インフィニット・ストラトス~鉄と榴弾~   作:3×41

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第四話 星空

1900時

 

 

夜のインド洋上を行く飛空学園艦アレキサンダー。

IS学園の生徒とシチリアIS学園の生徒は飛空学園艦アレキサンダー内の食堂で夕食を楽しんでいた。

 

「今晩のディナーはカレーライスですの?嫌いではありませんが、わたくしたちは小学生ではありませんのよ?」

カレーライスの皿を片手にもったセシリアがつぶやいた。

 

アレキサンダーの食堂は500人を収容できるホール型になっており、

窓からは外の空中庭園デッキに出ることもできるようになっている。

 

現在飛空学園艦アレキサンダーはインド洋南部を飛行しており、

食堂の窓から出た空中庭園デッキからはインド洋上空にきらめくふるような星空が一望できた。

 

さらに遠方には少しかけた月が青白い光を夜の空に下ろしている。

 

空中展望デッキで食事をするもの、それぞれの学園生徒が混ざって会話するものもいる。

 

セシリアがIS学園の生徒たちに混ざって少し興をそがれたようにカレーを口に運んでいると

向こうからサラ=ハースニールと昼間の双子と白髪のレミー=マグラスが歩いてきた。

「こんばんわセシリアさん。このカレーライスという日本の食べ物はとてもおいしいね。もう三杯もおかわりしちゃったよ」

と、サラ=ハースニールが笑顔で言った。

「食べ過ぎですサラさん」

髪が赤い双子がサラに言う。

 

「お、お口にあったのでしたらなによりですわ」と、セシリア。

セシリアにサラがほかの女生徒を指していった。

「わたしたちのシチリアIS学園の生徒を紹介してもいいかな。こっちのレミー=マグラスは昼間に紹介したね」

 

「こちらの赤い髪のやつがアルジャー=アウシェンビッツ、黒い髪のほうがハリー=アウシェンビッツだ。

シチリアIS学園ではコンビネーションで二人の右に出るものはいない。それでウロボロスの双子と呼ばれたりもしてるんだよ」

紹介された双子は二人とも身長160cmくらいで、前髪はパッツンにきっており、後ろは肩にかかるくらいで真横に切ってある。

双子がセシリアに挨拶する。

 

「アルジャー=アウシェンビッツです。アルジャーと呼んでください」

「ハリー=アウシェンビッツです。みんなにはハリーと呼ばれています」

 

 

「あらためて、わたくしはセシリア=オルコットですわ。よろしくお願いいたしますわね。アルジャーさん、ハリーさん」

二人の紹介をうけて、セシリアはほほえんでいった。

 

双子が昼間のISの模擬訓練を興奮気味に振り返る。

「昼間のIS機動はすごかったですね。私たちのコンビネーションをさばけるのはシチリアIS学園ではサラさんとレミーさんだけですよ」とハリー。

「まさかライフルの反動を利用して高速反転されるとは思いませんでした。してやられました」とアルジャー。

 

「おほめにあずかり光栄ですわ。お二人のコンビネーションもすばらしかったですわよ。あれほどのコンビネーションは日本のIS学園でも見たことがありませんわ」

 

セシリアに言われて双子が照れてまったく同じ動作で右手で頭をかいた。

するとレミーが鼻をならしていった。

 

「フン、ユーロガイツⅡ5機を撃墜したからっていい気になるなよ、そんなのはサラさんのグラビティカなら30秒で全機撃墜するさ」

 

「いや、その話もどうなんでしょう」とアルジャー。

「ユーロガイツⅡに搭乗してるのは私たちですよ?」とハリー。

「うるさいね、私は事実を言ったまでだ」双子に言われてレミーがかえす。

 

話していると、サラがセシリアに言った。

「セシリアさん、このあと何か予定はあるかい?」

サラに言われてセシリアは少し考えた。

何もなければ兵器ドッグのアルバニに合いにいくか、談話室で本でも読もうかと思っていたが、

それらは特別な用事というほどのことでもない。

「いいえ、何かありますの?」

セシリアに聞かれてサラが答えた。

「ここには露天浴場があるんだろう?一緒にどうだい?裸の付き合いってことで」

 

 

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飛行学園艦アレキサンダーの食堂は左舷側に設営されている。

そして大浴場はその反対の左舷側に設置されており。

こちらも室内の浴場から外の露天浴場に出ることができる。

 

セシリアとサラたちは、トレーニングルームで腕立て、腹筋、スクワット500回を終えて体から湯気をたてていたラウラもつれて、

飛行艦アレキサンダーの大浴場に来ていた。

 

大浴場の露天浴場で、サラとセシリアとラウラが湯船につかり、アルジャーとハリーはお湯をかけあい、レミーは浴場の外で体を洗っていた。

 

湯船からは外のインド洋が波打っているのが一望できる。空は降るように光る星々がおおっていた。

 

「いやー気持ちいいね。ここに来てよかったよ」湯船につかったままサラが言った。

「星がきれいですわね。あ、あれはベテルギウスではなくて?」セシリアが夜空を指差して続ける。

「イギリスや日本ではこんなにはっきりと星空が見えることはありませんわね」

 

サラがさっきまでトレーニングをしていたラウラの体をまじまじと観察する。

「ラウラさんはトレーニングの習慣があるのかな?それにしては筋肉がつきすぎてないしなやかな体をしてるね」

 

「ああ、女性用のプロテインなどで栄養補助をすればな、適度な脂肪をのこしたまま肥大化させずに筋力を鍛えることができる。少々手間だがな」

 

ラウラは普段から強度の強い筋力トレーニングを行っているが、腹筋などは割れておらず適度に脂肪がついたなめらかな曲線をしている。

以前はそのようなことはまったく気にしていなかったが、千冬に少女はかわいくしていろといわれてから、気をつけるようになっていた。

 

湯船の外でペタペタと足音が聞こえた。

そちらを見ると、レミー=マグラスがタオルを肩にかけ、室内に戻っていくのが見えた。

「レミー、一緒にはいりなよ」サラが声をかける。

 

サラが促すとレミーが振り返らずに言った。

「いいえ、湯船に入るのはやめておきます。そんなよそものの『ダシ』が出た湯船になんて入れませんよ」

 

そのまま室内に歩いていくレミーにラウラが言う。

「なんだと?貴様…」

立ち上がるラウラをセシリアがなだめた。

サラの静止を聞かずレミーは更衣室に入っていった。

 

 

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「あいつにも困ったものだよ。レミーはトルコ東部の出でね。治安なんてものはないところだったらしい。あの好戦的な性格もそれでかな、

それでISの腕をかわれてシチリアIS学園にきたんだ」とサラ。

 

サラはタオルを頭にのせて遠い空を眺めながら続けた。

「セシリアさん、18世紀のフランス革命のことは知ってるよね」

 

「ええ、存じ上げておりますわ。当時のイギリスはフランスの混乱を封じ込めようと苦労していたとされていますわね」

 

サラが続ける。

「そういうことだね。イギリスの哲学家、エドモンド・バークはフランス革命が始まる前から、それはフランス内の内乱になり、軍事独裁政権によって幕を閉じると予想し、

実際に歴史はそのとおりに動いた」

 

「軍事独裁政権とはナポレオンのことだな。結局数万人の血が流れることになった」と、ラウラ。

 

「現在の中東の情勢はどうだい。国とはまさしく飢えた狼だよ。単なるきれいごとでは解決できるものじゃない。

あそこでは日常的に国境で紛争が起こり、それぞれの国が食いあっている。あれの終着点はどこにあるんだと思う?

バークの推察を借りるなら、中東地域は結局闘争でドロドロに溶け合ったあと。一人の英雄が現れ、また数十万人の血を流すことになるかもしれない」

とサラ。ラウラがうなずいていった。

「そうかもしれんな。今のところ出口が見えているようには思えない」

 

「そのようなことにならぬよう。我がイギリスも秩序の安定のためにつとめております」とセシリア。

 

二人の話を聞いてサラが言った。

「でもフランス革命のときはISはなかっただろう?今は核兵器のプレゼンスは下がってISがそれを代替するようになった。

だから自分たちがその力を使うことによって流れる血が減らせるんじゃないかって期待してるんだよ」

 

そしてサラは二人のほうを向き合っていった。

「それはそうと、ところで二人は好きな男性なんているのかな?」

 

その言葉をゴングにして、セシリアとラウラが口論を続けたあと、

5人は湯あたりする前に浴室を出てそれぞれ寝室に向かった。

 

 

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2200時飛空学園艦内談話室

 

セシリアとラウラはサラ達とわかれたあと、

寝室に行く前に談話室で紅茶を用意し、

ソファに座ってインド洋を航行するアレキサンダーの窓から揺れる海とギラつく星空を眺めていた。

 

ソファに座るセシリアがポツリと口をひらいた。

「朝飛空艦への搭乗をつげられて、今はもうインド洋ですわ」

 

セシリアの向かいのソファに座っているラウラがいう

「ずいぶん遠いところまで来たものだ。明日にはシチリア島だ。そういえばドイツから日本に来たときにもこんな気分になったな」

 

「そうですわねぇ・・・」

 

セシリアはそうつぶやいて、テーブルのアールグレイを一口飲んだ。

セシリアが日本に来たとき、英国のISの技術力の高さをしらしめようと思っていた。

友好を深めようなどとも思っていなかった。

しかし日本のIS学園にはさまざまなISがあり、高い技術を持った学園生徒たちがいた。

そしていつのまにかその学園と生徒たちに親しみをさえ感じている自分に気づいたものだった。

 

「そういえばさっき兵器ドックでアルバニたちがこんなに遠くに来たのははじめてだと騒いでいたよ。遠出で興奮する兵器なんて聞いたことがあるか?」とラウラが喜色めいていった。

 

「ふふふ、本当にそうですわね。機会があれば一度わが英国にも連れて行ってさしあげたく思いますわ。きっと卒倒しましてよ」

 

ラウラが口をはさむ。

「それならばドイツが先だ。やつらはまだ故郷である我がドイツの土を踏んでいないのだからな」

 

言って二人は笑った。

 

 

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セシリアはアールグレイを飲みおえると、ソファを立った。

 

「それではわたくしはそろそろ就寝いたしますわ。おやすみなさいラウラさん」

 

そうつげると、セシリアは談話室を出て寝室へ向かった。

 

 

 

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