鉄血の薩摩兵子 <参番組に英才教育>   作:MS-Type-GUNDAM_Frame

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あっれー、なんか思ってた100倍くらい時間が経過している・・・
前回投稿した時は「人の心」が呟かれまくってましたかね・・・

前回のあらすじ

モビルアーマーの残存戦力を(調査の名目で)壊滅させに行った鉄華団&マッキー、対深海用装備のガンダムフレーム二機と戦艦による方位作戦でモビルアーマーとその海底工廠母艦を破壊しようとするも、敵潜水母艦の急速浮上で戦艦は殆どが戦えなくなってしまい、強制的にモビルスーツとモビルアーマーの白兵戦へ移行したのであった。


デミ・ゴッド・ハント

戦況は三極化している。全て、鉄華団のガンダムフレームが存在する箇所であり、それぞれのモビルスーツの特性が発揮されていると言えるだろう。

 

三日月、アレキウスとバルバトスの戦場は、最も範囲が狭く、そして戦力は拮抗していた。多腕のモビルアーマーの刺突をバルバトスが装甲を上手く使っていなし、逆にバルバトスが攻めかかると斬撃に横から触腕が触れ、切断を防ぐ。

時折モビルアーマーから発射されて空を裂くダインスレイヴも、悉くがバルバトスを避けるように飛び、有効打とはなっていない。

数秒毎に目まぐるしく入れ替わる攻防に誰もが立ち入れず、二つの鉄塊の舞と、金属がぶつかり合う甲高い音が全てを支配している。

 

シノと流星号の戦場は、防衛戦を堅持していた。流星号の備える電磁式の防壁は、モビルアーマーの備えるダインスレイヴを逸らす事で完全に防ぎきる数少ない装備である。

その屈折角は周囲にて火器を構えるギャラルホルンの支援部隊にも共有され、発射の瞬間に逃げる、或いは屹立する奇怪な尖塔を楯として防ぎ、損耗はない。

グレイズは数機でフォーメーションを組み、なるべくガスの消費を抑えつつも、時折は榴弾、擲弾によってダメージを与えている。

更に後列を駆け巡る鉄華団のモビルワーカー部隊によって、行動不能となった艦から補給を受け続ける事に依り、正しく千日手と呼ぶに相応しい状態である。

 

明宏とグシオンの戦場は、僅かに押されている。グシオンは対遠距離用の装備であるが、モビルアーマーの動きを止める程の火力を持った弾は当たらず、かといって牽制程度の火力では心理効果も期待できないのである。

グレイズはアインの指揮によって非常に有機的に動き、押しきられないよう防陣を組んでいるが、時折のダインスレイヴにじわり、じわりと機体を削られている。

時折加速したキマリスが突撃するが、空気抵抗に阻まれ、宇宙空間程の火力は出せず味方の損耗を押し留めるのみであった。

 

この状況に、先に海で脚を確保した旗艦では秘策を今まさに産み出そうとしていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「結局のところ」

 

マクギリスが戦場の図を叩きながら言った。

 

「火力が足りない。これに尽きる。敵の妨害光線によって、衛星軌道上のダインスレイヴ部隊とも連携が取れない」

「艦隊の火力支援が出来ないのが痛いな。ここから目視は出来るんだから、狙えはするんだ」

 

ビスケットの言葉に、オルガがふと頭を上げた。

 

「座礁した艦が、使えるんじゃねぇか?

プルーマのせいで人間の砲手は置けねぇが、QCSと阿頼耶識の通信を組み合わせれば、無人で、明宏がよ」

 

この言葉に、作戦部全員の頭に閃きが訪れた。

 

「当然、どの戦艦にも阿頼耶識用のインターフェースは無い。QCSと阿頼耶識の通信は普段諸君がやっている通りだから」

「ただし、基本的に厄災戦時代のシステムが基部にあるから、制御自体は出来るはずだ。必要なのは、戦艦の艦砲コントロールと阿頼耶識コンバーターって訳だ」

 

チャドがマクギリスの言葉を引き継ぐ。

 

「インターフェースは置かなくちゃならない。プルーマが取りついてる戦艦への突入も必要だろ?」

「あのモビルワーカーも入れねぇような空間で、か」

 

バルバトスによって旗艦が海へ押し出されたとき、艦内のプルーマを鬼神のごとき勢いで駆逐した赤備えの武者に、全員の視線が注いだ。

 

「おう、こいつが俺の烏頭坂じゃ」

 

人の腕よりも太い砲筒と、2mはあろうかという肉厚な大太刀を構え、島津豊久は本当に楽しそうに笑った。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

補給に旗艦へ寄ったキマリスへ、昌宏のモビルワーカーと阿頼耶識の砲撃システム、そして島津武士が乗る。

後続のグレイズ部隊にも、選び抜かれた鉄華団のモビルワーカーと白兵戦部隊員が同乗していた。

 

『馬鹿な作戦じゃ。こがあな作戦ば選ぶ、おはんらも馬鹿よ』

 

ギャラルホルンの兵士達は笑った。誰がどう考えても、一番馬鹿なのが誰かは明白である。

 

『じゃっどん、面白い。こがあな時代に、機械どもと素手でぼてぐりかます。おはんら馬鹿どもも笑っておるんが眼に見えっど』

 

作戦ポイントで、モビルワーカーがモビルスーツから投下される。

 

『馬鹿ども、命捨て奸るは今よ!』

 

モビルワーカーによって隔壁の一ヶ所が集中砲火を受け、崩れ去る。一瞬、消火剤が噴霧され、次の瞬間には飛び降りた赤備えが艦内へ突入した。

 

突入の瞬間に現れたプルーマ二機に、雷鳴のような砲音と、地響きのような一の太刀が叩きつけられ、一瞬で瓦礫と同化した。

 

「進め!」

 

現代の戦場に置いて、中世さながらの殺し合いが幕を上げた。

砲火と金属のぶつかり合いは、スケールダウンしたモビルスーツとモビルアーマーの戦さながらに、血と破壊の痕跡を広げながら制御室へ近づいていく。

 

僅か15分で、一行は制御室への侵入を果たした。

 

「明宏!QCSに座礁した艦の砲撃システムの繋いだ!」

『チャド!そいつは助かる、砲門は?幾つある?!』

「20分あれば、追加で3つはいけるかもしれねぇ!こいつだけ繋げるか?!試してくれ!」

『こっちにもアレキウスがいてくれりゃあ調整がな…砲身、動かすぞ!』

「よしOKだ!後はこの位置の艦を繋ぐ!」

 

明宏にマップ情報を送り、次の突入作戦を立てる。そして、白兵戦部隊は血路を切り開いて次の艦に向かった。艦の通路は狭く、プルーマの破片にさえ気をつければなんとか戦いになっている。三手に別れた部隊は、それぞれか目標とした艦に突入した。

 

「トヨ!休め!あんたさっきから先陣切って、ずっとその化け物みてぇな武器振り回してるじゃねぇか!」

ややチャドを見た後で、豊久は交代の合図を出した。部隊員が火力支援し、豊久が中段まで下がる。

少し冷えた水で口をゆすぎ、豊久はその場に吐き捨てた。改めて水を少し口に含んだ豊久の全身からは、尽きない闘気の象徴であるかのように湯気が立ち上っている。

 

「あっ」

 

先陣が、開けた通路に差し掛かった瞬間、角に隠れていたプルーマの腕が隊員の体を刺し貫いた。直ぐに隊員は中段へ引っ張られたが、プルーマの腕に通路は塞がれてしまっている。

 

「吸着弾!」

 

豊久の声に従って、吸着爆弾が密集するプルーマの脚に向かって投擲された。総員が爆発に備えて耳と眼を守るなか、豊久だけが耳の守りを砲筒用の防音器に任せ、顔を十字に組んだ腕で守りながら前に進んだ。

 

爆風が人体に破壊的な被害を与える限界の線を見切り、薄い煙を引き裂きながら甲冑が着地した。着地したそのときには、既に砲筒がその手に握られ、爆風の被害から未だに回復しないプルーマを粉々に破壊していく。

 

仄かに赤く光る砲身を他のメンバーが視界に入れた時には、通路のプルーマは全て破壊された後だった。

 

「進め」

 

顔には火傷の跡があり、眼の端、口の端から血を流しながら、豊久は制御室を大太刀で指し示した。その顔は本当に楽しそうに笑っている。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

明宏の頭には、少し離れた位置に手が有るかの様に感覚が拡張されていた。自分の背後に扇状に配置された戦艦の砲門と、明宏は今繋がっている。

徐々に増えていく手は現在二つ。この手の使い道を、明宏は思い描いていた。味方の支援にグシオンの砲撃を叩き込んでいた明宏は、モビルアーマーがヒットを嫌う部位が有ることに気付いていた。

 

「俺だけが負け戦って訳にはいかねぇからな」

 

更に増えた二つの手を動かしながら、明宏は口許に垂れる鼻血を拭った。そして、QCSに叫ぶ。

 

「一秒で良いんだ!動きを止めてくれ!」

 

その声が届いた瞬間に、三機のグレイズが楯を捨ててモビルアーマーに取り付き、足から地にスパイクを打った。当然、凄まじい勢いでグレイズに触手の攻撃が打ち付けられ、コクピットの空間があっという間に歪んでゆく。しかし、ギャラルホルンの兵士達は失禁しながらでも構えを解こうとはしない。

 

この瞬間を逃がさない。阿頼耶識に拡張された空間の認識能力が、グシオンの射撃管制センサが、一瞬の内に全ての情報を明宏の脳に叩き込む。

 

神経の雷が、撃鉄を叩いた。

 

その瞬間を上空から見ていれば、不揃いに5つのマズルフラッシュが発生した事を認識しただろう。そして、モビルアーマーの体から一つの衝撃音が五倍の音量で響いた。

 

悲鳴のような金切り声で、モビルアーマーは呻いた。砲門も触腕も、全てが天に捧げられる様に上へ延び上がり、或いはそれが人間であるなら祈りと表現したかもしれない。

しかし、此処にそう捉える人間も、そしてその余裕がある人間も居なかった。防御が疎かになった体にはバトルアックスが次々に突き立てられ、小さく煙を上げてモビルアーマーは沈黙した。

 

勝鬨と嗚咽が入り交じるQCSの音声を無視して、明宏は他の二人の相手をしているモビルアーマーに視線を向けた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

太刀が閃くごく狭い空間で、三日月の精神は禅の境地めいた静けさで戦況を分析していた。反射神経は追い付いていても、強く攻めに回れない。命に届く攻撃が見えてはいても、全体を捉えられてはいないのだ。だから、その場しのぎの動きしか出来ない。

 

見えれば良い。神経網に深く同期したアキレウスに、三日月はそのイメージを渡した。

 

帰ってきたものは、イメージであり、そして言葉だった。

 

【マルチロックオンシステム】

 

本来は、グシオンのような火器を複数装備するモビルスーツにこそ必要な、対多数の射撃管制ソフトウェアである。これを、三日月の眼として転用する。そうイメージは語り、網膜にシステムのインストールが宣言された。

 

剣撃の音が響く度に、インストールが進む。そしてシステムの再起動により、一瞬の暗転が三日月を襲った。これを逃すモビルアーマーではなく、動きの止まったバルバトスに触手を殺到させる。しかし、一瞬で再起動を終えたバルバトスは、その全て太刀と籠手状に整形した液体金属で防ぎ、蹴りによって距離を開けた。バルバトスの赤く輝く眼に、そして三日月の青い眼に、新しい視界が写った。

 

「見える」

 

目の前の触手の角度も、速さも、大きさも、全てが一瞬で分かる。三日月は、視界に写る全てを完全に掌握していた。ひと太刀で二本の触手を同時に弾いた三日月は、返す刀でその二本の触手を完全に切断した。そこからは、一方的な解体だった。

 

視界の掌握によって遂に敵の妨害から脱した三日月の太刀は、文字通り思考の速度で振るわれる。初手で二本の触手を失ったモビルアーマーは最早その速度に追従出来ず、徐々に触手を失っていき、脚を全て切断された蛸のようになって、遂には袈裟懸けに両断された。

 

モビルアーマーの烏賊か蛸のような眼から完全に光が失われた事をを確認し、残心を解いた三日月は、遠くで最後のモビルアーマーが砕かれる瞬間を見た。

上空からの観測を阻む青い光の中で、それは断末魔の様に橙色に輝き、溶けた鉄が冷えて固まっていくように光を失った。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

妨害光線は、尖塔を楯にした兵士からの報告で、尖塔によって制御されているらしき事が分かり、モビルスーツ総出で破壊されている。

やがて衛星軌道との通信が回復すると、空からは雨のように鉄の弾頭が降り注ぎ、母艦に空いた穴からアガレスのナノマシン爆薬が流し込まれ、原型を留めぬまで徹底的に破壊された。

 

深海の調査は流星号、バルバトスによって再度行われ、最早海底には本来あるべき静寂が満ちていることが証明された。

 

戦争は、多くの砲火、多くの勝鬨、多くの同胞の死を嘆く声と共に終わった。




阿頼耶識については、三日月たちのお陰で技術がプラックボックスでなくなり、単純な通信ユニットとして小型化できている、として下さい。
阿頼耶識遠隔砲撃システムは、砲塔の制御と砲塔の相対位置だけを通信にのせて負荷を軽減しているイメージです。

次が最終回で、それぞれの去就を書けると良いなと思っています。(ある程度は考えてますが早く出せるとは言わない)
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