鉄血の薩摩兵子 <参番組に英才教育>   作:MS-Type-GUNDAM_Frame

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めっちゃ間が空きましたw
マッキー&鉄華団vsラスタルの主張の違いをうまく形にするのにだいぶ時間食っちゃったんですね。まあPUBGやらPlanetCoasterやらFGOやらに時間を注ぎまくったことは否定しません。

今回のタイトルでなんとなく想像はつくかもしれませんが、この先出てくるモビルアーマーは大体そういう系です


外神海底より目覚めたり

西暦2210年 月―

 

「私は間違いなど…」

 

未だ銃口から硝煙が立ち上っている。何かのセンサでも反応したのか、循環システムが作動し、煙は細い筋となって吸い込まれていく。男は何処かに怪我をしている訳でも無いが、息も絶え絶えに、壁に手をつきながら這う這うの体で先へ向かう。うわ言のように口から洩れる言葉を、しかし拾う者は既に居ない。

 

「そう、私は正しい…正しいとも。そうだろう?」

 

それでも、自分に言い聞かせるように口が動き続ける。手は弱弱しく壁を掴み、震えながらも足は止まらず、通路の最奥へと体を運び続ける。

白い壁の奥。金属製の厳重の扉の向こう。背部のバックパックから取り出した電子キーが、扉のタッチパネルに触れる。

 

「後世に私の名前など要らない。人間に必要なのは唯一絶対の神…それさえ、それさえあれば世は全て事も無しだ…」

 

先ほどとは意匠が異なるだろうか。蒼い明りに照らされた円形の部屋の中央には、一つの球体が鎮座している。小さめの家屋ほどの広さはある部屋を、先ほどよりは幾分かましな足取りで球体まで歩み寄る。

丁度手が届く範囲まで来たところで、男の目の前に、青いホロディスプレイが立ち上がった。

再び近づけたカードキーに反応し、画面に情報が表示され始める。それなりの速度で流れ続ける情報を、目で追い続ける男の顔には、次第に生気が戻り始める。

 

「ああ、それでこそ神の素体に相応しい」

 

男は、寂しそうな顔で記録媒体を取り出した。

 

「光、あれ」

 

記録媒体が、ホロディスプレイの発生基部に接触する。同時に、ホロディスプレイの表示が白から青へと変化していく。その変化の過程を見届ける事なく、男の目から命の光が消える。ゆっくりと倒れる男の顔を、ホロディスプレイを投影するレーザーが焼いた。

そうして、後には肉の焦げた匂いと貌の無い死体が一つ残った。

同時に、空間を満たす青い光は胎動のように明滅を始めた。

 

厄災戦と呼ばれる時代の始まりである。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

アフリカユニオン、旧モロッコ領海岸にて。

ヴィーンゴールヴへ物産の輸出もあり、世界有数の都市の一つとなっている。特にニューダニッチは、その威容を世界に知られるアフリカユニオン第二の都市である。

しかし、今や凄まじい音量の警報が鳴り響いている。

 

理由は海岸に有った。

警報音に負けじと響くような金属をすり合わせるような機械の悲鳴、その合唱。

金属の魚に、神々しいを通り越して毒々しいと言えるほどの光を放つ光輪を二つも取り付けた、まさしく異形の外見を、世界都市に晒している。

モビルアーマー。

 

誰もが「そう」確信しただろう。学校で習うから、以前、中継されるテレビで見た。

…間違いなく違う。

銀色のうろこに覆われたその体を見れば、警鐘を鳴らすように脳が理解してしまうのだ。

情は無い。躊躇いもない。ただ、殺す気だと。機械の発する色がない殺気に、人々は縫い付けられたように動きを止めていた。

混乱の絶頂にある頭で、人々は恐らく300年ぶりにそう思っただろう。彼らのうちの大多数は、その雄姿を見ていたのだから。

もっと早くギャラルホルンが、マクギリス・ファリドは来てくれないのか、と。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「一個部隊が壊滅、か」

 

緊急出動したMS部隊の被害報告書を読みながら、ラスタルは呟いた。

本当に偶然、ヴィーンゴールヴの執務室に居たラスタルは、モビルアーマー出現の報を聞いて即座にヴィーンゴールヴ駐留部隊の発進を命じた。直属の精鋭部隊ほどではないものの、ヴィーンゴールヴ駐留部隊の練度は高い。

それでも、押収品から鉄華団とモビルアーマーの戦闘を見たラスタルの判断では、駐留軍の全兵力を注いだとして討伐を完遂するには五分といった所だろうと考えていた。

よくて、部隊は半壊。最悪は、全滅である。一存で、ダインスレイヴの使用許可も下した。

 

その結果、緊急発進した駐留部隊は全滅を辛うじて免れたものの、現地の守備部隊は一つの人間すら生存を確認できていない。駐留部隊も、全部隊員の半分が死亡、破損していないモビルスーツに至っては全体の1割もない。

 

モビルアーマーの討伐という事実と、モビルアーマーの残骸を手に入れるという戦果がなければ、ラスタルも責任を強く問われていただろう。

 

いくつかの思索が、同時に脳裏に走る。

モビルアーマーの討伐組織が、この体たらくで良いというのか。今、最も必要な事は、何か。何のために、今日まで事を成して来たのか。全部隊で唯一、対モビルアーマー戦の訓練を積み続けていた地球外円軌道統制統合艦隊が居れば、ここまでの犠牲は必要なかったのか。

 

呼び鈴を鳴らした。

直ぐに、控えの秘書室から秘書が顔を出した。

 

「ご用命を」

「ファリド公に連絡を取りたい。それと、『スレイプニル』の発進準備を急いでほしい」

 

直ぐに承知した、と部屋を出ていく秘書は、既に眼中になかった。何度かそうしたように、話しかける。

 

「俺は今日、意地を一つ捨てるぞ、ハンザ」

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

オーストラリアに居た鉄華団が、ヴィーンゴールヴからの連絡を受けたのはモビルアーマーによるアフリカユニオン襲撃が、モビルアーマーの討伐を以て終了した6時間後、ラスタルが連絡を打診してから1時間後だった。

 

「直接会うのは初めてだったな、オルガ・イツカ」

「アンタが…」

 

差し出された手が、武骨だった。思わず握手を交わしてしまうと、ラスタル・エリオンは悪戯っぽく笑った。

 

「存外素直な男なのだな、鉄華団の団長というのは」

「どう思ってたってんだよ」

「いや、話に聞いただけの物事を、さも知っているかのように感じてしまう。私の悪い癖なのだが…」

 

後ろに控えているイオク・クジャンが何か言いたそうな顔をして握られた手を見ていたが、結局喋ることはなく、目を伏せた。

 

「クジャン公もお変わりないようで」

 

マクギリスが水を向ければ、それなりに丁寧な応対はするが、以前を知っているマクギリスやガエリオからすれば不自然なほど静かに感じられた。

 

「その、クジャン公は随分と変わられたように俺は思うのだが?」

 

耐え切れずに口に出してしまったガエリオに、ラスタルは苦笑しながら答えた。

 

「一応、スレイプニルの中でも話はしたのだが、まだ納得できぬ部分があると見える。まあ、持論を強く持つというのも、程度が良ければ悪くは、ない」

 

正直に言えば、目的が分からない。この間まで、直接ではないにしても戦火を交えていた相手だ。それが、手を差し伸べて握手を求めてくる。

混乱するなと言う方が無理だろう。

顔には、出すまい。そう努めた。

 

どうやらマクギリスとラスタルは過去にも会っていたらしい。

 

「もうバエルは必要ないのか」

「代わりに必要な物を持っていますので」

 

分からない話だが、後でそれとなく聞いてみようとは思った。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「どうぞ」

 

会議室に詰めたメンバーに、フミタンが茶を注いでいく。最近では、マクマードの大親分が飲んでいたものと同じ、緑茶が嫌いではなかった。

前にクーデリアに貰った紅茶というのは、あまり好きではなかった。香りを楽しむもの。そう言われても、今一つぴんと来ない。緑茶は、一度寒い日に飲んでうまい、と思ってから、ずっと好きだ。

 

周りの人間を見回す。

 

ここにいる人間の大半が、世界でも指折りの権力者であるセブンスターズ。これも、あまりピンとこない事柄の一つだった。同じ人間だろう、という思いがどこかにあるからだと思えた。

今も、目の前に座っているラスタル・エリオンは自分と同じように茶を息で冷ましながら飲んでいる。人間なのだから、そういうところが、ある。さらに横へ目を向けると、クジャン公、と呼ばれた色黒の男が茶に手も付けずに手元を見ていた。

今日突然訪ねてきた両人とも、今は物静かである。しかし、クジャンという男にはどこかラスタルが持っている茫洋とした大きさが無い。

豊久に会うまで、大人とはこんなものか、そう思った。今目の前にいる人間も、方向性は違えどまた大きい。親のようなものか。師弟のようなものか。

 

そう思い至った処で、マクギリスが口を開いた。

 

「エリオン公、私とあなたは事実上の敵対関係にあったわけだが、それを捨てて今此処に貴方がいる。この意味を問いたい」

「昨日の出来事だ」

 

全員の頭に、海辺で暴れるモビルアーマーの姿が浮かんだだろう。

 

「私は考えていた。何故今なのか?ギャラルホルン発足から300と50年、もっと前でも良かった筈だろうと」

「そんなもん、考えて結論が出るのか?」

「仮説は立った。間違えているかもしれないがな」

 

事も無げに、間違っているかもしれないと言う。

 

「そんなもんなのか?」

「無論、あり得るというだけで我々には動く義務がある」

「なら、その考えとやらを聞かせてもらいたいな」

 

同意するように、ガエリオやマクギリスも頷いている。

 

「私は、アーブラウ近郊でのあの事件が呼び水だと思っている」

 

海岸で、三日月とマクギリスが二人がかりで潰した化け物。

 

「所謂、モビルアーマーは人工知能を核に持つ訳だが、その知能は全体で最適化されていた、と考えられている」

 

恐らく、顔中に疑問符を浮かべていたであろうオルガにマクギリスが助け舟を出す。

 

「つまり、一つのモビルアーマーが学習した結果を他のモビルアーマーにも共有する機能が存在すると思われる、また、その機能によって休眠状態だったモビルアーマーが起きた可能性があると、そういう事ですね?」

「そうだ。前回からのラグについては、モビルアーマーが自分を修復するために使用していた時間なのではないかと考える」

 

だんだん話が見えてきた。

 

「つまり、どこぞの馬鹿が一匹あれを起こしたせいで、これからも世界のどこかでモビルアーマーさんがまた出てくるかもしれない。そういう事か?」

「まあ、今回の話はそういう事なのだがね」

 

それだけなら、此処に態々来るという事はないだろう。

 

「ミカか、うちの」

「呑み込みが早いな。そう、鉄華団にはいくつか協力してもらいたい事が有る。彼の出向はまあ、その一つだよ」

 

断れる話なのか、これは。

正直に言って、三日月を鉄華団から離すというのは痛いどころの騒ぎではないのだ。

 

「それと、これはできればの話なのだが、捕虜の返還を願いたい」

「誰のことを言っているのですか?」

「カルタ・イシュー、ジュリエッタ・ジュリス、まあ大きくはその二人だ」

 

ガエリオの問いに、ラスタルはそう答えた。

 

「幾ら世界の危機とは言え、それを頼みに恩赦を願い出る人物ではないでしょう?貴方は」

「まあ、用意はある」

 

ラスタルは、懐から3枚の紙を取り出した。

 

「この三つの権利を、鉄華団、またはマクギリス・ファリドに譲る」

「これは…」

 

モビルスーツのフレームを記した設計図のようなそれを、オルガは食い入るように見つめた。

どこかで、見た。あれは、そう…

 

「ガンダムフレームか…」

「そう、エリオン家では阿頼耶識手術を施した兵士を公然と使うわけにもいかないが、圏外圏で傭兵家業を営んでいた君たちにはまるで不要な心配だ」

「エリオン公、それは確かに我々にメリットがある話ですが、貴方の側のデメリットまで考えると、全体では未だ釣り合っていないように思いますが」

 

飽く迄、モビルスーツは、例えガンダムフレームであろうとも、それだけでは物言わぬ人形だ。

それこそ、モビルアーマーを打倒するほどの戦力になるにはパイロットが必要だ。例えば、三日月のような。

 

「まあ、こちらで遊んでいる戦力といえばそれまでなのだがね」

「では、一つだけ。」

 

話をしないか。そう、マクギリスが言ったのを見て、オルガは思った。クーデリアも、そうだ。肚を割って、いつの間にか三日月達とも打ち解けている。

信用できるのか。それは、自分には判断できないことだと思った。

 

「良いんじゃねぇか?任せるよ、俺は」

 

何か言いたそうだったガエリオは、それで口を閉じた。同じ様な事を思ったのではないか、そう思ったが、口には出さなかった。

 

「クジャン公」

 

ラスタルが、敬称をつけていても、やはり本当はもっと気安い関係なのではないのかと思わせるところがある。

 

「鉄華団団長と話をしてみてはどうかと思う。世間話でも何でもいいが」

「…エリオン公がそう言われるのであれば」

 

初めてこちらを見た。意外に、芯があるのではないか。目に、どこか、目を逸らせなくするような色がある。

 

「…ここは少し広すぎるんじゃねぇか?」

 

腰を上げたオルガに、イオク・クジャンは黙って従う様だった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「私は…」

 

どのような話をするのか、決めてここまで来た訳ではなかった。ただ、話をしたいと思ったのは本当だ。それは、共通の意思だったと思っている。

 

「大きくなった、と思う。私は、俺はあの時の子供が、こういう方向に大きくなるとは思っていなかった」

 

昔の自分。そういわれて思い出すのは、やはりイズナリオ・ファリドの下に居た頃のことだろう。

 

「あの頃の私は、どうあっても抑えられない悋気のようなものを腹の底にためていたと思うのですよ。それが、何もかもを台無しにする方向へ行かなかったのは確かに運が良かったかもしれませんが」

 

違う、そうではない。幼少の砌、俺が確かに持っていたであろう悋気が持つ炎を、この男も今になっても持っている、それを俺は知っている。

 

「あの肚の底を焦がすような怒りが、消えたわけではないのでしょう。隠すのがうまくなった。それが一番適当な答えだと思います」

 

俺も、貴方も。果たして、心を読んだようにラスタルは答えた。

 

「私の弟が死んだのは、優しく、そして人を惹きつける性格をしていたからだ」

「セブンスターズの党首には、不適格だと?」

 

ラスタルの眼は、窓の外に浮かぶ月を見ているのか。まるでこちらに向かない眼に、やはり炎の揺らめきのようなものが映っている。

 

「市井の人間として生まれていれば、大層幸せな人生を送っていたことだろう…俺は思ったよ。理不尽だと。そして気付いてしまった。俺も、弟を愛していた一人だったと」

 

口調は静かなものだが、体中から怒りが発散されているような感覚を、マクギリスは懐かしいもののように感じていた。肚の底を焦がす炎。それを、我々は共有している。

 

「父は死に、私に家督が移った。しかし、私は心の底からそれを望んでいただろうか。どこかで、穴が開いたような空虚さを抱えながら、何処かに怒りをぶつけるでもなく、十数年が経ち、転機が訪れた」

 

俺が、アグニカ・カイエルの伝記を見つけたように。それが何であるのか、想像はついた。

 

「先代にな、頼まれたのだよ。この男を。人望だけの我が息子を育て上げてくれとな」

「…あえて誰とは申しませんが」

「私は思った。これは復讐の機会だと。親子ほども年の離れた男に、私は弟の姿を重ねた」

 

あとは知っての通りだ、そう締めくくったラスタルは、いつも見るような茫洋とした大きさを持つ男に戻っていた。重ねた年月の分だけ、自分を隠すのが上手くなったのだろう。そう感じられるほどの変わりように思えた。

 

「そうして、その意地を捨てて今、此処に居ると?」

「イオクのことなら、私は最後まで先代のクジャン公に代わり、教えられることを教えるつもりだ」

 

これは、一つの降伏だと言ってもよかった。

 

「クジャン公を…」

「最早叶わん。時間がない。余りにも。最初に私は、君が即戦力しか求めないのかと少し得意になっていた部分もあると思う」

「今の状況は、結果論としか言いようがないのでは?」

 

自分が勝ったとは思えなかった。ただ、世界がどうしようもない方向に動いた。それだけではないのか。

 

「それでも、私には意地よりも大切なものが増えすぎた。言うなれば、セブンスターズ党首の義務は、私にとっては弟の命に准えられたようなものなのだから」

 

最悪の未来を予想した。それは自分には思い至らなかったものではある。

 

「鉄華団が、遊撃隊のように出撃できる状態が良いのですかね」

「そうだな。私もそれが理想だと思う」

 

結論は出た。最早話す事は無いと、二人鵜の男は同時に席を立った。




ブラコンの肉おじさま。需要有りそう…

ちなみにクジャンさんは五分ほどでオルガとつかみ合いの喧嘩に発展し、十五分ほど後でラスタル様に止められました。
多分相性そのものはそう悪くない。
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