美少女になって生まれ変わったら周りが全員美少女な件について   作:生後一ヶ月で課長になった男

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自分で書いた文章を見返す度、死にたくなります。


スモーキンレイニーブルー

今朝、偶然にも紗綾と下駄箱で出会い、一緒に教室へ向かっていた途中で香澄とも出会ったのだが、どうにも香澄のテンションがおかしい。聞けば、バンドをやるとのこと。

 

昨日の今日で一体何があったというのか。

 

「ライブハウス行ったらすっごくキラキラで!ドキドキして!さーやもやる?放課後ダメなら休み時間に……」

 

「私はいいよ」

 

「はぁ……そっかぁ……さとりんは?」

 

「ごめん、私も……」

 

「えぇー……」

 

正直、自分がバンドをやる姿が想像出来ない。一応、楽器が無い事もないが、アレを使うというのは少し違うような気がする。

 

「見つかったんだ。キラキラドキドキするもの」

 

「……ホントだ……!」

 

キラキラドキドキとは、確か香澄が自己紹介の時に言っていた言葉だったろうか。それを指摘された香澄は感極まったらしく、紗綾に思い切り抱きついていた。

 

こんな風に喜べるというのは、少し羨ましい。

 

私はそこまで喜ぶような経験をした事が無い。少なくとも記憶に残っているようなものは……ああ、でも、一つだけ、何かあったような。あれは確か……

 

「さとりん!」

 

「……あ、うん」

 

「どうしたの?」

 

「いや、なんでも」

 

何だっただろうか。きっと大した事ではないのだろうけど。

 

 

 

 

「ごめんさーや!今日ちょっと先行ってて!」

 

などと言って香澄が慌ただしく出ていったのは、丁度四限が終わった直後であった。

 

「なんだろ?」

 

「バンド関係とか」

 

「ま、いいか……あ、そうだ、智も一緒に食べる?お昼」

 

「いいの?」

 

「いいよ」

 

「じゃあ、遠慮なく」

 

そういえば、お昼に誘われたのはこれが今世で初ではなかろうか。

 

かなり嬉しい。嬉しすぎて妙な顔を晒してしまうかもしれない。いや、表情筋は未だピクリともしていないが。

 

中庭にあるベンチに座って紗綾と二人で香澄を待つ。

 

ふと、紗綾の持っている袋が目に付いた。

 

「やまぶきベーカリーだ」

 

「あぁ、ウチの店なんだ」

 

「……だからやまぶきか」

 

「うん」

 

それは全く知らなんだ。名前だけは聞いたことがあるのだが、機会が無く、一回も足を運んだ事がない。私が出不精なのもあるだろうが、というかそれしかない気もする。

 

「でもなんか、いいね」

 

「そう?」

 

パン屋のパンというのに、なにかこう、特別感のようなものが感じられるのは私だけだろうか。今までコンビニの菓子パンか食パンぐらいしか食べた事がないので余計である。

 

「そのうち行くかも」

 

「ご来店お待ちしてます」

 

「店員?」

 

「一応、毎日手伝ってるしね」

 

「おぉ…」

 

私とて皿洗いや掃除ぐらいは流石にするが、そう毎日手伝うというのは経験が無い。私ももう少し両親を労るべきか。

 

「智のは?」

 

「んー……一応、私のお手製?」

 

「へぇ、手作り?」

 

「いや、お米以外全部冷食」

 

「……お手製?」

 

「違うか」

 

最近の冷食は美味しいし、楽だから、まぁ多少はね?

 

そこまで話をした所で、ようやく香澄が合流してきた。

 

何故か牛込さんを連れて。

 

「一緒にバンドやるの!」

 

凄く良い笑顔で大変結構なのだが、牛込さんが驚いているように見えるのは気の所為だろうか。

 

「りみりんすごいんだよ!……なんだっけ?」

 

「ベース?」

 

「ベースが出来る!」

 

「ちょっとだけだよぉ」

 

「ちょっとでもすごいよ!」

 

まぁ、確かに楽器経験者は貴重だろう。

 

そう考えると香澄は中々に幸運かもしれない。いや、牛込さんの様子を見るに、本当に加入を了承したとはとても思えないが。

 

「牛込さん、嫌なら断っても良いんだよ?」

 

「ヒドイ……」

 

「あははっ」

 

「りみりーん……」

 

「いややっ……イヤじゃ、ないよ?戸山さんが誘ってくれて、私……」

 

「……!りみりーん!」

 

最早香澄にとって抱きつくという行為は挨拶か何かなのだろうか。このコミュニケーション能力は私も少しばかり見習うべきかもしれない。

 

しかし、そうなると私もほぼ初対面の人間に対して抱きつくぐらいの積極性を持つ事になるのか?

 

「……ないな」

 

「ん?なにが?」

 

「いや、アレは香澄にしか出来ないなって」

 

まさに生きている世界が違うという感じだ。

 

 

 

 

その後に知ったのだが、どうも香澄が気に入ったというギターはランダムスターという名前らしかい。

 

星に惹かれたのだろう。そこの辺りがどうにも香澄らしくて笑ってしまう。いや、実際には表情が動いていないのだったか。

 

「ギター……」

 

そういえば、姉はどうしてあのギターにしたのだろう。いや、特に理由なんて無いに違いない。あれはそういう人だった。

 

こうやって姉について考える時間ほど無駄なものは無いと悟った私は、大人しく眠る事にした。幸い、最近は良く眠れるのだ。

 

 

 

 

「あ、弦……」

 

「げん?」

 

「なんでもない」

 

香澄が良くギターの話題を出すからだろうか、偶然にも面倒な事を思い出してしまった。

 

アコギの弦がそろそろ替え時だったような気がする。別に毎日弾くわけでもないのだから、わざわざ替えなくてもいいとは母に言われたが、それは、なんとなく嫌だった。

 

大抵眠っているとはいえ、折角置いてある以上、替えないというのも勿体ない。そう、勿体ないだけ。

 

死んでからもこんな面倒を遺すとは、やはりあの姉は碌でもない。

 

しかし、替えるのは良いとして、弦は楽器店にでも買いに行くという事になるのだが。

 

「雨かぁ……」

 

「さとりん、雨嫌い?」

 

「あんまり」

 

濡れるし、傘は邪魔くさいし、蒸し暑いしで良い所がない。

 

わざわざ今日買いに行かなくても良いのではと思いもしたが、思い立ったが吉日と言う事である。私は結局、面倒な姉の後始末をさっさと済ませることにした。

 

だがしかし、一旦家に帰ってから外に出るのは億劫である。普段、金などその日の飲み物代程度しか持ち合わせていない私は、帰る途中で買って帰るという効率的な手段が取れずにいた。

 

ますます今日弦を購入する必要性が無くなったが、どうせ家に居ても娯楽に耽るのみであるのだから、いっそ外に出た方が些か健康的であろう。そう、これは一周半回って効率的なのだ。

 

という謎の発想によって、今、私は商店街の方に向かっている。我ながら馬鹿だ。

 

いつもの如く、電車に揺られながら音楽を聴く。なんとなく選んだその曲は、姉が好きだったユニットの曲で、彼女がしつこく勧めてきたアルバムの中で一番良いと感じたのがコレだった。

 

姉は確か「さいごのひ」だったろうか。予想通り過ぎて笑ってしまった覚えがある。

 

思えば姉とは音楽の趣味が全く合わなかった。

 

私が推しても姉の受けは悪く、姉が勧めてくるものは尽く微妙である。銀杏BOYZを否定されたのは未だに許せない。

 

その割にはアニメに関しては不思議と意見が一致する事が多かったり、妙な所で気が合ったものだ。

 

そんな事を思い返していると、いつの間にか目的の駅に着いていた。

 

彼女について思考するのは無駄だと、一体私は何度悟れば良いのだろう。あまり、振り切れていないのかもしれない。

 

 

 

 

もう既に日は落ちかけていて、未だ降りしきっている雨の事もあり、人通りはかなり少ない。

 

私が向かうのは江戸川楽器店、姉がギターを購入した店である。

 

「おーいらっしゃい。久しぶりだね」

 

「どうも」

 

この店の店員である鵜沢リィさんは、とあるバンドのベースをしているらしい。姉とも多少付き合いがあったらしく、買ったのがここというのもあって、ギターに関する事は大体ここで済ませている。

 

ちなみに鵜沢さんは常に妙な人形を弄っているが、個人的な感想を述べさせてもらうなら、どことなくおっさんっぽくてあまり可愛くない。

 

「今日はどした?」

 

「弦がそろそろ替え時かなと思いまして」

 

「ほいほい、じゃあ……」

 

等と話している最中、後ろで子気味良い音が響いた。

 

まさかこんな天気と時間に楽器屋へ来る奴が他にいるとは、どういう輩かと見てみれば、なんとそこにはギターケースらしきものを誰かと二人がかりで持っている我が友の姿が。

 

「落としちゃって……」

 

別に彼女と特別仲が良い訳では無いが、ソレは私からしても、普段の彼女からしてみれば有り得ない事だった。

 

それぐらい私の中で戸山香澄という人間は、いつでも明るかったのだ。それこそ、不安などという言葉とは無縁なほど。

 

しかし、どうだろう。

 

「修理お願いできますか!?」

 

そう訊く彼女の顔ほど不安を体現しているものはきっと今、他にないだろう。

 




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