0102教室は500人収容の大教室である。備え付けの机とイスがあり、
多段的に床が上昇し教室の前方を見やすくすることができるようになっている。
教室の窓を見ると、やはり海が続いており、飛空艦にあわせて鳥が飛んでいるのが見えた。
セシリアとラウラを含むA組の生徒が全員教室に入り、席に座っていた。
「突然の搭乗命令でしたから。それらの説明でしょうか」とセシリア。
ラウラがこたえる。
「おそらくそうだろう。今回はシチリアのIS学園に向かうということだが、どうもそのIS学園の生徒も来ているらしい。
兵器ドッグにユーロガイツⅡと見慣れないISがあったから、おそらくそれだろう」
別の少女が尋ねる。
「ラウラさんが見慣れないISって、もしかしてシチリアIS学園の専用ISかな。どんなISか知ってる?」
聞かれてラウラは首を振った。
「いや、基本的に専用ISは秘匿性が高いからな。そのあたりはシチリアIS学園についてもわからないかもしれない」
生徒たちが話していると。
教室の前の扉が開いた。
セシリアたちがそちらを見ると、千冬が入ってくるのが見えた。
千冬が教壇の前まで歩いて、生徒たちを一望して口を開いた。
「全員そろっているようだな」
千冬が続ける。
「現在、当飛空学園艦アレキサンダーは九州南部を航行中だ。これから東南アジアを迂回し、インド洋、中東地域を横切りシチリア島の
シチリアIS学園に向かう」
千冬が教壇のマニピュレータを操作すると。
千冬の背後の黒板に巨大な世界地図が映され、飛空艦の現在位置と予定航路が点線で表示された。
「シチリアIS学園では先方の生徒たちとの交流、共学によって切磋琢磨しIS能力の向上につとめてほしい」
それを聞いてセシリアは疑問を感じた。なるほど留学の形をとるのは不思議ではないが、
それではなぜこんな急に、アレキサンダーまで出したのか。
セシリアの疑問をよそに千冬が続ける。
「そして今回シチリアIS学園からホストとしてむこうの学生に来てもらっている。入ってくれ」
千冬がそういうと、教室の扉が開き、見慣れない制服を着た8名の生徒が入ってきた。
その先頭の女生徒を見て教室がいろめきだった。
165cmほどと千冬と同じく長身で、緩くウェーブした黒髪に褐色の瞳の女生徒だ。
そのほかに白髪でショートの少女や、髪の色が違う双子もいるようだ。
その女生徒たちが全員が入り終わると千冬の教壇の前に整列し、千冬にうながされて先頭の少女が口を開いた。
「今回はわれわれのシチリアIS学園への短期留学を歓迎いたします。私はシチリアIS学園の専用IS搭乗者サラ=ハースニールです。みなさんどうぞよろしくお願いします」
少女は透き通るような白い肌にウェイブした黒髪で、胸元まである黒髪を束ねて肩から前方におろしている。
「アレキサンダーは夜間に加速して、明日の朝にはシチリア島に到着する。それまでの間、交流もかねて彼女らと共同生活を行う。短い間だがな」と千冬。
教室の生徒たちを見回して続けた。
「ではハースニールに艦内の説明をしてやれるものはいるか?」
教室の生徒たちがざわついた。
その生徒たちの中から白い手があがった。
「そのお役目はわたくしにお任せいただけますか?」
手を上げたのはセシリアだった。千冬が承諾すると、セシリアはほほえんで続けた。
「わたくしはイギリスからIS学園に留学してきましたセシリア=オルコットですわ。よろしくお願いいたしますわね」
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フィリピンの上に差し掛かり、青いインドシナ海上を航行する全長700Mの巨大な艦体の内部の廊下を
二人の少女が歩いていた。
片方は緩くウェーブした黒髪の少女、サラ=ハースニール、もう一人が腰まで伸びる金髪を揺らすセシリア=オルコットである。
「・・・そういうわけでこの飛空学園艦アレキサンダーはIS技術を転用した浮遊動力装置を艦の左右に3つずつ、
計6機搭載することで安定的に浮遊、航行することが可能になっていますわ」
セシリアが飛行学園艦アレキサンダーの説明を続ける。
サラが感嘆するように言った。
「すばらしい兵器だね」
アレキサンダーの廊下を見渡して続ける。
「空母は基本的に海でしか動けないけど、この飛行艦は海だけではなく陸にまで航行領域を広げている。
そこから常に整備されたISや戦闘機が即時発進することができる。まさしく移動する基地だ」
二人は学園艦の各施設をまわり、現在は兵器ドックに向かう通路を歩いていた。
寝室や談話室、食堂や大浴場やトレーニングルーム、アレキサンダー後部のIS訓練ドームは野球ドームのような観戦席で囲まれ、
中央は吹き抜けでウォーターフィールドを設置することができる。
作戦室と司令室は縦構造で司令室はかなりの広さがあり、司令室中央には巨大立体ディスプレイがある。
その司令室のイスはそのままエレベーター式に司令室下部の作戦室に移動することができるようになっている。
それらの設備を説明して今は兵器ドッグに向かっているのだった。
「ええ、そして飛空艦のバリアーに加え、ミサイル攻撃にたいしてはISの高い防衛能力がありますわ」
とセシリア。広い廊下を歩きながら少女は続ける。
「日本は現在3つの飛空艦を所持しており、ひとつはこのアレキサンダー、そのほかにアトモス、トールがありますわね。
IS学園の運営下にあるのがこのアレキサンダーというわけですわ」
「アメリカでさえ二隻しか保有しない飛空艦をひとつの国が飛空艦をみっつも所有しているなんて脅威だよ。さすがIS発祥の地といっていいだろうね」とサラ。
「そうですわね。その点はわがイギリスも認めざるをえませんわ。イギリスも飛空艦ブリガンティアを運用しております。
加えてアメリカの巨大飛空艦バハムートやリヴァイアサンも無視できませんわ」
「アメリカIS艦隊だね」とサラが言って続ける。
「私もアメリカIS艦隊の第3艦隊隊長と模擬試合をしたことがあるけど、とんでもない強さだったよ。なかなか苦戦させられたよ」
「アメリカのIS第三艦隊隊長というと、専用IS搭乗者のアルトリア=アルバトロスですか?」
セシリアに聞かれてサラが答える。
「そうだね。アメリカのIS艦体は各艦隊隊長が専用IS搭乗者の上に、ちかぢか今試験運用中の第三世代標準ISナインボールも投入されるというじゃないか。まったく、正体不明の脅威があるとはいえ、世界征服でもたくらんでるんじゃないかと思うよ」
そのようなことを話しているうちに、二人は兵器ドックの扉の前についた。
「こちらがアレキサンダーの第一兵器ドックですわ。こちらではIS学園のISを搭載しており、
また自律思考型戦車や戦闘機も収容しておりますの」
セシリアが扉のマニピュレータを操作すると兵器ドックの扉がプシュッと音がしてひらいた。
二人がドックの中に入ると、涼しい空気とかすかな油のにおいを感じ、広いドック内が開かれた。
「いやー広いね。基地の格納庫並だ」
セシリアが中央のエレベータつきの巨大な柱を指さした。
「この中央の柱はアレキサンダー前部のカタパルト甲板につながっておりますの、出撃時には中央柱のエレベーターから
ISを甲板に移動し、カタパルトで第二速度までISを加速し発進させることができますわ」
いって。セシリアはあたりを見回した。さっきはアルバニが来たが、今は静かなものである。
セシリアがアルバニのドッグを見ると、
5機のアルバニはまったく動かず静止状態で、1機は見当たらず、どこかに出ているようだった。
セシリアは中央柱に歩きながら説明を続ける。
「あれが自律思考型戦車アルバニですわ。このアレキサンダーに6機搭載されております。・・・今は1機いないようですけど。
そして現在IS学園の標準ISチハ38式が10機搭載されています」
「チハ38式か!」
サラが続ける。
「小回りが利いて整備性が高い、信頼性のあるいい機体だね」
セシリアが中央柱のまわりを歩きながら説明を続ける。
「そうですわね。そしてこちらが・・・」
セシリアがサラを導いてひとつのISに視線を促した。
「わたくしが搭乗しております我がイギリスがほこる専用ISブルーティアーズですわ」
サラはそのスリムな青い全身鎧のようなISに見とれた。
数度の再設計でそのフォルムはセシリアの体系に薄くフィットするように設計されている。
そして背中には翼のように4機のビットが取り付けられており腰の部分にはライフルとカッターが刀のように装着されていた。
「吸い込まれるみたいだ。とてもきれいなISだね」とサラ。
セシリアが続ける。
「デザインだけじゃありませんわ。出力、戦闘能力ともに標準ISのそれとは比べ物になりませんのよ。ちなみにこの隣にあるのがラウラ=ボーデヴィッヒさんが搭乗する専用ISシュヴァルツェア・レーゲンですわ。このISは現在整備中ですけれど。こちらの説明は後ほどラウラさんにお任せいたしましょう。ところで」
言って、セシリアは中央柱からドックの端の壁面に設置されたシチリアIS学園の5つのISのほうを向いた。
「サラさんも専用IS搭乗者なのでしょう?あなたの専用ISもご紹介いただけませんこと?」
「かまわないよ。ではこっちにきてくれるかい」とサラは快諾していった。
サラにみちびかれて、壁面の5体のISに向かって歩いていく。
「こちらの4体がシチリアIS学園の標準ISユーロガイツⅡだ。あとの3体のユーロガイツⅡは第2ドックに収容してもらってる。これはイギリス出身のセシリアさんなら見たことがあるんじゃないかな」
「ええ、イギリスの軍施設でも運用されておりますわね」
そして二人がユーロガイツⅡの列にそって歩いていき。サラがひとつのISを指指した。
サラがさした専用ISは吸い込まれるような黒いISだった。
サラの長身にそった黒い全身鎧のようなつくりで、外骨格の人工筋肉の規格が大きいのかスリムながらもマッシブな形状をしており、背中には6つの球体がうめこまれるように搭載されている。
セシリアはこの黒い専用ISをながめていった。
「この専用ISには飛行用のブースターがありませんわね。故障でもいたしましたの?」
この黒い専用ISにはブースターが見当たらなかった。飛行するタイプではないのだろうか、そんなISは聞いたことがなかった。
「あー、それか」
サラはつぶやいて続けた。
「このグラビティカには飛行用のブースターはついてないんだ。だからって飛べないわけじゃない。ブースターの機能を別の機能にさいてるんだよ」
二人が話していると、ガシャンガシャンと音がしてきた。
二人がそちらを見ると、近づいてきていたのは自律思考型戦車アルバニだった。
「セシリアちゃんセシリアちゃん」
「あらアルバニ。どうかしましたの」
とセシリアが尋ねる。
アルバニは両手を上げ、車体をゆらして驚いた。
「えぇ~、セシリアちゃん知らないのかい?」
「驚いた。これが自律思考型戦車かい?こんな風にしゃべる兵器は見たことがないな」
と驚くアルバニを見たサラが言った。
アルバニ3号がサラに向き直る。
「いやーおほめにあずかり光栄です。僕はアルバニ3号。よろしくねサラ=ハースニールさん」
「で、いったいどうしましたの?」セシリアがアルバニを促していった。
アルバニがセシリアのほうにむきなおっていう
「あ、そうそう。大変なんだって。今やってるんだよ」
「やってるって何がですの?」
「ラウラちゃんとシチリアの学生さ、今ISでやりあってるさいちゅうなんだよ」
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セシリアとサラはアルバニに場所を聞いて、それがカタパルト甲板だとわかると兵器ドックの扉をでて、
廊下に隣接した長い階段をあがりカタパルト甲板につながる扉を開けた。
するとインドシナ洋上の湿気のない乾いた風が吹き込み太陽のまぶしい日差しがさしこんでくる。
200メートルある甲板を早足にあるいていると東南アジアの光るような青い海と空が眼前に広がる。
甲板を100メートルほどいくと千冬とIS学園生徒とシチリアIS学園生徒が海のほうを見ているのが見えた。
甲板の上で生徒たちが海のほうを向き口々にラウラさんいっけー、レミー負けるなーと叫んでいる。
その中にいた千冬にセシリアがかけよる。
「教官、ラウラさんがISでやりあってるって、いったいどういうことですの?」
千冬がセシリアのほうを向いていった。
「来たかオルコット、それにハースニールも一緒だな。今はIS学園とシチリアの両名が親善もかねてIS同士で2on2をやっているところだ」
「しかし、シュヴァルツェア・レーゲンは今整備中でしたわよ」
とセシリア。サラをアレキサンダーの兵器ドッグに案内したときに確かに彼女の専用ISはドッグに設置されていた。
千冬が答える。
「そうだ、だからボーデヴィッヒにはチハ38式で出てもらっている。なれない機体だがな。見てみろ」
セシリアたちが千冬に促されて光る洋上を見ると。4つのISが高速で移動しているのが見えた。
その中でチハ38式に身をつつみ、高速で移動しながら白銀の髪を光らせているのがラウラ・ボーデヴィッヒだった。
ラウラは同じチハ38式の同級生に後衛を任せ、後衛と2機のユーロガイツの間を海面スレスレに高速移動していた。
甲板ではアルバニ6号がきており、4機の映像を拡大して立体映像として映し出していた。
兵器ドックのアルバニたちはこの映像を見ていたからおとなしかったのだ。
ラウラのチハ38式が海面スレスレを飛行し、風圧でラウラを追うように海面が水柱を上げた。
40Mほど先に見える二機のユーロガイツⅡがラウラのチハ38式を狙ってライフルから指向性の榴弾を撃ってきた。
ラウラはランダム飛行でその三つの榴弾をかわすと海面に突き刺さった榴弾が爆発し三つの巨大な水柱が上がった。
水柱が消えると、ラウラのチハ38式の姿が見えなくなっていた。
「ラウラさんが消えましたわ!?」
と、セシリア。三つの巨大な水柱が消えた海面のどこにもラウラのチハ38式が見当たらない。
「チハ38式に光学ステルスは搭載されていない。上にいないなら下だろう。見てみろ」
千冬が言って。はるか洋上の二機のユーロガイツⅡを促した。
そのとき、空中に浮かぶユーロガイツⅡの真下の海が揺らめき、水面の爆発とともに多重装甲ブレードを構えたラウラが海の中から急上昇してきた。
ユーロガイツⅡに向かって急上昇し、ラウラに向かって右側のユーロガイツⅡにチハ38式の多重装甲ブレードを突き立てる。
ショートの白髪の少女が搭乗したユーロガイツⅡはラウラの多重装甲ブレードをシールドで受け右上方にはじきとばされた。
もう片方のユーロガイツⅡがラウラのチハ38式に反応したとき。突撃したユーロガイツⅡに運動エネルギーを放出し、静止したラウラのチハ38式が半回転し、至近距離からライフルの砲口を向けていた。
爆音。至近距離からチハ38式のライフルの榴弾を受けたユーロガイツⅡが煙につつまれる。
甲板のIS学園の生徒が歓声を上げる。
「いや、だめだな」と様子を見ていた千冬。
煙が晴れると、シールドで榴弾を受けたユーロガイツⅡが、後衛のチハ38式にライフルを向け榴弾を発射していた。
後衛のチハ38式に搭乗した少女が気がついたように声を上げた
「あっ」
爆音。ユーロガイツⅡから発射された榴弾が後衛のチハ38式に直撃した。
シールド容量オーバー。チハ38式は訓練用の安全装置を起動し戦闘モードを停止する。
「そんな、いくらラウラさんでもチハ38式でユーロガイツⅡ二機の相手は・・・」セシリアが青くなってうめいた。
ユーロガイツⅡ二機を前にしてチハ38式のラウラがどうせめようか考えていると、白髪の少女がもう一人のユーロガイツⅡ搭乗者に何か合図した。
するとそのユーロガイツⅡが後方に下がっていく。
「あら?ユーロガイツⅡが一機下がっていきますわよ?」と甲板上でセシリア。
(どういうことだ?)
ラウラがその意図をはかりかねていると、白髪の少女のユーロガイツⅡがライフルをしまい、
右手を手のひらを上にしてラウラのチハ38式に向かって突き出した。
そしてその4本の指をクイクイと上下する。
「・・・!・・・なめるなっ!」
近接戦闘をサシで勝負しようという合図である。
ラウラはチハ38式の多重装甲ブレードを抜いて、白髪の少女のユーロガイツⅡに向かってチハ38式を加速させた。
甲板上でサラがセシリアたちに言った。
「あれはレミー=マグラスだね。血の気が多くてこちらも困ってるんだ。しかしISの近接戦闘ではかなりの腕だよ」
ラウラのチハ38式が多重装甲ブレードを振りかぶって高速でレミーのユーロガイツⅡに突っ込む。ラウラの高速の初撃をユーロガイツⅡのヒートジャベリンで受ける。
そのままチハ38式とユーロガイツⅡの二機は高速でつばぜり合いをしながら海面近くから弧を描くように上昇していった。
高速で併走しながらラウラはブレードを左下に振りかぶり、逆けさからユーロガイツに切りかかる。
するとユーロガイツⅡは急に減速しブレードの刃をかわすと再び加速してヒートジャベリンを横に振りかぶり
ラウラの顔にむかってないできた。
ジャベリンの刃がラウラの右顔にせまる。ユーロガイツⅡのヒートジャベリンをまともにもらえば安全装置がはたらきチハ38式の戦闘モードは停止する。
ラウラはジャベリンの刃が右顔の数センチにせまったところで体を腹部を中心に横に回転してかわした。
するとユーロガイツⅡはそのままのいきおいで回転し、ラウラのチハ38式にむかって背をむけた。
するとユーロガイツⅡの背部からなにかが射出され爆発し、煙がラウラのチハ38式とレミーのユーロガイツⅡを包んだ。
甲板からチハ38式とユーロガイツⅡが黒い煙に包まれるのが見えた。
「あれは・・・?」とセシリア。
「ユーロガイツⅡのチャフグレネードだ。攻撃力はほとんどない。しかし」
千冬が答えて続ける。
「少なくとも煙幕にはなっているようだな」
ラウラのチハ38式は黒い煙に包まれ視界を失っていた。チハ38式のセンサーを起動しユーロガイツⅡを探索するが、
ユーロガイツⅡのチャフグレネードはミサイルのセンサーから自機をロストさせるミサイルジャマーである。
チハ38式のレーダーは妨害されユーロガイツⅡを見つけることができなかった。
ラウラが加速してチャフグレネードの黒煙から脱出しようとすると、ラウラの左側から高速のユーロガイツⅡがせまっていた。
レミーのユーロガイツⅡがかまえたヒートジャベリンが高速でラウラのチハ38式の左腹部に突き刺さる。
「ぐあぁぁっ!!」
シールドが起動しているとはいえ、ラウラは腹部から空気をしぼりだされてそのままチハ38式は戦闘モードを停止し、高速で水柱をあげて海面につっこんだ。
それを確認して、千冬が声を上げる。
「そこまで!シチリアIS学園チームの勝利!」
「ああ、負けてしまいましたわ・・・」とセシリア。
甲板上ではシチリアIS学園の生徒たちが歓声を上げている
セシリアにサラが言う。
「いや、ラウラさんはチハ38式になれていないんだろう?それであそこまで動ければたいしたものだよ」
4機のISが甲板にもどってきた。
ラウラが甲板に着陸すると、アルバニ6号があわてて近寄ってきた。
「あわわわわ、ラウラちゃんだいじょうぶ?けがはない?」
「ああ、大丈夫だ。そもそも訓練モードで怪我をすることなどない」
ラウラがアルバニにこたえる。
アルバニ6号が安心した身振りをしていると、もうひとりのチハ38式の搭乗者の少女がラウラのほうに歩いてくる
「その、ラウラさんごめんなさい。私がぼーっとして撃墜されたから・・・」
ラウラは表情を変えずに少女に言った。
「いや、問題ない。その経験をよく見直して自分に活かすといい」
少女にそういってラウラはおなじく甲板にもどってきたユーロガイツⅡ二機のほうに歩いていっていった。
「負けたよ。シチリアIS学園の錬度はすばらしいな」
そういったラウラのほうをみて白髪のIS搭乗者レミー=マグラスが口角をあげて言った。
「もうちょっと期待してたんだけどなぁ。このアレキサンダーはすごいけどさぁ。IS学園の生徒にはがっかりしたよ」
それを聞いてラウラが表情を険しくする。
「なんだと!?貴様、われわれを愚弄する気か!?」
二人の空気を察して、サラが仲裁に入る。
「やめろレミー。すまないラウラさん。こいつは戦闘後で興奮してるんだよ」
サラはそういってから、セシリアのほうを向いていった。
「セシリアさん。今度はきみのISを見せてくれないかな」
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そう聞いてセシリアが千冬のほうを見ると、千冬はすこし思案してからいった
「いいだろう。セシリアのブルーティアーズは出せるな?」
「ええ、整備は終わってますわ」とセシリア。
それを聞いて千冬が少し思案すると、声を上げた。
「ではシチリアIS学園からはユーロガイツⅡを5機だしてくれ。これよりユーロガイツⅡとブルーティアーズで5on1を行う!」
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青い洋上に浮遊する全長700Mの巨大飛空艦。
その前方の全長200Mの甲板から5機のISが海上に離れた。
シチリアIS学園の標準ISユーロガイツⅡである。
飛空艦から離れ5機のユーロガイツⅡがホバリングする。
甲板にたったセシリアは、風に腰までなびく金髪を揺らしながら無線で飛空艦アレキサンダーの第一兵器ドックと連絡をとった。
「こちらセシリア=オルコットですわ。兵器ドックの佐藤田さんですか?わたくしのブルーティアーズの転送をお願いできまして?」
無線で連絡を受けて、兵器ドッグの佐藤田と呼ばれた女性士官がドックの中央を見た。
ドッグ中央には青い全身鎧のようなISが設置されている。
士官の指がマニミュレーターを操作した。
すると兵器ドックの青いISブルーティアーズが上からどんどんと消失していく。
同時に、甲板のセシリアの小さな体を上から青い燐光が徐々に包み、上からブルーティアーズの機体に身を包んでいく。
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転送が終わり、セシリアがブルーティアーズを装着し終えると。
セシリアはブルーティアーズの第二戦闘モードを起動し、甲板からフワっと浮き上がると、海上へと移動した。
それを確認した千冬が甲板から無線を操作する。
「両陣営とも準備はよいな」
通信してしばらくすると、無線から声が聞こえてきた。
「ユーロガイツⅡチーム、いつでもかまいません」
次に別の声が聞こえる。
「こちらセシリア=オルコットのブルーティアーズ。準備できましてよ」
「それでは・・・」
千冬が右腕を高く掲げる。
アレキサンダーの巨大な甲板からはIS学園の生徒とシチリアIS学園の生徒が対峙したISを見つめている。
「はじめ!」
千冬が腕を振り下ろした瞬間、すべてのISがブースターを起動した。
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千冬が合図をすると。
五機のユーロガイツはすぐに5機編隊を組みバーニアを起動してセシリアのブルーティアーズに迫った。
「妥当な戦術ですね」とラウラ。チハ38式を転送し制服姿にもどっている。
千冬がこたえる。
「ああ、数の力でブルーティアーズを方位して攻撃しようということだ」
セシリアは後ろに加速すると同時にブルーティアーズの右腕にもったレーザーライフルを右に見えるユーロガイツⅡに標準をあわせ発射した。
標準を合わされたユーロガイツⅡの搭乗者はレーザーライフルが発射されるまでのタイムラグを見逃さなかった。
ISの軌道を変えてビームライフルの青い光をかわすとすぐさま編隊を組みなおしてブルーティアーズに直進する。
「専用ISといえどもさすがにユーロガイツⅡ5機に正面から激突するのは難しいようですね」とサラ。甲板からISの戦闘を分析している。
セシリアはブルーティアーズをさらに後方に加速しながらビームライフルの引き金を引いた。
ユーロガイツⅡ5機は高速機動でそれをよけながらユーロガイツⅡのライフルから榴弾をブルーティアーズに発射しつつ迫っていく。
基本的にISのISの移動速度は前進するより後進するほうが遅い、ブルーティアーズの後進速度とユーロガイツⅡの前進速度はほとんど同じだったが、ユーロガイツⅡ五機から発射される榴弾をかわしながらで、ユーロガイツⅡがブルーティアーズに徐々に距離をつめていった。
次の瞬間、セシリアはブルーティアーズを急上昇させた。ユーロガイツ5機もそれに合わせて上空に上昇していく。
かなり上昇していくと、大気が薄まり、極寒の冷機をブルーティアーズのシールドが遮断した。
セシリアがブルーティアーズを反転させ下方を見ると飛行学園艦アレキサンダーがずいぶん小さく見え、下方150メートルにユーロガイツ5機が迫っているのがわかった。
「いきますわよ」とセシリア。
セシリアは下方のユーロガイツⅡ五機のほうを向き、
ブルーティアーズ背部の4機のビットを展開、
4機のビットが真下から迫るユーロガイツⅡ五機を狙う。
次の瞬間、下方のユーロガイツⅡ5機にビットから12発のビームを高速射出し、
同時に腰部にさしたビームブレード、ブルーツヴァイの青く光る刀身を抜いてブルーティアーズで急降下した。
下方のユーロガイツⅡ五機から、
青いビームが雨のように降ってくるのと、
青いビームブレードを抜いた青い全身鎧のようなブルーティアーズが同時に降下してくるのが見えた。
下方のユーロガイツⅡ5機はビットのタイムラグを予測し、シールドを最大出力にして回避行動をとる、
その回避行動を予測し、セシリアのブルーティアーズがユーロガイツⅡ五機に向かって急降下した。
ブルーティアーズが急降下し、回避行動をとる1機のユーロガイツⅡに真上からブルーツヴァイの青いエネルギー刃が迫った。
そのユーロガイツⅡは反応が遅れたが、ユーロガイツに迫る青い刀身をその左右の2機のユーロガイツⅡが突き出した二本のヒートジャベリンが受け止めた。
「いいコンビネーションですわね」とセシリア。
そのままブルーティアーズはユーロガイツⅡの編隊に交差して急降下していく。
ユーロガイツⅡ5機は編隊を組みなおすと再びブルーティアーズを追った。
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アレキサンダーの巨大な甲板から、上空から青い尾を引いてブルーティアーズが降下してくるのが見えた。
その後ろから5機のユーロガイツⅡが降下してくる。
上空から降下してくるIS群を見てラウラが言った。
「教官、セシリアは苦戦しているようですね」
ラウラそういって千冬を見ると、千冬は少し思案した様子になった。
「ふむ」
言って、千冬は無線を起動した。
「オルコット、聞こえるか?織斑千冬だ」
セシリアはブルーティアーズを海面スレスレで高速移動させながらユーロガイツⅡの榴弾を回避した。
ブルーティアーズのソニックブームが海面を吹き上げ、海面に突き刺さった榴弾が巨大な水柱を上げる。
「教官?どういたしましたの?今いいところですのよ?」
セシリアに甲板から千冬が通信する。
「オルコット、ブルーティアーズの出力は今何分の一に設定している?」
セシリアのブルーティアーズは海面から浮き上がり、さらにユーロガイツが発射した3発の榴弾をランダム飛行で交わした。
「ブルーティアーズの出力ですか?いつものように1/3にしてありますわ」
千冬の無線からのセシリアの声を聞いたサラが驚いて言う。
「1/3?あの専用ISは出力をセーブしてユーロガイツⅡを5機も相手にしていたんですか?」
千冬が無線ごしにセシリアにつげる。
「オルコット、それなんだが、今回は特別にブルーティアーズの出力開放を許可する」
セシリアは海上を高速移動しながら千冬からの無線を聞いて、小さく笑った。
「いいんですのね?了解しましたわ。ブルーティアーズ出力制限解除いたしますわ」
次の瞬間、高速でブルーティアーズを追うユーロガイツⅡ二機が突然吹き飛んだ。
ブルーティアーズのビームライフル砲である。出力制限を開放したブルーティアーズのビーム砲はほとんどタイムラグなしで、
通常の質量弾の数倍のスピードで射出される。このビームライフルの回避は容易ではない。
威力をコントロールした青いビームがユーロガイツⅡ二機のシールドを破壊し、戦闘モードを停止させたのだ。
起動停止した二機にかまわずユーロガイツ1機が最大出力で突撃してくる。
セシリアの専用ISブルーティアーズは遠距離レンジを得意とする砲撃特化型の専用ISである。
近接戦闘にもちこめば太刀打ちできると踏んだのだ。
セシリアは後衛から二機のユーロガイツⅡが援護射撃している榴弾をかわしながら、ブルーティアーズの後進速度をさらに加速させた。
最大加速で前進する1機のユーロガイツⅡをどんどん突き放していく。
「くっ、追いつけない・・・!!」ユーロガイツの搭乗者がうめく。
出力制限を解除したブルーティアーズの後進速度はユーロガイツⅡの最大前進速度をはるかに上回る。
高速機動するセシリアの専用ISブルーティアーズに接近できるのは日本のIS学園の専用ISでも数機のみである。
と、瞬間に前進していたユーロガイツⅡがブルーティアーズを見失った。
「対象ロスト!?」
速やかにユーロガイツⅡのレーダーを起動してブルーティアーズの現在位置を探索する。
するとレーダーがユーロガイツⅡの真上に機影を発見した。
そして同時に、真上からブルーティアーズの青いビームが機体の背部に突き刺さり、そのまま戦闘モードを停止し、海面にたたきつけられた。
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セシリアが残りの二機のユーロガイツⅡをとらえると、
二機ともがヒートジャベリンとライフルをかまえてブルーティアーズに突撃してくるのがわかった。
見ると、二機のユーロガイツの搭乗者は二人の顔がまったく同じで髪の色だけが赤と黒で違う、おそらく双子のIS乗りだと推察された。
さっきブルーティアーズのブルーツヴァイの刀身を二つのヒートジャベリンで受け止めたのはあの二機のユーロガイツⅡだ。
海上でホバリングしながらセシリアは小さく笑みを浮かべた。
「かまいませんわ、遊んでさしあげてよ」
そういうと、ブルーティアーズは青い両腕にビームブレードブルーツヴァイとビームライフルを構え、
突進してくる二機のユーロガイツⅡに前進していった。
アレキサンダーの甲板上のサラがそれを見ていった。
「あのユーロガイツ二機の搭乗者は双子なんだ。彼女らのコンビネーションの右に出るものはシチリアにいないよ」
二機のユーロガイツⅡはセシリアのブルーティアーズが前進してきたのを確認すると、ブルーティアーズの左右に展開し、ちょうどブルーティアーズが球の中心になるように、ブルーティアーズをはさんで円状に移動しはじめた。
ブルーティアーズの前後をブルーティアーズを中心に円状に回転する二機のユーロガイツが波状的にライフルとヒートジャベリンで攻撃してくる。
セシリアは二機のユーロガイツⅡの軌道をレーダーを併用して確認しつつ、高速で攻撃をかわす。
前方のユーロガイツⅡのヒートジャベリンをブルーティアーズの上体をそらせてかわすと、
真上に加速して後方からの榴弾を回避する。
そして上方に移動してきたユーロガイツⅡにビームライフルの標準をあわせると、
そのユーロガイツⅡはヒートジャベリンの投擲体勢に入っており、レーダーを見ると背後の下方からもう一機のユーロガイツⅡがブルーティアーズに向かって突撃してきているのがわかった。
上方のユーロガイツⅡがISの人工筋肉をうならせ、下方のブルーティアーズに向かってヒートジャベリンを高速で投擲する。
ブルーティアーズが投擲されたヒートジャベリンをかわすと、背後の下方から突進してきたユーロガイツⅡがそのヒートジャベリンをつかみ、二本のヒートジャベリンをかまえてブルーティアーズに突進した。
その瞬間、セシリアのブルーティアーズは背部のビットを二機射出、二つのビットが背後から突撃してきた二本のヒートジャベリンをうけとめた。
そして反転する間に右手にとっていたビームライフルの銃口を至近距離でユーロガイツⅡに照準し、発射する。
ブルーティアーズの青いビームが下方のユーロガイツに突き刺さり戦闘モードを停止させ海面に叩きつけた。
それと同時にビームライフルの反動を制御せずその反動で高速反転しつつ上方のユーロガイツⅡに左手のブルーツヴァイの青いビームの刀身をたたきつけた。
上方のユーロガイツⅡはブルーティアーズの運動エネルギーがすべてのったブルーツヴァイの青い刀身を受けて戦闘モードを停止させ、数十メートル上空に打ち上げられてから、水柱を上げて海面に着水した。
それを確認して千冬が声を上げる。
「それまで!セシリア=オルコットのブルーティアーズの勝利!」
甲板からIS学園生徒の歓声が上がった。
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模擬試合を終えてユーロガイツⅡ5機とセシリアのブルーティアーズが甲板に着艦するとサラ=ハースニールがセシリアに声をかけた。
「すばらしいよセシリアさん。すごい運動性能と戦闘能力だ。あのウロボロスの双子がああもやられるなんてね」
「ありがとうございます。英国の代表候補生、そして淑女としては当然ですわ」
セシリアは笑顔で答える。
セシリアはブルーティアーズを兵器ドックに転送してからラウラにいった。
「ラウラさん。あなたがたの雪辱はこのセシリア=オルコットがそぎましてよ」
いわれるとラウラはばつがわるそうにする。
「ふ、フン。私はそんなことを頼んだ覚えはない。イギリスのIS乗りなぞに借りはつくらんからな」
「ふふっ、お強がりにならないでくださいな」とセシリアがクスクス笑っていった。
セシリアがサラに向き直っていった。
「サラさん。よかったらあなたの専用ISも見せていただけませんこと?整備は終わっているのでしょう?」
セシリアに言われて、サラがうーんと考える。
「いや、この場ではやめておくよ。グラビティカは出力の調整が難しくてね、万が一IS学園の人たちに怪我をさせては悪い」
「あら、そうですの。それは残念ですわ」とセシリア。
千冬があたりを見回して声を上げた。
「ISの模擬試合はこれで終了とする。観戦していた生徒はレポートをまとめて後日提出するように。では解散!」
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解散をつげて千冬がアレキサンダー内の司令室に戻ろうとすると、
千冬の前にラウラ=ボーデヴィッヒが歩いてきて敬礼していった。
「織斑教官!このたびは醜態をさらし、IS学園の名を汚してしまい申し訳ございませんでした!不肖このラウラ=ボーデヴィッヒ、いかなる罰も受ける所存です!」
そういって敬礼したまま千冬を見つめるラウラを見て千冬は少し考えると、そのままの表情でいった。
「そうか、ではトレーニングルームで腕立て、腹筋、スクワット各500回。基礎体力を鍛えておけ」
「はっ!了解しました!」と、ラウラ。
「あとさっきユーロガイツⅡ二機と2on1になったときせめかたを考えていたな。チハ38式1機でユーロガイツⅡ2機に対峙したときのシュミレーションを3パターンレポートにまとめて提出しろ」
「はっ!」
「ではさっそくかかれ、あと夕食の時間にはちゃんと食堂に来るように」
本来ならばこのような親善訓練で罰則など必要ないのだが、
ラウラの場合は何かさせてやったほうがむしろよいと千冬は考えていた。
敬礼してからその場をあとにするラウラと生徒たちを見送ると、千冬も甲板をあとにして司令室に向かった。