鉄血の薩摩兵子 <参番組に英才教育>   作:MS-Type-GUNDAM_Frame

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作中現在の島津家当主は亀寿さんという女性で豊久さんの幼馴染です(幼馴染は多分史実。ソース:回天の剣、衝天の剣)

ちょっと豊久さんが「ドリフターズ」時空ならやら無さそうな事やってますが見逃してください。


相反するもの

「はン、他愛なか…」

 

開拓時代のアメリカ西部のような、ランタンが室内を照らすバーの床には五人のゴロツキが転がっていた。体のどこかに、みな大きな青痣を作り呻いている。

卑下するように五人を見下ろすサムライに、中年を少し超えた小柄な男が話しかける。

 

「あ、あんた、強えぇな。俺はこういう者なんだがよ」

 

おっかなびっくり、といった様子で、マルバ・アーケイは名刺を男に差し出した。

 

「俺はマルバ。CGSって傭兵会社で社長をやってるんだが、あんたうちで働いてみねぇか?」

 

つまりはスカウト。CGSと言えば、この場所、クリュセ郊外では最大の企業であり、条件は悪くないはずだ、とマルバは内心で呟いていた。

 

「ん、待てい」

 

しかし、男は名刺を掴んでどこかへ電話をかけ始めたのだ。まさか、既にどこかへ所属していたのだろうか。しかし、ライバル会社でこのような男の噂は無かった。

まさか、伝説の傭兵一族の島津ではあるまいし。何より、あの島津の連中なら今頃みんな首なし死体になっているだろう。この職業にありがちな、「形から入る」人種ではないか。

 

「おお、ご党首。CGSと言うておるが、おう、いや、三下じゃぁ。…分かった」

 

電話をかけ終わった男は、マルバの方を見てニカっと笑った。

 

「待たせてすまんのう。俺らはそれこそ覚えていられんほど恨みを買うておるからのう、党首が許可を出さねば働けん事になっておるのよ」

 

男は、マルバの手を取って、握った。

 

「そいで、許可ば出してもらった。島津中務大輔豊久じゃ。よろしく頼むど」

 

マルバの笑顔が、笑顔のまま凍り付いていることに、島津豊久は気づいていないようであった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

沈黙が、美しくすらあった。薄らと涙に濡れたマクギリスの顔は、一枚の絵画のようですらある。

鉄華団の面々ですら破ることが躊躇われる沈黙に石を投げ入れたのは、銃を構える武骨な音だった。

 

「ジュリエッタ・ジュリス…」

 

グレイズ・カスタムは、アガレスに向けてアサルトライフルを構えていた。慌てたように、鉄華団の一部も銃を構える。この状況を作った一機のモビルスーツを、周りの数機が牽制する中で、マクギリスは速やかにアガレスのコクピットへ戻る。

 

「どうして撃たなかったのかね」

『私はラスタル様の剣…私が晒した醜態は主の醜態でもあります』

 

その答えに、マクギリスは苦笑した。

 

「そう言った風聞を気にするような男でもないだろう…鉄華団の諸君、私の援護をしてくれるかな?」

『援護も何も、アンタが無事じゃねぇと報酬が満額出ないだろうが』

 

オルガの発言を受けて、グシオンリベイクとバルバトスがグレイズ・カスタムに向いて構える。

 

『ねぇチョコの人、あいつ味方じゃなかったの?』

「あの場では味方だっただけという事さ」

 

慌てた、という風に、ガエリオが連絡を入れる。

 

『どういう事だマクギリス!』

「潰すなら今。そう判断したのだろうね」

 

それを聞いたガエリオは、苦虫をかみつぶしたような顔で、俺も出る、と画面から姿を消した。

分り合うことは無いだろう、マクギリスはそう感じていた。思い描いている理想が、ある。その理想が、多くの人間を現体制の腐った部分から解き放つものであるとも確信している。

同時に、何時か出会ったのラスタル・エリオンをも、思い出していた。次期党首としてセブンスターズ党首たちの会議を見ている時に、中継を見ていたマクギリスは一つ気付いた。暗く、維持と保守以外の何物をも考えていないと思われる上位席の中に、一つ違和感のある眼が有る事に。

なるほど、上手く隠れてはいるのだが、毎日見ている自分の眼と同じ色が、確かにある。

 

復讐者の眼。

 

噂には、エリオンは弟を謀殺した、等と言っている物が有っただろうか。それは、もしかしすると真実の一面を捉えていたのかもしれない。

ともかく、あの「眼」を一度でも見ている以上、彼が目指す場所に向けて止まる、という事は無いのだろう。屈服させるか、殺すか。お互いが最大の障害であると同時に、最高の部下足り得る以上、天秤はどちらにも傾くだろう。

 

アガレスが棍を構えると同時に、グレイズ・カスタムがライフルを構える。マクギリスの主観では、ゆっくりと、実際には、まるで無駄のない流れるような軌道で銃口がコクピット近くを捉える。同時にアガレスの右足が地面の構造材を()()()。直前の構えは、それこそプログラムには決して使われていないものだっただろう。或いは、知っていたのかもしれないが、反応が出来なかっただろうか、銃口は火を噴くよりも先に構造材に照準を狂わされ、あらぬ方向へと弾丸は飛んでいく。

唖然としているのか、動きが止まるグレイズ・カスタムだったが、礫を蹴りだすと同時にアガレスは地を這うように加速していた。踏み込んだ足を跳ね返す地面の力が棍に乗り、グレイズ・カスタムの腰部を強かに打つ。接触回線で、パイロットが意識を失うごとり、という音を聞くと、マクギリスはグレイズ・カスタムを肩に担いだ。

 

其処此処でジュリエッタに呼応して反旗を翻していた量産機も、鉄華団に鎮圧されていた。

上空のダインンスレイヴ発射隊は、降下して戦えるような装備ではないし、アガレスから発信される映像のせいでモビルスーツに向けてダインスレイヴを発射することが出来ないでいる。

離脱を開始しようとしたときに、アガレスに通信が入った。

 

『俺じゃ。奴ん首ば掻いてっやたど』

「…ありがとう。島津のご党首にも感謝を申し上げたいが、今は離脱したい。そちらは、私が手配した物で離脱を」

『おう。…三日月は、どうじゃった』

 

暗い顔で刀を拭う豊久に、マクギリスは答えた。

 

「流石は島津の弟子、と言ったところかな。怯むことも退くことも知らず、それでいて勝機を見ており、目の前の敵は全て潰す…兵士としてこれ以上は居ない。そう感じた」

 

そうか、と呟いて、豊久は姿を消した。通信を担当している部下に、離脱後に通信を終了することを伝えたマクギリスは、鉄華団のメンバーと共に戦場を離脱した。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

鉄華団が拠点にしているモンターク商会の地下施設で、オルガ・イツカは大きくため息をついていた。

 

「なあ、てっきりアレで終わりだと俺は思ってた。蒔苗のジーさんは、ここまでで護衛は十分つって報酬を出してくれたけどよ、あんたの方はどうなんだ。アンタの親父が死んで終わりじゃなかったのか?」

「その、予定だったんだがね」

 

実の所、マクギリスの計画は殆ど達成されていた。イズナリオ・ファリドを政治的に排し、自身の出身を世界に発信した時点で。予想外だったのは、そのタイミングでエリオン家の陣営が敵対行動を執ってきたことだった。ギャラルホルンにとって、「アグニカ・カイエル」という聖名は異様な程の拘束力を持っている。その関係者を排除する、という命令を、即座に聞かせることが出来るほどの部下を戦場に送り込んでくる、というのが、マクギリスの誤算だった。

 

「以前、お前の婚約パーティーで会ったのが彼女だったか…」

「そうだ、ガエリオ」

 

最早アンリ・フリュウの後ろ盾であるイズナリオ・ファリドは亡き者となり、蒔苗氏の当選は確定的だ。そういう意味では、アーブラウ代表の抱き込みはほぼ完了していると言ってもいいだろう。ただ、アーブラウの南部ではエリオン家の影響力が強いことを考慮に入れる必要はあるだろうが。

 

「さて、君たちには選んでもらう選択肢が二つある」

 

マクギリスの言葉に、オルガと三日月、ビスケットが顔を向けた。

 

「一つは、このまま私が君たちを雇い続ける、という事。もう一つは、このままエリオン家と休戦協定を結んで火星へ帰る、という事だ」

「帰る、って言ったら、アンタどうするんだ」

 

剣呑な雰囲気を漂わせるオルガに、マクギリスは笑って答えた。

 

「別に何も。これから世間は荒れるだろうし、蒔苗氏の護衛を完遂した、という情報だけでも引く手には困らないはずだ」

「じゃあ、チョコの人と一緒に戦うなら、どうなるの?」

 

三日月は、好戦的な目を隠そうともせずに聞いた。ビスケットが焦ったように止めようとするが、オルガが手で制する。

 

「君たちの最初の護衛対象、クーデリア・藍那・バーンスタインの目的は、火星の経済的独立だった。勝てば、私はその時の発言力をすべて使い、その後押しをすると約束しよう。負ければ、命の保障は出来ない」

「オルガ、僕たちはもう十分大きくなっただろ!火星に帰った方が…」

「いや、それは出来ねぇ」

 

オルガの一言に、ビスケットは眉根を寄せ、マクギリスは目を細める。ガエリオなどは、意外だという表情を隠さない。クーデリアは、事態を静観する。

 

「地球に来て、気づいた事がある。蒔苗のじーさんの秘書が居ただろ、あのじーさんはそんな素振りは無かったが、秘書は違った。表面じゃあ礼儀正しくても、確かに俺たちを火星人だと思って見てやがった」

「地球に住む人間の差別意識は根強い。たとえ私が世界の代表になったとしても、そう簡単には拭えるものではないよ」

「だがそういう方向に向けることは出来る。うちのお嬢さんみたいにな。そうだろ?」

 

マクギリスは、心底おかしい、という風に口を曲げた。

 

「君はそういう事を言うような人間では無い、そう思っていたんだがね、オルガ・イツカ」

「俺だって、アンタがこんな素直にリスクを話すような人間だとは思ってなかったぜ」

 

そう言いつつ、両者は手を取った。

 

「クーデリア、アンタもだ」

「私も、ええ、そうですね」

 

握手から、机に手を重ねるような形に変わると、ガエリオがアインを引っ張った。

 

「何だお前ら、俺も混ぜろ!ほら、アインも来い!」

「じ、自分も今の話に思う事はありました!よろしくお願いします」

 

遠巻きに、扉の傍で三日月とビスケットが手を重ねる面々を見ていた。すると、扉が開き豊久が入ってくる。普段から着ている赤い具足は、返り血で赤く染まっていた。

 

「トヨ…チョコの人の仕事してたんでしょ?」

「ああ。こいじゃ」

 

豊久が放った木製の桶を開けると、中には文字通り男の「首」が入っていた。

 

「うわっ!?」

 

小さく悲鳴を上げるビスケットを他所に、三日月はしげしげと首を眺めている。

 

「トヨが一人でとってきたの?」

「そうじゃ」

「やっぱりすごいな、トヨは」

 

桶を投げ返した三日月は、再びオルガたちの方を見る。

 

「オルガがね」

「何ぞ言うたか」

「うん。オルガがね、火星人と思われるのが嫌だから?戦うって言ってた。俺、オルガが言うならその通りに戦うけど、オルガは…正しい、よね」

 

火星ヤシを一つ口に入れた三日月を、豊久が強く撫でた。

 

「良か。おるがのいう事は良か事じゃ。人間は、自分が人間でないと言われておるならば、戦わねばならん。それは是じゃ。思う存分戦ばするど」

 

ひとりビスケットが、珍しい物を見た、と驚いていた。

 

「三日月が、オルガの事で誰かに相談してる…」




その頃ボードウィン邸では

「マッキー素敵…」

アルミリアがマクギリスの活躍をテレビ中継で見ていた。
(モンターク商会のアシストでマッキーの様子が世界中継されている)

「あの女!マッキーに傷一つでもつけたら承知しないんだから!」
「流石マッキーだわ!」

「アルミリア、もう少し大人しくしなさい…幾ら許嫁になっているとはいえ、余りお転婆なようだと愛想をつかされてしまうぞ。それと、もう少し兄さんの事も心配してやれ」
「そんな事よりマッキーから手紙来てなかった!?」
「はぁ…ガエリオ、お前アルミリアに変な事でも言ったのか…?」


◇◇◇◇◇◇


マクギリスと鉄華団の契約内容(ダイジェスト)
・マクギリスの戦闘時に手を貸すこと
・報酬は半額前払い
・テイワズが提供する物資の支払いを半分モンターク商会が負担する
・蒔苗氏の護衛を成功させる事


◇◇◇◇◇◇


今回書いてて思った事

・大分長い間クーデリア空気だったなぁ
・ガエリオの思考回路がトレースしやすすぎる
・ラスタルとマクギリスは分かりあえるだろうが並び立てない
・豊久も間でじわじわ出てくるくらいしか仕事が無かった
・一番救済されてるのはアインだった(火星人差別撤廃のために活動開始)
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