鉄血の薩摩兵子 <参番組に英才教育>   作:MS-Type-GUNDAM_Frame

31 / 36
少年兵、過酷な敵、頭薩摩…三拍子揃って正気な訳もなく…



深淵を覗くもの

地球衛星軌道、イサリビ艦内にて。

 

数ヵ月ぶりにこの場所から発進する三日月たちに、ビスケットは敵戦力の説明をしていた。

 

『いいかい?熱はナノラミネートアーマーの天敵だ、絶対に受けるなよ?』

 

ビスケットの必死の説得に、三日月はぼんやりと腕に巻かれた紐飾りを眺めながら頷いた。

 

「要は当たらなきゃいいんだろ」

『いや、まあそうだけど…』

『いい、ビスケット。ミカはやるって言った事はやっちまうよ』

 

あまりに、と言えばあんまりな返答に、口から何が抜け出ているのか勘繰りたくなるほど大きな溜め息をつくビスケットに、オルガが肩を叩いた。

 

『それより、久々のモビルアーマー戦なんだ…鈍ってねぇよな、お前ら!』

『勿論だ』

『おう!流星号の力見せてやるぜ!』

 

低軌道に浮かぶイサリビから、アームで吊り下げられた三機のモビルスーツ。何れも、神の使いをこの世から滅殺するために、最新の技術を用いてカスタマイズが施されている。

 

『地球に降りりゃぁ、通信はできない。まあ俺は、お前らがしくじるとは思ってないがな』

「なら良いよ、俺は。オルガがやっちまえ、って言った敵を手柄に変える。それだけだ」

『あぁ、そうだな。怪我すんなよ』

 

作戦は、最初の降下に関する部分だけ。敵の力量は、全滅した一個部隊が残した一部のみ。それでも、三日月の覚悟は既に極まっている。

心配されるのは、嬉しいことだ。オルガは鉄華団のみんなも、火星のさくらちゃんたちも、皆を守ろうとしている。

だから、俺がオルガの力だ。

 

『先行くぜ!遅れんじゃねぇぞ!』

 

先頭を、重装甲の流星号、ガンダム・エリゴスロカが進む。次いで、メイン戦力のガンダム・バルバドスアガートラムが間に入り、後詰めを探知能力が高いガンダム・グシオンリベイクが務める。

 

『長蛇の陣、だっけなこれ』

「そんな名前だね、確か。眉毛が言ってたでしょ」

『トヨも普段はあんなでも戦では頭を使えって言うからなぁ』

 

降下用の耐熱シールドの影に三機で入り、バルバトスの全身に張り巡らされた銀の腕が、サブアームとして他の二機を支える。最もモーメントを稼げるグシオンが少し後ろにはみ出て、スラスターで突入角度を調整する。

 

『アキレウスは何て?』

「使い古しだが有効、って言ってる」

 

長蛇の陣は、厄災戦時代にモビルアーマーの射撃兵器から身を守りながら接敵するための陣形だ。地球外縁軌道統制統合艦隊には、伝統的にこの陣形が取り入れられている。

モビルスーツに遠距離から有効なダインスレイヴは、通常二機のモビルスーツのフレームを破壊する出力を持っていない。

 

『降下作戦で使うのは、しかもたったの三機でやるのはアグニカ以来だと思うよ』

 

声はすれども姿はないアキレウスには皆すっかり慣れたものである。

 

『ギャラルホルンの連中と訓練してるときは凄かったなぁ』

『連中、訓練終わった後でバルバトスを拝んでたからな』

 

ギャラルホルンの正規兵からすれば、アグニカ・カイエルの名は畏敬の念を抱かずにはいられない雷名である。

 

『あれは勘弁してほしかった。そんな拝まれるような人間じゃないんだから…』

「邪魔だった。オルガに言われなかったら首を刎ねてたのに…」

『仮にも良く思ってくれているのだからそれも、勘弁して欲しいね』

 

全員が三日月ならやると分かっているので半笑いになった。というか、初日に面と向かって『宇宙ネズミに教わることなどない』と言い放ち、オルガにまで言及した男の首を三日月は刎ねた。

モビルスーツの音声記録もあり三日月が罰を受けることは辛うじて無かったが、面と向かって悪口を言う者も居なくなった。

 

『おおっと…コレ、そろそろ敵さんが見つかるんじゃねぇか?』

 

シノの言葉に、昭弘がグシオンのセンサーを起動する。

 

『あー…確か…有った。敵のエイハブウェーブだな』

 

現在、エイハブウェーブの発信源は移動していない。

 

『この軌道で良い。向こうもこっちのエイハブウェーブが分かるだろうけどな』

「減速いくよ」

 

バルバトスを覆う銀色の繊維の一部が、ゆっくりと傘状に展開される。

 

「こんなもん?」

『演算…ぎりぎり重力制御で耐えきれるくらいに減速出来そうだ。会敵まで15秒!』

『ち、ロックされてるな。シノ!』

 

ファーストコンタクトを妨害するのは定石だ。特に、今回の敵はダインスレイヴの装備が確認されており、地上での補給も行っている。

だから、エリゴスが居る。

 

『おうよ!弾くぜ、流星号ォォオ!!』

 

ガンダムフレームの特徴のひとつ、ターコイズの目が赤く光る。ガンダム・エリゴスのエイハブリアクターのエネルギーが、紫電を散らしながら流れ始めた。

エリゴスの胸部装甲が展開され、同時に耐熱シールドを投げ捨てる。

耐熱シールドは、空力的には不自然な軌道で後ろへ吹き飛んでいく。

 

数秒遅れて、黒い杭が正面のエリゴス襲う。しかし、正確にコックピットを狙った筈の杭は遥かに機体の足側を通過していった。

 

『弾く、っつうよりは弾が避けるって感じじゃねぇか?』

『いいだろ!?気分は弾いてるんだよ!』

 

二本目のダインスレイヴは、無い。それを目視で確認した三日月は、バルバトスに二機を投げ捨てさせた。同時に、バルバトスの目も赤く明滅した。

 

『先に言え!』

「大丈夫でしょ」

『先に言うべきだと思うがねぇ』

 

二機を保持していたサブアームを収納し、右腕に集める。

近くで見ると、海で見た八本足の生き物に似ていると三日月は思った。

他の機体に先行して迫るバルバトスに、モビルアーマーの八本足のうち四本が、槍と化して迎撃を行う。

 

「遅いよ」

 

リミッターを解放したバルバトスの出力は、標準的なモビルアーマーを大きく上回る。右腕を巨大な鉄槌に変えたバルバトスは、中空で右腕を振りげ下げ、慣性で機体を頭上に浮き上げる。

モビルアーマーの足は、バルバトスを追いきれず空を切った。

即座に、バルバトスの左腕が入れ替わるように長大な刀剣に姿を変える。モビルアーマーの足が集中した方向とは逆を強かに打った。

よろめくモビルアーマーに、大口径のレールガンが直撃する。

 

『針が貫通しない…三日月、そいつ硬いぞ』

「わかってる」

 

伸縮する足を器用に使い、モビルアーマーはバルバトスから距離を取った。

 

『見れば見るほどイカに似てるな!』

『ヒラメじゃなかったか?』

『それを言うならタコだろう』

 

戦況は優位だ。無駄口を叩く余裕もある。それでも、一部隊を壊滅させているのは…

 

『さて、あのタイプ。私も初めて見るが…熱量攻撃は何処からかな?』

 

破壊された部隊のモビルスーツは、ナノラミネートを焼かれた痕跡が残っていた。ナノラミネート装甲が熱に弱い事は、ビスケットも特に言及していた。

 

『あのやべえ杭を吐く所からじゃねぇか?』

『ますますイカだな、おい』

 

そうこう言ううちに、モビルアーマーに変化が起こった。頭上に、白い輪が展開される。次いで、八本の足が赤く輝き始める。

 

「あれかな」

『その様だ』

 

熱された足は赤を越え、白く輝き始める。近く、地面に生える草が燃え始める。ぐにゃりと、八本の足はこれ迄を遥かに越えた有機的な動きを始めた。

 

『うげぇ、気持ち悪りぃ…』

 

光輪を掲げたタコを、宗教家が見ればどうコメントしただろうか。地面を赤熱させながら迫る様は、確かに人知を越えた物を感じさせる。

しかし

 

「大丈夫じゃない?頭を潰せば死ぬよ。死ねばあれ、オルガがどうにでもするから」

 

あんな気味の悪いものを武装として、自分の自慢の機体に着けたくない。昭弘とシノの意見は言葉を交わすまでもなく一致していた。

 

「綺麗な首にしたいけど、ちゃんと殺さなきゃ」

 

そう言うや否や、バルバトスは背にマウントされた刀を抜刀し、地を蹴って加速する。すかさず昭弘が二発をモビルアーマーに撃ち込み、二本の足が弾を受け流した。更に二本の足が、バルバトスに迫るが、バルバトスはモビルアーマーの足を刀で打ち返しながら姿勢を下げ、滑るように姿勢を下げ、跳躍した。

バルバトスの足を絡め捕るように動いた足を、エリゴスのアサルトライフルが止める。

 

腕が、銀色に膨れる。バルバトスは体をモビルアーマーのボディに固定し、刀を上段に構えた。

 

「首を寄越せよ」

 

先端は音を置き去りにしただろう。切っ先がモビルアーマーの頭と思われる部分に触れたと思った時には、球体の頭に切れ込みが入っていた。

悲鳴のような金切り音が周囲を満たす。

 

「もう一太刀!」

 

逆手に構えた刀を、バルバトスは傷口に突き入れた。激しく暴れていた足の動きが次第に弱くなる。

 

『お、死んだか?』

『みたい、だな。信号射つぞ』

 

弱々しく、機体の上部に展開されていた光輪が明滅はしたが、事切れるようにふっと消えてしまった。数秒みて、もう動かないと全員が確信した。

 

「終わった」

 

グシオンが打ち上げた信号弾を、三日月は出撃前と同じ様な眼で、ぼんやりと眺めてた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

鉄華団によるモビルアーマーの撃破と時を同じくして、歳星ではモビルスーツのレストアが完了しようとしていた。

 

「おやっさん、アンタ…」

 

眼窩は窪み、目がぎょろりと飛び出た様は凡そ正気の人間の顔とは思えないものであったが、不自然なほど闊達な声で返事をする。

 

「メカニックとして70年生きてきたが…やはりガンダムフレームはすばらしぃ!!」

 

勢いよく降られた手が、コクピットハッチの板材に触れる。

 

「ツインリアクターのエネルギーを高効率で伝える流体パルス式シリンダー、人間を芸術品レベルで模倣しているフレーム構造!!

バルバトス、グシオン、キマリス、アガレス、エリゴス、アモン、ウェパル!!!!7機のガンダムフレームに触って!!復元して!!しかも自分のアイディアを盛り込める…生きててよかった…」

 

話しかけた部下は思う。ああ、疲れていて情緒不安定なのだなと。しかしよくよくよく思い出しても見れば、以前、初めてガンダムフレームであるバルバトスのレストアに携わった時はどうであっただろうか。

やはり、今と同じように名状しがたい狂気状態に陥っていた。

 

「まあ、一旦はこのヴェパルも完成という事ですね」

「その通り!!ああ、地球に降りてこいつが躍動する瞬間が待ち遠しいよ…」

 

言うと同時に、おやっさんは白目をむいて静かになってしまった。

部下も5回目ともなれば慣れたもので、口や鼻からの呼吸を確認して休憩室に叩き込んだ。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

太平洋 南緯47度9分、西経126度43分

 

旧世界における到達不能点とも言われるポイントであるこの地点は、最も人的被害が薄いと考えられる場所であるが故に、特に人工衛星の廃棄場所として永くにわたって利用されていた。

永くに亘って積もり続けた金属の破片は、ややもすると狂気的とすら言えるような積もり方をし、それでいて何者かの意図を感じさせるような幾何学的な配置をされている。

 

深海は仄明るく、青い光が一方向に見えるのみである。

 

もし深海魚が人間と同じ感性を持っているならば、静謐な深海に似つかわしくない、毒々しい白い光を見たと感じただろう。3対の眼のように並んだ白い光点は、生物の基数は2であるという陸上動物の常識を嘲笑うかのように5つ、7つ、13、4と思い思いに位置を変え、明滅する。

 

聴いたものの魂を削るような不気味な音響で、呼ばれた名前に、反応するものはよたよたと逃げ惑う深海魚だけだった。

 

「Agnica Cayell…mglw'nafh Cthulhu wgah'nagl fhtagn…」

 

 




一応ガンダムフレームは全機、元ネタの悪魔の能力や性質を反映した機能になっています。
例:エリゴス…騎士の姿で現れるとされる。
       →盾キャラ

これクトゥルフ神話タグ入れるとネタバレですなぁ

うそ次回予告 CV:アルミリア
やめて!モビルアーマービームで焼かれたら前線で戦ってるマッキーまで焼かれちゃう!
お願い死なないでマッキー!あなたが死んだらエリオンのおじ様や団長さんとの約束はどうなっちゃうの?まだ機体は動くわ!ここで耐えればモビルアーマーに勝てるんだから!!

次回「ラスタル・エリオン死す」
デュエルスタンバイ!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。