぽかったし。
割と公正だが、弱みを握られたりなんだりと色々された結果サミュエル・ファリドに与してしまう。そのせいで子々孫々までファリド家を憎むことになった。
乗騎は超遠距離狙撃用ガンダム・カイム。
ダインスレイヴ以上の射程と威力を併せ持ったMS専用戦略級スナイパーライフル・ラグナロクを扱う。演算と姿勢維持に特化しており、移動式超火力精密砲台のフラウロスに対して固定型バ火力超精密狙撃を行う。
ハシュマルくらいまでのモビルアーマーは一撃で遠距離から破壊できるのだが、固定砲台なので接近戦は全ガンダム中最弱。
演算込みで行うロックオンに非常に時間がかかり、イオク様はシステムをよく理解しないまま乗って逆切れし、操作が分かりやすいグレイズやレギンレイズに乗った。
第七位ボードウィン家
「俺がダインスレイブになることだ」とは一言も言ってないがキマリスってよくよく考えるとそれが究極系だよな、と作者は(正確には作者「も」)思う。
南米の出身で実は先住民族とヨーロッパ人のハーフ。
実家は紅茶を扱う商会で、紅茶を愛し紅茶に愛されているがために子孫に紅茶のすばらしさを説いた言葉を数多く残している。
セブンスターズの中では唯一アグニカ・カイエルに関する引け目が全くない清い人。
ただしアグニカが殺される時には普通に苦戦しており、その死を大いに嘆いた。アグニカ・カイエルの伝記を書いたのもこの人という設定。
乗騎は皆さんご存知キマリス。