1930時 飛空学園艦アレキサンダー内司令室
アレキサンダー司令室の千冬は指令のイスに座ってじっと中央の立体ディスプレイを見つめていた。
セシリアたちが連絡を途絶えてから30分くらいたった。
中央ディスプレイには大空洞の巨大な縦穴の映像が映し出されていた。
司令室のイスに座った千冬はアウシェンビッツ姉妹がもどってきていると報告を受けて、
二人を司令室に呼んだ。
ラウラはシュバルツェア・レーゲンを装着してスタンバイしていた。
司令室に来たアウシェンビッツ姉妹に千冬が言った。
「アウシェンビッツ、よくもどった。状況を報告しろ」
千冬に言われて、アルジャーが口を開く。
「はい、アルバニ2号が異変を察知して、セシリアさんたちのチームが襲撃にあっていることがわかりました」
次にハリーが口を開いた。
「それと、ISが使えないということもわかりました」
「アルバニがセシリアさんのチームを救出に向かったようですが」アルジャーが言って続ける。
「おそらく破壊されたようです」
千冬は黙って考えをめぐらせた。アルバニが破壊されるというのはよほどだ。
通常兵器で自立思考戦車の厚い装甲をやぶることは困難だからだ。
ハリーが続ける。
「われわれだけでの救出は不可能と判断し、情報をとどけるために帰還しました」
千冬が考えて顔を上げる。
「いい判断だ。現在セシリアチームは何者かに捕まったようだ。あそこには何かあったということだな。大空洞にはシュヴァルツェア・レーゲンを向かわせる」
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2000時 大空洞内
セシリアたちは武装した集団に捕まえられたあと、大空洞内の一室に閉じ込められていた。
セシリアがあたりを見回してつぶやく。
「閉じ込められましたわね」
セシリアが扉のある壁のほうに歩いて、壁を手でたたいてみた。
閉じ込められた部屋は15m四方ほどで、壁はコンクリートで固められ、扉は鉄製だった。
セシリアは後ろを向いてISを装着した少女たちにたずねた。
「ISはどうですか?動きますか?」
「だめです。ちっとも起動しません」
「こちらもです。こうなると重い高速具ですよ」
扉の向こうで何かがズシンと音を立てた。
セシリアはうつむいて考えた。
あの怪物はなんなのか?なぜISが動かなくなったのか?あれはどうやって作られたのか?誰が?何のために?
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2030時シチリア南部上空
大空洞への空を切り裂いてラウラのシュヴァルツェア・レーゲンが疾走していた。
しかしアウシェンビッツからの報告を考えると、大空洞内でISが起動不可能になるのであれば、おそらくそれはシュヴァルツェア・レーゲンも例外ではないだろう。
ラウラに通信が入る。アレキサンダーの千冬からだった。
「ボーデヴィッヒ、ISはまだ動くか?大空洞に近づきすぎる前に地上に降りろ、上空でISが起動不能になってはまずい」
「はっ、了解しました」飛行しながらラウラがこたえる。
「加えて大空洞に近づく前に目を起動しておけ。何かわかるかもしれん」
千冬に言われてラウラがこたえた。
「了解しました。『目』を起動します」
ラウラが『目』と呼んだのは、ラウラの左目に内臓されたマアクタル・オーゲンというシュバルツェア・レーゲンの特殊兵装である超高性能レーダーである。
ラウラは左目の眼帯を取ると、左目に転送、同期した超高性能レーダー、マアクタル・オーゲンを起動し周囲を探索しながら飛行した。
すると大空洞に向かう地下深くにラウラの目が何かを捕らえた。
シチリアの北から南の大空洞に向かって、地下に偽装された巨大ケーブルがあり、それが高エネルギーで何かのデータを送信しているようだった。
ラウラは飛行しながらアレキサンダーに通信する。
「こちらラウラ=ボーデヴィッヒのシュヴァルツェア・レーゲン。大空洞への地下に高エネルギー反応の巨大ケーブルを発見。
ISの機能停止の原因である可能性があります。教官、どうしますか?」
しばらくたって通信が入る。
「かまわん。破壊しろ、ISが使えるようになればオルコットたちが動ける」
次の瞬間、ラウラのレーゲンは空中に静止し、右手でレーゲンの熱圧縮ライフルを抜き、
マアクタル・オーゲンで地下深くの巨大ケーブルを見据えて熱圧縮ライフルを3連射した。
レーゲンのライフルから3発の圧縮熱質量弾が疾走する。
3発の弾頭が高速で地面に吸い込まれた。
オーゲンでそれを見ると、2発の弾頭が途中で停止し、ケーブルに届いた弾頭は分厚い装甲に阻まれたのがわかった。
アレキサンダーの千冬から通信が入る。
「ラウラ。レールカノンを使え、ケーブルの周りの地殻が硬い上におそらく材質も特殊素材が使われているんだろう」
「了解しました。レールカノン、スタンバイ」
ラウラがそういうと、シュヴァルツェア・レーゲンの背部の右側に縦に装着されていたレールカノンの砲身が稼動し、
砲身が右肩の前方に移動した。
シュヴァルツェア・レーゲンの右肩の砲身が電圧で白く輝きはじめる。
ラウラは左目のオーゲンで地下深くの巨大ケーブルをにらんだ。
「レールカノン、イグニッション!」
ラウラが叫ぶのと同時に、シュヴァルツェアレーゲンのレールカノンが圧縮熱質量弾を超電磁加速で発射。
超高速で疾走する圧縮熱質量弾は地面を破砕させ、地中深い巨大ケーブルを粉々に引き裂いた。
地面が圧縮熱質量弾が入ったところを中心にして赤熱しドロドロと溶けて陽炎をあげた。
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同時刻 大空洞内
チハ38式を装着していた少女が声を上げた。
「動く、動きます。チハ38式、再起動しました」
大空洞内の一室に捕まえられたセシリアたちのISが再び稼動しはじめた。
それと同時に通信が入る。
『シュヴァルツェア・レーゲンのラウラ=ボーデヴィッヒだ。大空洞につながる巨大ケーブルを破壊した。通信がもどったようだな』
「ラウラさん?ありがとうございます。おかげでこちらのISが再起動しましたわ。こちらはわたくしたちで脱出いたしますわ」
セシリアが言って続ける。
「ブルーティアーズ、転送しますわ」
セシリアがそういうと、セシリアの周囲を青い燐光が包み、上からブルーティアーズの青い全身鎧のような機体があらわれ、セシリアの体を包んでいく。
ラウラからの通信が続ける。
『こちらはISの起動をとめていたケーブルの出所を調べる。健闘を祈る』
ラウラがそういうと通信が切れた。
セシリアは鉄の扉のほうを向くと、ブルーティアーズのエネルギーブレード、ブルーツヴァイを抜いた。
「みなさんここを出ますわよ。ISチームはISがない方を援護しつつ脱出してください」
セシリアがそういってブルーツヴァイの青い刀身を振りかぶると、青い刀身を高速で振り青いエネルギー刃で扉側の壁を四角に切り抜いた。
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セシリアたちの閉じ込められた部屋の外から部屋の壁から青い光が四角の形でもれるのがわかった。
その線にそって壁が切り抜かれ、中からブルーティアーズとチハ38式とユーロガイツⅡがそれぞれ飛び出してきた。
セシリアが部屋から飛び出すと部屋の外にいた筋肉をむき出しにした怪物がセシリアのブルーティアーズに襲いかかってきた。
セシリアのブルーティアーズが手前の怪物をビームライフルの青いライフルで打ち抜く、
その奥から来る怪物にさらに加速してブルーツヴァイの青いエネルギー刃で怪物を一刀両断にした。
その隣からブルーティアーズに飛びかかってきた怪物が後ろのチハ38式から射出された榴弾に直撃されバラバラに吹き飛んだ。
飛行しながらブルーティアーズのセシリアが叫んだ。
「周囲の脅威を排除しつつ脱出ルートを確保しますわ!」